〜スモーク・スモーク〜




乾いた音が響き、背の高い男の足元で頬を腫らした少年が苦しそうに咳き込んでいた。
どうやら頬を叩かれた勢いで煙が一気に気管に入り込んだらしい。
男の手にはまだ取り上げたと見られる火の付いたタバコがあり、
忌々しそうにソレを壁に押し付けて消し、それを床に放り投げた。
足元に蹲っている少年は憎らしげに男を見上げ、
床に投げられたタバコに手を伸ばした、が、

「うっ!!」

拾おうとした手は男の足に踏みつけられその痛みに小さくうめき声をもらす。
アインはなんとか足を払おうとキャリコの足首をバシバシ叩くのだが、
キャリコは足をグリグリしてアインに態度を反省させようとした。
だが負けん気の強いアインが直ぐに白旗を上げるはずもない。
足を叩く力が強まるにつれキャリコも手を踏んでいる足に力を込めた。
そしてついに白旗を上げる。

「い、痛い!やめろ!!」
「・・・タバコは止めろ、と言ってあっただろ?どうして守らない」
「!!」

アインの手からキャリコの気配が消える。
直ぐに起き上がると少しでも痛みを和らげようとアインは自分の手を撫でた。
するとしゃがんだキャリコの手がすかさず伸びてきて手首を掴んだかと思うと、
アインの腫れ上がった手の甲に唇を押し当ててきた。

「かわいそうに・・・こんなに腫れて・・・」
「・・・お前がやったんだろ!」
「そうだが・・・原因を作ったのはアイン、お前だ」
「・・・っ」

アインの手を自分の口に寄せながら冷たい目でアインを見つめる。
その目つきは敵を撃つときと同じくらい冷えたもので、
ブルリとアインの身体は無意識に総毛立つ。
そんなアインを見つめながらキャリコは静かな声で話しだした。

「タバコは身体によくない・・・。
 いくら我々が使い捨てできる存在だとしても、命は大切に、だ。
 それにタバコなど吸ったらお前が気にしている身長が更に伸びなくなるぞ?」

厳しい視線ながらもキャリコの言葉は優しく、アインはウッとなってしまう。
けれどアインにだってタバコを吸ってしまった理由はあるのだ。
それはきっとキャリコに分かる筈もない理由で決して言いたくはないのだが、
黙っていれば何かよくないことが起きる気がする・・・アインの本能がそう語っているので、
叱られた子猫のようにシュンと背中を丸め、ぼそぼそ約束を破った理由を話しだす。

「・・・・・・だからじゃないか」
「・・・・?なにがだ?」
「だから!・・・タバコを吸おうがそうでなかろうがオレは伸びない!それがよく分かった。
 なら伸びなかった口実に出来るようにオレは・・・・・」  

戦闘マシーンであるバルシェムはよく体調管理の名目の下、身体検査などが行なわれる。
その時、健康診断のようなものも行なわれ、数値がよくないものは処分されていくのだ。
アインは数値はさほど問題ではないのだが唯一問題なのが伸び悩んでいる身長だ。
世間一般的には「普通」だが、大男・大女が「普通」であるバルシェムの中においては、
「異端」でしかない・・・・アインはそれを気にしていた。
しかしアインが小さいのは別に欠陥品だからではない。
小さいのも必要だ、とワザと投薬でそうされていることを本人は知らないのだ。
アインは背が小さくとも処分されない。
当然キャリコはそのことを知っている。
だがアインを傷つけたくないので言ってはいない。

「(本当のことを言えば益々意固地になるだろうし・・・困ったものだ。
 だがタバコは吸わせたくない。似合わんからな・・・・そうだ!)」

アインの「言い訳」にワザと大きなため息をついてみせ、
アインが怯えたところで後頭に手を伸ばしそのまま自分の元へ引き寄せた。

「・・・・・っ」

唇に柔らかい物が触れる。
キャリコは唇を重ねることに成功すると容赦なく己の舌をアインの中へねじ込んだ。
そして逃げ惑う舌を追っては絡み合わせ、最後に小さな舌に歯を立てた。

「か、噛んだ・・??」
「・・・・不味い」
「・・・え?」

キスの激しさと、舌を噛まれた痛さで目を開いたアインの目には涙がたまっていた。
尚且つ「不味い」と言う言葉が引っかかりボーとしているアインにはかまわず、
すかさず下半身に手を伸ばすとそのままアインのズボンのジッパーを下げていく。

「キャリコ・・??ま、まさか・・ここで???」
「・・・ここ、だからだろ?」

不安と驚きで揺れているアインに意地悪い微笑を浮かべる。
その目の意味するところは、
そもそもタバコを吸っていることがばれないように人気のない場所で吸っていたのだから、
ここでコトをいたそうと滅多に人は通りかかったりしないだろ?と目で語っているかのようである。

