求められる頻度が多くなってきていた。
最初は1週間に一度程度。
次第に5日に1度・・・、
今では3日に一度のペースでキャリコに抱かれていた。



次第に体は慣れ、快楽に溺れ始めている・・・・。
もうあの男に抱かれている時、
クォヴレーは自分が『アイン』なのか『クォヴレー』なのか
わからなくなってしまってきていた・・・・・。






それほどまでにキャリコの腕は心地よかった・・・。





〜True Dream10〜









「(・・・重い)」


ベッドで寝返りを打つ。
腰に回された逞しい腕が体の回転を妨げるが、
何とかグルンと翻しベッドから這い出ようとした。

今朝はクォヴレーも、キャリコも体に衣服を纏っている。
この二日間、キャリコは体を求めては来なかった。
だが睡眠をとるときは必ずクォヴレーを抱きしめて寝ているのである。
キャリコの部屋で、キャリコのベッドで・・・。
今では与えられた『自分の部屋』に返されることはなくなってしまっていた。



彼の公務を少しだけ手伝った後、キャリコとベッドに入る、
そんな生活が続いてすでに3週間は経ち始めていた。


腰に回されていた腕を外し、なんとかベッドから這い出る。
しかし・・・・

「・・・うわぁ!」

グィッと引き戻され、
体は再びベッド・・いやキャリコの腕の中へと戻されてしまった。
文句を言おうと、キッと問題の人物を見上げるが・・・

「・・・!?」

前髪を掻き揚げられ、額に唇が寄せられた。

「・・・・・っ」

なれない抱擁にクォヴレーが固まってしまっていると、
フッと笑ってキャリコはベッドから起き上がった。

「アイン」
「・・・・・・っ」

唇を寄せられた額を手で拭いながら、クォヴレーはキャリコを睨んだ。
睨むことで「名前」を呼ばれたことへの返事をしたのだろう。

「・・・何事もなければ今日も書類整理で1日が終わる。 
 昼過ぎにお前をラボに連れて行くからそのつもりでいるように・・」
「・・・・ラ・・ボ?」
「・・・お前に見せておきたいものがある」
「・・・・・?」

その時のキャリコの表情は何故か曇っていた。
なぜそんな表情をするのか・・・?
その時のクォヴレーにはわからなかった。
そしてキャリコは午前中、念を押すように何度もその言葉を言った。

「・・・ラボでは決して俺から離れるな」

・・・と。










質素な昼食を終えるとキャリコに従いその道を歩いていく。
キャリコの部屋と食堂以外に出るのは久しぶりで、
足取りは少しだけ軽やかなものになっているクォヴレー。

「(・・・少しでもココの地理を頭に叩き込んでおかなければ・・。
 脱出を図る時迷子になってしまっては元も子もないからな・・)」


綺麗な中庭を抜け、大聖堂のような場所を通り過ぎると、
壁も柱も質素なものに変わっていった。
壁や柱に刻まれていた豪華な模様が段々とおとなしいものになり、
今では模様すらなくなり、ただの白い壁と白い柱しかない。
道中、キャリコはクォヴレーをチラッと見て、

「これから行くのは前に連れて行った
 『調整槽』がある場所とは違う場所だ。」
「・・・違う?」
「・・・俺から離れるなよ?」
「・・・・・・(また、か)」

朝から何度同じ台詞を聞いたことだろう?
半ばうんざりしながらも、キャリコの目は真剣だったので、
クォヴレーは小さく頷いて見せた。

「(そういえば・・何故今日は仮面を被っていないんだ?)」

白い道を歩きながら、ジー・・と見つめられているのに気がついたのか、
キャリコはクルリと振り返って、

「なんだ?俺の顔に何かついているのか?」
「・・・いや・・ただ・・仮面・・を・・」

しどろもどろで何を言っているのかわからないが、
『仮面』で理解してくれたのか、ポツリと答えは返ってきた。


「・・・指令も、研究員も仮面をかぶせることは嫌いなんだそうだ」
「・・・・・?」

どういうことだろう?と首をかしげていれば、
フッと悲しげに笑うキャリコ。
その顔にドクンッとクォヴレーは心臓が苦しくなっていった。

「(なん、だ??)」
「・・・仮面をしていると、恐怖にひきつる顔が見れなくてつまらないそうだぞ?」
「・・・・え?」
「・・・俺から絶対に離れるなよ?輪姦されたくなかったらな」
「・・・!?まわ・・・?・・・どういうことだ??」
「・・・・・・」

