見たこともない・・・
 


*パラレル*



〜箪笥の中の疑い〜





箪笥を開けた。
洗濯物をしまおうとして・・・・。
だが・・・開けなければよかった。



「・・・これは・・・?」


今、オレが手にしているのはネクタイだ。
もちろんオレのではない。
オレはネクタイなんて持っていないからだ。
そもそもまだ必要ではないしな。
つまり当然この箪笥の中に入っているネクタイはイングラムのものだ。
だがおかしい。
おかしすぎる。
あのイングラムが・・・・・。

「・・・・・・・・・」

しばらくネクタイと睨めっこをする。
当然ながらネクタイから答えを聞きだせるはずもないので、
オレの眉間にはきっと深い皺が出来ているに違いない。



・・・・こんな時はどうしたらいいんだろう?
これ見よがしにベッドの上に放り投げておく、とかか?
だがそれではあまりにも子供じみている気がする。




オレはネクタイと睨めっこをする。





・・・・数秒後、カチャ、と音がして寝室の扉が開いた。
来訪者は当たり前だがオレの同居人イングラムだ。


「クォヴレー、ただい・・・・!?」

イングラムはオレが手に持っているものを捉えると、
青い顔でソレを奪いに近づいてきた。
だがそうはいかない!

「クォヴレー!それを渡せ!!」
「・・・・何故だ?」
「何故もなにもない!渡すんだ!!」
「だから何故!?これ、お前のネクタイだろ?」
「・・・・・・っ」

すると一瞬押しとどまるイングラム。


・・・ますます怪しい。

なぜならイングラムがこんなアニマル柄のついたネクタイをするはずがないからだ。
いつもブランド物のネクタイとスーツでビシッと決めているのに。


・・・・怪しい。


「これ、お前のだろ?」

オレはニッコリ微笑んでもう一度聞いた。
そんなオレにイングラムは冷や汗を流しながら、
添えでネクタイを奪おうと手を伸ばしてくる。

「クォヴレー!」
「・・・知らなかった・・・。いつの間に趣味が変わったんだ」
「・・・・っ」
「それ、新しい彼女・・・もしくは彼氏に貰ったのか?」
「!」



・・・・それは一瞬だった。
オレの言葉にイングラムは一瞬で顔つきを変え、
オレの手首を片手で後に縛めてきた。

「ぅ・・・あぁぁぁ!!」

普段、あまとり乱暴はしない彼だけれども、
今この時は加減をするのを忘れているらしい。
腕が捻られて・・・痛い・・・苦しい!

「なぜ怒っているんだ!」
「・・・・・」
「怒りたいのはオレだぞ!う、うわ・・浮気しているんだろ!?」
「・・・・!」

イングラムの目が細まった。
一瞬傷ついたように見えた気もするが、
噛み付くようなキスが襲ってきてソレどころではなくなってしまう。

「ンッ・・・ん〜・・・・痛っ」

ガリッと音聞こえたかと思うと、耳の置くがキーンとしてきた。
口の中に鉄の味が広がり、舌を噛まれたのだと悟る。
こんな扱いは初めてだ。
はやり新しい恋人が出来たからオレのことはどうでもよくなって・・・。
オレは信じられない面持ちで彼を見つめた。
するとイングラムは真っ直ぐに、冷たい目でオレを見ていた。

「・・・・焦って損をした」

ボソリ・・・と囁くイングラム。
その声は何故かトーンダウンしていて怒っているのにどこか傷ついて見える。

「イ、イングラム・・?」

彼の名を呼んでみる。
イングラムは目を眇め、何を思ったのかオレの手からネクタイを奪った。

「・・・!?うわっ!なにを・・・!」

そしてこともあろうことか、そのネクタイでオレの手を縛ると、
箪笥のネクタイかけに縛り付けてしまったのでオレは身動きが取れなくなってしまう。

「・・・・イングラム・・・?」


怒りと悲しみに満ちた彼の目。
オレは背筋がゾクリとし、頭の中で何かがはじけていく。


思い出せ。

思い出せ。



思い出さなければオレは永遠に後悔することになる。





そしてその時、フとナイトテーブルに飾ってある写真のうちの一つが目に入った。
幼いオレとイングラムが写っている写真。
まだ小さかった頃から一緒に暮らしていたイングラム。



