合鍵 第2話

  僕、俊介。小五だよ。
 ‘あいつ’の部屋に遊びに行ったのは、三度目だった。夏休みの真っ昼間だから、暑かった。あいつの部屋はいっつもエアコンが効いてて、中にはいると、すぅっと汗が引いていく。楽しみにしてたゲームの続きをやるんだ。家だとうるさく言われていいとこで無理矢理電源切られたりするけど、ここではそんなことはない。家から持ってきたメモリーカードを挿して、ゲームをはじめた。
 ‘あいつ’のこと、いろいろ噂に聞くけど、誰もあんまりはっきりとは言わないんだ。やっぱ恥ずかしいんだろうね。でも、他の子がどうなのかは知りたいんだ。だから、遠回しにいろんな話が聞こえてくるんだよな。
 そう言えば、僕一人なのは今日が初めてだ。何かあるかも知れないな、とは思っていた。
 ‘あいつ’は、僕の後ろに座って、静かに僕の肩の上から手を回して、何か言ってた。ゲームに夢中で、どうでもよかったから覚えてないんだ。いつの間にか、僕を膝の上に抱くようなかっこになってる。部屋はエアコンで涼しくて、薄着の‘あいつ’の体はあったかい。シャツの上からお腹の下の方を‘あいつ’右手が撫でていた。思った通り、「同類」だ。僕は、もうその後の展開が予想できちゃってたから、微妙にあそこにこそばゆさが走って、大きくなりかけてた。
 まだるっこしい手続きで、‘あいつ’の手がズボンの上から僕のおちんちんにたどりついて、ちょっと大きくなってるのを知ると、‘あいつ’たぶん喜んだと思う。いっきにパンツの中に手を入れてきた。
 僕のおちんちんはまだ剥けていない。手でひっぱると剥けるんだ。汚れているとカッコ悪いな。昨日お風呂に入ったから大丈夫だと思うけど。あいつの指が僕の皮を少し剥いて、人差し指の先がさきっちょをくすぐる。ちょっと濡れてきちゃったみたい。
 やっぱり手慣れてるっていうか、大人の人はさすがっていうか、気持ちよくて、僕は、成り行きにまかせながら、‘あいつ’に体を全部預けていた。
 「脱がせていい?」
 ‘あいつ’が聞いてくるけど、僕は返事をしないんだ。エッチなガキだと思われても困るしね。もうワケわかんないってふりをしてる。五年生にしては小柄な僕の体を、‘あいつ’は軽々と持ち上げて、ズボンとパンツをさっと下ろしてしまった。僕のおちんちんがぴょこんと顔を出す。「いやだ」って言われる前にやっちゃおうって、焦ってるんだと思う。ちょっとかわいげあるよね。
 「自分でやったことあるかい?」
 僕はやっぱり返事をしない。
 「オナニー、知ってるの?」
 僕は黙っている。オナニー覚えるのって、普通だいたい五年生ぐらいから中二ぐらいの間らしいよね。残念ながら、僕は小三ぐらいからやること自体は知ってた。出たのは最近だけどね。あんまり気持ちよくて、びっくりしたよな。
 ‘あいつ’は僕のお尻の穴あたりもくすぐるようにしながら、親指の先で僕の濡れた先っちょを少し強めにこすっている。僕の周りはヘタクソばっかりだから、はじめてって言っていいほど気持ちいい。まあ、僕より年下の子、ばっかりだから、しょうがないよね。僕が教えてやらせたり、もっぱら僕がいじってやるだけなんだから。
 
 はじめて男の子同士でHなことしたの、いつ頃だったかな。小二くらいで、こたつの中でいじりあってたの、あれも入るかな。小三の時は、近所の小さな子、部屋に入れて、裸にして、いじってあげてた。保育園児でも十分気持ちよさそうにするもんだよ。もちろん、僕もいじってもらうんだ。
 四年生の時には、セクフレみたいなのができたよ。いろいろ遊んでる中で、お互いくせになった感じの。ああ、でも僕が思いこんでるだけかな。ゆう君、気が弱いから断れないだけかも。僕の二つ下で、色が白くて、ほっぺたがぷにぷにして、ほんのり赤くてかわいいんだ。
 ゆう君と一緒に、いろんな「研究」をした。どうしたらより、気持ちいいかって。お尻とか乳首いじくりながらだといいとか、もちろん、口を使ってやるのも、考えた。口でやるのは、最初びっくりするくらい気持ちよかった。ゆう君も気絶しそうになってたなあ。かわいかった。
 