だがキャリコはそれ以上口を開くことはなかった。
憮然としながらも、
クォヴレーは黙ってキャリコについていくことしか出来ないでいた・・。










白い壁の前に着く。
セキュリティ解除のボタンをピピッと押すと、
そのドアは左右に開いた。
中から冷たい風が吹いてくる。

「・・・寒・・っ、なんでこんなに寒いんだ?」
「・・・・・」
「ラボだからか?寒くないと細胞が死んでしまうから・・」
「・・・・・それだけではないがな」
「・・・え?」

スゥ・・と細められるキャリコの瞳。
そして口端を歪めて、

「・・・セックスの後は暑いだろう?・・・・・そういうことだ」
「・・・・???」
「・・・セックス・・強姦にしろ嬲り殺しにしろ、
 動くという意味では暑いから冷房がこんなに効いているんだ」
「・・・・・????」
「ここは研究員の中でもお偉いさんしか入れない特別な『パラダイス』だ」
「パラダイス???」
「お前もかつてはよく足を運んでいただろう?」
「・・・???」
「よく呼び出されて、な」
「・・・・かつて?」

寒い通路を歩く途中に繰り広げられていた会話。
その時フイにキャリコの「目」が忌々しそうなものに変わった。
そしてクォヴレーの腕を取り自分の背後へ隠すようにすると、
ビシッと敬礼をした。

「(??何が起こっているんだ??)」

キャリコの背後に隠れながら、チラッと様子を伺おうと顔を出すが、
グイッと強引に背後に隠されてしまう。

「・・・大人しくしていろ・・・、喰われたくなかったらな」
「喰わ・・・?あっ!」
「!?(・・しまった)」

ゴクン、と音が聞こえるほどの勢いで息を呑むキャリコ。
後に隠した『アイン』が研究員に見つかってしまった。

「・・・・アイン、か?」
「・・・・・・っ」

顎を掴れ、強引に視線をかち合わされる。
その男から舐めるように全身を見られ、悪寒が走るが
何故か体から力は抜け落ちその手を振り払うことが出来ないのだ。

「(・・体が・・動かない・・・?)」
「アイン、だな?」
「・・・・・っ・・・う・・」
「・・・噂には聞いていたが見るのは初めてだ。
 ・・・記憶がないと聞いているが・・・?」

チラッとキャリコに視線を向け確かめる。
キャリコ自身も「彼ら」に逆らう「術」は持ち合わせていないので、
コクン、と頷くしかなかった。
すると研究員の目が細まり、再びクォヴレーへと戻ってきた。

「・・・銀、か。まるであの裏切り者のと同じ色だな」
「・・・(裏切り者??)」
「ですが、取り付いたのは彼ではないようです」
「・・・ほぉ?ではアーレフのほうか?」
「・・・ええ」
「・・・アーレフが取り付いたのに、銀に変わったと・・?
 面白いじゃないか!是非隅々まで研究したいものだ・・・」

グイッと更に顎をつかまれ、その男の顔に近づけられていく。
そして生ぬるいモノが唇を塞いできたのだ。

「・・・・っ」

衝撃で薄く開かれていた唇の間から、
ナメクジのようなモノが進入してきた。
ソレはヌメヌメとしていて気持ち悪いのに、
口から追い払うことが出来ないのだ。
なぜならその男を前に体は強張り、身動き一つ取れないのだから・・。

