積極的なんです
 



*パラレル*






〜健康診断〜





言われたとおり服を脱いだら何故か赤面され、首を傾げた。
見ればその場にいる誰もが目線を泳がせ気まずそうである。

「・・・・?」

今、イングラムは健康診断を受けている。
レントゲンを撮る、というので言われた通り上半身裸になった時、
上着を預かろうと近づいてきた看護士が赤面したのだ。
レントゲン師がゴホン、と咳払いをし、
レントゲン室へ案内してくれる。
けれどやはりどこか目線が上の空だ。

「(・・・何だというのだ?)」

そしてレントゲンを取り終わり、看護士から上着を受け取る。
けれど彼女はやはり顔を赤らめたまま、気まずそうに目を逸らした。
するとそこに部下でおあるリュウセイとライが一緒に部屋へ入ってきたのだった。
リュウセイはイングラムを見るなり、

「・・・教官・・・ソレ・・・」

と、眉を潜め何故か驚愕の眼(まなこ)である。
一方のライも目をまん丸に見開き珍しく赤面した。

「・・・・それ?」

一体、皆してなんだというのだろうか?
イングラムはますます首をかしげ、リュウセイの言葉の続きを待った。

「教官、ソレ・・誰に殴られたんすか・・?」
「・・・殴られた・・・?」

何のことだ?と聞こうとした時、
ライが驚愕に見開いた眼をもっと大きく見開き、
珍しく大きな声を出したのだった。

「リュ、リュウセイ!!違うだろ!!」
「・・・へ?・・だってあの肩のアザ、どう見ても鬱血じゃねーの??」
「そ、それはそうだが・・・その・・・」
「(肩の・・アザ・・・?)」

しどろもどろのライにリュウセイは頭に「?」を浮かべている。
イングラムはというと「鬱血」という言葉に、
近くにあった鏡に自分の身体を写してみた。
そうしてようやく部屋に居る人間のおかしな反応に納得するのだった。

















・・・・昨夜の出来事。





資料に目を通し終え、肩をコキコキ鳴らしていたら、
風呂から上がった恋人、クォヴレーが心配そうな声で話しかけてきた。

「根詰めすぎじゃないのか?肩がすごく張っているぞ」

そういって肩に手を置き、優しく揉んでくれるのだった。
腕から風呂上りのいい香が鼻を掠め、イングラムは目を細める。

「明日は健康診断だろ?
 根詰めるのも程々にしないと、結果に影響がでるぞ?」
「そうだな・・だから今日はもう止めた」

肩を揉んでくれる手に自分の手を重ね、
頭だけクォヴレーに振り返る。
そして数秒、彼の顔を見つめたのち、ゆっくりと目を閉じる。
クォヴレーが息を呑む気配を感じたが、
すぐに唇に柔らかい感触がふってくる。
イングラムが望むとおり、クォヴレーがキスをしてくれたのだ。
触れるだけの軽いキス・・・、
そっと唇が離れる頃細い腕を引っ張り自分の膝の上へ無理やり座らせると、
更に深く唇を重ね合わせた。

「・・・んん・・・・」

口内を荒々しく蹂躙し、一通り堪能すると、
深いキスを名残惜しげに終わらせる。
熱に潤んだクォヴレーの目にグッとくるものを何とか堪え、
今度は頬に唇を寄せ、そのまま耳元に唇を移動させて囁く。

「先にベッドへ行っていろ」

囁く声に耳まで真っ赤にしたクォヴレーが口をパクパクさせる。

「そ・・っ、だ・・・っ」

そして言葉になってない言葉を発した。
相変らず慣れないな、とそんなところも愛しく思いながら、
イングラムはわざと「ん?」と言ってみる。
クォヴレーは上目使いで睨みつつ、

「明日は健康診断だろ?早く寝ろ!」

と、一応注意を促す。
だがイングラムはニヤッと笑って、

「だからだろ?健康診断の前は運動して体脂肪を引き締めなければ・・」

と言うのだった。

「!!!!?」

赤かった顔を更に真っ赤にさせてクォヴレーは一生懸命に、
一晩の運動で体脂肪が変わるか!などなど反論していたが、
イングラムが風呂へ向ってしまったので、全ては空振りに終わってしまう。
時計に目をやれば9時を少しまわったところで、

「・・・今夜は何時に眠れるんだろう・・?」

と、一人呟いた。












「・・・う・・んん・・・あっ・・!」

何度目かの吐精を終えると、荒い息のままのイングラムがドサリと覆いかぶさってきた。
そして唇を何度か啄ばむとそのまま首筋にキスを移動していく。

「・・・っ・・、イングラム・・・もう無理・・だ・・あっ・・」

首にキスを受けながら、弄られすぎて腫れている胸の飾りに再び彼の手が迫ってきた。
軽く弄られるだけで敏感になっているその場所は痺れ、
力を失っていた性器もみるみる元気を取り戻していく。

「・・・無理、なわりにはまだまだ元気そうだが?」
「・・う、うるさい!!」

このままやられっぱなしでは癪にさわる!、
とクォヴレーは弄られている胸がジンジンするものの、
何とか身体を捩じらせて同じように元気を取り戻しつつある
イングラムの性器に手を這わせ、いきなり感じる先端部分を指の腹で刺激した。

