BABY!

〜BABYでお着物〜 「お・で・か・け〜♪」 右側にはイングラム左側にはキャリコ、 クォヴレーはご機嫌で街の歩行者通路をトテトテ走っていた。 (といってもイングラムとキャリコの半歩にも満たない足の開きなので  直ぐに追いつかれてしまうのだが) 「クォヴレー!転ぶんじゃないぞ?」 「はぁ〜い!」 数歩先で元気よく右手をあげ、幼いクォヴレーは返事をした。 そんなようすに声を揃えてイングラムとキャリコは笑うが・・・・ 「・・・何で貴様も付いてきたんだ?」 クォヴレーが背を向けて走り出すと直ぐに2人の顔から笑顔が消える。 そして恐ろしく冷たい声色で付いてきた理由を問うイングラム。 「俺だって貴様と仲良しこよしで買い物などに来たくはない!」 「では帰ればいいだろ?今すぐに!俺はとめない・・・ほら、帰るがいい」 シッシッと左手でハエを追い払うかのように邪魔扱いされ、 なんだか腹がたち始めてきたキャリコ。 「アインが一緒に行こう!と誘ってくれたんだ!帰るわけないだろ!?  アインと一緒にお買い物など早々できるものではないからな!  何故だかわかるか!?」 「なぜだ?」 シレッと言うイングラムに更に腹がたってしまうキャリコ。 「き・さ・ま・が!いつもいつもいつも(×100)!邪魔をするからだ!」 ガーと怒鳴ったらフフンと鼻で嘲笑らわれたので、 青筋を立てさらに怒鳴り散らしていく。 周りにいる通行人が興味身心に2人をチラチラみるが、 なにぶん2人して大男なものだから、 横目で見て通り過ぎていくだけであった。 へたに笑ったりして制裁を受けたら命はない、 と誰もがそう思ったのであろう。 2人が5分ほどいがみ合っていると急にズボンが引っ張られた。 「「ん?」」 なんだろう?と同時に足元を見ると、 心配そうな顔をした幼子が2人を真っ直ぐに見つめているではないか。 その顔に2人は心臓がキュン!となってしまう。 「「((か、可愛い〜!!))」」 「けんかは、めっ、なのー!!いけないのよ〜」 両腕を上げ喧嘩の制裁に入るクォヴレー3歳。 こんな小さな子に「喧嘩はいけないこと」と 教わるだなどと恥ずかしいことこの上ない。 気まずそうにお互いの顔を見合わせ、 苦笑しながら同時にクォヴレーの頭を撫でる。 「アイン、我々は喧嘩をしていたわけではないぞ?」 「そうだぞ、ただ言い合っていただけだ」 「????けんか、とちがうの??」 「そうだ」 「どうちがうの???」 「!?・・・どう?・・・そうだな・・・どうちがうんだ?イングラム?」 「!!なに!?(俺にふるというのか?キャリコ!)そうだな・・その・・・」 「?????」 大男2人は腕組しながら道の真ん中で考える。 ただでさえ図体がでかいのに道の真ん中で立ち止まられると迷惑この上ないが、 図体がでかいがために誰からも文句を言われないお得な男2人・・・。 「イング〜?キャリ〜?」 「・・・喧嘩は殴りあいのことだ!そうだな?キャリコ!?」 「!!ん?あ、ああ・・・!そうだな!  で、言い合いとは言葉のキャッチボールのことだ!」 「そうなの!?」 「「そうなんだ」」 もちろん嘘百パチである・・・ある、が、 これ以上うまい「言い訳」が見つからないので 二人は目で頷きあいそういう事にしてしまう。 ・・・・・なんとも酷い大人である。 「そうなのね!ヴレ、けんか、おもってどきどきだったよ!」 「はっはっはっ!クォヴレーは心配性だな!」 「そうだな・・・だがそこがまた可愛らしいが」 「ヴレはしんぱいしょー♪」 意味がわかっているのか、いないのか・・・ (おそらくわかっていないのだろうが) クォヴレーは『心配性』を繰り返しながら再び歩き始めた。 2人もそのあとに続き目的の店の前にたどり着いた。 「クォヴレー、ストップ!」 「う?」 「アイン、目的のお店はここだ」 「ほんと!わーい!ついたのねぇ〜♪」 万歳すると同時に勢いよくお店の扉を押すクォヴレー。 本当は3歳児の力で開く筈はないのだが、 3人の来訪に気がついた店の従業員がどうやら中から開けてくれたらしい。 「いらっしゃいませ!」 「いらっしゃいましたのよ〜」 「!まぁ!フフフ・・いらっしゃいませ!」 従業員は自分の言葉を繰り返すクォヴレーに笑顔を向けると、 後の保護者に向って改めて挨拶をした。 