〜防御本能〜
「はぁ〜・・・まだ4月春だってのに暑いな〜・・」
今まで扱かれていたのか・・・、
はたまた先日の戦闘で期待を大幅に損傷した為、
まだまだメンテに時間がかかり手伝わされていたのか・・・、
アラドは手で自分を扇いでぼやきながら食堂に入ってきた。
「アラド、お茶でいい?」
するとすかさず彼のパートナーであるゼオラがそう聞いた。
どうやらアラドのために飲み物を取りに行ってくれるようである。
アラドはしょんぼりしていた顔をパッと輝かせ、
「オレ、コーラ!」
と頼むのだった。
一瞬ゼオラは難しい顔をしたが、疲れたときには炭酸が一番、
と、アラドが縋るような目で頼んでくるので渋々それを取りに行ってくれたという。
食堂の机にベターと伏せをしてゼオラを待つアラド。
そこへもう一人のチームメイトがやってきた。
「アラド、何をしているんだ?」
マグカップを片手に立っていたのはクォヴレーで、
アラドはそんなクォヴレーにウゲッという顔をして見せた。
当然のことながらそんなアラドの態度にクォヴレーは少しだけ表情を曇らせる。
「何故そんな顔をする・・・?」
「えー・・だってお前さぁ・・・」
まるで信じられないものを見るかのようにアラドはマジマジとクォヴレーの手元を見ていた。
そしてもう一度ウゲッという顔をすると、
「やっぱ信じらんね〜」
と、頭を左右に振りながらビシッとクォヴレーを指差した。
「コラッ!」
「でっ!!」
けれどその途端に頭上にとんでもない痛みを感じ目に涙を浮かべるハメとなった。
コーラを取りに行ってくれていたゼオラが戻ってきたようで、
アラドが人(クォヴレー)を指差していたので、
行儀が悪い、と嗜めたようだ。
「いってぇなぁ〜」
「痛いじゃないわよ!人を指差しちゃダメでしょ!」
「・・だってよ〜」
コーラを受け取りながらしょんぼりしている(ように見える)クォヴレーが気になり、
ストローに口つけながらアラドは話し始めた。
どうやら彼が持っているマグカップからは湯気が出ていて、
なんだか見ているだけで暑くなってしまう、というのが理由らしい。
別にクォヴレーが嫌いで、ウゲッ、と言ったわけではない、とアラドは説明をした。
アラドの説明を受けてみればゼオラはなるほど、と思った。
確かに今日は気温28度と夏日であるのにもかかわらず、
クォヴレーは温かい飲み物を選択している。
いや、暑い日に温かいものを飲む人間は沢山いるだろうが、
自分たちのような子供は熱い時には、
冷たいものに走るのが普通のような気がするからおかしいのかもしれない。
・・・それに・・・、
「クォヴレーってさ、寒がりなわけ??」
アラドはまだ信じられないのか、クォヴレーのマグカップを睨みながら聞いた。
けれどクォヴレーは首を横に振ってアラドの隣に腰を落ち着け、
マグカップをフーフーと冷まし始めた。
「別に寒がり・・・ではないと思う。暑がりでもないが」
「んじゃ、なんで暑い日に熱いの飲むんだ??」
「・・・・・何でといわれても」
そんなこと当然ながら今まで考えたこともないので答えにつまってしまう。
するとその時、何かを思ったのか今度はゼオラが首を傾げて聞いてきた。
「そういえばクォヴレーっていつも長袖よね?」
「確かにそうかも!」
アラドもそれに同意した。
同質であるアラドはクォヴレーの部屋ぎもよく目にするのだろう。
思い起してみればクォヴレーはパジャマも部屋着も、
その他諸々に着る服も全て袖があるものだ。
「お前、やっぱ寒がりなんじゃん?」
「・・・・そんなことはない」
「でも洋服も長袖だし、今も熱いの飲んでいるじゃない。
・・・・・ひょっとしてお腹が弱いとか??」
「・・・これまでお腹を下したことはない」
「ふぅん・・・?じゃ、なんでなんだ??」
「・・・・・・」
まるで天然記念物でも見るかのような目で二人に見つめられクォヴレーは困ってしまう。
なぜならクォヴレー自身にも理由が分からないのだ。
ただ、本能が半袖や短パンを着ることを頑なに拒否をする。
冷たい飲み物を飲もうとすると何故か本能がそれを否定する。
けれどクォヴレーには理由が分からない。
「オレにもわからないんだ。
ただ・・なんとなく飲み物は温かいものがいいし、
服は袖のあるものが落ち着く・・・どうしてだかわからないが」
フーフーとクォヴレーは今だにマグカップの中身を冷ましている。
もう湯気はたっていないし、十分冷めていると思うのだがクォヴレーは冷ましている。
「「(そんなに冷ますなら冷たいの飲めばいいのに)」」
と、二人が思ったのは言うまでもない。
そして時はクォヴレーが記憶を失くす前までに遡る。
