**パラレル**
〜ハロウィン2009〜
普段からあまり表情は豊かではないが、
今日に至っては一段と不機嫌さがかもし出ている。
ブスッとした顔で黙々と機体の整備をしているクォヴレーに、
アラドは恐る恐る声をかけてみた。
「クォ・・クォヴレーさぁん・・?」
するとクォヴレーはしかめっ面を無表情へ戻し、
何だ?と目だけで答えた。
「(こ、こえ〜!!!)」
「アラド?」
「・・・は、ははは!・・あのさ・・・」
「・・・・・」
「そのぉ・・・」
「・・・?」
「ご機嫌斜めなところ悪いんだけど・・・・」
「ご機嫌斜め?」
クォヴレーの眉間の皺が一本増える。
どうやら本人は全く自覚がなかったらしい。
「今年のハロウィンの分担が決まったから・・・」
「・・・ハロウィン・・・(もうそんな次期か)」
「そ、そう!ハロウィン!オレらは今年、飾り付けだって!」
「・・・そうか」
役割を聞くと、再び黙々と作業に戻るクォヴレー。
アラドは冷や汗をかきつつ、懸命に何かを話しているが、
クォヴレーは右から左へ聞き流していた。
アラドには可哀想だが、今のクォヴレーに人に構っている余裕はないのだ。
「(イングラムのバカ!)」
そう、アラドも近寄りがたかったクォヴレーの不機嫌な理由は『彼』である。
最近の彼は同じ部屋にいてもキス以外手を出してこない。
キスと言っても軽いタッチのもので、濃厚ではない。
いつもいつもしつこいくらいであったのに、全く手を出してこないのだ。
最初は病気かと思って心配したが、どうやらそうではないらしい。
では浮気だろうか?とも疑ってみたが、それも違うようだ。
最近の彼は朝から晩まで、なにかに取り付かれたように仕事に勤しんでいる。
クォヴレーはわけが分からなかった。
理由が分からないものほどモヤモヤするものはない。
「(別に欲求不満なわけではないぞ!断じて違う!!)」
ムムムッとますます眉間に皺を寄せ作業に没頭するクォヴレーに、
最早声のかけようもない哀れなアラド。
ここは早々に立ち去ろう、と一歩後に下がった時、
何を思ったのか急にクォヴレーが立ち上がった。
「!!!?、・・・っ、ひぇぇぇぇぇ!!!!」
アラドの悲痛な叫びもなんのその・・・、
急に立ち上がったかと思えば、今度は不適な笑みを浮かべたので、
しばらくの間、アラドは石のように固まっていたという。
「・・・ハロウィン・・・、そうだ!ハロウィンだ!」
「・・・・っ、クォヴレーさん??」
クォヴレーの不適な笑顔・・・。
さて、彼は一体何を思いついたのだろうか・・・・?
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