「タバコを完全に止めたくなるようにさせてやろう。
 身体に悪いだけでなく・・・・コレにも影響が及ぶのだと、な」
「・・・これ???」
「・・・・(嘘だが)タバコを吸うと精液が不味くなる。
 お前、俺にこの先もそんなのを飲ませる気か???」
「飲まなくていい!!!・・・で、でも本当か??オレの不味いのか??
 (そういえばいつも味の感想なんか聞いてなかった。
 ・・・キャリコは聞いてくるから答えていたが)」
「(もちろん大嘘だが)ああ、本当だ・・・。今から証明してやろう」
「証明・・?って・・・うわっ・・・あ・・・・くぅ・・・・」

嫌な予感がしてアインはすぐさま逃げようとしたが足首を掴まれ引き戻されてしまう。
そして足を開かされたかと思えば直ぐにキャリコが間に滑り込んできてそのまま銜えられてしまった。

「や、やめっ・・・それ、は・・・嫌い・・・って・・・あ、あぁぁ・・」

その行為は嫌い。
それは嘘ではない。
気持ちよすぎて、わけが分からなくなるからアインにとって出来れば避けたい行為であった。
しかし一度始まってしまえば抗えるわけもなく、
アインはキャリコの頭に両手を置いて自らも腰を揺らし始めた。

「あっ・・・あ・・・」

角度を変え、後のふくらみに触れるだけのキスをしたのち、
性器の裏筋をチロチロと舐めていく。
アインは狂ったように身体をビクビクさせ腰を更に振った。
そんな様子に満足そうに目を細めつつ、
今だ足に纏ったままになっているアインのズボンを完全に脱がせてしまうと、
再び性器全体を口の中に収めしつこく上下に擦り極めを促していく。

「んぅ・・・も、だめ、だ・・・出る・・・」

アインの懇願にニッと銜えながら口端を歪めると手で根元を扱き、先を唇で思い切り吸ってやった。

「あぁーっ・・・・っ・・・・っ・・・・!!」








アインの腰はまだ揺れている。
一度出しただけでは満足いかないのか、更なる快楽を強請っているのだろう。
放たれたものを全て口で受け止めたキャリコは状態を起こすと、
口に何かを放り込むと、
そして放心状態になっているアインの頬を軽く叩き起き上がらせた。、
アインは目をウルウルさせてキャリコの頬に手を沿えいつもの様に唇を重ねる。

「キャリコ・・・・ん・・?・・・んん????」

なにか異様なものを感じアインはキャリコから離れようとするが、
すでに唇は重なっているし、極めたばかりの身体では力が入らず出来ない。

「あ・・?ん・・・ん・・・ふぅ????」

アインの咽がゴクンと鳴った。
するとようやく唇は離れゲホゲホ咳き込むアイン。

「・・・自分の味はどうだ?自分のは初めてだろう?苦いだろう?」
「・・・げほっ・・・不味い・・・苦い・・・」

更にウルルとなっていく。
腕を伸ばしキャリコに抱きつつつくとすがるように頬を寄せる。
悲しそうに、申し訳なさそうに顔を歪ませながら謝った。

「これは・・タバコのせいか?だってキャリコのはこんな味しない。
 キャリコは毎回こんな不味いの飲んでいたのか??
 だからオレにタバコを止めてほしかったんだな?・・・ごめん」
「(本当は精液に胃薬を混ぜただけだが)それにキスの味も不味い。
 健康にもよくない、抱き合う時にもこんな影響がでる・・・
 つまり良い事が一つもない。
 だから俺は止めろ、とすっぱく言っている(それに似合わないしな)」
「キャリコ・・・!ごめんなさい」
「アイン・・・」

謝り続けるアインの背中を優しく撫でる。
わかればいい、と耳元で囁き目蓋に唇をよせ涙を吸い上げた。
すると突然何を思ったのか、アインは下半身むき出しのままキャリコの上に跨ると、
自ら唇を重ね熱を持ち出し始めていた下半身に手を伸ばす。

「・・・・アイン?」

ジッパーを下げ自分のよりずっと逞しい性器を探り当てると、
夢中でそれを扱き出した。
自分の手が先走ったもので濡れていくとアインはいったんキスを止め、
伺うように上目遣いになる。

「・・・口直ししたい・・・キャリコの美味しいので・・・していいか?」
「・・口直しのためだけ、か?」

キャリコの言葉に思い切り頭を左右に振ると、

「違う!キャリコを気持ちよくしたいからでもある・・・いいか?」

と叫ぶ。
答えに満足そうな笑みを浮かべると体中がゾクゾクするような甘いボイスで囁いた。

「・・・もちろん・・・駄目なはずがないだろ?」

アインの手でソコは十分すぎるくらい熱を持ち始めている。
本当ならこのままアインのおしりの狭間に息づいているあの場所に打ち込みたいところだが、
珍しく積極的に銜えたい、というこのシチュエーションを無駄にするのもおしい。

