〜野良猫アイン〜
うっかりソファーで転寝をしていたキャリコ・マクレディは、
腿に感じた温もりにフと目を覚ました。
「(・・・温かいと思ったらまたか)」
ふぅ・・、とため息をつきつつ、
けれどもキャリコの頬は緩んでいた。
それはそうだろう、
バルシェムの中で最も可愛がっているアインが、
自分の昼寝に便乗し、自分の腿を枕にスースー寝息をたてているのだから。
アインというのはバルシェムたちの中で最も幼い少年だ。
だがその気性は野良猫のようで、誰も寄せ付けない。
かと思えば急に擦り寄ってきてはこうして甘えてくるのだ。
バルシェムの誰もがそんなアインを苦笑しつつも、
弟を見守るように温かい眼差しを向けている。
猫のように勝手気ままなアインは、
戦いという世界でしか生きられない戦闘人形達の心のオアシスなのだろう。
キャリコは眠るアインの頭を数回撫でた後、
肩を揺すって起こし始めた。
「アイン、起きろ。食事の時間だ」
「・・・ん?・・・んー・・・・・」
目を擦り、小さな欠伸をしながら起き上がるアイン。
のそのそと床に足をつくと、
まだ眠いのかその顔は少しだけ不機嫌そうだ。
だがすぐにバルシェム特有の無表情に戻ると、
腿を借りていた礼も言わずにスタスタと歩いていってしまう。
「やれやれ・・・」
キャリコはも一度、今度は大きくため息をつく。
そしてなんともいえない感情が胸を締め付けていくのだった。
「あの野良猫に俺はいつまで振り回されるのか・・・・ふぅ・・」
頭を掻きながらアインの後を追い食堂へ向かう、
その途中先に行ったはずのアインに追いついた。
しかしその傍らには別の成人バルシェムがいて、
アインは嬉しそうに何かを話していた。
・・・・その微笑をキャリコは見たことがない。
アインは少しだけ頬を染めていて、なにやら言い返している。
「(一体どんな会話を交わせばあんな顔を見られるのかわからんな)」
再びなんともいえない感情がこみ上げてくる。
だがキャリコはその思いを内に思い止まらせ、食堂へ足を進めるのだった。
日当たりのいい中庭の木陰で、
キャリコは半年くらい前に迷い込んできて
そのまま居ついている猫におやつを与えていた。
食べ終えると、猫は甘えるようにキャリコに頭を擦りつけ、
ゴロゴロと咽を鳴らしている。
そしてお腹いっぱいになると猫は
キャリコの膝の上でスースー寝息を立て始めた。
その愛らしい姿は傷心の心を少しだが癒してくれる。
「(・・まるでアインだな。いや、アインが猫なのか)」
ここに来る途中もキャリコはアインを見かけていた。
目にアインが入ってくればついつい見つめてしまうキャリコ。
アインは先日と同じバルシェムと一緒におり、
あの時と同じように頬をピンクに占めている。
その時キャリコは気がついたのだ。
「(アインはあれが好きなんだな・・・だから俺には見せない笑顔を向ける)」
アインを可愛がっているバルシェムは多い。
キャリコもその一人だが、それ以上の感情を持ち合わせてもいたのだ。
だが決して打ち明けることは出来ない。
「(だから横からさらわれて行く・・・、か)」
膝で眠る猫の身体を撫でる。
すると気持ちがいいのか、
猫は眠りながらもピクピクと耳を動かしていた。
・・・と、その時だった・・・・、
急に膝の上の猫がバシンっ!となぎ払われ、
眠りを妨げられた猫はフー!と自分をなぎ払った人物に威嚇した。
けれど猫をなぎ払った人物はギロッと日と睨みで猫に打ち勝つ。
にらみ合いで敗北した猫はトボトボと名残惜しげに、
木の根元で丸くなり、再び眠りに落ちる。
その様子を唖然と見ていたキャリコは、
信じられないものでも見るかのように猫をなぎ払った人物を見つめ続けていた。
「アイン・・・、何てコトを・・・」
「・・・っ!」
仁王立ちで激昂していたアインが、
キャリコの一言に細い身体をワナワナ震わせる。
そしてまさに猫のようにキャリコに飛び掛ったかと思うと、
思ってもいなかったような言葉を口にした。
「オレの寝床を寝取ったんだから当然だ!」
「・・・・はぁ?」
突然のことでキャリコは尻餅をついていた。
圧し掛かりながら自分の襟元を掴んでいるアインは相変らず激昂しており、
あまつさえわけの分からないことを口走っている。
やる気のないようなキャリコの返事にアインは顔を真っ赤にさせて怒った。
「お前の膝はオレの寝床だ!猫のじゃない!!」
「・・・膝??」
どうやらアインにとってキャリコの膝は自分の寝床らしい。
その寝床を他人・・・、
ではなく他猫に貸し出していたのがお気に召さないらしく、
激しく激昂しているのだ。
「(つまりは縄張り争いか・・??)」
くだらない、とキャリコはアインを引き剥がそうとした。
だがアインは必死にしがみついて離れようとしないので、
大人気なくもキャリコはイラッと声を荒げてしまう。
「いい加減にしろ!」
「!」
「俺はお前の枕ではない!そんなに膝枕が好きなら好きなやつにしてもらえ!
