10お題
 

〜援護攻撃〜




アラドはピンチだった。
考え事をしながら戦闘をしていたら、ゼオラと逸れてしまった。
もうすでに敵に囲まれている。
相手は、ゴラー・ゴレム隊だ。
幸い雑魚共だが、四方を囲まれてしまっているので相当ヤバイ状況。

「(ひぃぇぇぇ!!やばいよぉ〜落とされる〜!!)」









数時間前・・・・・









「アラド・バランガ・・・ちょっといいかしら?」



アラドが談話室で1人黄昏ていると、フイに誰かが声をかけてきた。
目線をあげればすらりと背の高いスレンダー美人な上司、ヴィレッタ大尉が
険しい表情で立っていた。


「ヴィ・・レッタ・・大尉??何スか?」
「話があるのよ・・・私の部屋へ来て頂戴。アラド・バランガ」
「はぁ・・・?話?」
「そう、話・・・。さぁ!早くしなさい!アラド・バランガ!!」
「は、はひぃ!!(怖いよ〜!!しかも何でフルネームなんだぁ??)」


物凄い剣幕で言われ思わず返事をしてしまった。
彼女は相変わらず険しい表情をしている。
見れば、手には拳銃らしき物を握っているではないか!?


「(何?何?なんなんだよ〜!?なんで拳銃なんか握ってるんスか??
 ヴィレッタさぁーーん!?)」
「シャキシャキ歩きなさい!アラド・バランガ!!」
「はいぃぃ!!申し訳ありません!!」




ヴィレッタの部屋に入ると、そこには何故かレーツェルがいた。


「(????何でレーツェルさんもいるんだ??)・・・あのぉ〜・・
 ヴィレッタさん??オレに一体何の話が??」


バタンッ



「ひぇぇぇぇぇ!!怖いよ〜!!!」


これまた、ものすごい勢いでヴィレッタが部屋のドアを閉めたものだから、
アラドは竦みあがってしまった!
一体自分が何をしたというのだろうか??


「・・・ヴィレッタ大尉・・・そう怖がらせるものではないよ・・・
 怯えてしまっているじゃないか・・・」
「・・・いいのよ、私は怒っているのだから・・・」
「・・・オレ・・・何かヴィレッタさんを怒らせるようなこと・・・しました??」


カチッと、トリガーを引く音が聞こえた。



「ひぃぃぃぃ!!ごめんなさい!!申し訳ありませんでした!!
 もうしないと誓います!!だから殺さないでください!!ヴィレッタ大尉様〜!!」

「・・・よろしい・・・今なら言い訳を聞いてあげるわ・・・
 さぁ言いなさい!アラド・バランガ!!」
「レ、レーツェルさん!!大尉は何を怒っているんスか〜???」

アラドが泣きながらレーツェルに助けを求めたら、彼は呆れた口調で、

「・・・何か思い当たったから、今謝ったのではないのかね?君は・・・」
「違いますぅ!!トリガーを引く音が聞こえたからとりあえず謝ったんです!!」
「・・・可哀相だが、私も大尉が何故怒っているかは知らないのだよ・・・
 ただ、君を殺さないよう見張っていてくれと言われただけなんでね・・・」

その告白に冷や汗が背中をつたった。

「ひぇぇぇぇ!!ヴィレッタ大尉!!オレ何したんでしょうか!?教えてくださいっス!!
 理由も分らないまま殺されるのは勘弁です〜!!!」
「アラド・バランガ・・・本当に思い当たらない?」
「全然!!全く!コレッぽっちも思い当たりません!!」

ふぅ・・・と呆れたようにため息をつくと、銃をとりあえず下ろした。


「ゼオラが最近クォヴレーが落ち込んでいると言ってきたのよ・・・・
 何でもアラドに無視されているんですって??どうなのかしら?」
「ええええええ!?無視なんてしてないッスよ〜!!ゼオラの勘違い!!」
「・・・本当にそうかしら?クォヴレーに聞いたら、確かにお前は最近不自然な行動が
 多いと言っていたわよ?どう弁明するつもり?」
「そ、それはぁ・・・・そのぉ・・・」
「その・・・何?」


カチッと、トリガーを引く音が聞こえた。


「(ひぃぃぃ!)き、気まずいんです!クォヴレーといると!!」
「・・・喧嘩でもしたのかね?」


それまで沈黙していたレーツェルが口を開いた。
2人とも『気まずい』という言葉に反応し、険しい表情になった。
ゴクン・・・と生唾を飲み込まずにはいられないほど恐い空気が部屋を流れる。


