言葉にはご注意
 


*パラレル*



〜許容範囲 弐(前編)〜








『・・・・別れる!』


つい一ヶ月くらい前もそんな話しで揉めたな・・
と、内心舌打ちをしつつ軽く笑ってあしらおうとしたが、
クォヴレーの目は酷く傷ついており、近寄りがたい雰囲気を纏っていた。
一ヶ月前と同じくどうやら「本気」らしい。
あわてて細い腕をつかまえて今度の理由は何なのか聞こうとしたら、
バチンとなぎ払われクォヴレーは部屋から出て行ってしまった。



「(・・・今度は一体何をしたんだ、俺は??)」

ここ数日は出撃することもなく、
クォヴレーとの中もそれと比例するように穏やかに順調であった。
昨夜も(恥らって)抵抗するクォヴレーを
少しだけ強引にベッドへ引きずり込み行為におよんだ。

「(そう、そこまでは順調だったはずだ)」

難しい顔をしながら窓の外を見る。
宇宙空間なので景色は夜そのもので、
自然が好きなイングラムとしては少し物足りない。
窓に映った自分を睨みながら常時の後の会話を思い出すことにした。










『・・・・?』

熱い時を終えしなやかな身体に遊び程度の愛撫をしていたとき、
フイにクォヴレーは首を傾げてマジマジと髪の毛を見ていたのだった。

『どうかしたか?』
『・・・前から思っていたんだが』
『ん?』

イングラムの腕の中から身体を起こし、
不思議そうな顔で髪の毛を弄り続けている。
ひょっとしたら・・・、と何かを思い当ったイングラムは、
自分も身体を起こしクォヴレーの顔をのぞきこんで口を開く。

『髪が長いのが気になるのか・・?
 クォヴレーは髪の長い男は嫌いか?』

それならばいっそのこと切ってしまおうか?
と、耳元で囁けば慌てて首を横に振り否定された。

『別に髪が長かろうが短かろうが・・・ハゲ、だろうが気にならない』
『ハゲ???(俺がハゲ??想像つかんな)
 ・・ゴホン・・・そうか・・・では一体どうした?』
『・・・この部分』

クォヴレーは右側の頬に当る部分の髪の毛を握り締めもう一度首を傾げてみせる。
どうやら不思議で納得のいかないことがあるようだ。

『この部分だけなんだか違う気がする』
『ここが?』
『なんというか・・・言葉は変だが・・・生きている気がしない』
『・・・・・!』
『・・・?イングラ・・・んっ』

その時だった。
突如唇はディープなキスで塞がれ息をするのも苦しくなってしまう。

『ぁ・・・ん・・・・ん・・・・』

頭を抱え込まれ、圧し掛かられながらする深いキスは、
あっという間に身体に官能の火を呼び起こしていった。

『・・・まさか気づく人間がいるとは・・・驚いた。
 結構精巧なモノだというのに・・・』
『・・・・ふぁ・・?』
『お前・・・クォヴレーは俺が思っている以上に俺を想ってくれているのだろうか?』
『・・・んん』

気を使っているのかあの日以来イングラムは極力『お前』という言葉を使わなくなった。
言いなおしてくれる優しさに、今受けている激しいキスに、
次第にクォヴレーの頭はイングラムだけで一杯になっていくのだ。

『俺の髪はな・・・』
『・・・!あ、・・待っ・・・・あぁっ』

足を抱えあげられそのまま一気にイングラムが入ってくる。
後にギチギチにくわえ込まされると、
そのまますぐに抽挿が始まり、翻弄され始めた。

『あぁ・・・あぁ・・イング・・・』
『俺の髪は分けあってこの部分だけエクステなんだ』
『エクス・・・?ひぅ・・・あっ・・・』
『ちょっとした事故でこの部分だけばっさり切れてしまってな・・・』

イングラムは抽挿をいったんとめると、
生理的な涙が浮かんでいるクォヴレーの瞳に唇を寄せ涙を吸い上げた。
あらかた涙を吸い取ってしまうと、
交わりとキスにウットリとしているクォヴレーが薄く目を開ける。
その瞳にむかい意地悪く微笑むと繋がったまま身体を反転させ、
今度は後から容赦なく攻めたてていく。