いつも楽しそうに話をしているアイツとかな・・・・!(しまった)」
するとアインは「え?」と呟きキョトンとなった。
余計なことまで言ってしまったキャリコは思わず口元を押さえ、
覗き込んでくるアインの視線からフイと逃げだ。
「・・・アイツって誰だ??」
アインが静かに尋ねてくる。
それを俺に言わせるのか?と舌打ちしつつ、
キャリコは今だ圧し掛かってきているアインの顎を捉え、冷たく言った。
「いつもいつも話しているアイツだ。
頬を真っ赤に染めてさっきも何か話していただろう?」
すると合点がいったのか「ああ」と小さく頷くと、
アインは何故か不機嫌な顔になっていく。
捉えられた顎を懸命に振り払い、キャリコの首にしがみつく。
その行動に流石のキャリコも戸惑いを隠せなかった。
「アイン?」
「アイツは・・好きなやつじゃない・・・。」
「・・・何?」
「アイツは・・・オレをからかって楽しんでいるんだ。
オレの態度はあからさまらしいから・・・
でも、オレの想い人は鈍いから気づかないとも言っていた」
「・・・・そんなに鈍いヤツなのか??」
アインを見つめるキャリコの瞳に同情めいたものが宿った。
その態度に酷く傷ついたように揺れるアインの瞳。
「鈍いなんてものじゃない・・・今だって気づいていないじゃないか」
「・・・・今??」
「今だ・・・」
キャリコの心臓がトクンと高鳴っていく。
まさかそんなことが?と珍しく瞳が不安に揺れてもいた。
信じられなかった・・・。
だがアインがいう「今」が「今」であるならアインの想い人は・・・・。
「アイツ、オレに言うんだ。
鈍いヤツには身体でアタックしろ、と。
だからオレはいつも転寝している好きな人の膝を借りて・・・一緒に・・」
おそらく身体を使ってアタックの意味をアインは履き違えているのだろう。
本来ならば「夜這いしろ」とかそういう類で言ったのであろうが、
アインには今ひとつ分からず、文字通り身体でアタックしてきていたのだ。
「・・・アイン・・・・っ・・・」
首にまわっていたアインの手が、
キャリコの後ろ頭を抱き、そっと唇を寄せてきた。
唇が触れ合うだけなフレンチキス。
だがアインの唇は震えていた。
拒まれるとでも思っているのだろうか?
