あの瞳にやられた。
知識も感情も目覚めていないアレが偶然俺の所へやってきた。
ただなんとなく・・・・、
いや、疲れていたから普段は口にしない御菓子を食べていたあの時・・・、
どこからともなくチョコチョコっとやってきて、
アレは・・・・真っ直ぐに・・・・・。
〜苦悩(前編)〜
『・・・・ぁ・・・は・・・・あぁ・・・』
モニター越しに白い身体が男の愛撫に応えるように悶えている。
何台かあるうちのカメラの一つをズームさせ、表情を見た。
瞳は潤んでいて、白い皮膚は少し火照り赤みが差している。
『あ、・・・ぁぁ・・・・っ・・・』
切なげに聞こえる声。
押さえつけられた体をクネクネ動かし、相手の快楽を支配していく。
交わりが始まってどれくらいの時が流れただろうか?
おそらく1時間位であろうが、
俺にとってはこの『苦悩の時間』は24時間のそれより長く感じられる。
だが犯され目を潤ませ、頬を薄く染めているアレから目を逸らすことは出来ない。
あの白い体をこの腕に抱(いだ)くことが出来たなら・・・・。
そんなバカなことを考えているうちに『終わり』が近づいてきたらしい。
圧し掛かる男が腰を激しく動かし、ピクピクと痙攣し始めた。
その瞬間、アレの潤んだ目はスッと熱を一瞬にして払い、無表情になる。
ピクピク痙攣していた男の痙攣がビクビクしたものにかわり、
やがてアレの上になだれ込むように倒れた。
アレはそんな男をうっとうしそうに蹴ってベッドの下へ蹴り落すと、
気だるげにその身を起こし、監視カメラへ視線を向けて唇を動かした。
『任務完了』
と。
ターゲットの屋敷は既に制覇しており、後はターゲットを始末するだけだった。
だがなかなか武術に長けた男で、
尚重要な情報を握っているのでただ始末するわけにも行かない。
そして屈強な男によくあることなのだがターゲットは『少年好き』らしく、
閨で情報を探るべくアインを使うことにした。
アインは・・・アレはこういう任務をあてがうごとに不快そうな表情をする。
まぁ、そうだろうな。
男であれば・・・・ノーマルな思考であれば男に抱かれたくはないし、
任務とはいえベッドの中の行為を俺や他のバルシェムに見られているのだから。
ベッドの下に落ちたターゲットをアインが足で小突いている。
普段から無表情なことが多いアインだが、
ベッドを共にし殺した相手には何故か感情をあらわにして、
動かなくなった後も蹴ったり踏んだりして唇を噛みしめていることが多い。
「(・・・機嫌、悪そうだな)」
はぁ・・・と、重たいため息の後俺はアインがいる部屋まで足を運ぶのだった。
部屋に着くと案の定アインの機嫌は最高潮に悪い。
しかも動かなくなった死体を蹴りながら暴言の数々・・・・。
ヤツの『ファン』には見せられない光景だ。
「アイン、そのくらいにして服を着ろ」
「・・・・・・・」
だがアインは返事をせずプイッと顔を背ける。
どうやら当分機嫌は悪いままだな・・・・。
仕方ない・・・・。
「アイン」
「・・・・・・」
名前を呼んでも返事すらしない。
多少イラッとするが仕方ない。
二人で癇癪を起こしても先に進まないからな。
それに・・・今は任務中だ。
「情報は?聞き出せたか?」
アインは俺を一瞥すると床に散らばっている服を拾いながらやっと口を開いた。
「・・・・ああ。後でレポートにして提出する」
「了解だ。・・・・・シャワー浴びてから帰還するか?」
「・・・・かまわない」
「だがいつも気持ち悪いとごねているだろ?
今回はシャワーがあるのだから浴びていけ」
「平気だ・・・・、学習して出される前に殺ったからな」
と、いうことはあの男は天国へいく前に地獄へご招待か?
