Ａ氏 ：ふふふ。そこには男の子がしゃがんでいた。それも全裸だぜ。何と首輪をつけて、鎖で繋がれてんのさ。俺たちが上がってきたのに、うつむいたままぴくりともしない。俺は立ち止まってしげしげ観察してしまったぜ。ほっぺたこそ少年らしく肉がついていたが、栄養不良らしくやせっぽちだった。髪の毛はバサバサ、垢だらけでさ、首の周りなんかひびが入ってたくらいさ。よく見ると、痣と生傷が全身にある。新しいのやら、古いのやら。横には金属製のボウルが置いてあって、水が半分ほど入っていた。
俺は親父に聞いてみたんだが、「さあ」と首を振るだけさ。こともなげによ。こっちがこんなに興奮してるのに、って思ったなあ。とりあえず、名残惜しいが俺は親父について階段を上った。上ってすぐの部屋に入ると、妙にけばけばしい内装だった。奥におっさんが一人偉そうに座っていた。茶色いグラスをかけて、派手なシャツを着て、見るからに怪しげな野郎だったな。茶色眼鏡は俺に商品を見せるという。それで隣の部屋に行くと、狭い部屋に十人くらい男の子がいた。まあ、平均年齢１２歳ってとこか。上は十五、六。一番年下のは、多分８歳くらいだぜ。まあ、その時の俺は目が肥えてないから、よくわからなかったがね。一番年下のは、粗末な白いシャツと半ズボンで、細い足は小刻みに震えていたっけ。まあ、それでも、こぎれいにしてある方だと後で思ったな。やっぱり商品だからだな。栄養状態もそう悪くないみたいだった。だけど、かなり躾というか、厳しくされてるようで、見るからにおびえていた。年上の子なんかは、こっちに笑いかけてるんだが、そうするように指示されてるんだろうな。引きつってた。俺は、内緒で親父に聞いてみた。こういう子供はどうやって「調達」するんだってな。たいがいは、親が売り飛ばすらしい。その他、町のストリートチルドレンとやらの中で良さそうなのを引っ張ってくることもあるらしい。自分から来るヤツはまずいないってさ。そりゃそうだろう。
最初は、何でもいいから抱きたいって思ってたんだが、いざどれでもＯＫとなるとね。欲が出てくるって言うか、やっぱり、あんまりしっかり調教されてるのは好みじゃないと思った。俺自身で苦痛も快楽も教えてやりたいね、なんてね。それで、ひらめいた。俺は茶色眼鏡に聞いてみたんだ。あの、階段にいるヤツは？ ってね。茶色眼鏡は俺をにらんで「あれは売り物じゃない」と言う。しつっこく聞いたら、あれは他のガキどもの見せしめなんだという。何でも、なかなか気の強いガキで、連れてきた最初の日に調教係のナニに噛みついて、暴れてここを逃げだそうとしたんだと。それで捕まって、さんざんぱら殴る蹴るの暴行を受けたが、しゅんとはならない。まあ、普通はそこでぶっ殺すんだが、眼鏡親父の気まぐれで、晒し物とあいなった。日夜、通りがかる男どもに犯され、殴られ、蹴られ・・・中でも、ナニを噛まれた男の意趣返しはすごかったらしい。「ワシが止めなきゃ、今頃死んどるわい」って、親父笑ってたな。
それを聞いて、俺はますますそのガキが欲しくなった。それで茶色眼鏡にしつこく食い下がったのさ。親父は渋ってたが、「倍額出す」と言ったとたんに態度が変わった。「オマエも相当な変人だな。あんな薄汚いガキに倍額払うとは」と言ってニヤニヤしていた。こんなところにいるヤツはみんな変人だろうと言いたかったが、元も子もないので止めた。倍額出すかわりに、一晩自由に遊ばせろと言った。
ヤツは「好きにしろ」ってさ。まあ、新物でもない薄汚いガキに商品価値はないと思ってたんだろう。ポン引き親父も例外ではなく、俺のことをあきれて見ていた。自分は適当に好みの少年を見繕って、部屋に消えたよ。
俺は茶色眼鏡と一緒に階段を下りて、例の少年の所に行った。ガキは、自分には関係ないと思ってたんだろうが、首輪に手をかけられて相当驚いたようだ。だが、俺はおびえの中にも反抗的な眼の光をみて、ドキドキしたもんさ。
ガキは、茶色眼鏡が首輪をはずすのを戸惑いがちに見ていた。せつないんだぜ、何が起こるんだろうって、おびえている。俺はもう、それだけでたかぶってきたね。親父が、何か耳打ちすると、眼をまんまるにして俺の方を見つめていた。俺は薄汚れたガキを連れて、指定された部屋に入った。俺は部屋を明るくして、頭からつま先までなめるように見つめた。垢と泥まみれで、青黒い痣が体中に浮かんでいる。背中には縦横に赤い筋が走っている。だが、いい身体だと思った。痩せすぎず、少年らしい柔らかな曲線が美しい。俺の眼は確かだと思ったね。その子は、希望を失っているようだった。考えたり感じたりする力が極度に弱まっているんだな。それがその子の悲惨な境遇を物語っていると思うんだが、そのままじゃ面白くない。苦痛も快楽もめいっぱい感じてもらわなきゃな。