「・・・オレが・・・一方的に・・・気まずいんス・・・」
「どうして?クォヴレーが貴方に何かしたの?」
「・・・・オレ、アイツといるとなんかこう・・・鼓動が早くなって・・・
 息が苦しくなって・・・顔が熱くなって・・・」
「・・・・」
「・・・・」
「この前なんか・・・眠っているアイツの・・・・・に・・・自分の・・・・を・・・」
「!・・・・・」
「!!・・・・」
「だから・・・オレ・・・アイツと距離を置こうと・・・だってアイツの傍にこれ以上いたら
 オレ・・・オレ・・・変態になっちゃう気がして!!」


アラドがすべてをぶちまけると、ヴィレッタは呆れたように彼を見つめている。
レーツェルは耐えられないとばかりに、座っていたベッドの上で腹を抱えて笑いを堪えている。


「・・・っフ・・・くっくっくっ・・・」
「・・・・レーツェル・・・笑い事じゃないわよ?」
「くくくっ・・・ああ・・・すまない・・・分ってはいるが・・・つい・・・
 若いということは・・・・素晴らしいことだな・・・・くくく・・・」
「???何笑っているんスか??オレ何か変なこと言いました??」
「・・・アラド・・・お前、ただそれだけの理由でクォヴレーを無視していたの?」
「!それだけ!?オレにとっては物凄い重大な理由ッス!!」
「くくくくく・・・!まぁ・・・そうだろう・・・重大な理由だ・・」
「・・・何が重大よ・・・ただの『恋煩い』じゃない!呆れて言葉もないわ」
「!?!?『恋煩い』!?やっぱオレってばクォヴレーに恋!!?してるんでしょうか??」
「・・・気づいていなかったのかね?」
「いやぁ・・・ミリィとトールにはそんなこと言われたけど・・・うーん???」
「はぁ・・・そんな理由で無視されていたなんて可哀相なクォヴレー・・・・涙目になっていたわよ?」
「えええええ?マジっスか!?(あちゃ〜)」
「恋している相手と話すのが気まずいというのは分るが、無視はよくないな・・・」
「・・・無視していたつもりはないんスけど・・・・アイツ、人の事ジーと見つめながら
 話してくるから、恥ずかしくて・・・それでつい・・・」
「普通でいいんだよ・・・明らかに態度を変えるとかえっておかしい関係になってしまうだろう?」
「・・・そういうもんスか??でも普通って???オレ普段どう話してたんだろ??」
「・・・・それは自分で考えるのね。それより、アラド・バランガ!」
「は、はい!?」
「今回は、お前の『恋煩い』に免じて許してあげる」
「あ、ありがとうございます(涙)」
「ただし!・・・次はないわよ?」
「了解っス!!」
「・・・一つ、アドバイスしてあげるわ」
「へ?」
「・・・黙っていても相手には伝わらないわよ?特にあの子の様なニブ系ちゃんには、ね」
「それって・・・告白しろってこと?」
「・・・告白云々はともかくとして、遠まわしに見守っていたりなんかしていると、
 誰かに横取りされるわよ?・・・あの子ああ見えてモテるから・・ね(男にも女にも)」
「あ!それは知っているっス!この前も整備のおじさんにキスされそうに・・・(いいい!?)」

そこまで言い終わると、アラドは背筋に悪寒を感じた。
目の前の美人が見る見るうちに悪魔の顔に変化してくではないか!?

「・・・今の話・・・本当?」


コクコク・・・と首を縦に振ることしか出来なかった・・・

「あ!でも丁度そこにカガリが通りかかって鉄拳食らってましたよ?その人」
「ほぉ・・・あのお嬢さんもなかなかやるものだな・・・」
「感心なんかしないで頂戴。クォヴレーも仕方のない子ね・・・まったく」
「まぁ、私も、気をつけて見るように心がけるよ。ゼンガーにも言っておく」
「そうしてくれると助かるわ。アラド、貴方も気をつけて見て頂戴ね」
「は・・・はぁ?」
「しかしヴィレッタ大尉がブラコンだったとは・・・驚いたな」
「・・・どういう意味かしら?レーツェル?」
「!いやいや・・・独り言だ」
「そう?ならいいけど・・・」

