〜愛妻弁当『2倍返し』〜
イングラム・プリスケン少佐は弁当をあけて
ため息をつく・・・・
今日の朝ごはんは秋刀魚だった・・・
昨日の夕飯は鯵の塩焼き・・・
今、弁当をあけたらば鮭がデデーンと弁当の半分を占領している。
そうイングラムは最近頭を痛めている。
理由はここ1ヶ月魚料理ばかりだからだ。
一緒に住んでいる恋人が朝も昼の弁当もそして夜も
作ってくれる。
しかし恋人は、甘いものと、魚が大好物なのである。
イングラムもそれほど肉好きというわけではないが、
毎日毎日魚料理では流石に肉が恋しい・・・
「(魚好きなのは・・・わかる・・・だがクォヴレー・・・
モノには限度というものがあるぞ・・・)」
クォヴレーは今日も台所にたって夕飯の支度をしている。
もう直ぐ愛しい人が帰ってくるので足取りも軽い・・・
後はご飯が炊き上がるのを待つだけ、という時に
チャイムが鳴った・・・
「(!イングラムだ)」
大急ぎで玄関に向かいドアを開ける。
「お帰り、イングラム!」
「ただいま。クォヴレー」
クォヴレーは背伸びをし、彼の頬にキスをする。
すると、唇に軽くキスが返ってくる。
この瞬間がたまらなく好きだ・・・・と
クォヴレーは顔を上気させ彼を見上げた。
「もう直ぐご飯炊き上がるから、先にご飯でいいか?」
「ああ・・・・今日は何だ?(また魚か?)」
「今日はサバの味噌煮だ」
「・・・そうか(やはり魚か・・・)」
「・・・サバ・・・嫌いか?」
「え?・・あ・・・いや・・・嫌いではない」
「良かった!」
ニコニコと微笑む恋人に何も言えないイングラム・・・
「(・・・たまには・・・肉が食べたい・・・)」
弁当をあけ、ため息が出る・・・
今日は鮭のムニエル・・・・
「(・・・いや・・・我慢しよう・・・なんだかんだ言っても
クォヴレーの作ったものは美味しい・・・
それに今夜はカレーにしてくれと頼んだからな・・・
カレーなら流石に豚か牛か・・・鶏肉を使うだろう・・・)」
「あら、美味しそうね」
「・・・ヴィレッタ・・・・」
「?元気ないわね・・・具合悪いの?」
「・・・いや・・・魚の食べすぎで・・・」
「???魚????」
「フフフ・・・成る程ね・・・・」
「流石に1ヶ月も魚ばかりだと飽きてきてな・・・」
これまでの経緯をヴィレッタに話し
すこし心が晴れたイングラム・・・・
「あの子、魚好きだものね・・・・」
「ああ・・・だが今夜はカレーだから魚からやっと開放される」
「・・・・カレー?」
「カレーだ・・・カレーなら魚は使わんだろう?」
「・・・・シーフードカレーがあるわよ?」
「!シーフードカレー???シーフード・・・魚介類か!?」
「ええ、魚介類・・・御愁傷様・・・きっと今夜はシーフードカレーね・・」
「笑えないな・・・・フ、フフフフ・・・」
「お帰り!!」
「ただいま・・・・」
「今日は、イングラムのリクエストのカレーだ!」
「・・・シーフード・・・か?」
「よくわかったな?当たりだ!」
「・・・・・そうか・・・(はぁ・・・)」
「もうちょっとかかるから先にお風呂使ってくれ」
「ああ・・・悪い・・・」
カバンと上着をクォヴレーに預け、風呂場に向かった。
その時電話が鳴ったので、慌ててコンロの火を消し、
クォヴレーは電話を取りに行った・・・
イングラムが風呂から上がり、キッチンへ向かうと
珍しくクォヴレーは長電話をしていた。
「(・・・友達か?随分と長いな・・・まぁたまにはいいか・・・)」
邪魔しないようにそっとダイニングの扉を開け、
冷蔵庫にあるミネラルウォーターに手を伸ばす。
聞くつもりはなかったが、電話の会話が聞こえてきてしまった・・・
「・・・ああ・・・大分うまくいってる・・・
ここ1ヶ月魚料理ばかりにしたら・・・・」
「!?」
「ああ・・・アラドのアイディアのおかげだ・・・」
「・・・・・」
「ああ・・・わかった・・・明日また学校で・・・
