IF・・・設定
イングラムが生きていて・・・という設定です。
〜彼が無断で尋ねてくる理由〜
最近は戦闘もなく暇をもてあましていることが多い。
しかし少佐以上ともなれば会議やら接待やらで忙しく、
クォヴレーはなかなかイングラムと顔を会わせる機会がないでいた。
友人と呼べるアラドは夕飯後の満腹感でさっさと自室で寝入ってしまっている。
ゼオラは女の仲間達とお喋りタイム。
クォヴレーは一緒に過ごす相手がいないので、
与えられている自室(個室)で読みかけの本を読むことにしたのだった。
読み始めてから1時間くらい経っただろうか?
本の内容も佳境に入りワクワクしてきた頃、
不意に自室の扉が許可なく開いたのだった。
自分の部屋の暗証番号を知っているのは自分以外に彼しかいない・・・。
そう、分かっているからいつも無断で入ってくる。
チャイムくらい鳴らせ!といつも怒鳴っている、が、
当の本人は悪びれた様子もなく、
『恋人の部屋に入るのにどうして許可が要る?』
とか、
『無断で入られて困ることでもあるのか?』
と、逆に詰め寄られその後ベッドでお仕置きされるのが関の山・・・。
クォヴレーは、はぁ・・・とため息をつき入り口へ振り返ろうとしたが、
鼻につく『酒臭さ』にしかめっ面になり振り替えるのをやめた。
なぜならすでに彼は傍に来ていたからだ・・・酒の臭いがそれを物語っていた。
「臭い!!」
「・・・・・」
今晩は会議と聞いていたのに、どうして酒臭いのか?
納得のいかないクォヴレーワザと鼻を摘んでイングラムを罵る。
「・・・会議ではなかったのか?」
「・・・会議だ」
「!!会議の癖に酒が出たのか!?」
「まぁな・・・。クォヴレー、あまり怒鳴るな・・頭に響く」
細長い指が喋るな、とクォヴレーの唇に押し当てられた。
その態度にムッとなったクォヴレーはその指を払いのけワザと大声で怒鳴った。
「臭いぞ!!オレはその臭いが好きではない!!
シャワー浴びるかこの部屋から出て行け!」
「・・・出て行け・・・?」
スゥ・・・と細まる切れ長の青い瞳。
クォヴレーはその迫力に思わず腰が引けるが、負けてなるものか、と怒鳴り続けた。
「当然だろ?オレが酒臭いの好きじゃないと知っているのに、
プンプンさせながらノコノコやってきたのはお前だ!」
「・・・酒臭いだけで恋人に出て行け、というのか?」
「嫌ならシャワー浴びて来い!!」
「・・・この状態で浴びたら倒れてしまうだろ」
「なら出て・・・・うわっ!!」
ドサッと本が床に落ちるのと同時にクォヴレーの視界には天井が映った。
そしてゆっくりと怖い顔をしたイングラムが天井を隠していく。
気付いた時には時既に遅く、ソファーに押し倒されていた。
「・・・クォヴレー・・撤回しろ」
「・・・撤回??何を・・・んぅ??」
両手はいつの間にか耳の横できつく縫い付けられてた。
そして突然に唇を塞がれ、舌が千切れんばかりに吸われていった。
「ん・・・んーーー(痛い!!)」
足をバタつかせイングラムを蹴り上げるが、
ガタイのいい男には痛くも痒くもない子供の抵抗。
クッと咽で笑った後、ゆっくり唇を離していく。
「クォヴレー、撤回しなさい・・・『ごめんなさい』と謝るんだ」
「・・・はぁ・・はぁ・・・何故!?オレは悪くない!!」
「俺に出て行け、と言った。俺を拒絶した」
「!?子供か・・・!?・・・んっ・・・やめっ・・・・」
謝ろうとしない意思を感じ取ったのか、
イングラムは再び唇を寄せ舌を強く吸い上げた。
「んーーー(痛い!!酒の・・味が・・・マズイ!!)」
「・・・・最後のチャンスだ・・・『ごめんなさい』は?」
「・・・はぁ・・はぁ・・・だれ、が・・・!」
誰が言うものか!?
