フイッと無視をした。
アインは傷ついた表情をしたが、キャリコを駆け寄るでもなく、
ただただその場に立ち尽くしていた。
その態度が余計に腹だったのか、
キャリコは急ぎ足でその場から立ち去った。
〜野良猫アイン3〜
任務が終わり、いつもの中庭で待ち合わせをしていたので
キャリコは急ぎ足で中庭へ向っていた。
早くあのやんちゃで小生意気な猫を腕の中に抱きしめたい。
口元に笑みを浮かべつつ、中庭へのドアを開けたとき、
キャリコの笑顔は凍りついた。
アインがいつもの自分と会っている場所で他のバルシェムに抱かれていたのだ。
頬をポッとそめて相手の腕にしがみついている。
キャリコはその場で立ち尽くした。
「(やはりアインは猫なのだ。
ちょっとかまわないだけで他に目移りしていく気まぐれな猫)」
その時、キャリコに気がついたらしいアインが慌ててバルシェムの腕を振り払い、
キャリコの元へ来ようとした。
けれどキャリコはフイッと無視をし、アインの視線を逸らした。
アインは傷ついた表情をし、キャリコを駆け寄るでもなく、
ただただその場に立ち尽くしていた。
その態度が余計に腹だったのか、
キャリコは急ぎ足でその場から立ち去った。
「(何故直ぐに俺の元へ来ない?)」
面白くない。
二人は衣服は着ていたが、
キャリコの到着がもう少し遅かったら何を始めたか分かったものではない、
そのことが更にイラつきを増加させていく。
「(小生意気な猫め!)」
自室のドアを乱暴に開け、ドカッと簡素な椅子に腰を下ろす。
けれどイライラが治まらず、机を指でトントン叩き、
今、自分が入ってきたばかりの入り口を睨んだ。
・・・その時。
「キャリコ!」
キャリコ以上に乱暴にドアを開け、アインは乱入してきた。
髪の毛を振り乱し、頬を上気しているのに顔色は青かった。
どうやら直ぐに追いかけてきたようだ。
その事実にイライラが多少消沈したが、
全てを消沈させるにはまだまだである。
キャリコは名前を呼ばれても返事はせず、
無表情にアインを見つめるのだった。
アインはキャリコの傍まで駆け寄ると、
猫が威嚇するように喚きだし始める。
「キャリコ!約束していたのにどうして勝手に帰ってしまったんだ!?」
フー!!と威嚇しているアインは、
尻尾と耳があったら尻尾は天に向ってピンと張り、
耳もピクピク動かしているに違いない。
キャリコは机に肩肘をおいて頬杖をつきながら、
「・・・密会の邪魔をしては悪いと思ったからだ」
と言った。
「・・・密会?」
目をパチクリさせてアインは首を傾げるので、
治まりつつあったイライラが再び沸騰し始める。
「中庭で抱き合っていただろう?
俺があと数秒遅れていたら、あの男に身を任せるつもりだったではないのか?」
「なっ!?」
「・・・猫は気まぐれだからな。
俺が任務で少しかまわないだけで、
別の主人を見つけたというわけだ・・・・そうだろう、アイン?」
「キャリコ!!」
乾いた音が小気味いいほどに部屋の中に響いた。
アインは相変らず威嚇した猫のようにプルプル震えていたが、
やがて背中を丸めてしょんぼりしてしまう。
耳と尻尾があったなら、両方とも地に向って垂れ下がっているに違いない。
「オレ・・・、そんなに浮気性に見えるのか?」
「見えるも何も・・・猫とはそういう生き物だ」
フゥ・・と小さくため息をつきながらキャリコは天井を見上げる。
自分がどんなにアインを好いても、アインが同じくらい好いてくれているとは限らない。
アインは膝の上で優しく撫でてくれるご主人様なら誰でもいいのかもしれない。
「・・・キャリコ」
天を仰いでいたキャリコは名前を呼ばれたので仕方なくアインに振り向くが、
立っていたはずのアインの頭が膝の辺りに移動していて驚いてしまう。
「アイン?」
アインはキャリコの足元に膝をついた格好になっていた。
そして両手をキャリコの膝の上に置き、
頬をその場所に擦りつける様に下ろした。
「確かに猫は気まぐれだ。
気に入らないことがあれば癇癪を起こすし、
かまって欲しくない時に構われると癇癪を起こす。
だが・・・キャリコはまだ猫を理解していない」
「・・・何?」
膝の上に頭を乗せているアインの言葉に少しだけ眉を吊り上げる。
こんなに理解しているつもりだが、
自分はまだまだアインを理解していないというのだろうか?
