愛妻弁当
 

〜愛妻弁当−三角関係−〜



イングラムが家に帰ってくると少年はなにやら楽しそうに本を見ている。
いつもならば自分が帰ってくると真っ先に飛んでくるというのに・・・。
イングラムはなんだか面白くなかった。


「クォヴレー、ただいま」
「!!え!?」


突然背後からかかってきた声にクォヴレーは大そうビックリし
見ていた本を落としてしまった。

「痛っ!!」
「!大丈夫か?」

素足の上に分厚い本を落としてしまったので痛みは半端ではなかったが
駆け寄ってきたイングラムに涙がたまった目で笑顔を向けると、

「おかえりなさい、大丈夫だ」
「・・そんなわけないだろう?ほら、青あざになっている」
「大丈夫だ」
「・・・まったく気をつけろよ?・・・突然声をかけた俺も悪いが・・
 一体何をそんなに真剣に読んでいたんだ??
 (俺を差し置いて)・・ん?これは!?」

クォヴレーが落とした本を手に取りその題名を見る。

『弁当のおかず1000選!!』

イングラムが視線を送ると、
エヘヘ・・と照れたように笑いながら、

「今度の日曜日、軍の運動会なんだろ?」
「ああ」
「・・・迷惑かと思ったがその日のお弁当作ろうと思って!」
「・・・弁当を?」
「迷惑か?ダメか??いつもの弁当とは違う運動会仕様の
 精がつくおかずにしようと思っているのだが・・・」


不安そうな顔で聞いてくるクォヴレーに極上の笑みを浮かべながらイングラムは答える。

「迷惑なはず、ないだろう?楽しみに待っている」

『楽しみに待っている』と言う言葉に嬉しそうに笑顔を作ると、
大好きなイングラムに飛びつき少し遅くなったがお帰りなさいのキスを交わした。











「んんっ・・・ふぅ・・そういえばイングラム」
「ん?」

唇を離し、おでことおでこをゴツンコさせながら、

「キャリコの好きな食べ物って知っているか??」
「!・・・何故だ?」

思いもよらないセリフにイングラムは驚きとムカツキを覚えたが、
そこは大人であるイングラム。
表情を顔に出さず淡々とセリフを返した。 

「買い物に行ったらキャリコに会ったんだ。非番だったんだって!
 弁当の話をしたら『俺も食べたい』というから、
 運動会の日だけ作ると約束したんだ!」
「(キャリコめ・・・!!)・・悪いがわからん」
「そうか・・・」

『わからない』・・・・クォヴレーは一瞬シュンと少し落ち込んだが、
その隙をつかれイングラムに抱き上げられてしまった。
そしてリビングの扉を開け寝室へと進んでいく・・・。


「????イングラム??」
「それはキャリコに直接聞けばいいだろう?それより今はお前を食べなくてはな」
「え??」
「俺はいまとても腹が減っているんだ・・・食べてもいいだろう?」
「・・・ぷっ・・・仕方ないな・・・優しくしてくれるなら食べさせてやってもいい」
「了解だ・・・」







・・・運動会当日


「キャリコ、クォヴレーから弁当だ」
「!!本当に作ってくれたのか!?(アイン俺は感激だ!!)
 ・・・アインによろしく言っておいてくれ」
「・・・ああ」


・・・キャリコはその時浮かれていてイングラムが浮かべた黒い笑みに気づかなかった。


そして昼の時間、キャリコが弁当箱を開けると・・・・


「!!これは!?」




弁当の中身は実にシンプルであった・・・
弁当の中はおかずがなくご飯がビッシリと敷き詰められていた。
ご飯の上にはサクラデンブで・・・

『へんたい』

と書かれていた。


もちろんこれはイングラムが用意した弁当である。
クォヴレーがキャリコ用に買ってきた弁当箱と全く同じものを買ってきて
すり替えたのである。
同じ弁当箱にしたのは
後でキャリコが弁当箱を返しに来たときに怪しまれないようにする為に・・


そしてクォヴレーがキャリコ用に作った弁当はヴィレッタに渡された。

「弁当箱は返さなくていいそうだ・・」
「あら?そうなの?わかったわ」

クォヴレーはそんな事になっているとは思いもしないので
家で優雅に本を読んでいた。




ありがとうございました。 裏に続くかもです・・・。 弁当をすり替えたことがばれてしまうのです・・・・。 イングの運命やいかに??!