〜愛妻弁当・焼もち〜
「今日は学校休みだからいつもよりお弁当豪勢にしたいんだ」
クォヴレー・ゴードンはキッチンに入ってきた恋人、
イングラム・プリスケンに開口一番にそう言った。
「・・・・休み?・・・ああ、今日は土曜か・・・」
まだ完全に覚醒していないのか、眠気眼で返事を返した。
「うん。だから今日は、弁当届けに行くな・・・大丈夫か?」
不安げにかつ遠慮がちに上目遣いで尋ねてくる恋人に
イングラムは顔を綻ばせながらながらおでこにキスをした。
「問題ない・・・楽しみにしている」
その言葉に、ぱぁぁっと曇っていた顔が晴れた。
普段大人びているのに、クォヴレーは変なところで
臆病になることがある。
自分達の間でもう『遠慮』などいらないというのに・・・
自分のたった一言で傷ついたり、喜んだりする。
大人になってしまった自分には・・・もう遠い感情・・・
ああ、本当に可愛い・・・
このまま食べてしまいたいくらいに・・・
と、イングラムは心の中で思った。
「朝ごはんは?」
「いや、今日もいい・・顔を洗ってくる」
「わかった・・・」
「じゃあ、12時頃弁当を届けにいく」
「わかった・・・よそ見はせずに道に気をつけて来るのだぞ?」
「(むっ)子ども扱いするな!!」
「フフ・・悪かった・・・むくれるな」
「・・・むくれてない!」
「フフフ」
「(むぅ〜)」
「クォヴレー?機嫌を直してくれ」
むくれている頬にそっと手を添え、イングラムは微笑んだ。
仕方がないなぁ・・・という顔でクォヴレーも微笑みかえし、
「・・・いってらっしゃい」
「ああ、いってきます」
異常なほどに背の大きい彼の首に腕を回し、
キスをした。
唇が触れるだけのキスを・・・
しかし、イングラムは触れるだけのキスでは物足りないのか
いつもいつも、濃厚なキスへと・・・
「・・・んっんっ・・・はぁ・・・」
唇が離れ、熱に犯されたような目で互いに恋人を見つめる。
「・・・続きは・・・また今夜な・・?クォヴレー」
「(/////)早く仕事行け!!」
「はいはい・・・じゃあな!」
「(イングラムのスケベ!!!)」
「イングラムの執務室は・・・確かこの辺りだったよな?」
少佐であるイングラムは個人の執務室をあてがわれている。
その為、弁当はいつも執務室で1人で食べると言っていた。
たまにヴィレッタやその他部下達が尋ねてきて
食堂で一緒に食べたりするらしいが・・・
ある部屋の前に辿り着き、プレートを見た。
『イングラム・プリスケン』
「(あ!ここだ)・・・イングラム〜?お待た・・・!?」
扉をノックもなしに少し開けた
・・・その隙間からクォヴレーはとんでもないものを見てしまった。
イングラムが、誰か知らない女性から弁当を受け取っているではないか!?
「(・・・どうして・・・)」
言葉もなく、その場に立ち尽くしていると、
中にいた女性が出てきた。
「あら?あなた少佐に何か御用なの?」
「・・え?・・・あ・・・その・・・」
「?」
しどろもどろになっていると、中から声がした。
「クォヴレーか?入ってきなさい」
「あら?あなたの事かしらね?じゃあね!」
女性はルンルン♪な足取りでその場を立ち去っていく。
なんだかモヤモヤした気持ちでクォヴレーは部屋の中に入った。
「待ってたぞ・・・少し遅かったな?」
「・・・別に・・普通だろ・・・」
「?クォヴレー・・・?」
少しむくれながらつれなく答えたクォヴレーにイングラムは顔を顰めた。
「機嫌が悪いな・・何かあったのか?」
「(!?何か・・・あったのか?だと!?ぬけぬけと!!)」
「?クォヴレー・・・??」
「・・・それ」
「・・・それ?」
「その、弁当・・・」
「ああ・・・これは・・・」
「その弁当があるなら・・・オレのはいらないな」
「・・・?何故?」
「・・・何故・・?!お前、2つも食べられないだろ!?」
「・・・・・・」
「その弁当を受け取った、ということは食べる気満々だったんだろ!?」
「クォヴレー・・・」
「それならオレの弁当は食べられない・・・いらないんだろ?」
ムキー、とした顔で子どものように(実際子どもだが)怒鳴る
クォヴレーの態度に意地悪げに笑いながら、
「・・・お前・・・焼きもちをやいているのか?」
小ばかにしたようなその言い方に、更にカチーンときたクォヴレーは、
「オレは・・・オレは・・餅なんて焼いていないぞ!!」
「・・・クォヴレー????(餅??)」
「イングラムのバカ!!もういい!!」
「クォヴレー!?」
乱暴に扉を開け、クォヴレーはその部屋を後にする。
残されたイングラムは呆気に取られ後を追うことを忘れてしまっていた。
「(・・・少し悪ふざけがすぎたか・・・?)」
「(バカバカバカ!!!イングラムの種馬〜!!!?)」 ←種馬関係ないから・・(笑)
やり切れない思いで、廊下をトボトボ歩いていると、
タイミングよくヴィレッタに出会った。
「あら、クォヴレー・・・どうしたの?こんなところで・・めずらしいわね」
「・・・・!ヴィレ・・・ッタ・・・?」
「・・・泣いたの?」
「・・・別に・・・泣いてなんか・・・ない」
「そう?(目が赤いのに?)・・・・ねぇ、今暇?」
「・・・暇」
「良かった!今日私お昼1人なの・・・一緒に食べない?」
「・・・食べる」
「じゃあ、食堂にいきましょう」
「ああ・・・ヴィレッタ、これ食べるか?」
「・・・・これ?・・・お弁当?」
「・・・・イングラムに持ってきた弁当だが、必要なかったから」
「どうして??」
「・・・・・」
「・・・まぁ、いいわ・・・折角だから頂くわね」
「・・・そうしてくれると助かる」
「お礼に何か奢るわ・・・食堂のもので悪いけど・・・」
お昼時もあってか、食堂はごった返していた。
開いている席はなかなかなかったが、
入り口は人の出入りが激しくて座る人が少ないのか、
その場所に席を確保できた2人。
「本当にそんなものでいいの?」
「これが食べたかったんだ・・・自分ではあまり作らないし」
クォヴレーが選んだランチは、オムライス。
しかも作るのが楽な為か、安い部類に入る。
「そんなものかしらね?・・・いただきます」
「・・・いただきます」
食事を取り始めてすぐその男は食堂に入ってきた。
そしてある男女の2人組みを見つけると、
「・・・なんだ・・・ここにいたのか・・・」
続く・・・・・
ありがとうございました。
この「やきもち」は全3話の予定。
1話・2話は表で、3話はうわの予定。
近いうちにUPいたします。
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