〜白い日の贈り物〜
〜クォヴレーサイド〜
「クォヴレー、おやつ食いに行こうぜ!」
「すまないアラド。今日もこの後用事があるんだ」
「え〜!!またぁ??お前ここんとこ毎日じゃん?」
「だからすまない・・・。とにかく今は急いでいるんだ。また後でな・・・」
最近は整備が終わるとオレはアラドの誘い(主に食事だが・・・たまに違う時もあるが)を
断っている。・・・正確には断らざるを得ない事情があるのだが・・・・。
オレはアラドをやり過ごすと、目的の場所へと向かった。
約束のあの人はもう準備をして待っていてくれた。
「遅れて申し訳ありません」
「いや、そんなには待っていないよ。では早速はじめようか?」
「ええ・・・」
オレはこれまで習ったとおりにクッキー作りを始める。
薄力粉、ベーキングパウダー、砂糖、無縁バター・・・・
オーブンを180℃に余熱をしておいて・・・
「しかし君の物覚えの速さには感心するよ」
「そうですか?普通だと思いますが・・・」
「感心すると言えば君のアイディアもかな」
「?」
「クッキーに飴とはね・・・」
「変なのですか?」
「いや、斬新でいいとか思うよ。どうやってクッキーの中に飴を入れるかは四苦八苦したがね・・・」
「レーツェルさんには感謝してます。忙しいのにオレなんかに付き合っていただいて・・・」
「いや、私にも覚えのある感情だ。今の君は見ていて微笑ましい・・・」
「え!?」
「初々しくて、ということだよ。君は・・・よっぽどその相手が好きなんだろうね」
「か、からかわないでください!!」
レーツェルさんにからかわれ真っ赤にながらも、オレは『よっぽどその相手が好き』
と言う言葉に反論できなかった。
それほどまでに、彼はもう自分の中で大きな存在、自分の一部となっているのかもしれない。
「明日は、頑張りなさい。」
「はい、有り難うございます」
オレは出来上がったそれを、包みレーツェルさんにお礼を言うとキッチンを後にした。
とりあえずこれは明日まで隠しておかなければ・・・何処がいいかな??
・・・アストラナガンが最適かな?
部屋に帰るとアラドはまだ起きていた。
「・・・アラド、まだ起きていたのか?先に寝ていていいと言っているだろう?」
「そうだけどさ、最近すれ違い多いじゃん?話す機会も少ないし・・・
せめて、おはようとおやすみの挨拶くらいはちゃんとしたいんだよ」
「そう言われれば・・・最近話す機会が少なかったな・・・。」
「そうだろ?お前おやつに誘っても『忙しい』とか言って付き合ってくんないし・・・
もうオレチョー寂しくて・・・・」
「悪い・・・。」
「お前・・最近何してるわけ?」
「・・・それは・・・」
「・・・それは?」
「まだ、言えない・・・」
「!何で?言えない何かやってんの?」
「アラド?何怒っているんだ?」
「別に・・・。クォヴレーは俺なんかと一緒にいなくても平気だってことがわかっただけ!」
「!!何だ?それは?オレがいつそんな事を言った!?」
「言ってないけど、最近いつもそっけないし・・・今だって言えないとか言うし・・・
そんな態度とられるとそうなのかな、と思っちまうんだよ!」
「・・・・」
「・・・・」
・・・オレはそんなにそっけなかっただろうか?
しかしだからといって・・・お前は子供か?アラド・・・
せっかくお前のために、これまで準備してきたと言うのに・・・
なんだか腹たつな・・・でも今口を開けば喧嘩にしかなりそうにない。
オレは沈黙を通すことにした・・・気まずい・・・
そんな時、堪りかねたのか、アラドが先に口を開いた。
「あ、の・・・クォヴレー・・・オレ・・・その」
「今日はもう何を話しても喧嘩にしかなりそうにないな・・・」
「あ、ああ・・・そう、だな」
「今日はもう休もう・・・」
「う、うん・・・」
「アラド・・・」
「何?」
「オレが・・・ここ最近何をやっていたか明日必ず話す・・・。」
「うん・・・」
「だからお互いに一晩頭を冷やそう」
「わかった・・・」
「・・・おやすみ、アラド」
「おやすみ」
アラドはそう言うと、オレの頬にキスをしてきた。
顔はまだ不機嫌そのものだが・・・
オレもまたアラドの頬にキスを返し休むことにした。
明日になればきっと仲直りできる・・・筈だ。
だって明日は『白い日』なのだから・・・
翌日、オレは何時もより少々早く起きて、アストラナガンに例の物をとりに行った。
帰りにゼオラの部屋へ立ち寄る。
彼女からもチョコを貰ったのでクッキーをお返しした。
たいそう喜んでくれたので心が温かくなった・・・のを感じる
次は・・・アラドだ・・・
機嫌が直っているといいが・・・
部屋に帰ればアラドはいつものごとく寝坊スレスレ・・・
オレはアラドの体をゆすり起した。
「・・・ド!アラド!」
「・・・ん〜・・・?」
「朝だ!寝坊する気か?起きろ!」
「いま、おきる〜」
アラドは眠たそうに両目を擦りながら体を起した。
その瞬間オレは自分でもビックリするくらいの笑顔で朝の挨拶をする。
あんな顔が出来るなんて本当に驚いた・・・
オレはいつも感情表現が・・・下手だから・・・
「おはよう。アラド」
アラドは何故かビックリしていた。
オレがこんな顔をするのはやはり・・・そんなに珍しいのだろうか?
