〜千歳さんと金太郎君!〜
「イーンーグーラームーーー!!」
その男は玄関を開けるなり、ズカズカと団欒の間へ入ってきた。
小脇には銀の髪の毛をした幼子を抱えている。
イングラムは、書類から目をあげると呆れたように、
「貴様・・・もう帰ってきたのか?自分からクォヴレーを連れ出しておいて・・」
キャリコ・マクレディはその日、溺愛している「親戚」の赤ん坊に会うため、
大嫌いなイングラムの住んでいるプリスケン家へ足を運んできた。
そして強引にクォヴレーを連れ出すと公園まで遊びに連れて行ったのである。
「それどころではない!イングラム・・・貴様・・・」
ワナワナ・・・とこぶしを握りながら「嫌い」光線を送る。
イングラムはそんな攻撃は痛くも痒くもないというように、
再び書類に目を落とした。
「そんな紙きれに目を通している場合ではないぞ!」
イングラムに詰め寄り、書類を叩き落す。
「!?何をする!」
大切な書類を叩き落されイングラムは椅子から立ち上がりキャリコに詰め寄る。
「・・・イングラム・・・貴様」
「何だ!?」
「アインに一体全体どういった教育をしているのだ!?」
「・・・・・・・?」
「・・・・・・・・」
何を言っているのか理解不可能なイングラムは、
パチクリと瞬きをしながらキャリコを見つめた。
「・・・キャリコ・・・何を意味不明なことを言っている?
ついにショタコン菌が脳までまわって狂ったのか?」
可哀相に・・・と心底同情する・・という風にキャリコを見つめた。
「貴様こそ何を言っている??」
理解不能な言葉にキャリコも目をパチクリさせながらイングラムを見つめ返した。
「・・・ふぅ・・・まぁいい・・・で、どんな教育とは?
何故お前はそんなことを言い出したんだ?」
「・・・・アインが」
「クォヴレーが?」
「はぁ〜い!」
2人の口から自分の名前が出てきたので、
キャリコの小脇に抱えられているクォヴレー(アイン)は元気よく返事をした。
微笑みながらクォヴレーの頭を撫でるイングラム。
するとクォヴレーは幸せそうな笑顔で絶叫した。
「きゃ〜!!ナデナデしてもらったの!」
ソファーの上にクォヴレーを下ろすキャリコ。
下ろされた瞬間、女中が持ってきてくれたジュースに手を伸ばすが、
「クォヴレー!お外から帰ったら手洗いうがい!やったのか!?」
「・・・まだなの」
「ならジュースを飲んではダメだろ!?洗ってきなさい!」
「・・・はぁい」
躾に厳しいイングラムに叱責され、
叱られた子犬のようにトボトボと歩きながら手洗い所へ向うクォヴレー。
イングラムが目配せすると女中は一礼し、
クォヴレーの後についていく。
「・・・イングラム、話を元に戻すぞ?」
「あぁ・・・」
「アイン、公園の砂場でなんと言ったと思う?」
「砂場?」
「俺はアインと砂場で『山』を作って遊んでいたんだ」
「・・・ほぉ?」
「・・・今はそんな事はどうでもいいだろ!?で、アインはなんといったと思う?」
「・・・『キャリはやっぱりへんたいさんね〜』・・・か?」
「ちがーーう!!」
クォヴレーの言葉使いを真似、嘲笑しながら答えると、
顔を真っ赤にしてキャリコは否定する。
「『ヴレ、ちとせさんたべたいの〜』と言ったんだ!」
「千歳さん!?」
「そうだ!千歳さんだ!」
2人の間に沈黙の時が流れる・・・
「・・・・・」
「・・・・・」
沈黙の時が流れる・・・・。
そして・・・・
「・・・・千歳さんとは誰だ?キャリコ?」
「貴様が知らないのに俺が知るわけなかろう!」
「最近の子は、好きな子にいきなり『食べたいの!』とか言うのか?キャリコ」
「・・・・さぁ、な。最近の子供は何でもかんでも早熟だからな・・・
そうなのかも知れんな・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
2人の間に沈黙の時が流れる・・・・。
「それからな、この話はまだ続くのだ」
「なに・・・!?」
「『ヴレ、ちとせさんがだめなら、きんたろうくんでもいいの!』と言っていた」
「・・・金太郎・・君???だと・・・誰だ???」
「・・・金太郎も知らないのか?」
「・・・・あぁ」
うーん・・・うーん・・・と顎に手をあて2人は考える。
そしてクォヴレーが部屋に戻ってきた。
「ただいまなの〜!!ジュースのむの〜!!」
ボフンッとソファーの上で正座しながら頬を綻ばせジュースを飲み始める。
「おいしいの〜!きょうはぶどうさんね!」
美味しそうにジュースを飲み続けるクォヴレーの左右に腰を下ろすと、
2人は交互に疑問を質問した。
「アイン・・」
「う?」
「・・・千歳さんとは誰んだ?」
「ちとせさんはとってもあまいのよ!」
「甘い!??」
「あまいの〜!」
クォヴレーの頭上でヒソヒソ話す男2人。
「・・・おい・・甘いそうだぞ?」
「あぁ・・・まさかとは思うがもうキス済みか?」
「イング〜?」
ヒソヒソ話をしていると、ツンツンと服を引っ張ってくるクォヴレー。
そして首をかしげながら、
「この、ちょこたべていい?」
「あ、あぁ・・ほどほどにな?」
「はぁ〜い!」
チョコを口の中に入れ幸せそうに微笑むクォヴレーに今度はイングラムが質問した。
「クォヴレー・・」
「う?」
「金太郎君とは誰のことだ?」
「きんたろうくんもあまいのよ!」
「甘い!?」
再びクォヴレーの頭上でヒソヒソ話す男2人。
「・・・おい・・甘いそうだぞ?」
「あぁ・・・まさかとは思うが金太郎とも、もうキス済みか?」
もう一個、チョコに手を伸ばしながらクォヴレーは、
「きんたろうくんはね〜、きってもきってもでてくるのよ?」
「!?切っても・・・」
「切っても・・・だと???」
クォヴレーの頭上でヒソヒソ話す男2人。
「・・・おい、まさか・・・」
「あぁ・・・きっとそうだろう」
「ちとせさんも、きんたろうくんも、
とってもおいしい『あめ』さんよ!」
「「((やはりそうだったか・・・))」」
苦笑いをしながら、
ジュースを片手にチョコを食べるクォヴレーを微笑みながら見守る二人。
自分達の早とちりに少しだけ顔を赤らめていたそうだ・・・・。
〜余談〜
「・・・七五三でもやらせるか?」
「・・・アインは3歳だぞ?」
「それが何か?3歳なら七五三の時期じゃないか」
「・・・アインは可愛らしいが男の子だぞ?」
「・・・知っている!」
「・・・男は5歳の時にだけやるんだぞ??」
「!?・・・そう、なのか??」
「・・・知らなかったのか?」
「・・・・あぁ」
「・・まぁ、いいのではないのか?アインなら女の子でも通じるだろうし
(それにしてもコイツにも知らないことがあったんだな)」
「・・・そうだな・・・。
(まさかキャリコに諭される日がくるとは・・・ちょっと悔しい)」
有り難うございました。
次は七五三話かもしれないですよ!
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