〜手探り〜
アラドが部屋に帰ってくると同室の者の姿が見えなかった。
いつもなら机に向かって端末をいじっていたり、本を読んでいたりするのに。
どうしたんだろうと部屋の奥まで行くと、ベッドに人の気配を感じた。
自分が使っているベッドの反対側に目をやればそこには探していた人物が
スヤスヤと寝息をたてて眠っている。
「クォヴレー・・・寝てんの?」
眠っている相手が返事を返すはずもなく、部屋には沈黙が走る。
「(最近よく寝るよな・・・コイツ。やっぱり負の力の制御?だったよな?
って思った以上に体の負担が大きいのかな?」
クォヴレーのベッドに腰を下ろすとそっと額にかかっている髪にさわってみた。
「・・・んっ」
髪に触れられ、少しだけ声を漏らした、が直ぐにまた眠りについたようだ。
「(すっげー柔らかい髪・・・・猫毛ってやつだな。ちょっと羨ましい・・・)」
アラドは起さない様に注意しながらクォヴレー観察を続けた。
すると知らず知らずのうちに目線は彼の唇へと向かった・・・・。
「(・・・・この前・・・この唇に・・・オレの・・・唇が・・・触れたんだよな?
柔らかかったな・・・・もう一度・・・・!!!!!)」
クォヴレーは相変わらずスヤスヤ何の警戒もなく眠っている。
「(オレ・・・オレ・・・この前といい、今といい、一体何考えてんだ!?)」
バンッ
おもいっきりベッドを叩いてしまった。
「(しまった!?)」
案の定、クォヴレーは目を覚ましてしまった。
そして2人の視線はかち合った。
「・・・・・」
「・・・・・」
無言の時が流れる。
「あ・・・おは、よう・・・クォヴレー」
「・・・ああ・・・おはよう・・・」
「・・・よく寝てたな・・・」
「・・・そうみたいだな・・・・アラド・・」
「な、何・・?」
「何してるんだ?オレのベッドの前で?」
「い!?そ、それは・・・えっと・・・そのぉ・・・」
「?」
歯切れの悪い言い方をするアラドにクォヴレーは?マークを浮かべ
首をかしげながら真っ直ぐにアラドを見つめた。
「(あ・・・かわいい・・・!ってそうじゃないだろ、オレ!!)」
「・・・・アラド?」
「?具合悪いのか?顔が赤いぞ?」
「そ、そう?」
「この前も赤かったな・・・やはり病気ではないのか?医務室へ行くか?」
「い、いや・・・いいよ!病気じゃないし・・・医務室なんて・・・」
ドギマギしながら医務室に行くのを嫌がるのでははぁ〜んという顔で、
「アラド・・・お前ひょっとして注射が怖くて行くのが嫌なのか?」
「バッ・・・カ!そんなわけないだろ!?オレは本当に病気じゃないの!
だから医務室に行く必要はないの!!」
「ふ〜ん・・・本当かな?」
「本当だっ・・・」
その時、こつんっ・・・とお互いのおでことおでこがぶつかった。
「(ええっ!?)クォ・・・ヴレー・・・???」
「・・・少し熱いみたいだぞ?」
「(それは、お前の綺麗な顔が・・・近くにあるから、だぁ!!!)」
「アラド・・・やはり医務室に・・・・アラド?」
アラドは力いっぱいクォヴレーを引っぺがした。
これ以上くっついていては・・・心臓が持ちそうもない。
「そ、そうだな・・・オレ、医務室いってくる!!」
「え?」
「だって・・・これ以上ここにいたら・・・オレ・・オレ・・・
変態になっちゃうからさ!!じゃな!!」
「ア、アラド??」
そしてアラドは一目散に部屋を後にした・・・・。
1人残されたクォヴレーは、
「・・・変態・・・?大変の間違いだろ???」
と、アラドの言葉に突っこみを入れていた。
アラドが医務室に行くと、トールとミリアリアがいた。
「れ?どしたの?」
「アラド!トールってばシュミーレーションで調子のってたら
怪我したのよ?ばっかみたいでしょ!?」
「・・・酷いなミリィ・・・俺だって・・・」
「ふーん・・・大丈夫なの?」
「ああ・・・まぁ、ね・・・アラドはどうかしたのか?」
「え!?・・・オレは・・・ちょっと避難しに・・・」
「「避難?」」
「あ!そうだ!2人ともちょっとオレの話聞いてくんない?」
「ええ、いいわよ」
「俺もかまわないけど?」
2人の同意にアラドは大きく深呼吸をして話を切り出した。
「オレ・・・最近さ、変なんだ」
「どう変なの?」
「ある奴を見ると・・・こう何てゆーか・・・モヤモヤして・・・」
「それで?」
「ドキドキして・・・身体中熱くなって・・・」
「・・・・それからどうなの?」
なぜかミリアリアは目を輝かせながらアラドにその先を即した。
「・・・それから・・・目も離せなくて・・・」
「キスしたい衝動、とか?」
トールがアラドの話を聞き、ニヤニヤ笑いながら言った。
「そうそう!この前も寝ているアイツの唇を・・・・」
「「えええええ!?」」
2人は思わず声をあげてしまった!