「あ!」




バチンっ、と何かがはじけ飛ぶ。



そうだ・・・・思い出した。




「まだ、持っていてくれたのか・・・?」

信じられない・・・まさか、本当に。
頬が熱い。
きっと今オレは真っ赤になっているに違いない。

だって・・・そうだろう?
こんなに嬉しいことがあるなんて・・・。


「お前が少ない小遣いをためて初めて俺にくれたプレゼントだぞ。
 ・・・・棄てたとでも思っていたか・・・?
 いや、それ以前に覚えてもいなかったようだな?
 ・・・・浮気、と叫んでいたからな・・・・クォヴレー」
「・・・・イングラム・・・オ、オレ・・・・」



ああ・・・どうしよう。
オレはとんでもない過ちを犯してしまった。
どうしたらいいんだろう・・・?
オレは熱くなる目を持て余しながらただイングラムを見上げるしか出来なかった。



・・・そして。



「・・・・・ん」


箪笥につながれたまま・・・、優しくキスされた。


・・・キス?





「お前に浮気したと疑われてどれほど傷ついたか・・・わかるか?」
「・・・・イン・・・・んっ・・・」

チュッと音を立てて唇を何度も吸われる。

「アニマル柄だから付けるわけにもいかないネクタイを大事にしまっていた俺を、
 ・・・・バカだと罵るか・・・?
 本当は付けたかったが・・・上が五月蝿いしな。
 今も落ち込んだ日はソレをみて自分を励ましていた、と言ったら・・・お前はどう思う?」
「・・・!!ンッ・・・・ふ・・・・」
「クォヴレー」
「・・・・あっ」

唇が口をはなれ、咽におもいきり噛み付かれた。


「あっ・・・あ・・・く・・・」

そして歯型がついたであろう場所をザラリとした舌が這う。

「ふ・・・・ぅ・・ううう・・・」

背筋がゾクゾクし始め、腰が知れず揺れ始める。

「だがお前が忘れていようが俺にとってはアレは世界一の宝物だ。
 昨夜もそれを自分を元気付けようとそれを見ていたんだが、
 しまうのを忘れていたようだ。」
「・・・あ・・・あ・・・イン・・・グ・・・ごめ・・・」
「今日は昇進試験の発表の日だったんだ・・・」
「!!」
「・・・・笑うか?自信がなくてそれを見ていた俺を」

・・・・哀しそうな笑顔を浮かべるイングラムにオレは頭を横に振る。

拘束されていない手でイングラムの頬を包むと、
そのまま自分の唇を近づけて彼の口を塞いだ。

「・・・・ん・・・クォヴレー・・・」
「・・・あ・・・イング・・・ラム・・・・」

キスの合間に名前を呼び合う。
そしてキスの合間に何度も謝罪する。

「イングラム・・・ごめん・・・それから・・・」
「・・・・うん?」
「・・・ありがとう・・・嬉しい・・・オレ・・・っ!!」

イングラムの手がズボンのファスナーにかかった。
オレはヒクンと咽を鳴らす。

「もういい・・・小さい頃の記憶はおぼろげな物だからな」
「・・・ぁっ・・・・」

ファスナーを下ろすと下着の上からやんわり刺激され始める。
小刻みに身体は震え、もっと確かな刺激を求めて身体が熱くなっていく。

「これからは、俺との思い出を何一つ忘れないように覚えこませればいいだけだ。
 ・・・・・身体に、な。」
「・・・・!!」

オレはよほど青い顔をしていたのか、イングラムが面白そうに笑った。

「気持ちのイイコトをしながら記憶力もUPするなんて・・・万々歳だな」
「・・・イングッ」
「・・・それに俺を疑い傷つけた罪は償ってもらわんと・・・」

イングラムの手がやけにゆっくりとした動作で下着を下ろしていく。
ヒクヒクと期待と恐怖で震えるオレの身体。



・・・・・下着が取り払われたと思ったときには、
オレの性器は温かいものに包まれていたのだった。









「あー・・・あっ・・あっ」


もう何十分とその場所を熱い口内と弾力のある舌で嬲られている。
だが決定的な刺激は与えられず頂点には一度も登っていない。
登ろうとすると、根を押さえられそれを押さえ込まれているからだ。
血が逆流し、オレはなにがなんだか分からなくなっていく。

