ざ・むーびぃ〜
 


耳障りな音に目を覚ますと見ていたはずの映画は既に終わっており、
テレビの粗目画面だけが部屋の明かりとなっていた。
窓が開いていない密室にはなんともいえない空気が漂っている。
普段は『彼』が換気をしておいてくれるのでそんなに気にならなかったが、
今夜は彼もお疲れだったのか、換気することなく眠りについたようだ。
腰にまわった腕の重さに小さくため息をつきつつ、
クォヴレーは聞こえるか聞こえないかの音量で呟いた。

「・・・また見れなかった。」









〜薄暗い部屋の怪奇〜









仲間内で流行っている映画をレンタルショップで借りてきたクォヴレーは、
夕飯を終え、シャワーを終えるとイングラムを誘って早速リビングで見始めるのだった。
ソファーベッドに身体を預けクォヴレーはテレビの画面に喰いいるように見つめていた。
けれど映画が始まって10分ほど経ったととき、
クォヴレーは只ならぬ異変に気がつく。
隣に座っているイングラムの手が足のきわどい位置を撫で始めているのだ。
この時クォヴレーは己の過ちに遅ればせながら気がつく。
もう何回も同じ目にあっているというのに、
素直なクォヴレーは毎回騙されてしまうのだ。

夕食を終え、先にシャワーを済まそうと言ったイングラム。
映画は暗闇が迫力が増す、と電気を消したイングラム。
そしてわざわざ用意されたソファーベッド・・・。

クォヴレーは恐る恐る横に座る彼へ視線を移してみた。
するとニッコリ微笑むイングラムが、
ギュムッと急所を掴み、押し倒してきたのだった。





結局楽しみにしていた映画は最初の冒頭しか鑑賞できず、
クォヴレーはイングラムの腕の中深いため息をつくしかなかったのだった。


















数日後。









久々に休みが重なったのでクォヴレーは珍しく自分からデートに誘ってみた。
場所は映画館である。
家で見るといつもいつもエッチにうって変わってしまうので、
クォヴレーなりに考えてみた結論がどうやらこれのようだ。
公共の面前では流石のイングラムもエッチなことを仕掛けてこない、と。
イングラムは少しの間、何かを考えていたようだが、
直ぐに快く頷き返すと、そそくさと支度をし始めた。
いつもなら、休みが同じ=一日中ベッドの中、
が普通であるので、嫌がられると覚悟していただけに、
あっさり返事が来たことに半ばあっけに摂られつつ、
久々の健全なデートにクォヴレーは心を弾ませながら自分も支度に取りかかる。



・・・・後でイングラムが黒く微笑んだことに気がつかなかったのは言うまでもない。
























「・・・・・ぁっ・・・・い・・・」


薄暗い部屋の中、クォヴレーは窓ガラスに手をつき、身を震わせていた。
窓ガラスの向こうでは映画も架橋に入り始めているようだ。
すれ違いの末にようやく結ばれようとしている男女。
外国映画によくありがちなラブロマンスのシーンである。

そしてこの薄暗い部屋に切ない喘ぎ声が二つほど響いていた。
一つは窓ガラスの向こうの女優のものだ。
そしてもう一つは・・・・・。

「ア、アアア、・・・・・ひぁっ!!」

バンッと窓ガラスに思いきり手をつき、
クォヴレーは快楽に身悶えていた。
窓ガラスには白濁したものがこびりついていて、
映画の人物がぼやけて移って見える。
けれどそんなことはもうどうでもよかった。
映画どころではないからだ。

「・・・クォヴレー・・・」

耳元でイングラムのセクシーな声が聞こえてくると、
クォヴレーは身体をブルリと震わせ後孔を無意識に締め付けた。
するとイングラムが息を呑むのが気配で分かり、
突き上げられるリズムが速いものにかわっていく。

「あ、あっ・・・イングラム・・・!」

薄暗い部屋にグチュン、という濡れた音と、
二人分の荒い呼吸と、
映画の会話らしき声が響いている。
すでに一度は達しっているのか、
クォヴレーの足の間には治まりきらなかった
イングラムの精液と思わしき白濁したものが後孔から溢れ、
何筋もの線を作り流れ落ちている。

「い、あぁぁっ!イングラム!いく・・・いくっ・・!」
「・・・クォヴレー・・・」
「インッ・・・んっ・・んんぅ」

クォヴレーの内側で恐ろしく大きく硬く成長を遂げた肉棒が、
最後とバカりに激しく中をかき回しだした。
後を振り向くとイングラムは顔を寄せ、クォヴレーの口の中も蹂躙していく。
舌を貪られ、歯列を舐められ、唇を吸い上げられる。
お腹まで反り返ったクォヴレーの性器にイングラムの手が添えられた。

「・・・しっかり・・手をついて・・・いろ・・」

それはもう直ぐフィニッシュだ、という合図だ。
掴んだ性器を勢いよく擦り上げ、敏感な先端に指をかける。
性器はビクビク震えだし、膨らんだかと思うと、
甲高い声と同時に一気にガラス戸に欲望を吹きかけていった。
クォヴレーが達したのだ。
そしてクォヴレーの絶頂によりイングラムを喰って放さな小さな孔も、
早口に開閉をはじめ、内壁が絡みつきギュウギュウとイングラムの雄を絞め付けてきた。

「・・・・っ」

小さくうめき声を出し、クォヴレーの中に腰を打ちつけながら欲望を叩きつける。

射精を終え、ひと心地ついたイングラムは、
まだ硬いままの性器を名残惜しげにクォヴレーの中から抜き、
欲望を解き放って放心状態になっているクォヴレーを、
映画を鑑賞する為に設けられている椅子に座らせるのだった。
そして足を肘掛にかけさせ足を左右に大きく開かせる。

