*パラレル*
「出て行ってくれ!二度と近づくな!」
その言葉は男の心に刺さった二度目の棘であった。
〜許容範囲 後編(イングラムサイド)〜
何度目かの大きなため息をすると、
クスッと笑う気配があった。
「もう何度目?随分大きなため息ね」
「・・・うるさい」
うっとうしそうにもう一人の自分のような存在ヴィレッタを
片手でシッシッと追い払おうとする。
だがヴィレッタはそんな態度を大して気にした様子もなく、
むしろ小ばかにしたような笑顔で近づいてきた。
「そういえば最近あの子に構ってないみたいだけど、
ため息の原因はひょっとしてそれかしら?
見境のないプレイボーイはついに愛想をつかされた?」
「なっ!プレイボーイ??!」
「・・・あら?自覚がなかったかしら?」
「!」
言い返す言葉が見つからず、
思わずガタンと席を立ち今度はヴィレッタを見下ろすが、
彼女は軽く肩をすくませるだけでそれ以上何も言わなくなってしまったので、
それ以上怒鳴ることも出来ず、再び椅子に腰を下ろしてしまう。
そしてバツが悪そうに静かに口を開いた。
「お前、気付いていたのか?・・・いつから?」
仕方なく自分から会話を始めるイングラムに、
「変化」を感じ取ったのか、
ヴィレッタはクスッと笑って「最初から」と答える。
「イングラムのあの子を見る目、初めから違っていたわ。
貴方自身は気づいていなかったみたいだけど、
『仲間』だから助けたとかではなく・・・もっと別の視線だった」
「・・・・・・」
「そういえば『アイン』だった頃からあの子には甘かったわよね。
貴方、あの子にどんどん撃たれるのにあまり反撃しなかった。
それどころか見事にあの子のコックピッドだけ的を外して助け出したわ。」
「・・・・・!」
「あれは何故?・・・あの子のこと、知ってたの?」
それは常々思っていた疑問であった。
あの緊張感の中でどうして『アイン』の的だけ外すことが出来たのか。
けれどイングラムはその質問には答えない。
いや、答えられないのかもしれない。
イングラム本人も、
どうしてそんなことが出来たのかわからないというのが本当なのだから。
イングラムは何も言うことなく黙ってしまっている。
なぜアインだけコックピッドを外して撃てたのか。
いや、他のバルシェムに対しても外して撃ったつもりだが、
相手があまりにも戦力に長けており、外すのが難しかった。
かといってアインが決して他の誰かに劣っていたわけでもない。
「・・・イングラム?」
何も話さないイングラムに不信を感じ、名前を呼んでみる。
するとこれまで黙っていたイングラムだが何かを思い出したのか、
ポツポツと再び口を開き始めた。
「・・・一度だけ、アインと会話をした・・会ったことがある」
「・・・・!」
「いつだったかは忘れたが単独行動中に・・・、ある小惑星で・・・、
アインも単独任務中だったのかその廃墟の惑星にいて・・・、
そうだ・・そこで言葉をかわした。」
廃墟となった小惑星。
それがアイン一人で壊滅させたのか、
それとも既に壊滅していたのか、今となって分からない。
だが確かに二人はそこで出会って会話をかわしたのだ。
『動くな!』
そこに何かあったのか、
しゃがんでいた一人のバルシェムに威嚇をこめて一発銃を放った。
バルシェム、アインはゆっくり振り返りイングラムをその目に捉えると、
小さく目を揺らしてそっとその目を閉じた。
アインはここで死んでもかまわない、と全身で語っていたのだ。
何故簡単に自分の命を放棄できるのか?イングラムは驚きを隠せなかった。
『・・・なぜ簡単に命を諦められる?』
するとアインは閉じた時と同じようにゆっくり目を開くと、
澄んだ声でボソッと言った。
『オレのかわりは沢山いるが、
この荒野に緑を取り戻してくれるかもしれないこの存在のかわりはきっといない』
『・・・・?』
訝しげな目でアインを見ながらその足元に視線を移すと、
そこには小さな木の苗が荒れ果てた荒野に負けじと懸命に踏ん張って根を張っていた。
『ここでもみ合えばコレは必ず失われる。
それならばかわりがいくらでもいるオレが消えるのが賢明な判断だ』
『お前・・・』
本当にバルシェムか?と問いたくなったが、イングラムはやめた。
自分も操られていた頃、操られたいたなりに確かに「心」は存在していたのだから、
この幼いバルシェムに緑を愛する心があってもおかしくはない。
だがそれならばどうしてこうも簡単に命を投げ捨てられるのか?