と睨みあげれば、イングラムの端整な顔が冷たく歪んだ。
「『お仕置き』は懲りたと思ったが・・・仕方ない」
イングラムの手が下肢へ伸びてくる気配を感じた。
そして『お仕置き』に一気に怒りはさめ、青ざめていくクォヴレー。
そんなクォヴレーを見下ろしながら、愉快そうに顔が歪んでいく残酷な彼。
「!!(しまった!!酒が入っていると更に鬼畜になるのだった)あ、謝る!!」
「『お仕置き』に怯えていった謝罪など真実ではない・・・」
「イングラム!!」
クォヴレーは手足をバタつかせイングラムを押しのけようと頑張る。
だがビクともしないイングラムの体。
『お仕置き』など冗談ではなかった。
イングラムのエッチなお仕置きにこれまで幾度となく啼かされてきたのだ。
その『お仕置き』の怖さを十分身体で理解しているクォヴレーは
無駄と分かりつつも暴れて暴れて暴れまくる。
だがそんな抵抗は諸ともせず次第に覆いかぶされていく。
暴れれば暴れるほどイングラムの髪が鼻を掠め、酒の臭いが鼻につく。
だが酒の臭いと一緒に彼のコロンも香りはじめてきた。
「(・・・あ・・・いつもの臭い)」
「・・・さて、どんなお仕置きがいいかな・・・」
「(!?臭いに浸っている場合ではなかった!!どうしよう・・・そうだ!!)」
何か対策を思い立ったのか、クォヴレーは青く癖のある髪を引っ張り、
イングラムの顔を自分の顔に近づけた。
いきなりのことに目を見開くイングラムであったが、
クォヴレーの次の行動に目を細め体から力を抜くのだった。
「クォヴレー・・・」
頬に唇の感触を感じた。
しかしそれは一瞬のことで直ぐに頭を細い身体に抱きかかえられていた。
青い髪をすき、一回りは年上の男の頭を優しく撫でる。
たまに行なういつもとは逆の抱擁・・・・。
「こんなことで誤魔化そうとでも・・・・?」
クォヴレーの首筋に顔を埋めながも叱咤することを忘れない。
だがクォヴレーは小さく笑うとそれを軽く否定した。
「誤魔化そうなんて考えていない・・・ただ今のイングラムは酔っ払っているから」
「・・・だから?」
首筋から顔を上げ、再びクォヴレーを見下ろした。
「・・・酔っ払っている時は『お仕置き』でも身体を交わしたくない。
次の日イングラムが覚えていなかったら・・・オレが惨めだろ?」
「お前とイイコトをしたのに覚えていないということは確実にないが・・・
そうだな、酒の勢いでヤッてもイイコトはないな・・・次の日喧嘩して終わる」
「うん・・・」
イングラムはクォヴレーのスベスベの頬に頬を摺り寄せる。
先ほどまでの険悪なムードは嘘のように和らぎ、
ピンク色なムードになりつつあるようだ。
決して大人の時間にはならないようなピンク色のムード。
「酒に酔ってお前に絡んでいる時・・・」
「(絡んでいる自覚はあったのか・・・・)」
「お前はよく俺を包み込んでくれるな・・・。クォヴレー」
「・・・・そうかな?(早く追っ払いたいだけで
適当にあしらっているだけなんだが黙っておこう)」
「あぁ・・・、実は会議という名目で酒が出る時、
俺はいつも不愉快なんだ」
「・・・不愉快?」
接待はともかく会議で酒を飲むのは普通ではありえない。
それはいつも疑問に思っていたことだが、
仕事のことに口出しするのは恋人でもよくないことだ、
と心得ている(思っている)クォヴレーはこれまで聞かないできた。
だがイングラムの口ぶりでは『聞いて欲しい』ように感じられたので、
彼の頭を優しく撫でながら、小さな声で聞いてみた。
「どうして不愉快になるんだ?」
「・・・会議というのは名目の・・本当は接待なんだ」
「接待?・・・いうもの接待と違う接待なのか?」
「接待という時の接待と、会議という名目の接待は違う」
もっと頭を撫でてもらいたいのか、
イングラムは押し倒しているクォヴレーの腰を更に強く抱きしめ
自分へと引き寄せるのだった。
頭を撫でてもらいたいなど、大の男が恥ずかしいという気持ちもあるが、
クォヴレーの前では全てを脱ぎ去りありのままの自分でありたいのである。
素直で無垢なクォヴレーは時折イングラムが子供のように甘えても
馬鹿にしたりせず優しく受け止めてくれるのだ。
「自分で言うものなんだが・・・俺は美形なんだそうだ・・・」
クォヴレーの瞳を覗き込んで悲しく微笑む。
身体を少しずらし、額と額をコツンコさせるとクォヴレーも微笑んだ。
「自分で言うとナルシストだぞ・・・?」
「フフ・・本当だな・・・」
