腫れちゃったの??
 

*微エロ*










〜その怪我の正体〜


リビングに大きくカバンが床に落ちる音が響いた。
その音にイングラムはゆっくり眠りから覚醒するが、
完全に覚醒するより前に目の前の人物の形相を見るなり
ギョッとしてしまう。

「・・・・っ・・・ぅ、ぅ」

瞳から零れんばかりの涙を溜め、
一心にイングラムの顔を凝視しているクォヴレー。

「????どうした?クォヴレー」

寝起きのため、少しだけ掠れた声色で入り口付近で
半泣き状態のクォヴレーに声をかける、
すると堪えていた涙がボワッと溢れ、
クォヴレーは駆け寄ってきた。

「イングラム!」
「・・・・おっと!」

抱きついてきた華奢な体を受け止め、
イングラムは取り合えずヨシヨシと背中を撫でてみる。
首元で鼻を啜るクォヴレーの涙で襟元が汚れるが、
そんな些細なことは気にもせずイングラムは優しく話しかけた。

「どうした?苛められでもしたか?」

クォヴレーはプルプル頭を左右に振る。
そして伏せていた顔をあげ、イングラムの顔を再び凝視すると
止まりかけていた涙が再び溢れ出したのであった。

「??クォヴレー??どうし・・・」

泣いている理由が分からなく、首をかしげて今一度聞いてみる、が、
その時クォヴレーの白く冷たい指が唇を押さえ
それ以上話すことを止められたのだった。

「・・・イングラム・・・もうしゃべらなくていい」
「????」

涙声でイングラムが話すことを静止する。
しかし『話さなくていい』とはどういうことなのか?
もうイングラムの声など聞きたくないくらい嫌いということなのだろうか?
そうであるならば、キツイお仕置きを与えてやるところだが、
クォヴレーの涙の溜めた言動からはそういう感じは受け取れない。
わけが分からずイングラムはますます首を傾げるのだった。

「・・・痛いだろ?・・・オレのせいだ・・・すまない」
「(痛い???)」
「・・・こんなに・・こんなに腫れてしまって・・・うぅ」
「(腫れて???)」

イングラムは無言で自分の下半身を見てみた。
クォヴレーと密着しているので『その気』になりそうではあるが、
いかんせん『腫れて腫れて切ない状態』とは甚だ遠い。
つまりまだ『腫れて痛い状態』ではないのだ。
目を瞬かせイングラムは更に首を傾げる。
そして膝の上の乗っているクォヴレーを見上げて、
目から落ちた涙が頬を伝っているのでそっと拭ってやった。
目を伏せその行為を受けながら、
クォヴレーは冷たく指先でゆっくりイングラムの唇を撫で始めた。

「・・・イングラム」
「・・・・・・・」
「痛いだろ?」
「???????!」

指で触れられていた唇に突如生暖かいモノを感じた。
驚きで目を見開き、イングラムは硬直してしまう。
快楽に酔いしれわけが分からなくなっている時は、
クォヴレーは積極的にそういうことをしてくるが、
正気の時は極稀の行為であるからだ。

ペロペロ・・・赤い舌で懸命にイングラムの唇を舐めるクォヴレー。

「・・・・っ(なんだ??何があったんだ???)」
「んっ・・・イン、グ・・・」

舐めるのをいったん止めクォヴレーはもう一度指で唇に触れてみる。
そしてイングラムにもう一度謝罪をしたのだった。

「まだ腫れている」
「?」
「・・・昨夜沢山したのに、今朝もねだったからだろ?」
「?????」
「・・・こんなに腫れて・・・唇」
「(唇???)」
「すごく真っ赤で痛そうだ・・・」

ごめん、と小さく謝りクォヴレーは再びイングラムの唇を舐め始めた。
そして時折舐めるのをやめては唇の状態を確認している。

「・・・全然治らない」
「・・・・・」
「・・・やはりオレのせいだ」
「・・・・・」
「・・・オレと沢山キスをしたから腫れてしまったんだ」
「は?(腫れているとは唇のことか??)」