「いらっしゃませ、本日はどのようなものをお探しで御座いますか?」 「この子に合う着物を・・・」 「まぁ!そうですか・・・・」 「我々は着物について詳しくないので選んでいただきたいのですが・・・」 「かしこまりました・・・そうですねぇ・・・」 物珍しいのか、お店の中をチョロチョロ動くクォヴレー。 従業員は目を細めてクォヴレーを見ながら・・・ 「・・・肌がお白いから白はくすんでしまいそうですわねぇ・・・。  赤・・・ピンク・・・紫・・・」 店内に飾ってある着物のになる前の布を見ながら思案する従業員。 その時キャリコは妙な違和感を感じた。 「・・・なぁ、イングラム」 「なんだ?」 「・・・羽織に赤やピンクなどあったか?」 「・・・・袴にあるのだからあるのではないのか?」 「・・・・なるほど・・・だが見たことない気がするが?」 「・・・・だがあの従業員はいっているのだしあるんだろ・・・多分」 「イングラム、俺は思うのだが・・・」 「・・・言うな、キャリコ・・・俺もそう思ったところだ」 ・・・2人は一体何を思ったのか・・・? 数秒後2人の思っていたことは現実となっった。 「やはり肌がお白くて御髪が銀色ですから黒が似合うかもしれませんわね!  この可愛いお嬢ちゃんには!」 「「((やはり女の子と勘違いしていたか・・))」」 黒い布地を手に誇らしげに言い放つ従業員。 性別の真実を伝えるべきか否か・・・ 2人は悩んだがやはり真実は伝えるべきだろう、と 2人顔を見合わせ頷いたその時・・・・ 「イング〜、キャリ〜」 両手を広げながら探索から戻ってくるクォヴレー。 そんなクォヴレーを従業員はひっ捕まえて、 布地をクォヴレーに押し当てた。 「いやぁぁん!イングー、キャリー!!」 二人も元へ帰ろうとしたときに捕まってしまったので、 クォヴレーはジタバタする。 だが従業員はそんなことにはお構いなしで、 布をあて二人に満面の笑みで伺いを立てた。 「如何でございますか?」 2人はやや困った顔でクォヴレー見る。 なるほど・・・確かに白い肌と銀の髪には黒い色が良く這える・・・。 だがクォヴレーは可愛く見えても男の子・・・。 従業員が手に取っているのは女の子用の着物・・・。 どうしたものだろうか・・・・? だが女の子の着物を着せたら クォヴレーが大きくなった時ひどく傷つくのではないだろうか? やはりここは真実を告げるべきであろう・・・。 そう思い、イングラムは重たい口を開いた。 「・・・確かに似合うには似合うのですが・・・」 「あら?お気に召しません??」 「いえ、そうではなく・・・実はクォヴレーは・・・」 「??」 「・・・アインは・・男の子です」 「!!??」 目をパチクリさせて大男2人とクォヴレーを好交互に見る従業員。 だがクォヴレーの可愛らしい容姿が男の子ということを信じさせないのか、 「ウフフフフ、イヤですわ、お客様!何処からどう見ても女・・」 「「男です!」」 今度は声を揃えて言われたので、 流石に従業員もたら〜・・と汗を流した。 そしてすかさずクォヴレーのズボンに手を伸ばし・・・ 「・・・・ある」 ボソッ・・・と、そう一言呟いた。 クォヴレーのズボンに手を伸ばし、その中を拝借してしまった従業員。 ズボンとパンツの下に確かにソレは付いていた。 「ヴレ、まだおしっこでないよ〜??」 こんなに可愛い顔をしているのに『付いている』ことに 驚愕してしばらく固まってしまった従業員。 しかしこのあと従業員は人生で最も恐ろしい体験をする事になる。 クォヴレーのズボンの中身を見ながら固まる従業員。 だが背後から不穏な気配が・・・・。 「・・・・?」 「きーさーまー・・・」 「いつまでクォヴレーのズボンの中を見ている気だ?ん?」 「・・・!?いえ・・あの・・その・・」 「イングラム・・・どうやらこの人間は命が惜しくないらしい」 「そのようだな・・・くくくく」 「ひ、ひぇぇぇぇ!!おゆるしをーー!!」 「許せ・・・?痴漢は犯罪だ・・・そうだな?キャリコ」 「ああ、そうだな・・・犯罪者は命を持って償わなければ・・・・」 その後そのお店は『犯罪者がいる』と言う噂がたち閉店に追い込まれたそうだ・・。
有り難うございました。 はてさて・・・クォヴレーは無事に着物を着ることが出来るのか!? それはまた次のお話・・・・かな?