ホットチョコレ〜ト
その日αナンバーズはなにやらソワソワしていた。
いや、ソワソワしている人間が多いといった表現が正しいかもしれない。
一体何故そんなにソワソワしているのか?
2月14日がどんな日か知っている者はまったく縁がないと思いつつも
ソワソワしてしまう、それが人間の心情というものだろう。
縁がないといってもおこぼれを頂戴できるかもしれない、と思っているからだろうか。
「?」
いつもどおりゼオラ・アラドと朝食をとりながら皆のソワソワしている理由が
思いつかない少年、クォヴレーはいつものごとく疑問を解決すべく二人に尋ねる。
「何故今日は皆ソワソワしているんだ?」
ある程度大人になった人間ならばバレンタインではソワソワしたりしないものだが、
クォヴレーくらいの歳でソワソワしないのはある意味おかしい・・・。
しかしクォヴレーのその質問に2人は顔を見合わせ、やっぱり今日がどんな日か
知らないんだなと苦笑した。
知らないから(いや彼の場合知っていても普段どおりかもしれない)
落ち着いているのだ、と。
「クォヴレー、今日何日か知ってる?」
「2月14日だろう?」
「そう!2月14日!!お前2月14日がどんな日か知らないのか?」
「・・・バレンタイン・・・・」
クォヴレーが『バレンタイン』と口にしたので
何だ知っているじゃないか!と2人はおお!という顔をしたが、
クォヴレーの次の台詞でガックリとしてしまう。
「・・・が処刑された日・・・だろう?だがそれとソワソワとどう関係してくる??」
「あのね、確かに今日はバレンタインが処刑された日だけど・・その話には続きがあるのよ」
「続き?」
「ヴァレンタインは若者を戦争に行かせる為に当時の皇帝が結婚を禁止して、
そのかわいそうな兵達にために 内緒で結婚させてくれたのがヴァレンタインよね?
で、その行いがばれて、投獄されて、処刑された・・・
自分の命を犠牲にしてまで愛を伝え続けたのね・・・。
その後まぁ・・・いろいろあって2月14日はチョコを上げる日、
バレンタインデーと呼ばれるようになったのよ。
つまり今日チョコをあげる日なの。」
「チョコ?・・・だから皆ソワソワしているのか?チョコが欲しくて??
そんなに食べたいなら自分で買えばいいだろうに・・・」
「違うのよクォヴレー。皆チョコが食べたくて欲しいわけじゃないのよ!」
予想通りに彼の反応にゼオラは更に言葉を続けた・・・
彼に今日が女の子にとってどんな特別な日か理解してもらうために。
「バレンタインはね、女の子が好きな男の子にチョコを贈る日なのよ」
「・・・す、き?」
「クォヴレーは好きなことか、いないの?」
「・・・すき、な子・・・?」
「そう。好きな子!その子からチョコもらえたら嬉しいでしょ?皆がソワソワしているのはね、
女の子は好きな男の子に想いを伝えるために、
男の子はひょっとしたらあの子からもらえるかもしれない、と考えてソワソワしているのよ」
「・・・そんなものか?アラド?」
「え!?ああ・・・うん。まぁ義理でも男ならチョコもらえたら嬉しいよな!
・・・世の中には義理ももらえない奴もいるし・・・」
今までゼオラとクォヴレーが2人で話を進めていたので、突然話を振られてアラドは
しどろもどろしてしまう。
「?でもゼオラ、女の子がチョコあげるのって日本独自だろ?」
「あら?アラドよく知ってたわね!その通りよ。他の国では男女問わずお世話になった人に
贈るのが普通みたいね。でもαナンバーズは日本人が多いし、
壕に入っては従え!って言うでしょ? いいのよ。」
「(いいのか?クォヴレー信じちまうぞ)」
「と、いうわけで私は他の国式で、2人にはお世話になったから、ハイ!チョコレート!!」
ゼオラはそう言うと二人にチョコを渡した。
「・・・くれるのか?」
「そうよ、クォヴレー。受けとってくれる?」
「もちろんだ。ありがとうゼオラ。うれしい」
初めてのバレンタインというものを体験したクォヴレー。
人生で初めてもらったチョコがもう彼の中で家族のような存在になりつつあるゼオラからだと思うと
ちょっぴり嬉しくて頬はほんのり桜色に染まった。
そんなクォヴレーを見てゼオラもまた嬉しそうに 微笑を返す。
「オレにもくれんの?}
「あったり前でしょ!?貴方もクォヴレーも私の大切なパートナーであり家族なんだから!