「・・・ふ・・ぅ・・・いや・・だ・・・んっ・・・」

息継ぎの間に、一瞬離れた唇で「拒絶」の言葉を言った。
『アイン』の拒絶に男は更に面白そうに笑い唇を塞いでくる。


あらかた『アイン』の口を堪能した後、
腰をしっかりと抱きくっつけていた唇を離すと、

「面白い・・前の『アイン』にはなかった『反応』だ。
 アイン、・・・本当に私を覚えていないのか・・・?」
「・・・・・ぅ」
「私はお前達を開発している責任者の一人なのに・・・?
 ずっと可愛がっていたのに覚えていないと・・?」
「・・・・・?」

ジッ・・と上目使いで見つめるが男のことなど思いだせそうもなかった。
そして男はクォヴレーの反応に口端を歪めたかと思うと、
『ギメル』へ『アイン』を返すようにドンッと押した。

「このまま連れ帰って『調査』したいところだが、
 あいにく大事な会議が入っていてね・・・。
 お楽しみは次に取っておくことにするよ・・・」
「・・・・・そうですか」

返ってきたクォヴレーの肩を抱きしめ、キャリコは無表情に返事をした。

「・・・ギメル」
「・・・は」
「・・・いや、なんでもない。
 ここに何しに来たのかは知らないが、せいぜいアインを守ってやることだ。
 私も沢山手垢がついた『モノ』はイヤだからね」
「・・・了解」

ニヤッと笑いながら通路の奥へと消えていく白い男。
男が去ったあともクォヴレーの武者震いは止まらなかった。
フゥ・・と安心したように小さくため息をつくキャリコの声が上から聞こえてくる。

「・・・離れるなよ、アイン」
「・・・・・っ」

動かぬ体を叱咤しキャリコを見上げる。
だがキャリコもまた蒼白になっていた。

「・・・・?」

何故キャリコも蒼白になるのか?
クォヴレーにはわからないので無意識に首を傾げてしまう。
そんなクォヴレーに気がついたのか、
キャリコはそれまで見せたことがないような悲しい笑顔を向けて

「・・・俺も、『バルシェム』だということだ」

と、小さな声で言ったきり黙ってしまった。

「(・・バルシェム?・・・そういえばメムがいっていたな。
 『親には逆らえない』と。・・・そういうことなのか?)」






キャリコの体に隠れながら(というか隠されながら)、
白い通路を歩いていく。
キョロキョロしながら歩いていたので、
キャリコが立ち止まったことに気がつかなかった。
ドンッと広い背中にぶつかり尻餅をつきそうになるが、
腕をつかまれソレは免れた。

「・・・アイン」

名前を呼ばれるとスッと指差された方向へクォヴレーは視線を向けた。

「・・・?・・・・!?」

指差された方向を見てクォヴレーは愕然とする。
ガラスの壁という隔たりはあるが、
その中からはなまめかしい声が聞こえてくるのだ。

「・・・・うっ」

目に映る光景に吐き気がこみ上げてくる。
口を押さえ必死に吐き気と戦った。
キャリコを見ればその『光景』をただ人形のように見つめていた。
まるでこの光景を見るのは『慣れている』目だった。












白い通路を抜け、食堂へとクォヴレーを連れてきた。
青くなっているクォヴレーにホットチョコレートを差し出す。

「・・・・チョコ?」
「・・・偶然手に入れたから牛乳で溶かしてみた。
 いらないのなら捨てればいい」

しばらく差し出されたカップを見つめていたが、
クォヴレーには捨てる理由などなかった。
さっきの光景のせいで体は冷え切っているし、
咽はカラカラなので温かい飲み物は嬉しかったからだ。
差し出されたカップを手に取り飲み始めると、
キャリコは前の席に腰を落ち着けた。

「・・・感想は?」
「・・・・・・・」
「アレを見て何か感じたか?アイン」
「・・・・吐き気がした」

素直に感想を言うとキャリコは意地悪げな微笑を浮かべた。
急な態度の変化にクォヴレーは怪訝な顔になる。


「何故、あんなものを見せた?」
「・・・お前のためだ」
「・・・オレの?」

机に肩肘を突いてキャリコは更に顔を歪める。

「最近、大人しいからな」
「・・・・・」
「ひょっとして『脱走』でも考えているのでは?
 と思い、釘を刺してみたんだ」

やはりこの男には自分の『考え』など見透かされているのだ。
確かにクォヴレーは隙あらば・・・といつも脱走の機会を狙っているが・・・。

「最初は散々抵抗していたというのに、最近抱かれる時も大人しいだろ?」
「・・・・・・」
「イヤでも詮索したくなる、なにか悪巧みでもしているんじゃないか?とな」
「・・・それがどうしてアレを見せることと繋がるんだ?」
「アイン、さっきの光景はまだマシなほうだ」
「・・・マシ?」

