歳の差の不安
 



「・・・イングラム・・・オレ・・・も」


初めて返した告白の返事・・・・。


だが、あの日から・・・・


イングラムに抱かれていない・・・・。






〜熱い熱〜






体が熱い・・・・



熱くて堪らない・・・・。






「クォーヴレー!」

煩いくらいの大きな声でオレを呼ぶのは、
オレの数少ない友人の一人であるアラドだった。


「アラド」
「お前も今休憩?一緒になるなんて奇遇だな」
「いや、オレは休憩ではない・・・」
「ふーん」

アラドは当たり前のようにオレの前の席に腰を落ち着けると、
見るだけで吐き気がこみ上げてくる量のランチを食べだし始めた。

「相変らずだな・・・・」

呆れたようにため息をつけば、間抜けな顔で

「ふぇ??こんくらい普通だろ〜???」


・・・・普通???
イングラムより量が多いぞ?








食べている今が一番幸せ、という顔で食べ続けるアラド。
苦笑しながらしばらくその食べっぷりを見ていたが、
次第に小さくため息をついてしまっていた。
食べることに夢中だったアラドも、
何回もため息をつかれれば気づくらしく・・・・、

「何かあったのか??」
「・・・・・・え?」
「お前、さっきからため息ばっかじゃん!」
「!?」

いつもは鈍感だというのに・・・・、
気づいて欲しくない時には気づくんだな、アラド。



・・・・いや、そうじゃない。
今のオレが分かりやすいんだ。



イングラムに会えない不安。
イングラムに抱かれない不安。



・・・・イングラムへの不安。



「オレでよければ話くらい聞くけど?」
「・・・・・・・」
「オレはあんま頭よくないから、アドバイスはしてやれないけどさ!
 話すだけでも気持ちは軽くなるじゃん?」
「アラド・・・・」



話せば楽になる・・・・。
本当だろうか・・・・?


だが・・・、誰かに聞いてもらいたいのは事実だ。
小さく息を吸い込み、オレは・・・・・、


「告白された・・・・」
「・・・・へ?」

まさか恋愛話をされるとは思っていなかったのか、
アラドの目が真ん丸くなったが、
すぐに「ふーん」と返事をして何も突っ込んではこなかった。

「・・・・毎日毎日・・・しつこいくらい『好き』といわれていた」
「・・・・・・」
「始め、その言葉は『冗談』だと思っていたんだ。
 アイツ・・・はモテルし・・・・」
「そっかぁ・・・で?」
「先日、アイツは真剣に『本気』だと・・・アピールしてきた」
「・・・・・クォヴレーはソイツの想いが迷惑なのか??」
「いや・・・・」

プルプル、頭を左右に振る。

「オレ、も・・・本当は・・・ずっと・・・・」
「じゃ、両想いなわけね!・・・・ん?んじゃ、何に悩んでんだ??」
「・・・・・・」
「??????どしたの????」
「・・・・会ってないんだ」
「・・・会ってない???」
「・・・『オレも好きだ』と言った、翌日から・・・会ってないんだ」
「・・・・!え?・・・えぇぇぇぇーーー!?」

アラドは耳鳴りがするくらいの大声で席を立ち上がり驚きを表現する。
その大声に一瞬でシーン・・・となる食堂。

「アラド!」
「!!っと、わり・・・!!」

注目を浴びてしまい、
アラドは慌てて回りにペコペコと謝り続け、
数分後、やっといつもの食堂の状態へ戻った。
そして今度はコソコソ声で、

「お前さぁ〜・・・、もう・・その・・返事した時にヤッちまったのか???」
「・・・・・あぁ(その時が初めてではないが・・・というのは黙っておこう)」
「!?・・・・・・・で、連絡が取れなくなったんだよな?」
「あぁ・・・・」
「それって・・・
 あ、まぁ・・・忙しいだけかもだし一概には・・・うーん??」
「正確にはアイツは今、出張中だ」
「へ?・・・あ、なら・・・忙しいだけかな??」
「だが以前は出張中でもメールはくれた」
「目も回る忙しさ、とか・・???」
「そう・・・なのだろうか?」
「うーん???なんともいえないけどさ、
 とにかく出張から帰ってきたら一度連絡だな」
「・・・・・・・・」


・・・・・連絡・・・・・、

してもいいのだろうか???