 イキそうだ・・・。気持ちいい。僕は、ズボンを汚さないように少し体を横に向けた。フローリングの床に、粘っこい白いのが一直線に飛び散って、僕は肩で息をしながら余韻にひたっていた。
 ティッシュで僕のおちんちんを拭いているのを、僕はかすむ薄目で見ている。
 ‘あいつ’は僕のズボンとパンツを戻そうとしている。僕は思わず股に力を入れて、逆らった。しまったなあ・・・。でも、これで終わりだと思わなかったし、すっかりHな気分になってたからしょうがないよね。僕は一瞬で次のセリフを考えた。
 「兄ちゃんずるいよ・・・」
 「え?」
 「兄ちゃんも脱いでよ。僕だけ恥ずかしいのずるい」
 今度は‘あいつ’が黙り込む番だった。気色悪いガキだと思われたかもしれないけど、やりたいのは間違いないんだから、きっと僕の思い通りになるはずだった。
 ‘あいつ’は、手早くズボンを脱いだ。どちらが手招くともなく、ベッドに腰掛けた。二人とも、下半身は裸。僕は、‘あいつ’のでかいおちんちんを両手で包み込んであげた。顔を見ると、すごく満足そうだ。毛むくじゃらで、黒くて、においもきつい。やっぱゆう君のおちんちんの方がいいな、とか思いながら、僕はいろいろ工夫をしながら、十本の指で、‘あいつ’のおちんちんをいじくった。わざと不器用に見せることも、最初は意識してたけど、だんだん夢中になって忘れてしまった。そのうち、ぱくっとむしゃぶりついちゃった。
 しまった。と思って、‘あいつ’の顔をちらっと見たけど、やっぱり驚いてるみたいだった。もういいや。僕はありったけの「テクニック」で‘あいつ’のおちんちんを舐めあげた。‘あいつ’が思わず声を上げるくらい。

 僕はどうしても知りたいことがあって、今日は絶好の機会だと思ったんだ。だから、手でイカされただけで終わるんじゃ、つまらなかった。‘あいつ’はきっと、「初めて」の僕には、刺激が強すぎないように、と思ったんだろうけど。
 男の人同士が、お尻におちんちんを入れてSEXするらしいのは、何かの本で知ったんだけど、ゆう君にそれを試そうとしても、ぜんぜんうまくいかないんだ。一生懸命固くしたちんちんを入れようとしても、うまくいかない。さきっぽが少し入って、うまくいくかもと思っても、ゆう君がすごく痛がっちゃうし・・・。せっかくの機会だから、‘あいつ’に教えてもらおうと思って。

 僕は、舐めるのをやめて、黙って‘あいつ’の顔を見る。
 「どうしたの?」
 「ねえ、兄ちゃん」
 「ん?」
 「ねえ、男の人同士でSEXする時って、おしりに入れるんでしょう?」
 「ん、あ、ああ」
 ‘あいつ’はびっくりしてるらしい。そりゃそうだよね。僕みたいな五年生、こんな悪いやつでもきっとはじめてだろうし。
 ‘あいつ’は笑い出した。
 「お前みたいな子、初めてだよ。驚いたねえ」
 ダメかな・・・
 「でも、そうとわかりゃ、遠慮しなくていいよな。全部脱いで、四つん這いになりなよ」
 僕は、言われた通りにする。わざと、のろのろと。
 ‘あいつ’は、ちょっとベッドから離れて、何か持ってきた。プラスチックの入れ物だ。僕のお尻に、冷たい液体が触れる。
 「あっ・・・」
 「優しくしてやるからな」
 ‘あいつ’の指が、僕のお尻の入り口でうごめいてる。あの液体のおかげで、すごくなめらかだ。温かい指が入ってくる。痛くないけど、思わず体に力が入った。そうしないと、全身の力が抜けて体が崩れそうなんだ。指が二本になった。液体がおしりにさらに注ぎ込まれる。気持ち悪いとも、いいとも言えない。鳥肌が立って、力が抜けそうになる。
 「怖くない怖くない・・・力抜いて・・・」
 ‘あいつ’を優しいと感じる・・・
 二本の指がぐるぐると僕の中で動いて、排泄しそうな感じがするたびに、やっぱり僕は力を入れてしまう。やがて、‘あいつ’は僕のお尻から手を離した。涼しいような、物足りない妙な感じ。
 「いくよ」
 僕のお尻に、あいつの剥けたおちんちんが添えられたのがわかる。そして、僕のおしりが押し広げられる。心臓がバクバクいってる。やっぱり、こわい。体が逃げていく。でも、‘あいつ’の両腕が僕の肩をつかんで、ぎゅっと引き寄せている。
 「今、根本まで入ってるんだぜ」
 そうなの? よくわからなかった。でも痛くない。
 そう思った時、‘あいつ’が腰を振り始めた。排泄に似た、説明できない感覚と、鳥肌が立つような感じ、そして、痛みがやってきた。
 「痛・・・」
 「大丈夫。だんだんよくなるよ。お前ならきっとね」
 僕は、「淫乱なお前なら」って言われた気がしたけど、もうどうでもよかった。痛みが気持ちよさに変わるなら、そんなことどうでもいい。
 実際、おしりはじんじんしてきて、痛みはあまり感じなくなった。気持ちいいのかどうかは最後までわからなかったけど、悪くはない気がする。やがて、‘あいつ’が「出るっ」と叫んで、僕の中に射精したらしいけど、いつがその瞬間なのか、わからなかった。‘あいつ’が抜いたあと、べたべたするので、体の中に出されたってわかったけど。

 何だかその後、遊ぶ気はしなくて、僕はシャワーを浴びたあと、「もう帰るね」と言った。‘あいつ’は「また来るだろう」と言った。僕はうなずいた。あいつは、ちょっと待て、と合図すると、奥にひっこんですぐ戻ってきた。そして、僕の手に、鍵を一本握らせた。
 僕は、その合鍵を右手に、ポケットには、ローションの小瓶を隠して、‘あいつ’の部屋を後にした。明日でも、ゆう君に試してみるのが楽しみだった。暑すぎる日差しも、その時の僕には気にならなかったんだ。