さっきの光景、
自分とよく似た容姿を持ち合わせている複数の男女が
複数の白い服を着た人間に・・・


思い出すとブルリッと体が震えた。
虚ろな目の男と女。
獣のような白い服の人間・・・。

「酷い時は生きたまま切り刻まれたりとかされるからな・・処分品は」
「・・・処分品?」
「彼らのその時の気分しだいということだ。
 で、何故お前にアレをみせたのか?という質問の答えだが・・・」
「・・・・・」  
「俺から無事逃げられたとする・・・」
「・・・・・・」
「だがここの地理に疎いお前は直ぐに捕まる・・・、
 すると待ち受けているのはさっきの比ではないことを保障しよう」
「・・・・・?」
「お前は気に入られているからな。
 さっきの男や、その他諸々に体中弄られ・・そして・・」
「!やめろ!!」

ガタンと席を立ち、青い顔でキャリコを睨みつけた。
キャリコは顔を歪ませ、立ち上がったクォヴレーを見ている。

「俺とずっと一緒にいる、とお前が誓えばお前の身は保障しよう」
「・・・・・?」
「俺が指令に口添えすればお前は安全だ。
 彼らも指令には逆らえない」

コレではまるで崖っぷちに追い込まれたのと同じだ。
選択肢が一つしかない。
首を横に振れば容赦なく崖の下に突き落とされるのだ。
グッ・・と口をきつく結んでクォヴレーは睨み続けた。

「(・・・今だけ、今だけだ・・・。
 メムが言っていた通り大人しくしていればきっとチャンスは生まれる。
 それまでオレはあんなふうにされて壊れるわけにはいかない。)」

悔しそうに体をブルブルさせながらも、
クォヴレーは『生き残るため』にソレを選択することにした。
前に座っているキャリコに顔を近づけ、
自分の唇をそっとキャリコの唇に重ね・・誓った。
クォヴレーの口付けにキャリコの目が閉じられていく・・・。
満足そうに笑いながら・・・。


「(・・・これでいい・・。待っていればいつかチャンスが・・!
 ・・・それに、キャリコに抱かれるのも・・・最近は・・)」






唇を離すと同時に背後から声がかかってきた。

「あれ?ギメル?アイン??」
「・・・メム」

声をかけてきた人物・メムにキャリコは少しだけ不機嫌そうに返事を返した。

「???なんか不機嫌だな??あ、ひょっとして邪魔した??」
「まぁ、な・・。相変わらずタイミングの悪い奴だ」
「えぇぇ??今回だけな気きがするけど・・?ま、いっか」

頭をポリポリしながらメムは苦笑した。
キャリコは椅子から立ち上がると、

「アイン、戻るぞ」
「・・・・・」

クォヴレーは返事をせず黙ってキャリコの後に続いた。

「もう戻るんだ?アインと話がしたかったんだけど・・」
「話?アインと??」
「そ、世間話!ま、いつでも出来るしまた今度な?」
「・・・・世間話?・・・相変わらずわけのわからん奴だな。アイン、行くぞ」

眉を吊り上げながらフイッと背を向けるキャリコ。
クォヴレーは慌ててその後を追った。
遅れればこの後に酷い目に合うかもしれない、そう思う心が足を急がせた。
だが、メムの横を通り過ぎようとした時、
腕をつかまれ、手の中に紙切れが押し込まれる。