自分の気持ちを伝えていない時は平気で
抱いて欲しい、と言えたが・・・・。



オレが目を伏せていると、


「クォヴレー・・・・」
「?」
「お前、もう勤務終わったんだよな?」
「ああ・・・」
「んじゃ、悩む前に帰ったほうがいいぜ」
「・・・・・・?」
「お前、顔赤いし・・・熱でもあるんじゃん?」
「・・・熱?」


・・・そういえばさっきから体が熱かったな。


・・・・風邪???オレが????



「具合悪いと嫌なほうへ考えもいくって言うし・・・」
「・・・・・・・・」
「な?今日はもう帰ってずっと寝てろ!
 で、その人が出張から帰ってきてもまだ連絡がつかないようなら
 また相談してくれよ!力になるからさ!・・・・オレ達親友だろ?」


へへへ、と鼻をこするアラド。
・・・・オレの数少ない友人の一人・・・・。
オレは顔の筋肉を少しだけ緩めて、


「ありがとう、アラド」


と、お礼を言い、席を立つ。


・・・心持、気分も少し楽になった。

・・・体は熱さを増した気もするが・・・。

















家につくと、何かに引きずられるようにベッドへ倒れこんだ。
だがシーツにはもうイングラムの香りはしない。
それはそうだ・・・・、
もう1週間も・・・繋がっていないのだから。





グルグル、と頭の中を嫌なものだけが通り過ぎていく。
イングラムは遠い地へ遠征へ行った。
もちろんその中には美しい女性パイロットもいるし、
オペレーターもいる。


・・・・ベッドを共にする相手には困らないはずだ。



オレの頭にその光景がちらつく。


美しい女性とベッドの上で絡み合うイングラム。
愛の言葉を囁き、優しく猛った性器を女性に埋めていく。



そんなことを想像し始めると、嫌な想像はエスカレートしていき、
淫らな息づかいまでもがリアルに脳裏に響いてくる。


イヤだ・・・・!
こんな醜い自分はいやだ!



頬に生温い何かが伝っていく・・・・。




そしていつの間にかオレは眠ってしまっていたのだった。












「・・・・・ん?」




・・・・体が熱い。
さっきとはまた別の熱さだ。
さっきは咽がカラカラにかわいて・・・、
そう、まるで砂漠にたっている時のように咽が渇き体が熱かったが、
今は心地よい熱に犯されている、そんな感じだ。



「・・・レー?」
「・・・ん・・・んん?」
「クォ・・・レー?」
「んー・・・??」


心地よい何かが優しく体を撫で回している・・・・。
なんだろう?
・・・・わからないが・・・気持ちがいい。


「早く・・・・起き・・・・クォ・・・」


誰かが遠くのほうでなにか喋っている。
誰だろう?
・・・だか体を弄っている何かの温もりが気持ちよくて
目を開けたくない・・・・。


「・・・目をあけたくないのか?」
「・・・開けたくない・・・」
「何故?」
「開けたら・・・夢から・・・目覚めてしまう」
「夢?・・・どんな夢だ?」
「・・・心地いい夢だ。
 目を覚ましたらきっと消えてしまう」
「心地いいとは?」
「・・・・あの人・・・に・・・抱かれている時のような・・」
「あの人?」
「・・・・・あの人・・・イン・・・グ・・・ラ・・・ム」
「フフフフ・・・・」


心地よい何かが更に心地よくなった。
胸の辺りを徘徊していたソレがへその窪みを徘徊し始めた。


「ソイツのことが好きなのか?」
「・・・・・・ん・・・・ふ・・・」
「どうなんだ?」
「・・・ん、・・・・好き・・・苦しいくらい・・・好き」
「そうか・・・・」


心地よい何かが今度は太ももを這い出し始める。

「んんぅ・・・ふ・・・・」
「ではもっと好き、と言ってごらん?」
「・・・・もっと・・?」
「そうだ・・・きっと良いことが起こる」
「良い・・・こと・・・?」


ああ・・・オレは一体誰と会話しているのだろう?


もっと好きと言えば良いことが起こるという。
本当か??


・・・・例えばそれは・・・イングラムに会える、とかだろうか?
イングラムに・・・・抱いてもらえる、とかだろうか?