アラドは自分の行動を咎められたと思い、
「な?な?オレ・・・変だろ???」
「・・・変というか・・・当たり前なんじゃない?」
「そうだな・・・当たり前だな」
「????何が?変だろ?」
「何処がどう変だと思うの?アラドは?」
「必要以上にドキドキしたり・・・身体が熱くなったり・・・
寝ている相手の唇に・・・・したり・・・変に決まってるよぉ!!
あーーーー!オレは変態だったんだぁ!!」
アラドが絶叫を上げると、プッと二人は笑った。
「何で笑うんだよ??オレが悩んでんのに!!」
「あはは!だって・・・ねぇ?」
「ああ・・・ぷっ・・・ククク・・・心配しなくてもアラドは
変態なんかじゃねーよ!」
「ええ!?」
「アラド・・・それきっと恋よ!アラドはその子に恋しているのよ!」
「恋!?(・・・クォヴレーに???)」
「眠っている相手にちゅ〜した位ならもう末期ってトコかな?」
「末期??(クォヴレーに・・・??)そうなの、かな?」
「絶対そうよ!」
「ああ!それは恋だ!」
アラドがうーんと唸っていると、医務室のドアが開いた。
「アラド・・・大丈夫か?」
そういって、銀の髪の少年は入ってきた。
「あら、クォヴレー!ええアラドなら平気よ!」
「ああ・・・アラドは病名が分って気分もすっきりだよ」
「!!病名!?アラドはやっぱり病気だったのか?」
「そうよ〜!!だれもが一回はか・か・る素晴らしい病気よ!」
「・・・病気なのに・・・素晴らしいのか?」
ミリアリアの言葉に驚きを隠せないクォヴレー。
「クォヴレーにはまだまだ早い病気かもなぁ・・・」
と、トールはしみじみと言った。
2人のつかみ所のない台詞に怪訝そうな表情で見つめながらも、
病気というアラドが心配で近寄った。
「本当に・・・大丈夫か?」
「あ、ああ・・・(オレが・・・恋?クォヴレーに・・恋!?)」
スッと手を伸ばし、アラドの前髪を後に追いやり、自分のおでこをくっつけた。
「・・・やっぱり少し・・・熱いな、アラド。寝ていたほうがよくないか?」
アラドの顔はどんどん真っ赤になっていく・・・・。
「!だんだん熱が上がってきているぞ?アラド・・・早くベッドに・・」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
その絶叫にビックリしておでこを放したクォヴレー・・・
「アラド????どうし・・・」
「これ以上・・・!!オレを変態にしないでくれ〜!!!」
そしてまた一目散にアラドは医務室を後にした。
後に残されたクォヴレーは、またもやボーゼンとしながらアラドを見送る形となってしまった。
ミリアリアと、トールは顔を見合わせ笑っている。
「・・・アラド・・・変態ではなく大変だろう?」
クォヴレーはまたも、もういない相手に突っこみを入れた。
「うーん・・・アラドにとっては変態ってことになっちゃうのかもね」
「そうだな・・・」
「?どういうことだ??」
「どうしてかしらね?」
ミリアリアは意地悪げにクォヴレーを横目に見ながら、トールに言った。
「あたし、アラドの恋の相手わかっちゃった」
「・・・俺も・・・前途多難だな、アラドは」
「そうね〜・・・天然にぶちん君がお相手じゃあね・・・」
「何の話だ?」
「・・・別に・・・」
会話の内用に???マークを浮かべ首をかしげながら2人を見つめた。
大人びた口調とは裏腹に幼さの残る顔・・・・
「(・・・この顔で見つめられたら・・・確かにまいるよなぁ・・・綺麗だもんな・・・こいつ)」
「(・・・がんばってとしか言いようがないわね・・・ゼオラが可哀相だけど)」
「・・・2人とも?どうした?急にだまって・・・
オレを見つめて・・・オレの顔はそんなに変か?」
「・・・変じゃないわよ・・・むしろ逆?」
「そうだな・・キラもだけど・・・大変だよなぁ・・・美少年ってさ!」
「そうね〜・・・ま、頑張ってね!クォヴレー!」
「?何をだ???」
「まぁ、いろいろってことさ!」
「?????」
理解不能な会話についていけず、クォヴレーは医務室を後にする。
一方、アラドは絶叫しながら自分の部屋に戻ってベッドの中でアレコレ考えていた。
「(恋!?オレが、恋!?クォヴレーに恋!!)」
数分後、アラドは後悔することとなる。
彼の同室はクォヴレー・・・・
当然彼もこの部屋の帰ってくるのだ。
もう少し、考えて頭を整理したかったのに・・・
クォヴレーが帰ってきて儚くその願いは散る。
そしてきわめて自然に振舞おうと努力した。
しかしその行動はかえって不自然で、クォヴレーは不振そうにアラドを見つめた。
「(頼むから・・・見つめないでくれ〜!!!)」
手探り・・・か?
この10のお題はアラドが主人公です。
アラド視点のお話。テーマは面白おかしく?いかにしてクォヴレーを振り向かせるか!
途中シリアスも入る予定ですが・・・・
そしてクォヴレーのテーマは・・・昼寝(笑)
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