銀トレイを片手に俺は窓の外を見た。
外にいる時、雨の降る臭いを感じたが今だ降る気配はない。
しかし曇っているのであの部屋に光は差し込んでいないだろう。

しょぼくれているだろうか?
それとも拗ねているだろうか?
部屋の明かりをつけ、俺が姿を現したらお前はどんな表情を見せてくれる?











〜逆転のラヴァー2〜








入り口の傍にあるスイッチを押すとカチッと音が鳴る。
それは部屋の中の明かりがついた証拠だ。
アレを閉じ込めている部屋はこのスイッチでしか明かりをつけられない。
その為アインは部屋にある唯一の小さな窓から光を得ている。
鉄格子がはまっている小さな窓からの光・・・・。
だが今日は曇っているからその光すらも得られていないはずだ。

カードキーを差し込むと扉が自動に開く。

「・・・アイン?」

片足を踏み入れアレの名を呼ぶと、
眩しい笑顔で俺を迎えてくれるのだが、
今日はその気配を感じられない。

・・・・不貞寝しているのか?
任務が忙しく会いにこれない時は他のバルシェムが食事だけを運んでくる。
バルシェムには会話をしないように言ってあるから、
アインは2〜3日誰とも口をきかない日があるわけだが・・・。
そんな時は決まって不貞寝をしている。
本当に可愛らしい奴だ・・・食べてしまいたいほどに。

ベッドに初めに視線を送った。
だがそこには人のふくらみがないので
どうやらベッドで不貞寝をしているわけではないらしい。
ではどこにいるのか・・・・?
目を凝らすとベッドの足の辺りに
スラリと伸びた裸足の足が除いているのが目に止まる。
俺はトレイを入り口近くの机に置くと、
ゆっくりとそこに近づいた。

アインがいたのはいつもの場所、
日の光が当たる窓の下だ。
全身を投げ出すように横たわっているアインは、
白い肌の色が手伝ってか死んでいるように思えてしまう。
だが雨が降りそうな気候は空気が湿っていて蒸し暑い。
肌を伝う汗がアインの生を教えてくれる。

「・・・・・ん」

寝息とともに寝返りを打つアインにあわせ、
細い首筋からポタッ・・・と落ちる一滴(ひとしずく)。
半ズボンからスラリと伸びた太腿やふくらはぎもうっすら汗ばんで光っていた。

「アイン・・・?」

空調設備も外にあるこの部屋で涼を求めて窓の下で昼寝をしたのか?
唯一の窓から吹いてくる風は相当心地がよいのだろう。

眠るアインの傍に膝をつき、汗ばんでいる額に手をよせる。
汗で張り付いた銀糸をかきあげ、もう一方の手でふくらはぎに触れる。
ゆっくりと下から上へ手を這わし、内腿を撫でる。

「ん・・・んぅ・・・」

眠るアインの口からなまめかしい喘ぎが零れた。
俺は口端を歪め、ズボンの裾から内部へ手を侵入させ性器を掴む。
まだ柔らかい性器を捏ねるように愛撫し、
アインのあえぎをより確かなものへと変えていく。

「ぁ・・・んんぅ・・・ん・・・?」
「アイン・・・起きろ・・・」

耳元で囁きながら手の動きを激しいものに変えていく。
柔らかかった性器は形を持ち始め熱を持ち始めていく。
アインの身体はビクビク痙攣し腰が揺れ始めていった。

「あっ、あっ・・・ん・・・っ」
「起きろ、アイン・・・アイン・・・?」
「あぁ・・・あっ・・・やっ・・・」

眠る睫が痙攣し、眉が切なげに寄せられる。
アインの手は性器を弄ぶ俺の手の上に置かれ無意識に払いのけようとしてた。
俺はクク、と咽で笑い更に力を込めて性器鷲掴んだ。

「あぁーーー!!」

大きく身体を仰け反らせアインの目がパッチリ開く。
切なげに眉根を寄せ俺を睨みながらも足を大きく開いていく。

「んっんっんっんっ・・・・!」
「アイン・・・・」

甘くアインの名を呼ぶ。
耳朶に唇を寄せ中を嘗め回して何度も何度も甘く囁く。

「アイン・・・起きたか・・・?」
「あっ・・・キャリ・・・やっ・・・」

アインが背を俺の胸に押し付け足を更に開く。
後ろから抱きしめるようにアインに愛撫してい俺に更に身体を密着させてくる。


『もっと触って』

と、言っているのだろう。


「アイン・・・寂しかったか?」
「んっ・・・さみ・・し・・かった・・・!」
「そうか・・・俺もお前に会えなくて寂しかった・・・。
 だがαナンバーズ相手には手を抜くわけにいかなくてな・・・」

アインが気だるげに俺を振り返ってきた。
首を僅かにかしげ不思議そうな目でみてくる。
それはそうだろう・・・・。
俺はいつも任務の話などしないからな。


右手でアインの性器を弄りながら左手でズボンをおろしていく。
アインも震える手で自分のズボンを下に下げていく。

「コラ・・・駄目だろ?」
「だって・・・苦しいんだ・・・」
「脱がせるのは俺の楽しみだ・・・そう教えただろ?」
「ん・・・だって・・・」
「だって、ではない・・・いいな?これは命令だ」