「?アラド?どうした?」
「い・・・いや。おはよう・・・」
「フフ・・相変わらず朝に弱いな」
「・・・・すみません」
「アラド・・」
「ん〜?」
「コレ・・・」
「?何?」
「今日、今まで何をしていたか教えると言っただろう?」
「・・・ああ・・もういいよ・・・」
「え?」
「ちゃちゃっと別れ話切り出してくれ」
「??はぁ???別れ話?」
「お前最近オレにそっけなかったのは他に好きな奴が出来て・・・そいつと会ってて
オレのこと煩わしくなったんだろ?」
「???アラド??」
「気づいてやれなくてごめんな・・・」
バチン!!
オレはいつの間にかアラドの頬を張っていた。
アラドを殴ったのは、初めてかもしれない。
・・・わけの分らない事をわめくから・・・つい・・・
「目・・・覚めたか?」
「・・・初めから覚めてるよ・・・」
「そうか。では寝言は寝ながら言え!オレがいつ別れたいと言った?」
「・・・違うの?」
「当たり前だ!!」
「じゃあ!お前最近何やってたんだよ!?」
「・・・いいからその包み開けてみろ・・・それが答えだ」
「?」
怪訝そうな顔をしながら渋々といった感じで包みを開けていく・・・
オレは黙ってその様子を見守った。
一体どんな反応をするのだろうか??
「クォヴレー・・・何コレ?」
「何に見える?」
「え・・・とぉ・・・クッキー・・・かな?」
「そうだ・・・今日は・・・『白い日』だろう?」
「・・・白い日?」
「今日は3月14日だ」
「・・・3月・・14日??・・・!!ああ!!『ホワイトデー』か!?」
「そう・・その『ほわいとでー』とやらだ。アラドは『バレンタイン』の時
チョコをくれただろ?で、お返しは『ほわいとでー』にしてくれとも言った」
忘れてた、と言う顔をしている・・・
あれだけしつこく言ってきていたのに・・・・
流石はアラド・・・
「オレは菓子作りなどしたことなかったから・・・毎日レーツェルさんに習いに行っていたんだ」
「・・・それでここの所毎日忙しそうだったのか・・・ていうかコレ、クォヴレーの手作り!?」
「そうだ・・・練習の成果もあって上手く出来ていると思うのだが・・・」
なんだか機嫌も良くなったみたいだ。
フッとオレは意地悪がしてみたくなった。
「・・・で、アラド。別れ話が何だって?」
「え!?いやぁ〜・・・その・・・オレの早とちりでした・・・すみません」
「まぁ・・・オレの態度もよろしくなかったがな・・・だいたい別れるつもりだったら
おやすみのキスなどしないだろう?」
「確かに・・・で、あの・・コレ食べていい?」
「ああ。アラドのために作ったんだからな・・・」
アラドはは包みからクッキーを一つ取り出すと口に入れた。
「・・・・」
??無言だな??
失敗はしていないと思うが・・・口に合わなかったのだろうか?
「アラド?美味しくないのか?」
「い、いや・・・なんていうか・・・不思議な食感のクッキーだな・・・」
「ああ・・中に飴が入っているからな」
「飴!?」
「白い日には飴かクッキーを贈るのが一般的と言われたのでどうせなら両方がいいと思って
それでクッキーの中に飴を入れてみた」
「ふーん・・・」
「・・・不味いのか?」
「いや!美味しいよ!ただ飴が入っているクッキーなんて食べたことなかったからビックリしただけ」
「サンキューな!クォヴレー!」
「どういたしまして(////)」
お礼を言われると顔が火照ってくるのがわかる・・・
きっとオレは今真っ赤な顔をしているのだろう。
ゼオラの時とはまた違う感情が湧き上がってくる・・・心が熱くなるのがわかる。
「クォヴレー・・・ごめんな?オレ勝手に早とちりして・・・勘違いして・・・
お前にあたってさ・・・お前オレのために練習しててくれたってのに・・本当にゴメン!!」
「もういい・・・誤解と浮気の疑いは、はれたしな?」
意地悪く笑いながらオレは改めて『浮気』発言を責めて見る。
「う〜・・本当に申し訳ありません!」
「ブッ!アッハハハハハハ」
アラドが情けない声で謝るものだから
思わず噴出してしまった・・・
そんなオレをアラドはビックリしながら見つめてくる。
「・・・お前も大声出して笑うんだな」
「え?・・・本当だな・・・初めてかもしれない・・大声で笑うのは」
「うん。そうかもな・・・オレも初めて見たもん」
「きっと・・アラドと一緒にいるからだな・・・」
・・・なんだか恥ずかしい台詞を吐いた気がする・・・(////)
「クォヴレー・・・お願いがあるんだけど」
「お願い?」
「ちゅ〜してくんない?」
「え!?」
「やっぱホワイトデーはちゅ〜付が基本だろ?」
「・・・そうなのか?」
「そうそう!!」
「・・・嘘くさいぞ?アラド」
「・・・・ダメ?」
うそ臭い話だが・・・喧嘩の仲直りという事で・・・
オレからはそうそうしないしな・・・
たまには・・いいか。
オレはそっとアラドの唇に唇を寄せた・・・
たまらなく、恥ずかしい。
何度交わしてもなれない行為だ。
アラドもビックリ顔をしている。
「・・・これは・・仲直りの・・・キス、だ」
照れながらそう言うと、オレははもう一度キスした。
さっきとは違う・・・濃厚なキスを。
互いの唇がはなれ、キスを終えると・・・
オレ達はこれまでのすれ違いを埋めるように・・抱き合った。
いつまでも一緒にいられますように・・・と。
クォヴレーSIDEです。
もうWD終わってますが(笑)
・・・乙女になってませんか??クォヴレー君。
ちなみに2人は抱き合っただけでやってませんよ?
次はお花見の話しかなぁ・・・・
|