イングラムには理解できなかった。
「・・・へぇ・・・そんなことがあったの」
「ああ」
「・・・で?そのあとは?」
「・・・あっちにおむかえがきたから俺は早々に退散した。
捕まると色々やばいしな・・・・。」
イングラムは目を閉じ天井を仰ぐと、
その時の光景を思い浮かべ口を引き結ぶ。
あの時、あの『アイン』を拿捕していたら今の現実はもう少し違っていただろうか?
「(いや・・考えても過去は覆せない・・・。大切なのは今なのだから)」
イングラムは閉じていた目を開き、再び続きを話し始めた。
「・・・・アインは・・・クォヴレーは白い連中に引きづられながら・・帰った。
あのあとどんな制裁を受けたのかは知らない」
「・・・制裁?」
「・・・考えてみればアインは任務に失敗したのだろうな。
あそこまで荒野にしてしまったら使いようがない。
・・・わざとそうしたのか、間違えたのか・・・どちらにせよ制裁されただろう」
机に肘をつき再び大きなため息を吐く。
イングラムのため息をヴィレッタは今度は揶揄することなく、
微笑みながら受け止め状態をかがめて意見を述べてくる。
「・・・きっとわざとだと思うわ」
「・・・どうしてそう思う?」
「あの子、心が優しいもの。
きっとその星の人たちを自分のようにしたくなくてワザと・・・。
どちらにせよ悲しい現実なんだけど・・・だからね、イングラム」
急に肩をポンっと叩かれ、
何だ?とイングラムはヴィレッタを少しだけ睨んだ。
けれどとうの彼女はニッコリと微笑みながら、
すべて見透かしているかのように言葉にしてくる。
イングラムの話を聞き、彼女の中で一つの答えがでたようだ。
「クォヴレーはね、優しいし一途なのよ。
誰かを愛したらその人だけ。
だからイングラムみたいにだれかれ構わず腰を抱いたり、
腕を組んだりするのはたまらなく嫌なのよ・・・わかる?」
「!」
それは目からうろこな言葉であった。
イングラムにとって女性をエスコートする時、
腰を抱いたり腕を組むのは当たり前のことであった、
そこには別に気持ちなどない。
だがヴィレッタが言うようにクォヴレーがそういうことを嫌なのであったら・・・?
『貴方の心が見えない』
と、言われたのも納得がいく。
それにあの時『初めて名前で呼ばれた』と本人が言っていたように、
イングラムはクォヴレーをこれまで名前で呼んだことがなかった。
どことなく気恥ずかしいのだ。
クォヴレーの名前を考えたのは自分であるし、
なぜ「クォヴレー・ゴードン」なのか、
その理由を思い出すと顔から火が出そうなくらい恥ずかしい。
だがそんな言動の一つ一つがクォヴレーを傷つけ、
「別れる」とまで言われたのであっては恥かしいからだなどと言ってはいられない。
「(ああ、成る程・・・)ヴィレッタ・・・感謝する」
「イングラム?」
おそらく彼女は確信的にその話をしてきたのだろうが、
イングラムは心から感謝せずにはいられない。
「俺は勘違いをしていた。
大切なことを忘れ、大切な存在一生を失うところだった。
言葉にして伝えなければ、態度に表さなければ相手には伝わらないのだということを。
・・・・俺はいつもいつも同じ過ちを繰り返している」
自分が操られていた時も、
全てを仲間に打ち明けていたら何か別の道があったかもしれない。
言葉が足りない、態度が足りない・・・・、
それがイングラムの欠点だ。
自嘲をうかべ席を立ち上がると後悔しない為に早々に行動に移すことにした。
そして時計に目をやれば・・・・。
「・・・12時・・・今は食堂かしらね?」
イングラムの視線に気がついたヴィレッタが先に答える。
「そうだろうな・・・行ってくる」
「気持ちのモヤモヤの整理がついたようね。
いってらっしゃい、イングラム。
