週に一度の検査を終え、検査時の服装のままアインは急ぎ中庭へと向かう。
そこには予想通り、
いつの間にか住み着いている野良猫の咽を撫でているキャリコの姿があった。
無表情ながらも瞳をキラキラさせてアインはキャリコの元へと急ぐのだった。
〜野良猫アイン2〜
手持ち無沙汰、というわけではないがキャリコはどうしたらよいのか悩んでいた。
庭で野良猫と戯れていたら別の『野良猫』がやってきたからだ。
『野良猫』であるアインは先住民である『野良猫』の首根っこを掴むと
そのままポイッと投げ捨てた。
そしてそのまま我が物顔でキャリコの膝を借りて昼寝をし始めてしまうので、
野良猫も突っ込むタイミングを逃したようだ。
心なしかシュンとした様子でノソノソとアインのお腹の上に乗る。
そしてそのまま身体を丸めお昼寝を始めてしまう。
アインは薄っすら目をあけて野良猫を見るがそれを咎めようとはしなかった。
それどころか猫の背を数回撫でている始末だ。
猫も耳をピクピクさせて気持ちよさそうに寝息を立て始めている。
この二匹(?)、どうやらキャリコの膝という縄張り争い以外では仲が良いらしい。
そんな二匹(?)にキャリコはフゥ・・・とため息をついて、
無駄と分かりつつアインに話しかけてみた。。
「・・・アイン?」
アインは起きていても眠ろうとしている時は話しかけても返事をしてくれない。
だが今回は違っていた。
一度閉じた目をもう一度見開き、真っ直ぐにキャリコを見上げてきた。
「何だ?」
初めての反応に驚き、目を見開くキャリコ。
そんなキャリコを訝しげに見つめながら、アインはさらに口を開いた。
「キャリコ?・・・なぜ笑っている?」
「・・・笑って?」
そしてアインに指摘され、キャリコは初めて気がついた。
確かに自分は笑っている。
嘲笑でも冷笑でもなく自然にでた微笑みだ。
キャリコはアインと一緒にいるとなぜか自然に笑うことが出来るのだ。
「本当だ・・・、俺は笑っているな」
「・・・?」
フフフ・・、ともう一度微笑むとアインの前髪に触れそのまま優しくすいた。
「お前といると自然と笑みが零れる。・・・不思議だ」
と、キャリコがいうと、アインはウンウンと相槌を打つ。
「・・・可笑しくもないのに笑えるのは確かに不思議だな」
「フッ・・・ははははっ」
「!まただ!」
アインの天然的発言にとうとう声を張り上げて笑ってしまうキャリコ。
一方のアインはキョトンとキャリコを見上げ首を傾げている。
何がそんなに可笑しいのか不思議で仕方がないようだ。
好きな相手が傍にいるだけで幸せを感じる。
好きな相手が傍にいるだけで笑みが零れる。
・・・・そんな感情をアインはまだまだ理解できない。
だからアインは不思議で仕方がないのだろう。
「・・・アインと俺の沸点は大分差がありそうだな」
「沸点??」
キャリコは身をかがめてアインの額に唇を寄せ、
そのまま唇を軽く啄ばんだ。
そして唇を離し、目と目を合わせながら吐息をふきかけるように呟いた。
「想いの頂点の高さの差だ。
まだまだ俺の沸点がお前の沸点より上なのだろうな」
「・・・キャ、リ・・・・っ」
唇が重なる音と共に、濡れた音が静かに響く。
どちらともなく唇を開き、舌を絡め始めれば官能の火が目覚め始める。
キャリコの頬に手を添えてもっと貪ろうと身体を起こせば、
お腹の上の猫がズルズルと落ちていき、
眠りを妨げられ、フゥーッ!と威嚇するも既に二人の世界の二人の目には入らなかった。
猫はショボンと耳を垂れさせ、木陰で身体を丸くして眠りにつく。
そして二人はというと、
アインはキャリコと向かい合うようにキャリコの膝の上に座り、
夢中で唇を貪っていた。
「・・・っ、・・・どうしたい?」
唇の間に透明な線を作りつつ、キャリコは質問する。
アインは切なそうに眉をよせ、キャリコの下肢に手を伸ばした。
そしてジッパーを下ろすと、既に熱くなっている性器に指を絡ませる。
「・・・溶け合いたい・・・キャリコ・・・」
「・・・っ」
アインの小さな手が動くたびに男らしい顔が快楽に歪む。
堪らず、アインの双丘を掴むと検査用のスカートのような衣服をたくし上げ、
一気に下着を膝まで引き下ろした。
そして自分の指を舐めて後の蕾をそこそこ解すと、
アインの腰を掴んで先端を入り口に宛がう。
アインはキャリコの首に腕を巻きつけ、
腰を前後に揺らしながらゆっくりと怒張を飲み込んでいくのだった。
「あぁっ・・・、あぁ、・・・あっ」
やがて全てを飲み込むと一旦動きを止め、
再び唇を重ねあう。
生理現象で出てしまった涙をキャリコが舐め、
唇を重ねる。
・・・・そして痛みが消えアインがウズウズしてきたのを見計らい、