ガバッとソファーから起き上がり、
乗っているクォヴレーを膝からおろすと、
鏡の元へと走った。
そして鏡に映った自分の唇を見てみれば
成る程、確かに真っ赤に色づき多少腫れているようだ。
チラッとソファーを見れば、申し訳なさそうに小さくなっているクォヴレー。
何故こんなに唇が腫れているのか、イングラムは昨夜のことを思い返してみることにした。



















昨夜はクォヴレーと一緒に風呂に入りそこで2度程愛し合った。
そしてグッタリしてしまったクォヴレーを寝室まで運び、
そのまま3回ほど美味しく頂いたのだ。
繋がっている間中、求められるままキスを与えていた。

そして今朝、気絶するまでイタしてしまったことをクォヴレーに責められ、
お詫びの印として求められるまま濃厚な口付けを与えた。



イングラムは再度自分の唇を見つめてみる。
確かに沢山キスはしたがあの程度はいつものことで
こんなに腫れる筈はないのである。
では一体何が原因でこうなってしまったのか?
今朝から昼寝に至るまでを今度は思い返してみることにした。





キスに満足したクォヴレーはいつもどおり学校へ行った。
非番であるイングラムはクォヴレーを送り出し、
取り合えず台所を片付け家中の掃除を始めたのである。
社会人であるので洗濯や食事などはクォヴレーに頼っているが、
なるたけ掃除や後片付けなどはするようにしているのだ。
とにかく家中の『片付け』を終えると、
どうせならば夕飯も作ろう!と買出しに行くことにした。

「(・・・今夜は冷えるから鍋にしようと鍋の材料を買いに行った。
 ・・・それから?帰宅して買ってきたものをしまって、
 昼食を食べて・・・ん?昼食???そうか!)」


何かを思い出したらしく、クォヴレーのいる場所へ静かに戻りだした。
ソファーで正座しているクォヴレーの顎に手をかけ上を向かせると、
切れ長の目を細め微笑み、そのままギュウ・・と抱きしめていく。

「クォヴレー」

優しさ溢れる声で名前を囁いてやると、
細いからだがビクンッと震えた。
恐れる必要はない、ともっと力強く抱きしめると、
クォヴレーの口から嗚咽が漏れ始めたのだった。

「イング・・イングラム・・・すまない」
「クォヴレー・・・、クォヴレー・・優しい子だな」
「・・・っ、だって・・オレのせいだ・・オレが・・あっ」

後頭を抱え、顎を手で捧げもち優しいキスを落とす。
舌と舌を口の入り口で悪戯し合うだけの軽いキス。

「ん・・・ふ・・・っ」

一旦唇を離し、今度は両の頬に両手を沿えて視線を合わさせた。
額や頬や目蓋ににキスをしもう一度見つめる。

「クォヴレー、俺はキスのし過ぎで唇が赤くなったりはしないから安心しろ」
「・・・・・え?」
「俺は吸うことは多くても吸われる事はあまりないからな。
 お前なら次の日腫れてしまうかもしれないが、俺はそうそうそうはならない」
「!?・・・だが現に・・・!!」
「そうだな」

ソファーに再び腰を下ろし、
横にいるクォヴレーを抱き寄せると
今度は鼻の頭にキスをしてニッコリ微笑んだ。

「実はな、今晩は寒いから鍋にしようと思っていたんだ」
「・・・鍋?」
「鍋には色々種類があるだろ?」

コクンと小さく頷き、
イングラムに抱きしめられながらも目をパチパチさせる。
なぜならその話は今のクォヴレーの中では全く持って関係のない話だからだ。

「何にしようか迷ったあげく今夜はキムチ鍋にすることにした。
 それで大量にキムチを購入してきたわけけだが・・・」

そこまで言うと、何故か苦笑いを浮かべるイングラム。
クォヴレーは益々目をパチパチさせてイングラムの言葉を待った。

「俺もなかなか大人気ないかな・・、
 キムチがあまりに美味しそうだったので昼食の時に摘んでしまった」
「・・・キムチを?」
「そうだ。・・で、だな・・・そのキムチ、なかなか辛くて・・・」