「・・・?」

驚いてメムを見るが、シーと人差し指を口に当てメムは掴んでいた腕を離す。
そして耳元で、

「・・・あとで読みな・・。きっと役に立つ」
「・・・・?」

と、囁き食堂の奥へと消えていった。
クォヴレーはとりあえずその紙をポケットへ押し込んで
小さくなっているキャリコの背を追った。












部屋についてもキャリコの機嫌は悪いままだった。
クォヴレーに苛ついているというよりも、
まるで自分自身に腹を立てているようにも感じられる。

「あ・・・あ、あ・・っ・・あっ・・うっ・・」

枕を抱きしめ、貫かれるたびにクォヴレーは嬌声を上げていた。
後から貫かれているので、キャリコの顔色を伺うことは出来ない。
いや、顔を見ようと後を振り向くたびに
頭を枕に押し付けられ激しく貫かれるのだ。

「うっ・・・ん・・ぅ・・・ふ・・」
「アイン・・腰を振れ・・」
「んっ・・・」

クォヴレーは頭を左右に振った。
既に激しい犯され方で下半身に力が入らなくなっているので、
とてもではないがそんなことは出来そうにないからだ。

「・・・む・・り・・だ、力・・が・・」
「・・・・・」
「・・・う?・・・あぁぁぁ!!」

体をグルンと回転させられ、
そのままキャリコはベッドに背中を預けるように倒れこんだ。
当然クォヴレーはキャリコの腹の上だ。

「・・・く・・・ぅ・・」
「フフ・・このポーズは初めてだな?
 お前の顔がよくのぞけてなかなかいいものだ」
「あっ・・・突かない・・で・・くれ・・んぅ・・」

クォヴレーは頭を振りながら必死に懇願する。
突かないで、と。
だがキャリコは下から激しく突き上げるのだ。
体に力が入らなくなっているクォヴレーが、突き上げるたび、
自分の腹の上でダンスを踊るように跳ねるのが面白いようだ。

「アイ、ン・・アイン・・もっと乱れろ・・」
「うっ・・・んっ・・あっ・・」
「乱れて、俺だけでいっぱいになれ・・・。アイン・・お前は・・」
「んーっ・・・はっ・・・あっ・・」

キャリコに腕をつかまれたまま突き上げられる。
良い場所を何度も硬いく熱い性器が擦り上げた。
クォヴレーは既にキャリコのことしか考えられなくなっていた。
涙の浮かんだ目でキャリコを見下ろしている。

「イ・・って・・イってくれ・・も・・あっ・・・」

背を撓らせ、クォヴレーはキャリコの腹の上で何度も体をビクビクさせた。
キャリコの顔に白いモノが飛び散っていく。
開放と同時に後孔の奥に熱い迸りを感じ、クォヴレーは更に背を撓らせた。

「・・ぅ・・ぁ・・・はぁ・・・」

気を失いながらキャリコの体の上に倒れこんでいく。
優しく抱きとめ、クォヴレーから性器を引き抜いた。

「・・・んっ」

性器を引き抜いた時、一瞬眉を顰めたクォヴレーだがまた直ぐに眠りに落ちていく。
キャリコは微笑を浮かべながら
用意しておいたタオルでクォヴレーの体を清め、そのまま優しく抱きしめる。
そしてさっき言いそびれた言葉の続きを意識のない本人に囁いた。。

「アイン、お前は・・消えるなよ・・?もう・・消えるな」

ギュウ・・と抱きしめクォヴレーの耳元で何度も『消えるな』と囁いた。
意識のないクォヴレーの顔のいたるところに唇を寄せ
何度も囁き続ける・・・『消えるな』と。



やがてキャリコ自身にも睡魔が襲い掛かってきて、
クォヴレーを抱きしめながら眠りに落ちていくが、
途中、例のことを思い出しキャリコの胸を締め付けていった。

「(・・メム、何故・・お前が・・・)」













誰もいない食堂でメムは小さく笑った。

「(ギメルはあからさまだよな・・・。
 きっと俺のことを知ったからアインにアレを見せたんだろうけど・・)」

グラスに水を注ぎソレを一気に飲み干す。

「(まだ・・時間はある。その時がくるまでにもう一度・・・)」




ありがとうございました。 この話を読むと「メム」の運命はおおかたわかるかと思います。 裏話をすれば、メム君の運命は出した時から「そう」と 決めていたのですよ・・・(涙)