だが、なんでもいい・・・。
何でもいいんだ。

会いたい・・・、
会いたい・・・、
夢の中でもいいから・・・会いたい。
夢の中でいいから・・・抱いて欲しい。



心地よい何かが腿から去っていった。
それとほぼ同時に下半身が痺れるように熱くなっていく。


「フフフ・・・夢より現実がいいだろ?」
「あ・・・あぁ・・・・あっ・・・・熱い・・・!」
「熱い?」
「体・・・熱い・・・やっ・・・・そ、こ・・は・・」

陰茎を生暖かい何かが這う。
熱い・・・体がそこから沸騰していく。


オレは少しだけ目を開けてみた。
すでに瞳には涙が溢れており、景色がボゥ・・・としている。
だが青い何かが目の前にいるのはわかった。

「・・・青・・・?青は・・・イング・・・あっ・・・」
「・・・・んっ・・・クォ・・・ヴ・・・」
「熱い・・・!熱い・・・!ふ・・・ぁ・・・」

生暖かい何かが吸い上げるようにオレの性器を搾り出し始めた。
腰は痺れ、無意識に揺れ動きだす。
・・・・性器が・・まるでイングラムの口の中にあるようだ。



・・・・夢にイングラムが来てくれた。


・・・夢なら・・・夢ならもっと・・・甘えていいだろうか?


「・・・・現実でも甘えてくれてかまわないが?」
「は・・・あっ・・・・うっ・・・」
「クォヴレー・・・・」
「あっ・・・イン・・・好き・・・好き・・!!」

『好き』と叫んだら、さっきの言葉どおり、良いことがおきた。
腰はそれまで以上に甘く痺れ、次第に体全体へと広がっていく。

「もっと言ってごらん?・・・・そしてゆっくり目を開くといい」
「もっと・・・?」
「もっと、だ。」
「あ・・・・イングラム・・・が、好きなんだ!あ・・・ふぅ・・・」

『声』に導かれるがまま『好き』と何度も叫び、
ゆっくりと目を開け始めた。




「・・・・・あ!」




目を開けて驚いた。

・・・まだ夢を見ているのだろうか?



・・・夢に違いない・・・・。



なぜなら・・・・



「イングラム!?」



既に一糸纏わぬ姿のイングラムがオレを組み敷いている。
なぜ、ここにいるんだ???
遠征から帰ってきていたのか???


「クォヴレー、やっと覚醒したか」
「・・・なぜ・・?あっ・・・・やぁぁーーー」

オレの下半身にあった頭をオレの頭の位置まで移動させると、
壮絶な力加減でオレの性器は彼の手で愛撫され始める。
ヌチャヌチャと濡れた音が響き、完全に反応している事を教えてくれた。


「はっ・・・あっ・・・駄目・・!・・・く・・・んぅ」

否定の言葉しかはかないオレの唇は塞がれた。
熱い舌が口内をまさぐり、その熱にオレの脳は溶かされていく。

「ふぁ・・・!あ・・・」
「・・・クォヴレー・・・会いたかった」
「・・・・イン・・・んぅ」

一度離れた唇がまた合わされる。
だが今度は直ぐに離れてしまったので、
オレは自ら舌を差し出した。
するとイングラムの目は眉とともに下に下がり、
優しく彼の口へと迎え入れられた。


「会いたかった・・・・抱きしめたかった・・・クォヴレー」
「あっ・・・嘘・・つくな・・・」
「嘘?」
「浮気・・・していた・・・くせに・・・!」
「は?」

性器を愛撫する手の動きが止まった。
そしてマジマジとオレを見下ろしてきた。


「メール・・・一度も・・・くれなった」
「それは・・・」
「きっとオレのことなど忘れて・・・女の人と楽しんでいたんだ」
「・・・・・・」
「オレ以外とコレ、使ったんだ!」

両サイドに投げ出していた腕で彼の肩を掴み、
おもいっきり突き飛ばし押し倒した。

「・・・・!」


そして彼の腹の上に乗ると、
彼の顔に自分の尻を向ける体勢をとり、
何故か勃起しているイングラムの性器に手を這わせた。

「・・・オレ以外と、コレ使っていたんだ!」
「・・・・クォヴレー?それは誤解だ」
「たくさん楽しんできただろうにもうこんなに勃ちあがって・・」
「・・・・おい、人の話を」
「いつでもどこでも準備万端になるコレがいけないんだ!」
「・・・・・・・・」
「・・・・オレだって同じチームなのに今回の遠征には若いからと外されるし・・・」
「・・・・・・・」
「イングラムの・・・馬鹿!」
「プッ・・・!」
「!?」

その時、イングラムが噴出した。
そんな態度にオレの我慢は限界を超えて・・・、

「何故笑う!?」
「いや・・・あんまり可愛いものだから・・・くくくく」
「可愛い!?」
「まさか焼餅を焼いてくれるとは・・・んっ」
「ひぁ!!」

後孔に舌の感触を感じた。

「あ・・・あぁぁぁ・・・」
「メールしなかったのはな・・・」
「あっ・・・やめ・・・」
「すれば・・・会いたくなるからだ・・・、
 電話は声を聞いてしまうから更に論外だしな」
「ひぁ・・・あっ・・・あっ・・・」