そうそう・・・今度泣かせたら承知しないわよ?」
ヴィレッタは部屋を出て行くイングラムに、
最後通告とばかりに低い声で言い放った。
「ヴィ、ヴィレッタ??」
「私のもう一人の家族・・・大切な弟なんだから大事にね!」
指で銃を作ると、バンッとイングラムを撃った。
ニッと微笑み、誓うと、イングラムは足早に食道へ向かうのだった。
食堂へ向かう途中、反対の道からクォヴレーは現れた。
だが正面にイングラムを捉えると逃げるように元来た道を駆け出すのだった。
「クォヴレー!!」
名前を呼ぶと、ビクンと肩が揺れた。
けれどクォヴレーは振り返らず、全力でイングラムから逃げようとする。
しかし身長差で違う歩幅が功を奏し、
細い腕を捕らえるとそのまま近くにあった多目的ホールへ引きずるように連れ込むのだった。
逃げるクォヴレーを腕の中に捉え、力いっぱい抱きしめる。
けれどクォヴレーは腕の中でジタバタ暴れイングラムから逃れようとする。
逃げられるようなことを今までしてきたので仕方がないのだが、
捕まえても尚暴れるクォヴレーにイラだったイングラムは小さく舌打ちし、
顎を捉え、強引に唇を重ね舌をねじりこんだ。
「ん、ん、・・・ん〜!!!」
キスをされてもがむしゃらに暴れ続けるクォヴレーで。
しかし舌を捉えられ、
巧みに口内を貪られては人肌に飢えていた身体は次第に力が抜けていく。
「ん・・・ん・・ふ・・・うぅ・・・」
くぐもった声は涙混じりになっており、
暴れていた力は弱弱しくイングラムを小突く程度になっていた。
大人しくなったのを確認すると、唇をゆっくり話し、優しく抱きしめる。
そして・・・、
「すまなかった・・・クォヴレー」
と、何も言い訳することなくその言葉だけを言うのだった。
抱きしめていたクォヴレーの身体が大きく震え、
顔を上げてイングラムを覗き込んでくる。
「すなまかった・・・、俺が馬鹿だった。
名前も呼ばず、気持ちも伝えず、
他の女性をエスコートする時必要以上に身体に触れたり・・、
それから・・・それから・・・なんだったか・・・??」
本当に思い出せないらしくイングラムは困ったように眉を顰めている。
そんな様子が可笑しくてクォヴレーはクスッと笑う。
けれどまだ警戒しているのかイングラムから逃げようと、
体を捩ることを忘れていない。
折角捕まえたのにこのまま逃げられてはたまらない。
イングラムは腕に力をこめもう一度謝罪の言葉を口にした。
「・・・俺が悪かった。
どうか逃げないで欲しい。逃げないで聞いて欲しい。」
「・・・・・っ」
「クォヴレー、お前を好きなんだ。
・・・・愛している・・・嘘ではない。
だから逃げないで欲しい・・・今まですまなかった」
「!!」
クォヴレーの身体が大きく震える。
色気もなにもない「告白」だが、
気持ちを伝えるには十分であったようだ。
その証拠にクォヴレーは抵抗をやめ、
射抜くような真っ直ぐな視線でイングラムを見つめていた。
「・・・ずっと・・・苦しかった」
「クォヴレー」
「・・・何も言ってくれないし・・・、いつも女性を侍らせているし」
「うっ(無意識とはいえそこを突かれると痛い)」
「・・・名前も呼んでくれなかった・・・」
抱きしめてくるイングラムに体を預ける様に寄り添うと、
クォヴレーは一番感じていた疑問を口にする。
「どうして・・名前、呼んでくれなかったんだ?」
「!!?・・・そ、それは・・・」
「?」
余程恥かしい理由なのか、イングラムは視線を外しなんだか考え込んでしまっている。
真っ赤になりながら天井をみたり壁を見たりして何かを考えているようだ。
だがクォヴレーが再び不安そうに瞳を揺らし腕から逃げようとすると、
慌てて腕に力をこめ、覚悟を決めたように理由を言い始めるのだった。
「・・・俺がイングラム・プリスケンだからだ」