「・・・・っ・・・く」

2度頂点を迎えた性器は大胆な愛撫に大きく反応を示した。
先端を悪戯している指先は瞬く間に先走ったもので濡れ、
クォヴレーは性器から手を放すと、
先走りで濡れている手を自分の口元へ持ってくると、
見せ付けるように自分の指に舌を這わせる。

「・・・クォヴレー・・、この悪戯猫が・・・」

クォヴレーの誘う様子に自制心を押さえるのをやめ、
胸の飾りを弄っていた手で早々に彼の太ももを持ち上げた。
そしてイングラムを誘ってやまない蕾に先をこすりつけると、
一気に奥まで突きいれ、激しい動きをそのまま始める。
イングラムの首にクォヴレーの腕が絡まる。
激しい動きに、イングラムの肩に顔を埋め、
苦しそうだけれども艶かしい喘ぎが直接耳に響いてきた。

「・・・あ・・あっ・・イングラム・・・!」
「・・・く・・・っ」

突き上げるたびに、肩にチクリとした痛みが走った。
見ればクォヴレーは突き上げられるたびにイングラムの肩に吸い付いていたのだ。
赤紫の鬱血が肩にどんどん広がっていく。
クォヴレーは感じてわけが分からなくなると時々こうした悪戯をする。
背中に何本もの引っかき傷が出来ることもしょっちゅうで、
時には身体に歯型もついている。
じつはこれらの「跡」は激しいイングラムに対するクォヴレーのちょっとした反抗なのだが、
イングラムはそれに気づかず、ただただ愛しさが増すばかりなのだ。
明日が健康診断なのは知っているクォヴレーが彼の肩に無数のキスの跡を残す。
これはいつものちょっとした仕返しだったのだ。

「・・・(歯型でないだけありがたく思え!)
 ・・・イング・・・、・・・も・・・んんっ」
「・・・ああ、・・そうだな・・一緒に・・・っ」

一段と大きく突き上げたとき、イングラムの眉が寄せられた。
絶頂で気持ち良かったが、同時に肩に痛みが走ったようだ。
見ればクォヴレーが身体を震えさせながら肩に痛いくらい吸い付いていた・・・。


















昨夜の出来事を思い出し、青い顔をしているリュウセイと、
複雑そうな顔をしているライに向ってニヤリと冷笑を浮かべた。

「そのアザ、いたくないんすか??」
「痛くはない・・・むしろ(付けられる時)痛気持ちいい」
「・・・へ?・・気持ちが・・・?」

どういう意味か分からず、助けを求めるように隣のライに視線をむける。
相変らず複雑そうな顔のライは鈍感なリュウセイに大きなため息ののち、

「・・・積極的なんですね・・・貴方の彼女」

とだけ呟いた。
流石にここまで言えば鈍感なリュウセイでも、
あの跡がキスの跡だということに気がつくだろうと踏んだのだ。
けれどライの目論みは的外れに終わる。

「へ・・?彼女・・・どういう意味だ??」

そう、リュウセイはまったく意味を解さなかったのだ。
恋愛ゴトに疎いリュウセイにフッと笑いながら、
イングラムを上着を羽織って二人の横を通り過ぎる。

「確かに俺の恋人は積極的だが・・・、ライ、コレは違うぞ」
「・・・なにがです?」
「コレはキスの跡じゃない・・・そう、いわば治療だ」
「治療・・?」

意地の悪い笑みのままイングラムは言う。

「最近、肩が張っているからな・・・。
 俺の恋人はそんな俺を可哀想に思い、
 ココに吸い付いて血行をよくしてくれているわけだ。
 ・・・だからコレは治療だ・・・・」
「(そんなバカな!)」

ライは心のなかで突っ込みを入れるが、あえて口には出さない。
なぜならイングラムが恐ろしいくらい優しく微笑んでいたからだ。
普段連勝しか浮かべない人間が穏やかに微笑む・・・、
これほど恐ろしいことがあるだろうか?
レントゲン室の皆がその恐ろしさに生唾を飲み込んだ。
イングラムはそんな様子に満足げに微笑むと、レントゲン室を静かに後にした。
そう、イングラムはレントゲン室にいた人間、すべてに釘を刺したのだ。



・・・肩のキスマークを言いふらしたら、命はない、と。


イングラムの恋人が誰であるか・・・、誰も言葉にしないが分かる人間は分かっている。
そしてイングラムは自分以外が恋人を苛めたりからかったりすることを好まないのだ。
だからこのキスマークでもし、彼の恋人をからかったりしたら・・・・。




・・・ライをはじめその場にいた人間がそのことを考え全身に悪寒が走った。

「・・・触らぬ神に祟りなし・・・か」

と、誰もが心の中で思い、
誰にも口外しまい、と硬く誓うのであった。



・・レントゲン室で唯一、鳥肌を立てなかったのは、
今だに全てを理解していないリュウセイだけだった・・・・。











〜予断〜





そのことがあってからクォヴレーはにイングラムに、
肩にキスマークをつけるように命じられ、
困惑のまま肩にキスマークをつける日々を送ったという。


それはなぜかというと・・・それはまた別のお話・・・・。










有り難うございました。 なんとなく思いつき、なんとなく書いた意味のない駄文。 ・・・すみませんでしたー。