〜イングラムの愛〜
長い口付けを終わらせイングラムはクォヴレーを強く抱きしめる。
クォヴレーの耳には直に彼の心音が伝わってきてなんだか安心した。
「イングラム・・・」
「ん?」
「彼女・・エクセレンさん・・どうして家に来ていたんだ?」
「・・・ああ・・・それはな、お前の写真を取りにきたんだ」
「オレの写真??」
「パスポートに使う写真だ」
「パスポート??」
「彼女、自己紹介したとき何と言っていた?」
「え?確か・・『軍では保養施設や旅行の申し込み受付もしている』?」
「・・・お前が高等部に進んだお祝いに・・・
これまでどこにも連れて行ってあげれなかったし・・・・
南の島辺りに旅行に行こうかと思ったんだ」
「南の島!?・・・ヴィレッタがいっていたのはまさか・・」
「そう、このことだ・・まだ言っていないのに焦った。
・・・最近俺、帰り遅かっただろ?」
「・・・ああ」
「連続休暇をとるために仕事を片付けていたんだ・・・。
カフェで彼女と話していたのもその旅行の件でだ・・・
彼女は人をからかうのが好きでな・・・まいった」
「そうだったんだ・・・」
「他には?」
「え?」
「他には聞きたいことはないのか?」
「・・・気まずかったのに旅行に行く気だったのか??」
「・・・旅先で修復するつもりだったんだ・・・
無理かもしれないという不安はあったが・・・あとは?」
「・・・もう、ない・・・イングラム・・ごめんなさい」
「何故謝る?謝るのは強引に身体を開いた俺だろ?」
「・・・でも勘違いして・・イングラム・・怒らせた」
「いや、俺の態度も悪かったからな・・・すまなかった・・本当に」
「イングラム」
「・・・18まで・・待つつもりだったんだ」
「・・・え??」
「いや、なんでもない・・下に行こう。ヴィレッタたちが待っている」
「・・・うん」
2人は立ち上がると手を繋ぎ下へ歩いていく。
服が汚れてしまったためイングラムのブカブカの上着を着ていたが
イングラムの臭いのするその上着にクォヴレーは満足だった。
「クォヴレー、災難だったわね」
「ヴィレッタ・・ありがとう助けてくれて」
「いいえ、無事でよかったわ・・・あの男はもうエクセレン少尉たちが連れて行ったから」
「・・・・そうか」
「ええ、で悪いんだけどイングラム、クォヴレー」
「貴方達にも証言してもらいたいらしいから明日調書を取りたいそうよ。
旅行の出発は明後日でしょ?いいかしら??」
「ああ、かまわん・・その前にクォヴレーにシャワーと着替えを・・・」
「了解よ」
2人の会話が終わったのを見届けるとクォヴレーは聞き忘れた疑問を口にする。
「イングラム」
「ん?」
「ここ・・オレの・・生家って本当か?」
「・・・ああ・・覚えていたのか?」
フルフルと頭を振るクォヴレー。
「あの人が言っていた・・・」
「・・・そうか」
「・・・かわいそうな人・・・ずっとパパとママの幻影を追い続けていたんだ」
「そうだな・・・彼はある組織の重要人物だし
これからきびしい尋問が待っていることだろう・・・」
「手を伸ばせば幸せなんてすぐ手に入るはずなのに・・・
あの人はずっと空回りの人生だったんだ・・・」
「そうね・・・生きるってそれくらい難しくもあり簡単なことなのかもしれないわ。
結局は自分の心次第なんでしょうけど・・・ところでクォヴレー」
「なんだ??」
「貴方、ご両親のことパパ、ママと呼ぶのね・・(可愛らしくていいけど)」
「?変か??」
「クォヴレーは小さい時に死に別れたからな、そのせいだろう」
「そういうもの?」
「そういうものだ・・別にかまわんだろ?似合っているしな」
「まぁ、ね」
2人は微笑しながらクォヴレーを見つめた。
クォヴレーもそんな2人に微笑み返すと、
「早く帰ろう?気持ち悪いからシャワー浴びたい!!」
「そうね・・私、車を玄関まで持ってくるから先に行くわ」
「ああ、頼む」
走っていくヴィレッタを見届けながら2人もゆっくりと歩き出す。
クォヴレーはイングラムの前に立ちはだかりニッコリ微笑むと、
「イングラム、もう閉じ込めないよな?」
「・・!あ、・・ああ」
「・・・痛いこともしない??」
「!!・・それは・・・」
「イングラム??」
「・・・ああ・・・しばらくは・・・しない・・・と思う」
「え??」
曖昧に微笑むとイングラムはクォヴレーを抱き上げた。
「!!わぁぁぁ」
「痛いことはしない・・・約束だ・・・気持ちいいことはするが・・」
「???どういう意味・・んっんん〜」
唇を塞ぎその話題から話を逸らすイングラム。
すれ違っていた2人の時間は再び同じ時を刻み始めた・・・・。
ありがとうございました。
最後長くなりましたが一応終了です。
あと、イングラムの心情Aと
番外編(旅行に行きます)のラブラブな2人で終了です
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