散々好き勝手された身体は激痛が走り指1本動かすことさえ辛かったが、
いつまでもキャリコに体を陵辱されている気は毛頭ないので
とにかく服を手に入れることから始めることにした。

狭いベッドの上には数時間前まで着ていた衣服があるが、
ボタンは引きちぎられ精液と思わしきモノでグッショリとなってしまっている為、
それを着る気にはなれなかった。

次にシーツを体に巻こうかと考えたが、
キャリコが床に溢したレモン水を拭くために
使ってしまったためそれは諦めるしかない。

クォヴレーはベッドに蹲りながら目を凝らして部屋を見渡す。
質素な机の上には数冊の本がありペンとレポート用紙のようなものがある。

「(・・・報告書の作成があるのだろうか・・?)」

机の横には本棚があるが本はあまり入ってはいない。
数はそれほどでもないが、どれもこれも読み古したような本であったので、
クォヴレーは『スペクトラ』と名乗った女の言葉を思い出した。


『これでも随分マシになったのよ』



食堂らしい場所で彼女は確かにそう言っていた。

「(随分マシになった・・・ということは
 ゴラー・ゴレム隊とはそれほど恵まれた環境で
 生活しているわけではないということか?)」


クォヴレーはαナンバーズでの自分の『立場』を何故だか思い出てしまう。

食事をまともに取っていなかった理由・・・
アラドやゼオラには『話すのが苦手』と説明したが、本当は違う。
一度だけ・・まだアラドが仲間にいない頃ゼオラに誘われ食堂へ行ったことがあった。
食堂に自分が足を運べば楽しそうに話していた人々が
急にお喋りをやめ自分を見てきたのだ・・・
クォヴレーにはそれが耐えられなかった・・・
そして次第に食堂からは足が遠のいてしまった・・・。



『お前は常に独り・・・・』



キャリコの言葉が胸を締め付ける。
立ち上がろうとしていた筈なのに体に力が入らなくなってしまい、
頬には一筋の涙が伝っている。

「・・・オレは・・・独り・・・?」



自分は『独り』なんだ・・・。
クォヴレーは何故か涙が溢れてきて止まらなかった。
だがそんな時自分を何の偏見もなく
受け入れてくれた人物達の言葉を思い出す。


『すまないですんだら警察はいらねーンだ!』
『クォヴレー・・これからはもっと私達を信用して頂戴?』


「・・・アラド・・ゼオラ・・・会いたい・・話が・・したい」


彼等にもう一度会いたい・・・その希望がクォヴレーをもう一度奮い立たせる。




〜True Dream7〜



咽はカラカラに渇いていた。
約束通り飲み物をもってキャリコは帰ってきたが
クォヴレーは『哀願の言葉』を決して言おうとはしなかった。
確かに咽は渇いていたが、あの男にこれ以上負けるのはイヤであったし、
なによりその言葉を言ってしまえば
ゼオラやアラドに対して裏切ってしまったような感じがする。
彼等は『こんな自分』でも唯一仲間として認めてくれた数少ない人たちなのだから、
どんなことが合っても裏切ってはいけない・・・。


「(懇願の言葉を口にしてはだめだ・・口にするくらいなら死ぬほうがマシだ!)」






出入り口とは違うドアの向こうからは水音が聞こえてきている。
クォヴレーに哀願する気がないことを悟ると、
飲み物グラスをもったままシャワーを浴びに行ってしまった。
出口には鍵がかけられているので逃げることは出来ない。
おまけに鍵はキャリコが持っている・・・。

「(・・・だがシャワーの時は肌から離している筈・・・
 鍵を奪うなら今がチャンスだ!)」


意を決し、シャワー室へと足を運ぶクォヴレー。
気配を気づかれないようそっと扉を開け、
小さな脱衣所のかごの中に入っている衣服へと手を伸ばした。

大男が纏っているだけあってその服は無駄にでかかった。
ポケットの位置を探すのも一苦労するが、
逃げ出したい一心で必死にポケットを漁っていく。
だが探せど探せどポケットに『鍵』の気配は見当たらない。
クォヴレーは次第に焦ってきた。

「(・・・ない・・ない!どうして・・・他に隠すところなど・・)」


扉の向こうからはまだシャワーの音が聞こえてきている。

「(まだ大丈夫だ・・まだ・・どこだ??ここか??)」	


上着を放り投げ今度はズボンへ手を伸ばす。
ポケットを探し求めて布を弄るが、
慌てているのといつシャワーを終えてキャリコが出てくるかもしれないという恐怖が
クォヴレーの指先を震えさせ上手く動かすことが出来ない。
やっとのおもいでポケットのを見つけ手を入れたとき、
上から、ポタッ・・・ポタッ・・・と水滴が落ちてきた。