『あ、あーーー!・・・イン・・・グ、ラ・・・っ』

首筋に生暖かい何かが触れた。
それはイングラムの唇で、何を思ったのかザラリとした感触がした瞬間、
今度は痛みがその部分に沸き起こったのだった。

『痛っ・・・・痛い!』

白い首筋にクッキリとイングラムの歯型が出来ていた。
それを満足そうに眺めると噛み付いた部分を何度も何度も舐めていく。

『・・・!は・・・あぁ・・・それ嫌だ・・・嫌だ・・・ゾクゾク・・するっ』
『ゾクゾク・・?感じているんだな・・・・、クォヴレー?』
『イングラム・・・・んぅ・・・あ、・・・あぁぁっ』

内壁のある部分を硬い亀頭で抉るように何度も擦られる。
すると無意識に腰は揺れクォヴレーは目の前がチカチカしてしまうのだ。
そして擦られるスピードが速くなったその時、
シーツにとめどなく白濁したものが滴り落ちた。

『・・・・く』

クォヴレーはもう後の刺激だけで極みを得ることが出来るようになっており、
そして極みをむかえると、
中に入っているイングラムをギュウギュウ締め上げ極みへ導いていく。
限界を悟ったイングラムはクォヴレーの中から自身を引き抜いて、
そのままクォヴレーの背中に全ての欲望を迸ばせるのだった。

『・・・近いうち中で出したいな』
『・・・・え?』

交わりが終わるとイングラムは背中に出した自分のモノを拭き取り、
そのままクォヴレーを抱きしめベッドの上で胡坐をかいた。
余韻でボー・・・としてしまっているクォヴレーには
イングラムが今言った台詞の意味がよく理解できなかったらしく、
目を何度かパチパチさせている。

『なんでもない・・・だが近いうちに、な?』
『??????』

苦笑を浮かべているイングラムにますます「???」であったが、
頬に彼の髪の毛が当った瞬間に、
情事中に聞いた彼の言葉を思い出し、髪の毛に触れてみた。

『本当に・・・つけ毛?』
『つけ毛・・・、間違いではないがエクステだ』

自分はまだまだ若いし、つけ毛を付けているとはなんとなく言われたくない。
なのでイングラムはしっかりとクォヴレーの言葉を訂正した。

『何故つけ・・・ではなくエクステを?』
『・・・・切れた時、他の髪も切ってしまってもっ良かったんだが・・・』

イングラムは途中で言葉を止め、クォヴレーを見下ろす。

『・・?』

クォヴレーが『アイン』であった頃、何度も戦った。
何度も戦い何度も会話を交わした。
そしてある時・・・・・。

『(覚えてはいないのだろうな、この小悪魔は)
 まぁ、理由は多々あるが一番は急にショートにしてあらぬ噂を流されて、
 それを一回一回否定するよりはこうしてエクステでごまかした方がはるかに楽だったからだ。
 結構伸びてきたし、もう少ししたら完全に地毛に戻るだろう』
『ふーん・・・・だがそのつけ毛・・・』
『エ・ク・ス・テだ。・・・・これがどうした?』
『用済みで外してゴミ箱へ捨てたとき、ハゲは大層驚くだろうな』
『!』

難しい顔でハゲの心中を思っているクォヴレーに、
イングラムは笑いたいのをおさえるのが大変だった。
なので途切れ途切れに言葉をつむぐことしか出来ない。

『・・・確かに・・・自分の毛がこんなに大量に・・
 と、思ったときの瞬間は見もの・・ではなく気の毒だな』
『そう思う・・・、イングラムは優しいからそんなことはしないだろうが・・』
『(俺は決して優しくないが・・・否定はしないでおこう)クォヴレー』