「アーイン〜???」
聞こえてきたその声にゾッとせずにはいられない。
アインはキョロキョロと辺りを見渡し、
自分を隠せる何かを探し始めた。
「(あれだ!)」
そしてフと目にとまったカーテンを強引に引き剥がし、
むき出しの手足をそれで隠すのだった。
「フ、フ、フ・・・、アイン、ここか?」
カーテンで全身を覆い隠したその時、不穏な声の主に見つかってしまう。
アインは青い顔で一歩、二歩、と壁に後去る。
不穏な声の主・キャリコは仮面から見えている口元をいやらしく歪ませ、
手をにょきにょき動かしながら一歩、二歩とアインへと近寄ってきた。
「アイン、ダメではないか」
「・・・・・っ、ダメ・・・って?」
「カーテンを勝手に外してはいかんだろう?・・ん?」
にょきにょき動いていた手がガバッとカーテンの裾を掴み、
アインをクルクル回しながらカーテンを奪い去ってしまう。
「フフフ」
カーテンというベールがなくなればアインは細い両手足を外界に晒すこととなる。
バルシェムの中で唯一「子供」であるアインは何故かいつも半袖・短パンだ。
みんなと同じように長袖が着たいのに、
「子供は風の子」とわけの分からない理由を元に、
アインはいつもいつも両手・両足を惜しげもなく晒している。
・・・いや、アインだって害がなければ別に半袖・短パンでもかまわないのだ。
だがアインはいつもいつもこの格好のせいで窮地に立たされている。
アインから奪い取ったカーテンを床に放り投げると、
キャリコは再び指をにょきにょき動かして近づき、
逃げるアインの細腕をつかまえるのだった。
「ひっ」
「ああ・・アイン・・・このスベスベの足・・・」
キャリコはアインを捕まえるとそのまま足元に跪いた。
そして徐に仮面を脱ぐと、むき出しの腿に頬を摺り寄せてベロリと舐め始める。
「・・っ、・・・!!」
ゾゾゾゾゾ、とアインの全身には一瞬で寒疣が出来ていく。
「ああ・・アイン・・・なんて可愛いんだ」
膝を舐め内腿を何度も唇で啄ばむと、
キャリコの右手は半袖の袖の部分から手を突っ込み、上半身を撫で始めた。
「・・・アイン」
「・・・ぅ・・・く・・・」
アインは胸の飾りを捏ね回され口を薄く開けて小さく喘いだ。
感じたくないのに熱が上がり、その熱が下半身へ集中していく。
「んん?・・・熱くなってきたか?」
耳朶を甘噛みしつつ、左手を短パンの隙間から忍び込ませ、
アインの熱くなり始めているソレを緩く握り締めた。
「・・・んんっ」
「先が濡れているぞ・・・?」
「・・・ゃ・・・っ」
性器を何度か軽く擦り、そのまま今度は後の窄まりへ指を移動させていく。
「ココもヒクヒクしている・・・」
「・・・言う・・・な・・・っ・・」
「すぐに満足させてやろう・・・フフフフ」
耳元で笑いながらアインの短パンを一気に膝まで引き下ろす。
そして自らもベルトを外し、ジッパーを下ろして猛っている自身をアインの窄まりにあてがった。
「・・・さぁ・・・、いくぞ」
グッと犯される気配を感じ、ピリッとした痛みが走る。
全く解されていないのに受け入れるのは無理だ、と叫ぶ間もなく、
アインは一気に突き上げられた。
「あーーー!」
「アイン・・・、く・・・アイン・・・相変らず・・よく絞まる・・」
「あっ・・あ、・・・ん・・・っ・・」
何度も何度も内壁を擦られ、ドクンと熱を開放すれば、
身体の奥でも熱が弾けるのを感じた。
けれど中に居座っている雄は衰えることを知らないのか、
熱がはじけた後も緩々と動いては、ますます硬さを帯びていくのだった。
「ああ・・やはり半袖・短パンは堪らんな・・・。
むき出しの白い手足が俺を本能を呼び覚ます。
・・・俺の欲情を面白いくらいに煽ってくれる・・・」
「・・キャ・・キャリコ・・・も・・・抜いて・・・」
「抜け?・・・バカを言うな。俺をこんなに煽っておいて・・・。
フフ・・・お前だって腰が揺れているではないか・・・、
さぁ・・・もう一度だ」
「・・・ひっ・・・ひ、ぁぁぁぁぁっ」
逞しい雄に責められながらアインはだからこの格好は嫌なんだ、と心で叫ばずにはいられない。
ある時、服がなくて半袖・短パンを着たのが運の尽きだった。
その姿を見咎めたキャリコが一瞬で獣に変わり、
獰猛な目つきで喰いかかってきたのだから。
・・・あの時からアインの試練は始まったのだ。
「・・・・ふぅ」
アラドは整備の人から呼び出しがかかり、
二人べやっであるその部屋にはクォヴレーしかいなかった。
本を読むも疲れたので休憩しようと紅茶を入れて一息ついていたら、
急にその不穏な気配は近づいてきた。
「・・・フ、フ、フ、久しぶりだな、アイン」