野良猫は誰よりも警戒心が強いが、
本当は誰よりも臆病な生き物なのかもしれない。
クスッとキャリコは笑うと、
細い肢体に腕をまわし、熱い舌でアインの唇を舐めた。
「・・!!」
突然のことに驚いたアインは一瞬唇を離すが、
直ぐにまた唇は重なり合った。
だが今度の主導権はアインではなくキャリコで、
舌で唇を割ってきたかと思えば、
強引に口の中を貪り始めていくのであった。
「んーーー!!んっ・・・ふく・・・ぅ」
初めての深いキスにアインは苦しさに頭を振る。
しかししっかり固定されていてはたいした抵抗にもならず、
次第に抵抗はやみくぐもった甘い声が聞こえ始めてきた。
覚えのいいアインは直ぐにディープなキスの仕方を覚え、
キャリコに応えるように舌を使い出したからだ。
・・・そして長く深いキスが終わる。
「・・・・ぁ・・・」
唇を離し、見下ろすアインの目はウルウルしていた。
そしてその瞳とは対照的に身体はガクガク震えている。
どうやら感じすぎて震えているらしいが・・・。
「初心だなアイン・・・この程度で弱音か?」
キャリコの一言にキッと潤んだ瞳で睨むアイン。
「そんなわけないだろ!こんなのには慣れている!」
「・・・ほぉ?」
肩眉をあげ、わざと挑発するように声を発するキャリコ。
アインはますます癪に障り「慣れている」を連発した。
「ではセックスも慣れているわけだな?」
「セッ・・・!!」
「どうなんだ?」
「・・・・それは・・・その・・・・」
もごもごと口を動かすアインに内心ほくそえむ。
「(どうやらヴァージンの上、チェリーだな・・・フフフ)
・・・どうした?経験がないのか?」
キャリコはもう一度わざと挑発をした。
その態度から性的なことに疎いのは一目瞭然であるが、
野良猫は手をはなせば直ぐに新しい飼い主を見つけてしまう。
例え今はキャリコを好きでも明日は違うかもしれない。
だからそうなる前に「虜」にしておかねばならないのだ。
今までは主導権はアインにあったが、
どうやらこれからは違うようだ、またそうでなくてはならない。
アインのような猫は守られてこそ可愛らしく啼くのだから。
一方、キャリコの挑発にアインは何度目かの激昂で否定をした。
「そんなわけないだろ!セックスなんて慣れているに決まっている!」
「・・・本当に?」
「もちろんだ!オレはセックスがダイスキだ!
好きな人となら更にダイスキになれるに違いない!」
「・・・なら、問題ないな」
スッと細められるキャリコの瞳。
「・・・え?」
アインは身体を大きく震わせた。
今目の前にいる男が、
これまで見せたこともないような視線を向けてきているからだ。
だがもう遅い。
アインという猫はキャリコという飼い主に餌を与えられてしまったのだ。
そしてそれを口にしてしまった猫はもう逃げられない。
「アイン、一つ確かめたい」
「・・・・なんだ?」
「・・・本当に俺を好きか?」
キャリコの言葉にアインは全身を真っ赤にさせる。
「・・好きだ」
フフフ・・・とキャリコの唇が動いた。
アインを抱き寄せ、耳に熱く語りかける。
「俺も、好きだ。アイン」
背筋に甘い痺れが走る。
アインの身体はガクガク震え、
抱きしめてくれる男に身を預けるしかなかった。
「・・・んっ・・・あぁ・・・は・・・ぁ・・」
両足を折り曲げられたアインは、
キャリコの部屋のベッドで身悶えていた。
小さく息づいている小さな蕾に先ほどから何度も唇の感触を感じていた。
部屋に引きずられてきたアインは、そのままベッドに押し倒される。
膝枕をしてくれていた優しい男はベッドの上では獰猛な野獣らしい。
その証拠にベッドでは酷く意地悪だ。
いや、本当はこっちが本当の彼なのかもしれないが。
アインが恥ずかしがればいわざとやらしい言葉を耳元で囁いてくる。
「あっ・・・あっ・・・」
指が慎重に出し入れされる。
入り口を探るようにぐるりとまわり、ゆっくり溶かしていく。
「・・・痛いか?」
熱のこもった声で問いかけてくる。
アインは小さく頭を左右に振り、腰のジンジンとした痺れを堪えていた。
そしてついに指がその場所から引き抜かれ、アインはホッと息をつく。
熱で火照った頬をキャリコは優しく撫でる。
「アイン・・可愛い野良猫・・・今からお前を俺のものにする」
「・・・・あ、・・・あぁ・・・」
さんざん解され熱くなっていた小さなその場所に、
熱く猛った雄がこすり付けられる。
「あ、・・キャリコ・・・あぁぁーー」
「・・・う」
メリメリと先端が押し入ってくる。
唯でさえ狭いのに初めて経験するアインは無意識に身体に力が入ってしまい、