ギュウ・・と抱きしめ頬や額にキスをする。
クォヴレーは恥ずかしがりながらもうっとりとその行為を受け取っていた。


・・・そう、そしてこのあとに『事件』は怒ったのだ。






昨夜はあの後もう一回セックスをしてそのまま眠りについた。
そしてベッドの上で朝食を取りいつもの一日の始まりである。
書類生理を初めて数分立った時、
あることを思い出したイングラムは、
丁度資料を持って戻ってきたクォヴレーを手招きで呼び寄せた。

『なにかあったのか?』
『面白い昔話を思い出した。クォヴレーのつけ毛、という言葉で』
『昔話?』

その瞬間クォヴレーの目が小さな子供のように輝いた。
なぜならイングラムが話してくれる『昔話』は、
まだ殆ど知らない彼を知るには一番言い方法なので嬉しいのだ。
だがその輝く瞳は次の言葉で瞬時に失われてしまう。

『昔の女の話なんだが・・・』
『!』

クォヴレーの表情が一瞬で強張る。
しかし今から話そうとしている話は本当に面白いことなのか、
イングラムはクォヴレーの変化に気づくことなく話し続けた。

『その女は付け睫毛をしていてな・・・。
 まぁ、いろいろやって俺の部屋に泊まったんだ』
『・・・・・』
『それで次の日目覚めたらスキンの空袋の近くに毛虫が二匹いたんだ』

クォヴレーが唇を血が滲むほどの力で噛みしめている。
しかしイングラムは気がつかない。

『よく見ればそれは女が使っていたつけ睫毛だったわけだが、
 あの時は流石の俺も・・・・クォヴレー?』

ようやく異変に気がついたのかイングラムは話を止めた。
だが時は既に遅し・・・クォヴレーの唇は血が滲んでおり、
身体もプルプルと小刻みに震えている。


『クォヴレー?どうした??唇が・・・』
『馬鹿!!!馬鹿馬鹿馬鹿!!』
『・・・・は?』
『イングラムの馬鹿!最低だ!
 確かに酷い男でもいいとオレはいったが、『デリカシーのない男』は別だ!』
『なんの話だ??』

いきなりヒステリーを起こした理由が分からず、
椅子から立ち上がりクォヴレーを向かい合わせになる。
頬を真っ赤にさせ怒鳴り散らすクォヴレーは初めて目のあたりにするので、
新鮮と同時になにか嫌なものを判じ始めた。
そしてその予感は的中でクォヴレーはまたあの言葉を言うのだった。


『・・・・別れる!』


つい一ヶ月くらい前もそんな話しで揉めたな・・
と、内心舌打ちをしつつ軽く笑ってあしらおうとしたが、
クォヴレーの目は酷く傷ついており、近寄りがたい雰囲気を纏っていた。
一ヶ月前と同じくどうやら「本気」らしい。
あわてて細い腕をつかまえて今度の理由は何なのか聞こうとしたら、
バチンとなぎ払われクォヴレーは部屋から出て行ってしまった。









閉じていた目を開きもう一度窓ガラスに映った自分と睨めっこをした。

「(わからんな・・、何が理由で俺はご機嫌を損ねたんだ?)」


考えても考えても分からない。
分かるのは早くクォヴレーを追いかけないと
本当に「別れる」ことになってしまうかもしれないという『現実』だけだ。

「(・・・こんな時はどうしたらいいんだ?)」

これまで相手から告白されるばかりで自分から告白したことはなかった。
それほど好きではない相手とも成り行きで付き合い、
身体の欲求を満たす為に『交際』をしていたようなものだ。
だからイングラムはクォヴレーが怒った理由が本当に分からないのだ。

「・・・俺は恋愛のマニュアル本でも読んだほうがいいようだな」

クスッと笑って足早に入り口へ向かう。
そしてどこにいったかもしれない『恋人』の元へ向かうのだった。



有り難うございました。 イングラムって(クォヴレーも)なんだかデリカシーはない気がするのですよ。 というか恋愛に鈍感? だから平気で『元カノ(カレ)』の話をしてしまうのですねー(笑) さて、イングラムはその事実を誰から教えてもらうのか・・・!? 後編に続く。