「・・・・・・・」
クォヴレーは紅茶カップを持ったまま数秒固まってしまった。
ここの警備はなぜこうも簡単に毎度破られてしまうのか不思議でならない。
仮面の男・キャリコはもう幾度もこうして忍び込んできているのだから。
「お前、何をしにきたんだ?」
「フフフ・・・ただ単に遊びにきただけだ」
「・・・・(ゴラー・ゴレム隊は意外と暇なのか?)」
キャリコは我が物顔でアラドの椅子にドカッと座ると、
顎をしゃくりあげて、
「俺にも御茶!」
と、当然のように言ってのけた。
「図々しいな、相変らず」
だがそんなやり取りは慣れっこになりつつあるので、
クォヴレーは黙ってキャリコの分の紅茶を入れるのだった。
そして二人してフーフー、と熱を冷まし始める。
しばらくの間、二人のフーフーという音だけがしていたが、
何かを思い出したのか急にキャリコがクスッと笑ったので、
クォヴレーは怪訝そうに紅茶から視線をキャリコへ移した。
「なんだ?急に笑って・・・気持ち悪い」
「気持ちが悪いとは失礼な奴だな」
「事実だから仕方ないだろ・・・、で?」
「ん?」
「何で笑ったんだ?」
「・・・・・ああ」
フッとキャリコは口端を歪めて天井を見上げた。
仮面で見えはしないが何故かその表情は少し淋しげだ。
「思い出しただけだ・・・、
あの時はこうしてよくお前の飲み物を冷ましてやっていたな、と」
「・・・・オレの?」
『・・・・咽が痛いし乾いた』
『よく鳴いていたからな・・・これでも飲め』
『・・・お前のせいだ!・・・・これはありがたく貰うが・・・キャリコ?』
『フーフー・・・』
『何をしているんだ?』
『・・・熱いから冷ましている・・・フーフー』
『そんなに熱いのか?』
『ああ・・・どれ、こんなものか?一口・・・・熱っ』
『!!大丈夫か???』
『問題ない・・・まだ熱いな・・・』
『別に冷たい飲み物でもかまわないぞ』
『・・・激しい運動の後に冷たいものは身体によくない。
だから熱い・・・というか温いのでがまんしろ』
『・・・・・ふーん?温いのはいいのか?』
『熱くても平気だが・・・俺が苦手なんだ』
『!!』
『・・・フーフー・・・こんなものか・・・。
ん?アイン、何をにやけている?』
『別に・・・』
『別に、という顔ではないが・・・ん・・んん??』
『んっ・・ん・・・』
『・・・っ、・・・珍しいなお前からキスしてくるとは』
『そういう気分だったんだ』
『この天邪鬼が』
「キャリコ?」
急に黙りこんでしまったのでクォヴレーは立ち上がって仮面の男を覗き込んだ。
「どうかしたのか?」
「・・・・・、いや」
物思いにふけっていたキャリコは口元に笑顔を浮かべて首を振った。
「(考えてみれば俺が苦手でもアインは熱いのが飲めたかもしれんのにな・・だが)」
先ほど『アイン』は熱い飲み物を自分と同じように冷ましていた。
「(やはりアインも猫舌なのだろうか・・・?)」
「キャリコ?どう・・・!!?」
その時、クォヴレーは急に腕を引っ張られ顎を掴まれたかと思うと、
気づいたときには野性的なキスで唇を塞がれていた。
「んっ・・・ん・・・ん〜〜!!」
激しく動き回る舌に思考が追いつかない。
好き勝手に口内を犯してきたものは、
キスの激しさに息が苦しくなり限界になり始めたときだった。
「・・・ぷはぁ・・・はぁ・・はぁ・・・」
キャリコは唇を離すと、ドンッとクォヴレーの身体を押し、床に尻餅をつかせる。
「うわぁ!!」
あっけにとられているクォヴレーを見下ろしペロッと唇を舐めると、
「またな」
と言ってクルリと背を向け出て行こうとする。
「待て!」
「・・・・・・」
呼び止める声に振り向くと口を拭い、真っ赤な顔の『アイン』が叫んだ。
「『また』なんてあるか!二度と来るな!!唇ドロボー!!」
「さて、どうかな?・・・『また』を決めるのは俺だ。
そして俺には『また』がある。
だから『またな』、だ」
「!!」
プシュー・・・と扉が閉まると一貫して部屋には静けさが戻る。
けれどクォヴレーの思考はその静けさとは反対に混乱し、燃えていた。
「(一体、なんなんだアイツは!?
オレが温い飲み物を好きな理由は多分アイツの影響なんだろうが・・・、
腹が立つな!!キスをするだけして帰るなんて!!何がしたかったんだ??)」
クォヴレーのモヤモヤは始まったばかりである。
ありがとうございました。
キャリヴレっていいですよね〜・・やっぱ★
ヘタレだけどヘタレじゃないキャリコがいいと思います!
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