アインは顔を上げると悲しそうな目で訴えるように呟く。
「猫は気まぐれだ・・・だけど浮気性じゃない。
猫は・・猫は・・・特定の人にしか懐かないんだぞ!!」
「・・・・!」
「そしてオレが心から懐いているのはキャリコだけだ!!」
「・・・・・・・」
確かに・・・猫は特定の人にしか懐かない性質がある。
だが・・・アインは本物の猫ではない。
現実に先ほどのような現場を目撃してしまえば、疑わざるを得ないのだから。
「ならばアイン・・・」
「・・・・・?」
「なぜ、さっきは抱き合っていた?」
「・・・・!あ、あれは・・・」
「あれは?何だというのだ?」
アインはグッと言葉につまっている。
つまる、ということははやりそうだのだ。
今度は大きなため息をついて、膝の上に置かれたままのアインの手をどかそうとした。
けれどアインがグッと布を強く握り締めるので出来ない。
「アイン、放せ」
「嫌だ!!説明する・・・!だからお願いだ!!見捨てないでくれ!」
「・・・・・・」
必死に訴えるアインにキャリコは顎で早くしろと即す。
数秒の戸惑いののち、アインはズボンの布を更に強く握りこんで話し始めた。
「久しぶりにキャリコに会えるから舞い上がっていた。
急いであの場所まで走っていったら、あそこには先客がいたんだ」
話し始めたアインにキャリコは小さく頷いた。
「遠くからだと、あの男はキャリコに見えた。
オレ達意外にあの場所に来る奴は早々いないし・・・、
だからオレは急いであの場所へ向かったんだ・・・そしたら」
アインの話では、驚かせようと後からその男に飛びついたらしい。
けれどキャリコと思って抱きついた男からしたのは、
よく知っているキャリコの匂いではなかった。
体つきも似てはいるが違っていた。
アインは慌てて身体を離そうとした、が、
キャリコとアインの関係を知っている男は、
間違えたアインを見下ろしながらギュッと抱きしめ返してきたらしい。
・・・・男にしてもたまたまその場所にいついている猫を見つけ、
餌を与えていただけらしいが、アインの行動に意地悪を思いついたのだろう。
「・・・そこに運良く・・いや、悪く俺が居合わせたわけか・・・?」
呆れながら確認を知るキャリコに、アインは何度も頷く。
「(成る程な・・・だが・・俺が遅れていたらひょっとしたら・・・)」
そう、ひょっとしたらアインは押し倒されて、
今頃はあの男の腕の中でニャーニャー鳴いていたかもしれない。
誤解であったことは分かったが、そう考えると面白くない。
猫は非常に気まぐれで無防備な生き物だ、と改めて思い知らされた。
「・・・わかった・・・、今回は一応納得しよう・・とりあえずな」
「キャリコ・・・!」
死刑囚のようだったアインの顔ににパッと紅がさした。
キャリコは愛しそうにピンク色の頬を撫で、
猫のにするみたいに咽を擽り始める。
「だがアイン、いくら遠かったからとはいえ、俺と区別できないとは悪い猫だ」
「・・・う・・それは・・・遠かったし・・仕方ない」
「・・・それから事故とはいえ別の男に抱かれた罰は受けさせないとな」
「・・・ば、罰??」
罰という言葉にギョッと身を竦ませるアインに、
ニッコリ微笑んでキャリコはそっとアインの唇に口付けをした。
「・・・ふぅ・・・んっ・・・・」
簡素な椅子に深く腰をかけてキャリコは、
余裕の笑みで自分の足元に跪くアインを見下ろしている。
罰を与える、その言葉どおりキャリコは罰を決行した。
まず、アインの手首を後手に縛め、