だが出てきた言葉は意味不明であった。
クォヴレーは目をパチクリさせてイングラムを見つめる。
「・・???(どういう意味だ??)」
わからない、と見つめてくるクォヴレーの為、もう一度同じ言葉を口にする。
「・・・だから俺がイングラム・プリスケンだからだ」
しかし何度言われようともそれだけではもちろんクォヴレーは理解できない。
イングラムは小さなため息をつくと心得たように更に話を続けていく。
「クォヴレー、イングラム、ゴードン、プリスケン・・・・銃に係わり合いがある。
俺の名前の由来は銃からだし・・だから好きなお前には俺と共通点を持たせようと・・」
乙女っぽい理由が余程恥ずかしいのか、
体に似合わずボソボゾ声のイングラム。
そして思いもよらない理由にクォヴレーは頬をピンクに染めた。
「だが自分で付けておいてあれだが・・恥かしくてな・・・。
それでなかなか呼べなかったんだ・・・。
お前・・いや、クォヴレーを傷つけているとは思わなかった・・・すまない」
クォヴレーはプルプルと頭を左右に振った。
赤くなっているイングラムに今まで見せたことのない満面の笑みを浮かべると、
更に強く彼に抱きつくのだった。
「そういう理由だったのなら・・許す!
・・・寧ろ嬉しい・・・そんなにオレを想っていてくれたなんて思わなかった。」
「・・・クォヴレー」
「イングラム・・・貴方が好きだ・・・ずっと前から・・『アイン』の頃から。
これから先ずっと一緒にいて欲しい・・・ずっと・・・ずっと・・・んぅ・・」
イングラムはクォヴレーの後頭部に手を添え、
腰を抱き寄せて優しく唇を塞いだ。
キスは触れるだけのもので一瞬で離れたが、
クォヴレーの目はこれまで見たこともないくらいウルウルと熱に犯されていた。
「俺の台詞を先に言うな・・・、俺こそこれから先ずっと一緒にいて欲しい」
「イングラ・・・ふ・・んぅ・・・」
「・・っ、・・・俺は酷い男だぞ・・?クォヴレー・・?」
唇を合わせる。
合わせては離して言葉を交わしていく。
「いいんだ・・・、酷い男でも・・・。本当は優しいということを知っているから」
「・・・馬鹿な・・子だ・・・、今のが最後の逃げ道だったというのに」
「・・・最初から・・逃げる気・・は・・ない・・・」
「・・・俺も・・逃がす気はなかったがな・・・」
「・・・え?」
ニッと笑うイングラムにクォヴレーは小さく微笑みを返す。
やがてクォヴレーが目を閉じイングラムが目を閉じると、
静かな部屋はキスの音だけに包まれていくのだった。
「・・・ぁ、・・・っ・・・も・・・むり・・・」
簡素なベッドの上で絡み合う二人。
あれからクォヴレーはイングラムに導かれるように
彼の寝室へ足を踏み入れたのである。
シーツや床の上には小さなビニール袋が封を開けられて数個転がっている。
その数は二人が一つになった回数と同じ数だ。
クォヴレーはこれ以上は無理だと細い腕でベッドヘッドを掴もうとするが、
その手は筋肉で引き締まった腕になんなく捉えられ引き戻されてしまった。
「まだだ・・・まだ・・抱き足りない・・・クォヴレー・・」
欲情に掠れた声が耳たぶを舐めそのまま鼓膜を犯してくる。
その声は背筋をゾクゾクと犯し、
そのまま脊髄まで響いてクォヴレーは小さく体を震わせた。
パタパタ・・・と、湿ったシーツに快楽の証が滴り落ちる。
それとほぼ同時にクォヴレーの背中には生暖かい液体がピュ・・と降ってくるのだった。
クォヴレーは息を乱し何とかシーツを掴むが、
すぐに身体を反転させられて足の間に大きな身体が滑り込んできてしまった。
「あ!・・・・ぁ・・・んん・・・ぅ・・・」
開放したばかりの性器に柔らかな唇が触れる。
そしてそのまま一気に口内へくわえ込まれ丹念な愛撫を施され始めた。
