愛妻弁当
 
ファースト・キス 



場所は精神世界・・・ 
お互いの気持ちを認識あった二人が毎回逢瀬する場所・・・ 


イングラム・プリスケンは可愛い恋人と、
そろそろ次の段階入っても良いだろうと 思案していた。 

しかし、相手はまだ子供・・・ 
オマケに記憶を失っているものだから、その手のことには特に疎い。 

変化球や、カーブで攻めてもきっと伝わらないだろう・・・ 
ここは、やはりストレートで攻めるべきだ。 

イングラムは膝の上に乗っている恋人に話を切り出した。 


「・・・クォヴレー・・・」 
「ん?何だ?重くなったか?・・・すまない、今、降りる」 
「いや、そうではない」 

膝の上から降りようとしたクォヴレーをイングラムは強引に引き寄せる。 

「?では、何だ?」 
「クォヴレー・・・お前は、『KISS』を知っているか?」 
「・・・『キス』?ああ、もちろんだ」 

「(!?何?!知っているのか??意外だったな)そうか・・・なら話は早・・・」 

その言葉を遮る様にクォヴレーは背中を預ける形で座ってたのを、 
クルリとイングラムと向き合うように座りなおし言葉を続けた。 

「だが、オレはキスよりも鮭が好きだ!」 
「(!?!?酒!?・・・この前、酒飲まされたとき不味いとか言っていなかったか? 
 いや、それより何よりKISSより酒が好きとは・・・
 俺が取り付いてからクォヴレーは KISSなどしていない筈、だが????)
 ・・・それは・・・変わっているな・・・」 
「??そうか?イングラムは何がすきなんだ?」 
「ん?俺か?・・・そうだな・・・・お前はどうなんだ?」 


なにやら会話がかみ合っていないようだが一応会話は成立している感じなので 
互いに何かおかしいな、と感じながらも会話を続けた・・・ 


「オレは、(焼き魚よりも刺身が好きだから・・・)生が一番だな!」 
「生!?(生ビールということか!?・・・確かに缶よりもジョッキが美味いが・・・) 
 ・・・クォヴレー、お前、歳のわりに親父くさいな・・・」 
「???(刺身好きは親父くさいのか??)そうか?で、イングラムはどうなんだ?」 
「・・・そうだな、俺はワインとか日本酒がいいな・・・」 
「日本酒!?(鮭の酒蒸しが好きということか??
 ずいぶん遠まわしな言い方だな・・・鮭に酒蒸しなんてあったか??)」 
「何かおかしなことを言ったか?俺は・・・」 
「い、いや・・・別に・・・」 


そこでイングラムは気がついた。 
なんだか話の論点がずれてしまっているではないか! 
とりあえず、元に戻すべく最初の話題にまたもっていくことにした。 


「・・・いかんな・・・俺たちは『KISS』の話をしているのだったな・・・ 
 酒について語り合っている場合ではなかった・・・」 
「イングラムはそんなに『キス』が好きなのか?」 
「時と場合によるな・・・時には酒が必要な時もあった・・・」 
「(鮭が必要??どういう意味だ?
 イングラムの言っていることがますます分らなくなってきたな・・・) 
 オレは、キスよりも鮭の骨は少ないから鮭派なんだ
 ・・・イングラムは食べやすさでは選ばないということだな・・」 

「!?骨!?」 

クォヴレーの『骨』という言葉でようやくイングラムは気がついた。 
彼の言っているKISSは魚のキスで、酒は魚の鮭のことだったのだ!! 
・・・成る程、それならばKISSより酒が好きという言葉にも納得がいく。 
確かに自分もキスより鮭が好きだ。 
互いの勘違いの上の間抜けな会話を思い出すと、イングラムは笑いを堪えることが出来なかった。 

「ブッ・・・・ククククククククク・・・・!!」 

突然笑い出したイングラムに、何がそんなに可笑しいのか、と首をかしげ 
その様子を見守るクォヴレー・・・ 

「イングラム?どうしたんだ?」 

「クククク・・・悪い・・・あまりにも俺たちが間抜けだったものでな・・・」 
「???間抜け??どういうことだ??」 

「まず最初に、クォヴレー・・俺が言ったKISSは魚のキスのことではない・・・」 
「何!?では一体何のキスなんだ??」 

ああ、やはり知らなかったのか、と可愛い恋人の髪の毛をくしゃっとし、 
そのまま自分の唇で彼の唇を塞いだ・・・ 
ただ、唇を押し当てただけの・・・触れ合うだけの、KISS・・・。 

唇を離すと、何が起きたのか分らないクォヴレーはキョトンとイングラムを見つめた・・・。 


「・・・今のが、KISS、だ。」 

微笑しながらそう言うと、もう一度唇を近づけた・・・。 

「・・・KISSの時は目を閉じるものだ・・・クォヴレー・・・」 

何がおきているのか、まだよく理解できていないクォヴレーは言われるまま、目を閉じた。 
クォヴレーが目を閉じたのを見届けると、唇を重ねあわせ、 
今度は自分の舌をクォヴレーの舌に絡ませようとした、が・・。 

ガチッ 

「つっ」 


「イ、イイイイイングラム!!今、何か入ってきたぞ!?」 
「・・・俺の『舌』だ!!噛むな!!」 
「舌!?何故そんなものを入れる!?」 
「それが大人のKISSだ!」 
「!?大人・・・?」 

・・・まったく、何も知らないということは教え概があって良くもあるが、悪くもあるな・・・。 
イングラムはそう思いながら、また唇を近づけた。 
よほどビックリしたのか、イングラムが顔を近づけると、少し腰が引けてしまうクォヴレー。 
そんなクォヴレーの腰をガシッと捕まえて、顎に手をかけ動けないよう固定した。 

「いい子だから・・・今度は噛むなよ?」 
「イ、ング、ラ・・・んんんっ」 

最初はついばむように・・・ 
次第に自分の舌を侵入させ、歯列を舐め、だんだんと舌を絡め合わせる・・・。 
KISSに慣れてきたのか、徐々にクォヴレーもイングラムに答え始めた・・・・。 



「んむぅ・・・はぁ・・・」 

ようやく開放されクォヴレーは息を乱した。 
まだ呼吸の仕方がよく分らなかったのであろう・・・。 

「(・・・やりすぎたか??)大丈夫か?」 
「ん・・・大丈夫・・・気持ちよかった・・・」 
「そうか・・・それは良かった・・・」 
「イングラム」 
「ん?」 
「・・・もう一度・・・」 

顔を真っ赤にしながらもう一度KISSをねだる恋人をギューと抱きしめ、 
イングラムはまた唇を近づけた・・・。 




初めてのKISSから何日か経った・・・ 
今では逢う度にKISSをしている。 

しかしクォヴレーはKISSが終わると顔を真っ赤にしイングラムから背けてしまう。 
そんな彼を苦笑しながら抱きしめるイングラム・・・。 






この調子では、この先に進むのにはまだまだ時間がかかりそうだな、と 
思いながら今日もまたKISSを交わす2人・・・・。 





なんだか書いてて自分で恥ずかしかった・・・ インヴレって難しい・・・ ちなみにヴレ=オレ、イング=俺 だったり・・・ インヴレ部屋へもどる