口だけで自分のイチモツをズボンから取り出させた。
ホックを外すのは大変だったらしくアインは10分くらいかかってしまっていた。
それからジッパーを口でおろし、
下着に唇を擦りつけもそもそと中から性器を取り出した。
そして唇と舌だけでの愛撫を始めさせたのだった。
「ん・・・ん・・・・は・・・大きい・・・」
アインの愛撫で硬くいきりだっている大きな性器は全てを口には含めなかった。
手を使えれば多少は補えるのだが、アインの手は縛められえいて使えない。
仕方なくアインは口を萎めて先端のみの愛撫に集中し始めた。
舌先で先端の小さな穴を擽り、亀頭を強弱をつけて何度も吸い上げる。
・・・頭上から満足そうなキャリコの吐息が聞こえた。
「・・・そのくらいでいい」
「・・・ふぁ・・・?」
「今度は床に四つん這いになるんだ。俺にかわいいおしりが見えるように、な」
「・・・・う・・・」
唾液とキャリコの先走りで口の周りはベトベトだった。
それだけでも淫らで恥ずかしいのに、
四つん這いでしかもおしりが見えるようにというのは恥ずかしくて嫌だった。
・・・けれどアインはそれに従わなければならない。
これは・・・罰なのだから。
四つん這いになり腰を掲げると、下肢の衣服を剥ぎ取られ、
縛られている腕の指先に冷たいものが塗られた。
「・・・ひゃっ!」
「ただのジェルだ・・・害はない」
「じぇ・・・じぇる???・・・・わっ!」
アインの指にジェルをたっぷり施すと、
小さなお尻の両方に大きな手を置き、横に引っ張る。
するとその狭間に息づいているアインの小さな蕾が丸見えになった。
「・・・自分で指を入れて解せ・・・、
解しやすいようにこうしていてやる・・・」
「そんな・・・・!」
「お前に選択権はないはずだ・・・さぁ・・・?」
「・・・うぅ・・・・」
そう、選択権はなかった。
アインは縛られて不自由なまま、そっと蕾に指を伸ばす。
震える指をゆっくり中に進入させクチュクチュとかき回し始めるのだった。
「あー!あー!・・・ああーーー!!」
床についた膝がガクガク震えている。
小さなお尻も打ち震え、
それでもアインは中に入っている自分の指の動きを止められなかった。
自分の中にある良いポイント・・・、
そのポイントをずっと嬲られ続けている。
初めはアインの拙い動きを見守っていただけのキャリコだったが、
アインが指を二本に増やしたところで、そっと蕾に唇をよせ舐め始めたのだった。
「・・・あっ・・・あ・・・・ん・・・」
そしてキャリコも自分の指をアインの中へ挿入し、
熟知しているアインのいい場所を執拗に嬲っているのだ。
アインの足の付け根には既に大量の精液がついていた。
どうやら指だけで一度達してしまったらしい。
そのことを咎められ、性器の根元を縛められてしまい、
アインはいくら中を嬲られても達することは出来ないでいる。
「ふぁ・・・あっ・・・んん・・・」
「相変らず淫乱な猫だ・・・・フフフ・・・」
「キャ・・リ・・コ・・・も・・やだ・・・おかしくなる・・・」
「おかしくなるのはこれからだろう?」
耳元でそっと囁き、アインの中からアインの指と自分の指を引き抜いた。
四つん這いのアインを抱き起こし、
さっきまで腰掛けていた簡素な椅子に背中を預けると、
アインの口淫で準備万端の性器をもう一度舐めて濡らすように命令する。
「・・・ん・・・・」
いきり立つ性器全体に舌を絡ませヌルヌルに濡らす。
「俺の足の上に座って・・・そうだ・・そのまま腰を下ろせ」
「うぅ・・・・っ」