ターゲットとはいえ気の毒な・・・・・。
だが俺がなんともいえない表情をしていたのが癪に障ったのか、
アインは眉を吊り上げて急に怒鳴ってきた。
「文句あるのか?多少はイイ思いをさせてやったんだ。いいだろ!」
「・・・・文句はない・・・ただ・・・いや・・なんでもない」
「?」
はっきり言わない俺にアインは更に不機嫌になった。
だがいくら不機嫌になられても言えるわけがない。
そうだ。
アインが言うようにターゲットは『イイ思い』はしただろう。
アインの素肌を撫で回していたのだから。
多少ではない・・・・殺してやりたいくらい『イイ思い』をしている。
この手で殺してやりたい。
・・・・まぁ、もう死んでいるがな。
なんともいえない感情を押し殺す為何も喋らないでいると、
そんな俺にフゥ・・と息をはき、
アインはさっさと着替えて部屋を後にした。
あとには俺とターゲットの男だけ・・・・・。
俺はターゲットに近寄るといつものように萎えている性器を思い切り踏みつけた。
相手は何も語らない死体だが少しは気分が晴れるというものだ。
「・・・この汚らわしいものが・・・アインの体に・・・」
あの後、アインが作ったレポートに早速目を通した。
なるほど・・・あの男は様々な場所に内通しており、
色々な情報を持ちえていたようだ。
それを睦言の時にアインに聞かれ、
肉棒で突き上げながら聞かせてくれたのだろう。
レポートを持ってきたアインは行儀よく椅子に座りながら、
パクッとスプーンであるものを食べていた。
どうやら機嫌は直りつつあるらしい。
「・・・やはりプリンはイチゴ牛乳プリンだな」
と、満足そうに頬を綻ばせながら。
その姿は普通の十代の少年だ。
ベッドであんなに淫らに男を誘うようには思えないし、
無表情に誰かを殺すようにも見えない。
アインは同じバルシェムでもどこか違う。
男の癖に女めいた容姿のせいだろうか・・・。
いや、そんなことはたいした問題じゃない。
女の癖に男のようなバルシェムもいるしな・・・。
そう、そうじゃない・・・ちがく感じるのは・・・・。
「・・・・・・・」
俺の視線に気づいたのか、
アインはプリンを食べる手を休め俺を真っ直ぐに射抜いてきた。
初めて会ったあの時と同じ真っ直ぐな目で・・・。
あの瞳にやられたんだ。
知識も感情も目覚めていないアインが研究員とはぐれ偶然俺の所へやってきた。
ただなんとなく・・・・、
いや、疲れていたから普段は口にしない御菓子を食べていたあの時・・・、
どこからともなくチョコチョコっとやってきて、
アレは・・・・真っ直ぐに俺を見つめ・・・・口を大きく開けてきた。
俗に言う『あーん』だった。
まだ真っ白な状態のアインは、
食べることも研究員任せかチューブで栄養を取っていたのだろう。
当然食べ物があれば食べさせてもらえるわけで、
なんとなく俺の食べていた『プリン』が目に留まり、
チョコチョコ近寄ってきて催促してきた。
そう、そしてなんとなくアインの口にプリンを滑らせたら・・・・、
そう、それ以後懐かれたんだ。
出合った頃は今のような目で見てはこなかった。
だが、ある日、あのときの俺の一言で変わってしまった。
『次のターゲットはこの男だ』
『・・・・髭男だ』
『情報を聞きだしてから始末しろ、とのことだ』
『・・・・拷問か?』
『いや・・・もっと楽に聞きだせる』
『???どうやってやるんだ?』
『・・・・少年趣味らしい・・・アイン、わかるな?』
あの時の驚愕したアインの顔は一生忘れられなないだろう。
しかも初めてだと使えないからと、
俺は狼の中にアレを放り込んだのだから。
アインの気持ちを知っていて・・・、
自分の気持ちを知っていて・・・・、
酷い男だ、俺は。
見つめてくるアインの視線が痛い。
耐え切れず俺はその視線から逃れるように
再びレポートへ視線を戻すのだった。
新たな任務が下った。
資料などの準備をすべく、資料室の前にいった時その声は聞こえてきた。
「・・・・・っ・・・・」
甘えるような甘ったるい声。
ギシギシと揺れているのは何の音だろうか?
俺はそっと扉を開けると信じられない光景を目にしてしまう。
粗末な椅子に腰かけた一人のバルシェム。
だがそれが何号かは分からない。
背もたれが扉の正面にあるからバルシェムは背中しか見えないからだ。
アインはそのバルシェムの上にまたがり、
下から突き上げられ咽を背を撓らせている。
「あ・・・ぁぁあ・・・・い、い・・・・ふ・・・」
バルシェムがアインの乳首に唇を寄せる。
するとアインはバルシェムの首に顔を埋めよがり踊った。
そしてフと・・・そう本当に何気なくドアへ視線を向けたのだろう。
だがそこには驚きのあまり突っ立っている俺が立っていたのだ。
だがアインは俺をとらえても相手に何も言わなかった。
それどころか、もっとついて、とか、激しく、とかねだる始末だ。
しかもそのおねだりは見たこともないような冷笑を浮かべ、
俺の目をジッと見ながらだった。
下半身に妙な疼きを覚える。
アインの視線に射抜かれた瞬間、
アインを抱いているのは自分のような錯覚に捕らわれる。
アインは行為が終わるまで俺と視線をあわせたままだった。
いつもとは違う感じにしてみました!
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