アインの濡れている性器の先の孔に爪をたてけん制した。
背を反らしアインはコクコク頷くことで約束をする。

「わかった・・・早く・・・脱が・・・お願いだ・・・!」
「いい子だな・・・」

腰を持ち上げゆっくりアインのズボンを引きおろした。

「あっ・・・あっ・・・・んぅ・・・」

脱がせるとアインに馬乗りになりそっと頬を撫でる。
目を閉じながら可愛らしい声を漏らす唇をそっと塞ぐと、
手に握ったアインは益々硬度を増していくのが分かった。
腰をくねらせ快楽を貪るアイン。
首に回されていたアインの腕が
次第に俺の下肢へと向かっていくのを空気で感じる。
ジッパーを下ろし、
下着から目的のものを取り出すとアインは潤んだ目で俺を見上げてきた。と

「・・・物欲しそうな顔をして・・・欲しいのか?」

コクン、小さく頷き頬を赤らめるアイン。
俺は顔をゆがめるのを堪え、アインにどうしたらいいのかを質問した。

「欲しいならどうするべきか教えただろ?」
「キャリコ・・・」

俺は状態を起し片足を立てて床に座った。
すると下半身だけを暴かれた姿のアインが俺の下半身へと顔を薄めてくる。

「コレ、で・・・突き上げて・・くれ・・・」

愛しそうに俺の性器に頬を寄せ、何度か頬擦りをした後、
躊躇なくそれを口いっぱいにアインは頬張った。
俺は目を閉じアインの奉仕をしばらく堪能した。










アインは俺の前で膝立ちになりながら俺の性器を手で愛撫している。
口の中に俺の指を銜えこみ丹念に舐めながら、だ。

「ん・・・ふ・・・」

音を立て舐めるその姿はまるで子猫のようだ。
目を眇めアインの口から指を引きぬくと低い声で命令する。

「床に這え、アイン」
「・・・・・んっ」

命令通り、四つんばいに這うと俺は秘めた蕾に濡れた指を埋めた。

「あっ・・・はぁ・・・あ、ん」

指で円描くように孔を解し、
一本二本、と指を増やしていく。
指が増えるごとにアインの身体はブルブル震え、甘い声で鳴く。

「ひぃ・・・ぁっ・・・早く・・・早く・・・キャリ、コ」
「あぁ・・・分かっている・・・俺も、限界だ」

腰を振るアインから指を引き抜き、
蕾に欲望を押し当てた。
孔はヒクヒク開閉し俺を今かと待ちわび誘いかけていた。

「ア、イン・・・くっ」
「う、わぁぁぁっ!!」

悲痛なアインの叫び。
馴染むまでゆるく腰をゆすりアインの声色が変わるのをひたすら待つ。

腰をゆすり、首に口付け胸を撫で、性器を扱く。
するとアインの声色が甘いものに変わっていく。
淫らに腰をくねらせ俺を貪りにかかるのだ。

俺は咽で笑い、アインの耳元で囁いた。

「・・・・今の」
「・・・・ぁ?」
「今のお前の姿、彼らが見たらなんと言うかな?」
「・・・は、ぁ・・・・・か・・れ、ら?」
「αナンバーズ・・・」

銀の髪から汗を撒き散らし、アインはまた不思議そうな目をした。
俺は黒く微笑みながらアインの目を見つめる。

「『クォヴレー・ゴードン』が男に犯されよがり狂っていると知ったら・・」

フフフ、と笑ってアインの頬に口付ける。
アインは本当に不思議と言う目で俺を見つめ続けている。

「・・・・α・・?クォ、ヴレー・・・??」

アインは分からない。
分からなくていい・・・・。
全て忘れてしまえ・・・・!

「なんでもない・・・さぁ、いくぞ?」
「・・・っ、あっ・・・は、あぁぁぁぁっ」












鼻に雨の臭いがかすめる。
アインを抱くのに夢中で気付かなかったが、
外はいつのまにか大雨になっていた。
雨で気温が下がり、寒いのかアインはブルリと身を震わせ、
無意識に俺に擦り寄ってくる。
俺の脇に腕を差込身体を摺り寄せながら寝息を立てていた。

「あぁ・・・食事をさせるのを忘れていたな・・・起きたら食べさせよう」

『運動』で乾いた咽をグラスの中の飲み物で潤しながら呟く。
アインの背をなでながら、あの時のアインの言葉を思い出す。




『・・・・α・・?クォ、ヴレー・・・??』





まだ完璧ではないとはいえ、確実にバルシェムへ戻りつつあるようだ。


「アイン、お前はバルシェムだ・・・髪が我々とは違う色になろうとも、な。
 完璧な『アイン』に戻ったらこの部屋からも出られる。」

まぁ、そのアインは『アイン』ではないアインだが・・・。
多少の妥協はしなければアインは戻ってこない。



寝息が深いものに変わっていくアインの癖のある銀の髪を撫でる。


「お前の初陣はいつになるか・・・。
 あぁ、そうだ・・・お前が始めて堕とす相手はヴェートにしようか?」



アインの寝息を激しくなった雨がかき消していく。
バケツをひっくり返したようなその雨はまるで誰かが泣いているかのようだ。


・・・誰か・・・・?



それは『アイン』か『クォヴレー』か・・・・。



いや、結局は同じ人間なのだからそれは愚問だ。



・・・・泣いているのは・・・・
そう、消されていく俺の敵だったアインの心なのだろう。
もう二度と、光を見ることのない・・・・アインの心。



有り難うございました。 前の話の続きです。 まぁ、そのうちヒッソリ続きが書かれているかも?