そんなことは出来ない・・・と言いたいが言えない。
アインは膝立ちになりせめて腰を支えてくれるように頼んだ。
キャリコは小さく頷き、細い腰に手を添える。
縛られて手で熱い性器を固定しつつ、
アインはゆっくりと自分の中へ迎え入れていく。
「・・・あっ・・・」
細い身体がブルリと震えた。
入れただけで身体は感じたらしい。
「・・・小さな性器の先から涙が零れたぞ・・?」
キャリコの言うとおりだった。
向けいれただけで縛られた欲望はそれでも我慢できず涙を流している。
やがて全てを迎え入れる頃にはとめどなく溢れ始めていた。
全てを収めた・・・、ふぅ・・・と安息の息をつと、ぴしゃりと尻を叩かれる。
「何をしている・・・動くんだ」
「うぅ・・・そんな・・・・」
そんな高度な技は無理・・・と頭を横に振るが、
涙で濡れた目でキャリコを見れば口端を歪め、眉を寄せていた。
「あっ・・・うそ、だ・・・そんな・・・」
そう、アインは無意識のうちに腰を揺らしていたのだ。
キャリコはその動きに感じて眉を寄せ、
出来ないと頭を振っていたアインを嘲笑して笑っていた。
「・・こ、こんな・・・こんなの・・うそ・・・ひっ・・あぁっ」
「アイン・・・猫は己の性欲を隠すことが出来ない。
だから・・・恥ずかしいことではない・・・さぁ、もっと腰を振って満足させろ」
「あっ・・・あっ」
アインは目を瞑り腰を動かし続けた。
どう動けば自分のいい場所に当るかも分かり始めた。
「キャリコ・・・!イきたい・・・キャリコ!」
「・・・っ・・・そう・・だな・・・」
「あぁぁっ」
その時、急に背中に痛みを感じた。
目を開けると見下ろしていたキャリコを今度は見上げているではないか。
キャリコは快楽に震えている足を抱え、
耳元まで足を持っていきアインの身体を二つ折りにすると、
本能のまま何度もアインを突き上げ始める。
奥まで入れ、入り口まで引き抜き、そして突き上げる。
その単調な二つの動きを早い動きで繰り返し、
苦しげに呻いているアインの唇に獣が如くむしゃぶりついた。
舌を絡ませあい、吸いあい、甘噛みし合いながら、
アインの性器の戒めをゆっくり解いていく。
「ふぁ・・・あっ・・・く・・・くる・・くる・・・イくっ」
「・・・アイン・・・・・・く・・ぅ・・・」
力強い突き上げにとうとうアインは弾けた。
そしてほぼ同時にアインの中はキャリコのモノで濡らされたのだった。
簡素なベッドの中で広い胸に頬を擦りつける様にアインは眠っている。
時々瞼が震えるから夢を見ているに違いない。
キャリコはクスッと笑って頬を撫でた。
「性欲が満たされると爆睡・・・今回もこの猫に振り回されているな」
一体いつまで振り回され続けるのか・・?
「おそらく一生だな。
俺はアインという猫から離れることは出来ないのだから。
だからアイン・・・、お前もずっと俺の飼い猫でいろよ・・?
もし、ちがう主人を見つけたら・・・・」
その時は頑丈な檻に頑丈な鍵を何個もつけて閉じ込めてしまおう・・、
と耳元で囁いた。
アインは苦しげに眉を寄せるが、キャリコが眉間にキスをすると表情が和らいだ。
猫は特定の人にしか懐かない。
アインが懐いたその人間は果たして正しかったのか・・?
その答えは誰も分からない。
けれどキャリコを選んでアインが幸せであることは確かだろう。
ありがとうございました。
ちょっとがんばりました!
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