ギュウギュウキャリコを締め付け、キャリコ自身も痛みを感じた。
「大丈夫だアイン・・・力を抜け・・・」
「・・・あ、・・・無理・・・・んんんっ・・・」
キャリコはあやすように頭を撫で、キスを与える、。
そして空いている手で力を失いかけていたアインの性器を触った。
「ふ・・・んんん・・・っ・・」
アインの身体から力が抜けていく。
唇を離し、キャリコは涙を流しているアインに微笑みかけた。
「そう、その調子だ」
アインの身体の力が抜けるごとに腰をゆっくりと進める。
そして全てを納めると、額に軽くキスをして小さな抽挿から始めた。
初めは擦れる感じに難色を示していたアインも、
時がたつにつれ甘い声で鳴くようになり・・・・。
「キャリコ・・・!キャリコ・・・、もっと・・!」
「・・・あぁ・・・アイ、ン・・・・、く、ぅ・・・」
ベッドで絡み合う二人が大きく震える。
しばらく荒い息づかいだけが部屋の音を閉めていた。
そして荒い息をしながら見詰め合った二人は幸せそうに微笑みあった。
今日もまたソファーで転寝をしていたキャリコは、
足に感じる温もりに目を覚ました。
目を開けるとそこには思っていた通りの人物が、
キャリコの足を枕に一緒に昼寝をしていた。
キャリコは眠るアインの頭を数回撫でた後、
肩を揺すって起こし始めた。
「・・・・んー・・・」
だがアインは眠りが深いのか起きない。
その様子に苦笑しつつ、キャリコは耳元に唇を寄せた。
「起きないと・・・・襲うぞ?」
「・・・んー・・・」
「・・・ああ、襲われたいのか・・・了解した」
「ん・・・ん・・・んーーー!!!」
アインの足がバタバタソファーを蹴る。
唇をキスで塞がれ、鼻を摘まれているので息が出来ず苦しいのだ。
そして鼻を摘んでいない手をアインの下半身へ伸ばし、
ジッパーを下ろすと、直に性器を握りこんだ。
「ふぅ・・!?」
ビクンと飛び跳ねるアインの腰。
キャリコはそのまま丁度よい力加減で性器を扱き出し始める。
次第に蕩けていくアインの口から唇を離し、
高ぶり始めている性器に今度はその口を移動させた。
自分の下半身をアインの頭の位置になるような体勢で覆いかぶさると、
アインの性器に舌を這わす。
「ぁっ・・・あぁ・・・」
口での愛撫に敏感に反応しつつも、
アインはそろそろとキャリコのズボンに手を伸ばした。
ジッパーを引きおろし、
下着から既に半勃ちになっている性器を取り出すと、
教えられたとおりに口へ向かえ入れ愛撫を始めるのだった。
「んん・・・ふ・・んぅ・・・」
キャリコがフェラをやめ起き上がる。
ソファーに座る形になったキャリコに、
アインは体勢を四つん這いにかけるとキャリコの性器を再び含む。
頬を染め、ピチャピチャと美味しそうに舐める姿はまるで子猫そのものだ。
「もうすぐ食事だが・・・愛し合おうか・・・?」
性器を口に含みながらアインは睨みつけた。
ここまで火をつけさせておいて抱き合わないのは拷問に近い。
口端を上げ、アインの態度に満足そうに頷くと、
性器を舐めているアインを抱え上げ、下に纏っているものを一気に剥ぎ取った。
そしてアインのダイスキな膝の上に乗せると、
熱く猛った性器で解してもいない蕾を犯す。
「あぁぁぁっ」
アインの悲鳴が上がる。
けれどもその声は直ぐに甘いものにかわり、自ら腰を振り乱れ始めた。
アインの痴態を満足そうに見上げながらキャリコも高みへと昇り詰めていく。
これで最後とばかりに抱きしめる力を強め、
力強く突き上げればアインは嬌声を上げ果て、
キャリコもまたアインの中に全てを放つのだった。
行為に疲れたアインは食堂へ行くこともなく、
キャリコの膝枕で眠っていた。
目が覚めればお腹がすいた、と騒ぐであろうアインのために、
キャリコの傍らにはサンドイッチが二人分置かれている。
眠るアインの頭を撫でながら、
手に入れた野良猫の幸せそうな寝顔を眺めつつ、
キャリコはサンドイッチを口に運んでいた。
こうして野良猫アインは自分の居場所を手に入れた。
しかし相変らず時々フラフラと出かけてしまう野良猫は、
途中途中いろんなバルシェムに可愛がられ、気が気でないキャリコ。、
だが、実は最初から膝を借りて寝る場所は「キャリコだけ」だった、
という事実をキャリコはまだ知らない。
そう、野良猫アインは造られた時からすでに飼い主を狙い定めていたのだ。
ありがとうございました。
ベッドでは鬼畜だけど普段はヘタレなキャリコもいいと思うのです。
そして天邪鬼なツンデレアインもいいと思います。
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