襞を丁寧に舐められ、後孔が解れていくのが分かる。
ヒクヒクと舌の出し入れにあわせるようにヒクつき、
熱く太い杭を今か今かと待っているんだ。

・・・その時、イングラムはクイッと腰を揺らした。

「・・・あ?」
「浮気などしていないと証明しよう・・・
 さぁ、お前の可愛い唇と舌で愛してくれ」

頬にあたる勃起している性器。
オレはそれを手に握ると愛しそうに愛撫し始めた。

・・・イングラムの腰が揺れる。

「あっ・・・あっ・・・・んむぅ・・・」
「く・・・・」

チュッチュッと吸い上げれば、イングラムの腰の揺れが大きくなる。

「んっ・・・んぅ・・・ん・・・」
「・・・・っ、・・・クォ・・・」

フェラの動きにあわせる様に後孔を愛撫してくれるイングラム。
そして時折切なげなうめきが聞こえてきていた。




「んっ・・・んっ・・・ふぁ・・?」

次の瞬間、なんの合図もなく爆発したイングラムのソレ。
白濁した体液がオレの顔から髪から体までも汚していった。
自分の頬のついた精液を人差し指で掬い、舐めてみる。


「・・・・ふぁ・・・濃い・・・苦い」


まるで一週間分出していなかったような精液に、
オレの体は最高潮に熱くなっていった。
モジモジと腰を揺らし、クルリとイングラムにふり返る。


「・・・・納得したようだな?」
「ん・・・イング・・・体、熱い」
「・・・さっきも言っていたな・・・そんなに熱いのか?」
「・・・・会えないときも熱かった、でも今はもっと・・・熱い」
「フフフフ・・・・」

笑いながらイングラムは体位を変えた。
オレを再び組み敷き、足の間に割り込んでくる。


「以前のクールなお前も良かったが、
 欲望に素直なお前はもっと、いい」
「・・・・・???」

何を言っているのだろう?
だがイングラムは満足そうに微笑みながらゆっくり体を密着させ始めた。
入り口に猛った欲望の気配を感じる。
今、出したばかりだというのにだ。

「!?・・・嘘?」
「嘘ではない、俺はお前の裸を見るだけで勃起できる」
「・・・・・!」

イングラムの言葉に更に体が熱くなる。
早くこの熱さを沈めて欲しい・・・。

「クォヴレー・・・・くっ」
「・・・・あーー!」

灼熱が体に進入してきた。
孔をから最奥まで一気に潜り込んでくる。


・・・・体の熱が少しだけ収まった。


「俺に・・・、会いたくて・・・発情していたのか・・・?」
「は・・・あっ・・・あっ・・・発情??」

容赦なく杭を打ち込んでくるイングラムに会わせながら
必死に言葉も交わしていく。

「発情して・・・熱かった・・・そうだろう?」
「ふ・・・ふぁ・・・あっ・・・」
「俺と再会し・・・ソレは、・・・・更に強くなった・・・」
「あぁぁ・・・あっ・・・あっ・・・」
「・・・俺と、・・・同じ・・・だな・・・うっ」
「んーーーーっ・・・ん・・・・ん」

激しい突き上げによる快楽でオレは溜まらず開放してしまっていた。
孔を締められイングラムも達したのか、
収まりきらなかった彼の精液を腿に感じる。
だがそれだけでは満足で出来ず、オレは自ら腰を振った。

「イング・・・もっと・・・」
「クォヴレー・・・」


『もっと』というオレに
優しいキスをくれたイングラム。
入ったままの彼の性器の高度が再び増し、
激しい出し入れが再開されたのだった。






イングラムと会えないときに感じた熱い熱。
会ってからは更に感じた熱い熱。



確かにオレは『発情』していたのかもしれない。



だがそれを可笑しなことだとは思わない。




なぜならイングラムが言っていたんだ。




発情するのは相手をすごく好きな証拠だから、と。




イングラムもオレにあえない間『発情』していたらしい。




それはオレを好きな証拠だ、と言っていた。
その言葉でオレの体は何度目かの熱いをむかえ、
その日の何度目かの交わりをスタートさせたのだった。










・・・・次の日、イングラムは平然と仕事に向かったが、
オレはベッドから起き上がれなかった。



・・・少しは手加減して欲しいと今度からお願いしよう。



有り難うございました。 クォヴレー君が天邪鬼さんから少しずつ抜け出しています。 このシリーズは・・・続くかもしれないし、続かないかもしれない。