「・・・・・!」

クォヴレーの咽がゴクン、と鳴る。
水滴の量は次第に増えてきて頭から頬に伝わり足元に落ちていく。

「・・・なにか探しものか?」

恐ろしく低い声が背後から聞こえてきた。
声には感情というものすら感じることはできず、
浴室の空気を冷たく凍らせていく・・・・。

・・・・シャワーの音はまだ続いていた。

「アイン・・何か探しているのか?と聞いている」
「っ・・・」

筋肉で引き締まった腕がニュッと耳の横を掠めたかと思うと、
そのままその手が咽に伸びてきた。

「!!・・・っ、ぐっ」

濡れた手で咽仏を締め付けられ息が苦しくなっていく。
そしてそのまま強引に上を向かせられた。

「・・・・か・・はっ・・!」

上を向くと無表情な男の顔が目に映る。
何も語らない男のセミロングの髪からは水滴が滴っており、
クォヴレーの頬に何粒も落ちてきた。

「・・・飲み物でも探していたか・・・?」
「・・・・う・・ぐっ・・・!」
「だがアインよ、液体はポケットには収納できないと思うが・・?」
「・・・・っ」

キャリコの手が服の上を弄っていく・・・。。
やっとのおもいで見つけられたのは奴のものと思われるシャツで
下肢には何一つとしてまとってはいない。
クォヴレーには大きすぎるシャツの上を
キャリコの大きな手が何かを探すように這っていく。
相変わらず咽は締め付けられており息は苦しい・・・、
だがキャリコの指がある部分を抓った時、
クォヴレーの体は弓なりに撓っていった。

「・・・ん・・ぐっ」

咽を絞めていた手の力が弱まり、
その手は今抓られている部分の左右対照的な位置にあるもう一つのものを摘んだ。

「・・・っ、ぁぁぁ!」

胸の飾りを服の上から摘まれクォヴレーは鼻にかかった声を出してしまう。
すぐに我に返り声を飲み込むが背後からは男の笑い声が聞こえてきた。

「・・・随分感じるようになったものだ・・・ココはそんなにいいか?」
「・・・・っ」


風呂上りで火照った体と、シャツ一枚の体が密着する。
その時、ズクン・・と体の一部が確かに変化していくのを感じた。
摘まれた突起と、密着した肌と、風呂上りの匂い・・・・
ただそれだけだというのに浅ましくソレは感じ始めたのだ。

「・・・半勃ちになってしまったのか?胸だけで?」
「・・・・っ!」
「フッ・・・口を縫い合わせたとで言う気か?
 まぁ、かまわんがな・・・アイン、さっきの質問の答えがまだだ」

クォヴレーは足をガクガクさせながら背後の男を顔だけで振り向き睨んだ。

「・・・しつ・・もん?」

口を開いたクォヴレーにおやおやという顔になる。
そして皮肉たっぷりに、

「・・・なんだ・・・縫い合わせたわけではなかったのか?
 ・・・何か探しているのか?と聞いただろう?
 何をしていた・・・・?ここで・・・・?」

やり取りの間もずっと胸を玩び続けられている。
口に手をあて必死に声を抑えながらクォヴレーは搾り出すように言葉を発した。

「・・・・なにも・・・さがしてなど・・いない・・・」
「何も?では俺に哀願する気になってココで待っていたとでも言う気か?」
「違う!!」
「探し物でもなく哀願する気でもなく・・・では何をしていたというのだ?」
「・・・それ、は」

クォヴレーは答えにつまってしまう。
密着した身体からは風呂上りで火照った男の体温と共に、
雄の欲望をまざまざと感じることができるからだ。
もし、ここで素直に『鍵を探していた』と言っても
この男からは逃れられないだろう。
仮に最後まで突っ張りとおしてもこの男が逃がしてくれるはずもない。
つまり自分の運命はこの男に、
この場にいることを見つかってしまったその時から
決まってしまっているのだ。

何も答えることないままゆっくりと顔だけ振り返る。
キャリコの口元は歪んでいる。
だが目は決して笑ってはいなかった・・・・。
体が震える・・・今度は『恐怖』で震えているのだ。
目が笑っていない・・・それは男の『怒り』を表しているに違いない。

「(・・・わかっているんだ、オレが鍵を探していることを。
 わかっていてワザと何をしていたのか?と聞いてきているんだ。)」

金縛りに合ったかのように体が動かない。
キャリコの視線はクォヴレーを捕らえて離さない・・・。
嫌な汗が背中を流れていくのを感じながら、
クォヴレーは狭いバスルームへ視線を動かした。
これ以上キャリコの厳しい視線には耐えられなかった為だ。