うん・・・お休み・・・・」
電話を終え、クォヴレーは上機嫌でダイニングに戻ろうとする。
しかし直ぐに全身が凍り付いてしまった・・・・
イングラムがダイニングの扉の前で
面白そうに笑って自分を見ているからだ・・・・
目線がかち合うと、素敵に微笑んでくれた・・・・
「(まずい・・・あの笑顔は・・・まずい・・・
ひょっとして・・・今の聞いていたのか?)」
イングラムがゆっくり、ゆっくり・・・自分に近づいてくる・・・
それに比例して一歩一歩下がっていくクォヴレー・・・
やがて壁に突き当たり逃げ道がなくなった
「ひっ・・・」
壁に追い詰められ逃げられなくなってしまった
壁とクォヴレーよりも1回り以上大きい身体に
挟まれてしまえばもう少しも動くことが敵わなくなってしまう・・・
「今・・・面白い会話をしていたな?」
「お・・・もしろい・・・会話?」
「毎日魚料理・・・とか、アイディアのおかげ・・・とか」
「・・・・!そ、それは・・・」
「それは?」
「・・・だ・・・から・・・」
「だから?」
「ご、・・・」
「・・・・・・」
「ごめんなさい!!!ちょっとイングラムに嫌がらせしたかっただけなんだ!」
「・・・・・・」
「だってイングラム、えっちの時、嫌だって言っているのに
何回も何回もするし・・・ちょっと思い知らせてやろうと思って!!」
必死で謝りながら彼を見つめた・・・
しかし彼の顔はどんどん凶悪な微笑に変わっていく・・・
「(まずい・・・まずい・・・どうしよう・・・??)」
彼の笑顔とは反対に青ざめていくクォヴレー・・・
やがてゆっくりと呟き始めた・・・
「少し・・・おいたが過ぎたな・・・クォヴレー?」
「・・・・うぅ・・・」
「・・・毎日毎日、魚で・・・確かに参った・・・本当に、な」
「ぁぅ・・・ごめんなさい!!」
イングラムにしがみつき必死に許しを請う・・・
だが全てはもう遅かった・・・
ヒョイッと肩に抱き上げられ、そのまま寝室へと
歩みを進めるイングラム・・・
行き先がわかり、たどる道筋もわかってしまったクォヴレーは
肩の上で必死にもがき抵抗する
「いやだ〜!!お仕置きやだ〜!!ごめんなさい!!」
「・・・・たっぷりお仕置きしないとな・・・クォヴレー」
「やだぁ〜!!!!」
「・・・明日の学校は欠席だな・・・」
「イングラムゥ〜!!!許して!!」
「悪い子にはお仕置きだ」
「やだーーーー!!」
〜余談〜
「ちょっと!赤い目をした子ウサギが家出してきたって言ってるんだけど?」
『やはりそこにいたか・・・』
「一体何があったわけ?」
『・・・ちょっとお仕置きを・・・』
「お仕置き??」
『ああ・・・やりすぎたようだ・・・』
「・・・想像がつくからあえて聞かないけど・・・早く迎えに来て頂戴」
『わかった・・・』
「絶対絶対、今度という今度は帰らないぞ!!」
「・・・クォヴレー・・・」
「ヴィレッタの家の子になる!!イングラムが来ても帰らない!!
あんな・・・あんな・・・恥ずかしいこと何時間もやらせて・・・!!」
「あんな恥ずかしいこと・・・って?」
「口が裂けても言えない!!」
「そ、そう・・・(貴方、この子に何したのよ・・・イングラム)」
「イングラムの種馬〜!!!鬼畜〜!!バカ!!」
「・・・・って言ってるけど?」
『(・・・・汗)すぐむかえに行く・・・』
「・・・そうして頂戴・・・(そしてもう巻き込まないで・・・お願い)」
お仕置きヴレ・・・
はたしてどんな恥ずかしいことを強要されたのか?
お好きにご想像くだされ!!
え?続きは書かないのか?って???
・・・・検討中・・・・
ちなみに題の『2倍返し』とは、
イングを思い知らせてやろうとしたけど
結局いつも以上にはげしくお仕置きされちゃったという意味で
つけました!
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