「・・・まだ喰い足りないようだな。
 お口が白い涎を垂らしながらパクパクしているぞ」
「・・・・!」

イヤらしい言葉に火照った身体がさらに火照っていくのを感じた。
けれど二回の交わりにより身体を上手く動かせないので、
クォヴレーは目を閉じるしかなかった。
そうすると自分の孔がヒクついているのをよりリアルに感じてしまい、
慌てて目を開ければ、信じられない光景にギョッとなってしまう。

「イングラム!?も、もう無理・・・あっ・・だめっ・・だ」

プライドの高いイングラムだが、クォヴレーの前では平気で床に膝をつく。
そして従者が王子様を扱うように恭しく半分勃ちあがった性器を捧げ持つと、
先端に唇をよせ、そのまま一気に飲み込んでいくのだった。

・・・イングラムの行為の始まりと終わりはいつもソレだった。
けれどクォヴレーはソレがあまり好きではない。
やめて、と叫んでもイングラムは軽く笑ってソレを始めるのだ。

「ソレ、嫌だ!!あっ・・・ぁぁっ・・・いや・・っ」
「・・・いや、ではないだろう?・・・ん?・・・もうこんなだぞ?」

先を吸い上げ、棹に舌を這わせ、膨らみは飴のようにしゃぶられる。

「いや・・だぁ・・・ソレ、・・・すぐ・・・あっ・・あぁ・・」

再び棹に舌が這い、先をチュッと吸われ、ゆっくりと全体を口内に含まれていく。
そして唇全体で性器の全てを愛されてしまえば、沸点は直ぐそこだった。

「・・・・っ・・・!!!」

すでに喘ぎすぎて声がかれていたクォヴレーは、
小さく悲鳴をあげイングラムの口の中に射精した。
そしてイングラムは吐き出されたモノをゆっくりと嚥下し、
最初のころよりどれくらい薄くなったかどうかを味わい、満足げに笑うのだ。

「・・・いつもより濃いが・・・まぁ、仕方ないか。
 映画も丁度エンディングだ。
 この続きは家で、な・・・・フフ・・もっともっとお前のは薄くなるはずだろ?」
「!!???」

信じられない言葉に唖然となりつつも、
既に精根尽き果てているため服を着替えさせてくれる手を拒めないクォヴレー。
そしてイングラムの先にある窓ガラスを見ると、
その卑猥な惨状に顔を青ざめさせていく。

「イ、イングラム!どうするんだ!?」
「・・・どう、とは?」
「この部屋の現状だ!!映画を見にきただけだったのに!!
 その、え、映画館でこんな破廉恥な・・・!
 それに窓ガラスにオレの・・・その・・・せ・・・精液・・・」
「・・・・ああ、そういうことか」

するとイングラムは何故か余裕の笑みを浮かべていた。
映画館の個室で卑猥な行為を行い、
凄まじい汚れようの部屋を前に、
イングラムは「問題ないだろう」というのだった。

「問題大ありだ!!どうする気だ???」
「問題は、ない」

キッパリ言い切るイングラムに、そんなバカな、とあんぐりしてしまう。
けれど続いた言葉に開いた口が更に大きく開いてしまうクォヴレーだった。

「ココ、はもともとそういうことをするための部屋だ。」
「・・・は?」

今、イングラムはなんといったのだろうか?
瞬時には理解できない。

「・・・だってここ、映画館だろ?」
「・・・表向きはな・・・、だが特別料金を払えば素敵なお部屋に大変身だ」
「・・・???」

イングラムの口から「素敵なお部屋」というのも気になったが、
それ以上にこの部屋の秘密が気になった。

「クォヴレー、ここはな」

腰を屈め、クォヴレーの耳元に唇を寄せると息を吹きかけるように囁かれる。

「表向き映画館のラブホ、だ」
「!!?????}
「最初は普通の映画風の映像を流すが・・・、実はあれは」
「わぁぁぁぁーー!!もういい!!」

そこまで聞くとクォヴレーは耳を塞いで言葉を遮った。
思い起せば、普通の映画にしては絡み合うシーンがやけに多く、
詳細な場面までよく見せてくれていた・・・ような気がする。
もっともイングラムとのエッチに夢中で半分以上見てはいなかったが。

「だましたな!!」

真っ赤になって叫べば、イングラムはシレッと答える。

「騙してなどいない。約束通り映画館でデートだ。
 そしてデートで暗い部屋の定番といえばセックスだろ。
 だから俺は定番に従ったまでだ」
「屁理屈だ!!」

ムキになって叫ぶが、微笑を崩さないイングラムには到底適わない。
それでもなお、たまには普通に映画が見たかったのに!と抗議をすれば
肩を竦めてこう締め括ったのである。

「お前にベタ惚れの俺を前にして暗い部屋で映画を見るという夢は諦めることだ。
 なぜなら明るい部屋でもお前を抱きたいくらい惚れているのに、
 暗いとあっては襲ってもいい、セックスOK!という風にとっても仕方ないだろう?」


暗い部屋=セックスOK、というのは甚だしい誤解だが、
『ベタ惚れ』という言葉に蛸のように顔を真っ赤にしたクォヴレーは、
多少納得がいかないが、その後も映画を見ながらのセックスには抗議しなくなったという。
もちろんイングラムの愛の技に夢中になってしまい、
内容の半分も頭にははいっていないが・・・・・。




なにはともあれ・・・・愛の力とは偉大であるようだ。




有り難うございました。 実際にそんな映画館はありませんよ? でもイングラムなら暗い部屋にいく=今夜はOK! と、受け取りそうな気がしたので作ってみました!