「・・・い・・や・・それ・・・ん・・・う、く・・・」
身体はとっくに限界を迎えているのにイングラムに触れられているというだけで、
あっという間に性器は硬さを取りもどしていく。
クォヴレーがその気になったことを確認すると、
足を肩に担ぎ上げ既に完全に回復している己の性器をクォヴレーの入り口へと押し当てた。
「・・・あ」
切なげな表情でクォヴレーはイングラムを見上げる。
イングラムは瞼にキスを落し、唇に角度を変えてキスを与える。
そして性器を入り口で数度擦りながら再び一気に押し入っていく。
「ん・・ん・・・あっあっ・・・」
中に納め何度かゆっくりピストンを繰り返したのち、
細い腰を抱え欲望のままに出し入れを始める。
クォヴレーがシーツの上で揺さぶられる姿を愛しそうに見つめ、
唇にキスをし、首筋に噛み付き、腹まで反り立っている性器に手を這わせながら。
そして何度も耳元で繰り返し囁き続ける。
今まで言わなかった分も囁き続ける。
『愛している』
・・・と。
アラドは食堂へいくと決まってキョロキョロ辺りを見渡している。
お目当ての少年を見つければ極力傍に座り一緒に食べよう、と、
相棒の少女・ゼオラと約束しているからだ。
ゼオラは珍しくまだ雑務に時間がかかるらしく食堂にこれないので、
アラドだけ先に来たのだが・・・・。
「(いないな〜・・)あ!」
するといつもの彼の定位置に少しだけ苦手な上司が座っていたので、
怖いが勇気を出して話しかけた。
「イングラムさん!」
するとイングラムがいつもの如く厳しい顔でアラドに振り向いてきた。
「アラド・・・、言われた仕事は片付けたのか?」
「もちろんっす!ところでイングラムさん」
「なんだ?」
「クォヴレー知らないっすか??
あいつ一人が多いしなるべく一緒に食べて仲良くなろうってゼオラと言ってたんすよね。
やっぱ食事が仲良くなるには一番手っ取り早いし・・・知ってます??」
するとイングラムにしては珍しく微笑を浮かべ小さく頷いてきた。
「それはいい考えだな。クォヴレーも喜ぶに違いない。だがアラド・・」
「・・??」
そこまで言うとなぜかイングラムは困ったように眉を寄せた。
そしてアラドには理解できないような言葉を言うのだった。
「今クォヴレーはベッドで休んでいる」
「・・・へ?具合悪いんすか??」
「いや・・・昨夜の運動のしすぎだな・・・、つい羽目を外して俺も手加減を忘れてしまった」
「イングラムさんはいつでもどこでも手加減してないような・・・」
「ん?」
聞き捨てならない言葉をアラドが言った気がして、
イングラムは寒気がするような笑顔を浮かべアラドを見つめた。
すると嫌な気配を感じ取ったのか、アラドはあわててそれを否定する。
「な、なんでもないっす!!
それにしてもクォヴレーが立てなくなるなんてどんな運動したんすか??」
「・・・どんな・・・?そうだな・・・背筋と腹筋・・・が、つく運動だな。
それでいてとても気持ちよくなれる」
「背筋と腹筋???・・・で、気持ちよくなれる運動??(なんだろ?)」
「ああ、特に持久力は相当つくはずだ」
「・・・へぇ???」
それは一体どんな運動なのか?
アラドには分からなかったが、
イングラムが恐ろしく怖い笑顔だったのでそれ以上聞くのは止めることにしたという。
・・・一連の会話がイングラムからクォヴレーに邪な思いを抱くな、
という警告であったことをアラドは理解することはなかった。
またこの会話はアラドに限らず、
クォヴレーに近寄る人間全てに行われていたことを知る人間ごく少数である。
有り難うございました。
そのうちひっそりと続きを書きまする。
だってまだイングラムが「酷い男」じゃない(笑)
ちなみにこのクォヴレーは「アイン」の頃の記憶があります。
|