笑いながら話している2人の会話を聞いてアラドは胸を撫で下ろす。
どうやらヴィレッタの機嫌(?)は直ったようだ。
ほんわかムードが部屋を漂い始めた。
と、その時



「!?どうやらここまでのようだ・・・警報だ」
「!?そのようね・・・しかもこの気配、相手はゴラー・ゴレムだわ」
「格納庫に急がないと!!」









そして現在に至る。
戦闘中なのにアラドはヴィレッタとの会話を思い返し、
クォヴレーとどう接しようかな〜・・・なんて考え事をしていたら、
ゼオラや他の小隊員からはぐれてしまったのだ。
とりあえずどこかの小隊に紛れ込もうとウロチョロしていたら
敵に囲まれてしまったのである。

「(やばい!やばい!相手は魚ヤローばっかだけど、囲まれていたんじゃやばいって!!)」

アラドいわく『魚ヤロー』は遠慮することなく集中砲火を仕掛けてくる!!
ビルガーはその攻撃を土壇場で回避、回避、回避!!


「ギリギリでも・・・回避は回避だ!いくぜ!ビルガー!!コールドメタル・・」

敵が多いのでとりあえず正面の敵から片付けていくことにした。

「ソード!!」

『魚ヤロー』は直撃をうけ爆砕する。

「よっしゃ!まず一匹!!次!!つっこめビルガー!!」

敵の攻撃をヒョイヒョイ避けながら懐に飛び込み切り裂いていく。
1匹、2匹・・・・9匹・・・

「こいつで最後だ!!10匹めーー!!コールドメタル・・」


10匹目に向かって飛び込んでゆく

「ソー・・・・!!!げっ」


懐に飛び込んだというのに、『魚ヤロー』は見事に避けてくれた。
そしてすかざず反撃に移ってきた。

「(やば!!反撃される!!)だ、誰か〜!!援護攻撃か防御してください!!」

小隊からはぐれてしまっているのだから、援護してくれる相手などいる筈もないのに
アラドは叫び続ける。

「(もう・・・ダメだ!!)」




「アラド、続けていくぞ」
「・・・え?」
「ガンスレイヴ・・・ロックオフ、いけ!!」


ビルガーの後からヒュンッヒュン・・・と黒い物体が飛んでくる。

「・・・ガン・・・スレイヴ・・・?(クォヴレー??)」

『魚ヤロー』は爆砕し、あたりに敵の気配はなくなった。


「・・・アラド、大丈夫か?」
「・・・クォヴレー?・・・お前・・・どうして・・・?」

回線をオープンにして話しかける。

「・・・お前が、小隊からだんだん離れていくのが見えたから・・・追いかけてきた」
「え!?そうなの?・・・とにかく助かったよ・・・サンキュ」
「・・・いや・・・仲間、だからな・・・当然・・・!!この気配は!?」
「え?どしたの?なんか来んの?」
「・・・ああ・・・ヤツ、だ」
「ヤツ・・・?・・・・」


アラドが目を顰めれば、金色の機体がこちらに向かって来ている。
・・・隊長機だ!

「あれって・・・キャリコ・マクレディ!?」
「・・・・キャリコ!!」


「・・・見つけたぞ・・・アイン。今日こそお前を壊してやる!」
「その台詞は聞き飽きた!キャリコ、今日こそ決着をつける!!」
「望むところだ!アイン!!・・・行くぞ!」
「Z・Oサイズ!!」

クォヴレーが先に仕掛けた。
しかしキャリコはヒョイッとその攻撃を避ける。

「・・・そんなものか・・・アイン?」
「くっ・・・」

キャリコは回避の体勢から攻撃の態勢に立て直すと、

「もう・・・逃げる必要はない・・・アイン!!」
「オレを・・・忘れんなよ!?キャリコ・マクレディ!!」
「何!?」


アラドはキャリコめがけて特攻を仕掛ける!