「フフフフ・・・。それで?どうして不愉快になるんだ?」
「・・・俺はないわゆるお局様に大人気なんだ」
「お局様?」
お局様とは、結構いい年の女性が部下の仕事振りに対して
あーだこーだ、と口出ししてくる女性のことだよな・・・と
反芻しながら首を傾げていた。
「少し年増の女性から人気がある・・・。
こういってはそうではない女性に失礼だが、お局様は執念深い。
会議という名の接待では主に『お局様』のお相手なんだ。
軍でも俺よりも高い地位にいる女性の接待・・・
全てに平等に接待するのはこの上なくストレスが溜まる」
「(イングラムが愚痴るということは相当なんだろうな・・・
想像しただけで眩暈がしそうだ・・・・)」
「俺はホストではないからキスを迫られたりなどしたときはゾッとする。
お前以外には例え手の甲でも唇を許したくはない」
「・・・キス、したことあるのか?」
クォヴレーの眉が悲しげに下がる。
小さく首を左右に振りそれを否定するイングラム。
「まさか・・・上手くかわしている。だがな、クォヴレー」
「?」
「そういう会議を終えたとき、
お前に凄く会いたくなって俺はこの部屋に直行してくる」
「・・・・!」
「そんな時時折とはいえ、
今回のようにお前に拒絶されると腹が立つんだ・・・」
「イングラム・・・オレ・・・!」
そんなこと知らなかった、と、
イングラムを抱きしめる腕に力を込める。
「オレ、イングラムの気持ち少しわかる」
「・・・・・?」
「オレもたまに・・・その・・・
変な目で見られることがあるだろ・・・?」
「・・・・・・そうだな・・・
クォヴレー、出生など気にすることはないんだぞ?」
「分かっている。・・・だがそういう時はとても不愉快だ。
無性に悲しくなるし・・・
そんな時イングラムに抱きしめてキスしてもらえると安心する」
「・・・そうか」
イングラムの瞳が優しく細まる。
状態を少し起し、今度はクォヴレーの頭をなでてやった。
気持ちよさそうにだまってその愛撫を受けつつ、
そっとイングラムの頬に手を寄せた。
「イングラム・・・まだ不愉快か?」
「うん?・・・何故だ?」
「抱きしめるはしたけどキスはしていない・・・
オレはキスをして貰えてやっと落ち着くから」
あぁ・・・と、ますます細まるイングラムの瞳。
クォヴレーは自分を慰めようとしてくれているらしい。
本当に純粋で素直で可愛らしい・・・
と愛しさがこみ上げてくるのを抑えられない。
「お前からキスをしてくれるのか・・・?」
「うっ・・・・それは・・・・」
モジモジと恥ずかしそうに視線をそらすクォヴレーに苦笑しながら、
わざとらしく演技を開始してみた。
クォヴレーからキスをして欲しくて。
「俺は傷心だ・・・まだまだあの接待での嫌な記憶が拭えない。
クォヴレーにキスしてもらえたら・・・塗り替えられる」
「イングラム・・・!」
演技と分かりつつも溢れていくイングラムへの愛しさ。
キスがしたかった・・・・。
キスをしてあげたかった。
首に腕を回し引き寄せるようにイングラムの唇を塞いだ。
いつも彼がしてくれるように舌を使い、
丹念に口の中に自分を溢れさせていく。
イングラムの不快を取り除くべく、
クォヴレーは彼を時にこうして甘やかしているのである。
おまけ?
「んんっ・・・・ふ・・・ぅ・・・」
いつの間にが上下が逆転していた。
クォヴレーを上に乗せ、ずっとキスを交わしている。
時折クォヴレーが口を離そうとすると、
それを阻み激しく舌を絡み合わせた。
「んっ・・・ん・・・・イン・・・休ませて・・・くれ・・」
「・・・っ・・・もう・・少し・・・」
「・・・っ・・・ふぁ・・・ん」
「・・・クォヴレー・・・」
「・・・ん・・・・ん?」
「酒が抜けたら・・・抱いていいか・・・?」
「・・・ん・・・抜けたら・・・だぞ?」
「あぁ・・・抜けたら・・・明日だな・・・
明日一番で・・・お前を感じたい」
「イング・・・っ」
「取り合えず・・・・酒が抜けるまでこうしてキスをしていよう」
「そんなっ・・・・無理・・・疲れた・・・んぅ」
こうして結局朝までキスをしていた二人。
つまるところどんなに些細なことで喧嘩しても
唇だけで仲直りできるバカップルなのである。
有り難うございました。
シリアスから甘甘になていくSSはいかがでしたでしょうか?
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