「(あの目は怖い・・・オレの全てを見透かしているようで・・・
 心を見透かされているようで・・・キモチワルイ・・・)」





嫌なものを追い払うかのようにバスルームを凝視する。
視線の先にあるバスルームも実に質素なつくりのようだ。
シャワーと小さな浴槽・・・。
棚みたいになっている窪みにはシャンプーやコンディショナー・・・
そして飲み物グラスが置かれている。

「(・・・あれは・・さっきキャリコが持ってきた飲み物・・・あ!)」

顔に表情を出さなかった自分に正直驚いたクォヴレー。
目線の先にある飲み物グラス・・
その中には細長くさび付いた金属のようなものが入っていた。

「(鍵だ・・・だがどうやって・・・)」
「アイン?」
「!!・・・何だ?」

動揺を隠すように慎重に答える。
だが青緑の瞳が大きく揺れ動くことまでは抑えようがなく、
クォヴレーの顔を覗き込むように見ていたキャリコには
その変化は手に取るようにわかってしまう。

「・・・お前は隠し事が出来ないタイプなんだな・・・
 これは新しい発見だ・・・・」
「・・・・・・なんだと?」
「宝物を見つけた子供のような瞳をしている・・・。」

クォヴレーは焦った。
どうしてキャリコにはいつもいつも見破られてしまうのか!?

目線の先にある鍵・・・そしてキャリコ・・・
この二つを目だけで交互に見つめる。

ジッ・・・とクォヴレーの行動を見守り
その目線の先にあるものが何なのかをキャリコは見極めた。

「・・・鍵、か」

クォヴレーの瞳は大きく揺れ動いた。
そしてキャリコはクォヴレーの見つけた『宝物』が『鍵』であることを悟る。

「くくくくく・・・記憶をなくしても俺への嫌悪は消えないというのか?」
「・・・・?」
「お前のその目・・・『アイン』が最後に向けた目と全く同じ・・。
 俺を侮蔑し憎んで、嫌っている目だ。アイン、お前はそんなに俺が嫌いか?」
 俺から逃れたいというのか・・・・?」 

一体この男は何を言っているのか?
クォヴレーには理解出来なかった。

「人を玩ぶような『人間』、嫌いに決まっているだろ!」

次の瞬間、口元だけにしかなかった表情が顔全体に広がる。
キャリコは何かに驚いたのか、眼は完全に見開いていた。

「『人間』・・・・・?俺が?」
「・・・・?」
「お前には俺が『人間』に見えるのか?」
「?何わけの分らないことを言っている?!
 人間でなければ一体なんだというんだ!?
 何処からどう見ても人間だろ!?お前も!あのスペクトラという奴も!」
「・・・・ふ、ふふ・・・くくくくくく・・・人間、か」
「キャリ・・・あっ!」

急に笑い出すキャリコを変な顔で見上げていたが、
その顔が不意に真面目なものに変わった・・・
そして次の瞬間には生温い唇で唇が塞がれていた。

「・・・ふ・・・んんっ」

優しい口付けだった。
クォヴレーに快楽しか与えない口付け。
いつものように荒々しく無理やりに感じさせられるものではなく、
ゆっくりと口内を蹂躙され体の芯から感じさせられる口付け・・。

快楽に負けそうになる・・・。
だが負けるわけにはいかない・・・。

「(しっかりしろ!ココで屈しては二度とゼオラたちに会えない・・!)」

応えてしまいたくなる口付けから逃れる為、
遠くなりかける意識を振絞り、クォヴレーは・・・・

「!!・・・・ぐぅ・・・っ!」

口内の優しい侵入者に牙を向けた。
優しい快楽を与えてくれていた舌に歯をたて、
キャリコをひるませる事に成功する。
一瞬の隙をつき、持てる力の全てでキャリコの体を押し返すと、
目的のものに向って走った。

飲み物グラスに手を伸ばし逆さにすると鍵を手に入れる事に成功する。
だがクォヴレーは鍵を転手に入れたその先のことを考えてはいなかった。
こんな狭い場所ではあの男から逃げられるはずはないというのに・・・。

バスルームから出ようと身を翻した時、大きな壁にぶつかってしまう。

「・・・つ!」

こんな所に壁などないはずなのに・・・、
クォヴレーはおそるおそる壁を見上げた。

ぶつかった壁・・・キャリコは悪魔の如く形相で冷たくクォヴレーを見下ろす。
ジリジリと浴室の壁に追い詰めていく。
キャリコが近づくたびに恐怖の色が濃くなるクォヴレー。


そして・・・ついに壁ギリギリまで追い詰められてしまった。



ありがとうございました。 本当は裏の裏の予定だったのですがエロくないので普通の裏にUP. この続きが裏の裏となります。 1月中旬頃UP予定・・・・。 嘘つきになってしまい申し訳ないです・・・・。
もどる