「ぐぅ・・・う」
「クォヴレー!!今だ!!」
「・・アラド・・・ああ!分った!メス・アッシャー・・・・ダブル・シュート!!」


閃光が一直線で向かってくる。
アラドはその瞬間上へと飛び上がる。


「・・・っぐぅ・・・アインの攻撃が俺の予測を上回っただと・・!?」
「止めだ!キャリコ!!」
「ちぃ・・いい気になるなよ・・・アイン!!デッド・エンド・シュート!!」

気を抜いていたのか、その攻撃の直撃を受けてしまった。



「ぐぅぅぅ!!・・・オレはまだ死なんぞ・・・キャリコ!!」
「クォヴレー!!クォヴレー!!大丈夫か!?」
「・・・ああ、大丈夫、だ。アラド・・・すまない」
「・・・クォヴレー・・・よかった・・・オレ、オレ・・・」
「?アラド・・・?」
「クォヴレー・・ゴメンな・・・オレ」
「もう、いい・・・気にしていない・・・援護ありがとう」
「クォヴレー・・・オレこそ援護ありがとう!
 (なぁんだ!簡単なことじゃんか!オレ今、普通に話せてるよな?)」


2人はキャリコを無視して(存在を忘れて?)会話を続けた。
クォヴレーは綺麗に微笑している。
アラドはヘヘ・・と鼻を擦りながら笑顔を返す。



「・・・・・(ほぉ・・・?アインがあんな顔をするとは、な)」


オープン回線なのを忘れて二人は会話を続ける。
キャリコは黙って、そして面白そうに口の端を歪ませその様子を見守る。

「(・・・アインは壊すよりも捕らえて・・・・調整し直したほうが面白くなりそうだな・・)」


2人はまだ会話を続けている。
キャリコは少しずつ後退していく・・・そして最後に一言・・・

「勝負は預けるぞ・・・アイン!」
「!!キャリコ!?」


突然の声に驚きそしてキャリコの存在を思い出し回線に目をやる。
キャリコの顔は面白そうに仮面の下から僅かに見える口が歪んでいる。
そして回線が切れると足早に立ち去った。
・・・嫌な感じを残して・・・

「(!?・・・なんだ?キャリコのあの顔は??・・・嫌な予感が・・・するな)」
「クォヴレー・・・帰還しようぜ」
「・・・ああ」







「随分やられたわね、キャリコ」
「まぁな・・・それよりスペクトラ、面白い趣向を思いついた。指令に許可を得に行こう」
「面白い・・・趣向?」
「ああ・・・(アイン・・・お前から笑顔を奪い去ってやろう・・・
 人形は・・・人形らしく無表情に、な)」
「?」







「クォヴレー!!」


アラドは格納庫に着くと、真っ先にクォヴレーの傍に行き飛びついた。
クォヴレーは突然のことでビックリして受身がとれず、そのまま2人して床に倒れこむ。

「コラ!アラド!危ないだろ?」
「悪い!でも真っ先にもう一度お礼が言いたくてさ!本当にありがとうな!援護に来てくれて!!」
「・・・アラド」
「・・・それから本当にゴメンな。お前のこと・・・避けてて、さ」
「さっきも聞いたぞ?もういいと言っただろ?・・・それより重いんだが?」
「あ、ごめん・・・今どく・・・!?」
「?アラド・・・どうし・・・」
「うわぁぁぁぁ!!ゴメン!クォヴレー!!オレ・・・先に行くな!
 このままだと変態になりそうだから!!」
「え?」


クォヴレーの上からどくと格納庫の近くにある簡易シャワー室へと走ってった。
そして、

「・・・だから変態ではなく・・・大変だろう???一体何が大変になるんだ?」


と、またもや突っこみを入れていた(笑)
そして、アラドは・・・



「(ヤバイ!ヤバイ!!ヤバイ!!!今のはやばかった!!
 あの体勢だと・・・クォヴレーの細くて白い首筋に・・・吸い付きたくなる〜!!
 オレはやっぱ変態だーー!!クォヴレー変態で・・・ゴメン!!)」



戦闘直後だからか?クォヴレー効果か?・・・アラドは簡易シャワー室で
大変なことになっている【あるもの】の処理をしたことはいうまでもない(笑)



ありがとうございました。 最後少しシモネタが入りましたが・・・如何でしたでしょうか? この話ではなるべく多くのキャラを出演させようと頑張っております。 ゼオラは今だに名前しか出てきていませんが、ね。 最後のキャリコの台詞ですが・・・・どうなるんでしょうね? それにお気づきですか?このサイト初の真面目(?)キャリコ! 変態になるかどうかは・・・・さぁ?どうでしょうね・・・? 戦闘の台詞はゲーム上のものを参考に致しました。 それからこのお話はあくまでゲームのお話からは離れて作っておりますので ご了承くださいね?