「うっ・・・ンッ・・・ンンッ」


クローゼットの扉がガタガタ音を立てている。
オレの手首がクローゼットと繋がっているから仕方ないのだが・・・。

「イングラ・・・っ・・・あっ・・・イきた・・イきたい!!」

クローゼットの中に腰掛けているオレの足元に跪いているイングラムが
チラッと顔を上げてオレの表情を伺っている。
だがオレは限界が近いのでそんなことにはかまっていられない。
足の間にいるイングラムの頭を両足で抱えこんで腰を振って最後のときを求める。

「イングラム・・・イングラム・・・・」

イングラムがくぐもった声を出した。
そして咽の奥でオレの性器を絞めると、
舌はゆっくりと裏筋をなめながら性器の先までたどり着く。
唇で何度か先端を啄ばまれやがて先の小さな穴に舌を差し込まれ最後の時を即された。

目線で「イけ」と言いながら。

オレはクローゼットをガタガタ揺らしながら最高の時を迎えた。













頬に沢山の衣服があたる。
狭い空間なので、自分の声が反響し恥ずかしさが更に増す。

「あっ・・・そこは・・そこは・・ダメだ!!」

濡れた音が一際大きくしたときオレは背を撓らせた。
衣服が頬を目を多い、喘いでいるせいで飲み込めない唾液が服をぬらしていく。

「ココが一番イイんだろ・・・キュウキュウ絞めているぞ・・・っ・・・」

イングラムは手首の拘束を解くと、
今度は足に巻きつけ足首を箪笥とで俺を繋いだ。
クローゼットのハンガーをかける部分と足首がネクタイで繋がっているので、
オレの腰は自然と浮き上がり、最も深くイングラムの性器を飲み込んでいた。
イングラムは浅い場所を何度もいたぶったかと思えば、
ものすごい速さで最奥まで何度も何度もピストンを繰り返した。
クローゼットの中にいるオレはすでに一度受け止めているイングラムのモノを、
孔から涎のようにながしてクローゼットの床を汚してしまっていた。

「クォヴレー・・・」
「・・・・あっ・・・あ・・?・・・ひ・・あぁぁっ」

中のコリコリした場所を(イングラムがいつもそう言っている)太い先で擦られながら、
胸の飾りを舌で、指で嬲られていく。
オレはたまらず悲鳴をあげながら孔をギュウギュウ絞めてしまうのだった。

「・・・く・・・絞めすぎ・・・だ・・・・クォヴ・・・うっ・・」

ブルッと全身を震わせイングラムはオレの耳を舐めつつ、
低い呻きをなんどか漏らしていた。
身体の奥に二度目の熱が解き放たれている。
ポタポタとクローゼットを濡らす音を聞きながら、
イングラムに抱きしめられながらオレもまた絶頂を向かえたのだった。










だが次の日オレは一日中ベッドから起きることは出来なかった。

さすがに狭いクローゼットの中で、
2回も・・・その・・・激しいセックスは身体に負担がかかったらしい。


けれどその晩はオレとイングラムの手首をあのネクタイで結びながら、
彼の腕の中で眠ったので幸せでいっぱいだった。



「イングラム」
「ん?」
「本当にごめんな・・・。オレ、もう二度と思い出は忘れない」

何度目かの謝罪に困ったようにイングラムは微笑んだ。
そっと額に口付けられ、眠るように言われる。


・・・・イングラムの優しい唇は「もういいんだ」と語っているようで、
オレはなぜだか目が熱くなった。




イングラムは優しい。
セックスは意地悪だが・・・だが・・・優しい。
オレがどんなに酷いことをしていても必ず許してくれる。



オレは彼のその優しさがたまらなく愛しく、
ますます好きが強まった。










・・・・イングラムサイドへ続く・・・・




かも?



有り難うございました。 箪笥プレイですよ! いや、特に意味は無いんですけど。 クォヴレーはイングラムを優しいと思ってますが、 実は優しいのはクォヴレーにだけなんです、という設定です。 その辺をイングラムサイドで書ければなぁ・・・と。