キャリコはアインの腰を掴んで身体を上下に動くよう促した。
「は、ぁ、・・・っ・・あっ・・・んっ」
アインが肩に手を置き身体を揺らして貪っている。
その姿を眺めているだけでもイけそうだが、
キャリコとしては思う存分貫いてから絶頂をむかえたいのだ。
アインの動きを手で制して止める。
そして自分の上着に手をかけ、
脱いでシャツになるとそれを地面に敷いた。
わけが分からずキョトンとしているアインの頭に手を添え、
自身を一旦引き抜くと、キャリコは上着の上にアインを押し倒し、
中途半端に脱げかけている下着を一気に下ろした。
「キャリコ!?」
「・・・こんな木陰、どうぜ滅多に人は来ない」
「だが・・・!・・・ひぅっ・・・あっあぁぁ!」
「・・・・アイ、ン・・・・っ・・・」
再びアインの中に挿入し、腰を回転させ小刻みに突く。
かと思えばギリギリまで性器を抜いて、また奥まで突き上げる。
様々な動きを繰り返し、アインを翻弄していった。
そしていつの間にか自分と相手のことしか考えられなくなっていく。
・・・思えば、二人がこうして激しく抱き合うのは決まってどちらかの検査の後か、
任務から無事生還してきた時だけかもしれない。
それ以外で抱き合う時はこんなに激しく抱き合ったりはしない。
それは本能からの行為なのか。
だが二人にとって一番充実した時間なのかもしれないのは確かだ。
「あぁ、・・・あっ・・・いく・・・いく・・・!」
「俺も・・・だ・・・」
キャリコは大きな木を背もたれにしている。
アインはキャリコの大きな身体を背もたれにしていた。
そしてアインの膝には丸くなっている一匹の野良猫。
「猫という生き物は縄張り意識が強いそうだ。
時に尿を撒き散らしてマーキングしたりする」
「・・・ふーん?」
「そして自分の縄張りに他の猫が入ってくると、
物凄く威嚇してそれを守ろうとするらしい。
・・・決して人間には相容れない。
他人を寄せ付けず孤独を好む生物・・・アインみたいだな」
「・・・そうか?」
クルリと背後のキャリコに振り返りアインは唇を尖らせた。
どうやら何かが納得いかないらしい。
「オレは孤独は好きじゃないぞ?
そんなことをいうならキャリコ、お前の方が猫っぽい」
「・・・・俺が・?」
アインは小さく頷いた。
その顔を少しだけ寂しげであったのでキャリコはますます首を傾げる。
「お前は誰にでも同じように接する」
・・・・そうかな、とキャリコは自分自身を反芻した。
確かにどのバルシェムに対しても平等に接しているかもしれない。
「誰にでも同じように接する・・・だが、その分一人での行動が多い。
一人の行動が多いお前は猫っぽいだろ?」
「・・・・!」
言われてみれば、キャリコは一人が多かった気がした。
「決して他人を寄せ付けない存在、それがキャリコ・マクレディな気がする。
・・・・・だがお前は本当に一人が好きなのか?」
「・・・・アイン」
揺れ動くアインの瞳に、堪らず後から強く抱きしめてしまった。
アインはつくづく自分の心を掴むのが上手い、と思ってしまう。
「アイン、一人が好きならお前とこうなったりはしない」
「キャリコ・・・・」
「俺も本当は・・・・」
「・・・・・・」
本当は一人は好きではない・・・、と消え入りそうな声でキャリコは言った。
アインは何もいわず、キャリコの頬を指で撫でる。
・・・・キャリコの目が嬉しそうに細まり、
アインも自然に笑みを浮かべてしまっていた。
・・・・その時、可笑しくなくても笑えるのだとアインは分かるのだった。
「(・・・人は可笑しくなくても自然に笑えるんだ)」
アインの瞳の色から不安が消えていく。
そしてキャリコは思う。
自分たちの想いの沸点の高さに差はなかったのだと。
「アイン・・・だが俺は一つだけ猫の気持ちが分かるんだ」
「・・・猫の気持ち?」
クスッと笑うとキャリコはボゾッとアインの耳に囁いた。
キャリコの言葉にボボッと全身を瞬く間に朱色に染めたアイン。
猫が膝で眠ってさえいなければ、
野良猫に相応しく猫パンチを繰り出したい塩梅だ。
『マーキングする気持ちだ。
俺は俺の縄張り・・・、
つまりお前の下の口に沢山マーキングしているからな・・・いつも』
咽で笑うキャリコ。
それを睨むアイン。
アインの膝で眠る猫。
いつまでも壊れることなく、
ずっとこの温かい時間が続いて欲しい、
と木陰の猫3匹は願うのであった。
ありがとうございました。
いつかバター犬ならぬバター猫を試してみたい!!
・・・え?駄文でですよ?
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