フフ、と微笑むイングラムに合点がいったのかクォヴレーの表情が晴れていく。

「つまりイングラムはキムチの食べすぎで腫れてしまったんだな?」
「・・・そういうことだ。お前とのキスのせいではない。安心したか」
「した!」

ホッと息をつくと、
クォヴレーはイングラムの向かい合わせになるよう膝の上にのる。
すぐさま、イングラムの腕が腰に巻かれ唇を重ねあう。
先ほどのキスとは違い貪る嵐のような激しさに
クォヴレーの身体はだんだん熱を持ち始め無意識に腰を揺らしだしていた。

「・・・ん、・・・ぷはぁ・・・っ」

一度唇を離すと、
口端から二人分の唾液が交じり合った涎をたらしているクォヴレー。
それを人差し指で拭ってやりながらイングラムは意地悪く微笑むのだった。

「・・・唇が真っ赤だぞ?・・強く吸いすぎたか?」

クォヴレーはプルプル頭を左右に振ると、
うっとりした瞳でもう一度ねだった。

「・・強くない。もっといっぱい吸って欲しい・・キスは好きなんだ」
「・・・キス、だけで満足なのか?」

からかうような視線でクォヴレーの下半身を見つめるイングラム。
熱くなりだし始めているソレは、
イングラムの視線を感じるだけでグンッと質量を増した。

「・・・ぅ・・・、意地悪・・言わないでくれ。
 ・・キスだけでいいわけ、ないだろ?」

首にまわしていた片方を自分のズボンのジッパーへ移動させる。
フロントホックを外しジッパーを下ろすと、
いそいそと切なくなってしまっているソレを取り出す。
クォヴレーの快楽に素直な可愛らしいその行動を見守りながら、
自分もフロントホックへ手を伸ばしジッパーを下ろし始めた。
互いが外界へ出ると、相手の性器を無言のままに握りこむ。

「・・・同じように・・・いいな?」
「・・・ん・・・うん・・・」

イングラムがクォヴレーの性器を扱き始める。
するとクォヴレーもイングラムの性器を扱き始める。

「ぁっ・・・ぁぁ・・・」
「・・・・っ」

互いの耳に互いの熱い吐息。
それだけで熱くなっていく二人の欲望。
上にいるクォヴレーの腰も、
下にいるイングラムの腰も自然に揺れ始め、
吐息はだんだん荒々しいものへとなっていった。

「あぁ・・あぁ・・・やっ!」
「・・・っ」

クォヴレーの手つきが忙しないものになっていく。
おそらく自身の限界が近いのでイングラムに早く限界が来てほしいのだろう。

「イく・・・イくぅ・・・ぅ・・・んんっ」
「・・・・ふ・・・っ」







白濁したものに濡れたクォヴレーの手がダランとさがり、
床にポタポタ液体が滴っていく。
少しだけ息を荒くしたイングラムは、
色気溢れる声でクォヴレーに囁いた。

「続きは夕飯のあとにな・・・、キムチのほかにニンニクも入れようか?」
「・・・ニンニク?」

ぼう・・・とした意識で辛うじて答える。

「ニンニクは・・・息が臭くなるぞ?」

可愛らしいクォヴレーの意見に、小さく笑いながらイングラムは続けた。

「・・・互いに食べていれば気にならないだろ?それに・・・」
「それに・・・?」
「今夜はいつも以上に愛してやりたいから、ニンニクはピッタリだろ?」
「・・・ぴったり・・・?あ!」

ニンニクの意味が分かったのか、クォヴレーは顔を真っ赤に染める。
けれども口から出た言葉はイングラムの欲望を煽るのには十分すぎるものだった。

「なら・・・オレもがんばっていっぱい食べる・・ニンニク」
「クォヴレー・・・」
「イングラム・・・」

馬鹿みたいに見つめあう熱い二人。
そしてクォヴレーのおでこにおでこをよせ、官能ボイスで囁いた。

「・・・今夜は・・・寝かさないぞ?」
「・・・スケベ・・・」








その夜は明け方になっても
クォヴレーの可愛らしくも切なげな声がやまなかったという。


有り難うございました。 微エロでした!