「(時間はたっぷりあるしな・・・先ずは上のお口を堪能するとしようか)」

キスで濡れている唇を指でなぞるとそのまま手をアインの頭に置いた。
そしてゆっくりと下へ下へと導いていく。
鼻の先にキャリコの熱いものを感じると教えられたとおりにアインは愛撫を開始した。
最初に先端にキスをし、先を丁寧に舐めあげる。
そして今度は舌を出し、性器全体に舌を絡めていく。
あらかた全体を舐め終えると今度はぱっくりと全てを口の中に迎え入れた。
・・・・口の中のキャリコがドクンと脈打った。
アインは上目遣いでキャリコを一瞬見上げると、今度は頭を上下させて快感を引き出していく。

「んっんっ・・・」
「・・・っ・・・アイ、ン・・・」

アインの髪の毛を掴みキャリコは咽に打ち付けるように腰を動かした。

「ふ・・ふぐ・・・ん・・・」

苦しそうなアインの声にどうしても意地悪な考えが頭をよぎる。
しかしいつになく素直な態度であったアインを思い出し、それ考えを思いとどませた。

「(このままもっと長引かせてもいいが・・・、今回は早めに終わらせてやるか)」
「んんー・・・んっ・・・ふ・・・!!」
「・・・・く」

後頭を強引に自分の下半身に押し付ける。
性器の先はアインの咽に辺りアインは苦しそうに頭をプルプル振った。
そしてそれが極めを即す愛撫となり、キャリコは一気に欲望を弾けさせた。

「・・・ん・・・んふ・・・」

アインが大きく咽を鳴らしている音が聞こえる。
口の中に放たれた精液を全て飲み込むとアインは顔を上げ幸せそうに微笑んだ。

「美味しい・・・キャリコのはお菓子よりも美味しい」

口の端から垂れている白い液体を指で拭ってやるとそれをペロリと舐めるキャリコ。
正直(アインのは別として)キャリコは精液が特別美味しいものだと思ってはいない。
なので少しだけ顔を顰めてしまうが、
アインは口の周りにまだ精液がついていることが気になるのか、
必死に舐めていてそれに気が付かなかった。

「(・・どこが美味いのか分からんが・・・本当にココまで素直に調教されると逆に怖いな)」
「タバコは止める・・・キャリコにも美味しいのあげたいから」
「いい心がけだな・・・ではご褒美に今日はアインの好きなやり方で抱いてやろう」
「本当か!?」
「ああ、騎上位か?バックか?それとも・・・・」
「どっちも嫌だ!オレは普通の・・・正常位がいい!・・しっかり抱き合えるから」
「・・・了解だ(俺はどれであろうと楽しいからかまわんさ)」

アインのお願いに軽く相槌をし、触れるだけのキスをする。
そして自分の衣服を整えると服を着ようとしていたアインを制し抱き上げて、
下半身に自分の上着をかける。
不思議そうにキャリコを見上げるアインにフッと微笑むとアインに服を着せない理由を教えた。

「直ぐに脱がせるんだ、着なくていい」

その言葉にアインの顔は一瞬で真っ赤に染まってしまう。
だが顔は嬉しそうにはにかんでおり拒否してはいなかった。








その夜、アインの部屋のゴミ箱にはまだ空けていないタバコの箱が捨てられていた。
そしてベッドからはひっきりなしに甘い声がしていたという。





















テッドが図書室にくるとなぜかグッタリしたアインが飴を舐めていた。

「・・・あれ?タバコは止めたのか?」
「・・・・止めた・・・いろいろよくないことが分かった。
 でもいきなりは口寂しいから飴を舐めている」
「なるほど・・・・それはいいとしてなんでそんなに疲れているんだ?」
「そ、それは・・・・(キャリコがしつこかったから・・・うぅ・・こ、腰が)」

顔を真っ赤にさせて机に伏してしてしまうアインに「???」のテッド。
しかしその首筋にいやらしい痕を見つけると何もいわず自分の本を探しにいったという。
テッドがいなくなったあともアインは夕べのことを思い出して一人顔から火をだしていた。





『キャ、キャリコ・・・も・・・う・・・休ませて・・・くれ』
『まだだ・・・今夜はココから出るのが甘くなるまで絞ってやるといっただろう?』
『・・・・も、甘くなった・・・だって・・・サラサラしてる・・・』
『駄目だ、毒素が溜まっているはずだ。出なくなるまで絞らないと・・・なぁ?』
『は・・・あぁ・・・、ん・・・・も・・出ない・・・』
『嘘つきが、まだまだ出そうだぞ?・・・ほら、イけ』
『あぁぁぁーー・・、はぁ・・・はぁ・・・・ひぃう』
『もう一回・・・、今度は俺を下で銜えながらだ』
『いや、だぁ・・・あっ・・・あっ・・・』
『・・・・いや?・・・もう大きくしているのにか?』
『あ、・・・ぁ、はぁ・・・・ん、んぅ・・』




アインはその日、本当に出なくなるまで絞られたという。
図書室で伏っしているアインは痛む腰を擦りながら半日くらい恥かしさで悶えていたそうだ。



ありがとうございました。 今回はアインにタバコを吸わせてみました!