(本当はアラドは本命なんだけどね・・・)」
「サァーンキュ」
2月14日夜・クォヴレーとアラドの部屋にて
「しっかしお前すごいチョコ貰ったな〜」
「そうか?アラドも似たようなものだろう?」
「オレのは義理だけだろ?お前のはなんか本命です!!ってのが多いじゃん!」
「本命とか義理とかオレにはよく分らないが・・・」
「(まぁそうだろうな・・・)」
「アラド?」
「んにゃ。まぁお前もそのうち判る様になるって・・・それよりコレはオレからな!」
アラドはクォヴレーに1枚の板チョコを渡した。
「・・・コレは?」
「チョコ」
「それくらい分る・・・どうしてオレに?オレは、男だぞ?」
「朝言ったろ?女の子が男の子にあげるのは日本独自だって。
オレもお前も日本人じゃないからいいんだよ。
なら恋人にチョコあげたいって思うのは普通だろ?
αナンバーズは日本人が多いからそんなのしか用意できなかったけど・・・受け取ってくれる?」
「こい、びと・・・?」
「あり?そう思ってんのはオレだけなの?クォヴレー?」
「あ、いや・・・」
「そーいや朝も好きな人ってとこで歯切れ悪かったよなぁ・・・」
「そんなことは・・・」
「じゃオレのこと好き?」
「・・・ああ」
「・・・チョコ、受けとってくれる?」
「もちろん・・・」
そこまで答えるとクォヴレーは悲しげな表情をした。
アラドのことは好きだ。恋人として。
今だに好きだとか恋人とか言う言葉はどこか恥ずかしくて態度がぎこちなくなってしまうが・・・
せっかくアラドは用意してくれたというのに・・・自分は・・・
「クォヴレー??」
「ありがとうアラド。でもオレは何も用意してないんだ・・・」
アラドはクォヴレーがした悲しげな表情の意味合いを理解する。
「良いんだって!知らなかったんだから!その代わりホワイトデーに何かしてくれよ」
「ほわいとでー??」
「・・・(やっぱ当然しらねーよな・・はは)後で教えるよ。それよりさ、
安物だけど誰のより先にオレからのチョコ食べてホシーな!」
「ああ。もちろんそのつもりだ」
クォヴレーは板チョコの包みをはがすと一欠けら口に運ぶ。
その様子をじっと見詰めるアラド・・・。
「おいしい。改めてありがとう、アラド」
「どういたしまして」
もう一欠けら口に入れようとしたとき、アラドの視線に気がついた。
・・・食べることが何よりも好きなアラド。
当然チョコも食べたいことだろう・・・。
「・・・食べたいのか?アラド」
「え!?いやそんな滅相もない!!自分であげたチョコを欲しいだなんて・・・」
「・・・・・」
クォヴレーはアラドから貰った板チョコを手にドアへと向かう。
「何処行くの?クォヴレー」
「いい案が浮かんだんだ。少し待っててくれ」
アラドが部屋でまつことおよそ10分・・・
クォヴレーが板チョコの代わりにマグカップを2つ持って帰ってきた。
「ほら、アラド。これならアラドのチョコを2人で楽しめるだろ?」
そう言ってクォヴレーがアラドに渡したのはホットチョコレート・・・。
「これ・・ホットチョコレート??」
「ああ、せっかくアラドに貰ったんだ。2人で味わいたいからな。全部使ってしまって悪かったが・・・」
「いや。そんなことないよ。サンキュー!じゃこれがクォヴレーからのバレンタインだな!!」
「・・・こんなものでいいのか?」
「もちろんホワイトデーもありでお願いしたいけど?」
「ああ。ほわいとでーとやらにはオレからアラドに贈る」
「じゃオレは何かアレンジ方法考えておかなくちゃな(・・・飴でどうアレンジしよう??)」
2人は微笑みながらホットチョコレートを口に運んだ・・・。
おちもへったくれもない、これが本当の「やおい」ですね。
裏はこの続きになる予定・・・まだUPしてません。製作中・・・2月14日までには!頑張ります。
どうして題がホットチョコレートなのか裏で分るはずです。
しかし表ヴァージョンは急いで書いたので駄作中の駄作・・・
そのうちこっそり修正するかも?
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