〜運命は唐突に!?〜
場所はとある大手ファーストフード店。
クォヴレーは苦学生の為、
少しでも生活と学費の足しにしようとアルバイトにいそしんでいた。
本来男の子は裏方が多いのだが、
クォヴレー目当てのお客が多い(男女ともに)ため、
クォヴレーはカウンター業をこなしている。
そんなある日、彼は現れたのである。
「いらっしゃいませ、ご注文はお決まりでしょうか?」
「・・・・・!」
その客は大層な長身でクォヴレーを見るなり大きく目を見開いた。
あまりにジロジロ見てくるので、あまり気分はよくなかったが、
お客様は神様・・・、
顔には嫌な態度を出さずにクォヴレーは再度聞いてきることにする。
「・・・ご注文はお決まりですか?」
「・・・・・・っ」
だがその客からは「うん」とも「すん」とも返って来ない。
頭でもおかしいのか?と思いつつ、
実は口が利けない病気なのかもしれない、
とクォヴレーは首を傾げて三度声をかけた。
「(??)お客様?」
「・・・あ、・・・ああ・・すまない」
その男はやっと声を発した。
どうやら話せない病気の持ち主ではないらしい・・・。
だが相変らずクォヴレーをジー・・と見つめてきていた。
「(なんだ・・話せるじゃないか・・・??
それにしても変な客だな?人のことをジロジロ見て・・・)
ご注文はお決まりですか?」
「ああ」
「本日はコチラでお召し上がりでしょうか?」
するとその男はニッコリと微笑んで、
「・・・君を一つ」
「・・・・・は?」
「君を一つ、テイクアウトでお願いする」
「・・・・・はぁ!?」
男は悪びれた様子もなく、
いたって真剣にクォヴレーを持ち帰りたいと言ってのけた。
シーン・・・と静まり返る店内。
クォヴレーはダラダラと汗を流しながら・・・
「(ヤバイ・・・頭のおかしい人間だ)
お客様、当店ではそのようなサービスは行ってませんが?」
とりあえず営業スマイルを向け、
とっとと帰れオーラを全身で放つクォヴレー。
だが男は強かった。
「もちろん、ファースト・フード店に
そんなサービスがないことは私も知っている。」
「そうですか・・・
ならさっさとお帰りください。出口はあちらですよ?」
爽やかスマイルで男を追い出しにかかる。
だが男はニッコリと笑って、
「君が一緒なら直ぐにでも帰ろう」
「・・・・・・・(こいつ、やっぱり頭がおかしいみたいだ)」
「・・・時給はそうだな・・・ここの10倍出そう。
私の秘書になってくれないか?」
「(10倍!?)」
クォヴレーの時給は680円。
苦学生のクォヴレーには10倍はたいそう美味しい話だが・・・。
「君の働き振りをずっとみていた。
で、仕事が出来る上容姿もいいので思わず見惚れてしまった・・・。
君は他のレジより捌き方が速い上、商品の並べ方も綺麗だ。
と、いうことは君はかなり腕がきれて、
尚且つ手を抜かない性格の持ち主なのだろう?おまけに容姿もいい」
「・・・・・はぁ?(容姿??)」
「仕事は私が1から教えるから心配はない。どうだ?やってみないか?」
「・・・・・・」
「私の秘書をやると将来の役に立つと思うぞ?」
クォヴレーは怪訝そうに男を睨んだ。
それはそうだろう。
誰だって見知らぬ男の上手い話には疑念を抱かずにいられない。
男はクォヴレーの警戒心むき出しな態度にクスッと笑って名刺を差し出した。
「私は怪しいものじゃない。」
「・・・・・!え・・・?(嘘だろ??)」
差し出された名刺と男を交互にみるクォヴレー。
確かに春モノのコートの下にはそれらしい服装が見えた。
「秘書が最近辞めて困っているんだ。
私も忙しくて雑務が溜まるばかりだし・・・。」
「・・・だが、オレはただの学生ですが?お役に立てるとは思いません」
「・・・確かにそうだが、何事もやってみなければわからないだろう?」
「それはそうですが・・・、オレが使えなかったらどうするのです?」
「先ほどからの仕事振りから見てそれはないと思うが・・・、
秘書の仕事はテキパキさがものをいうからな。
それにこの場所でバイトしているということは君は士官学生だろう?」
「・・・ええ、まぁ」
「なら私の秘書のバイトはもってこいだと思うが・・?」
確かにこのバイト先は通っている学校から近いから働いているのだが・・・。
クォヴレーだけではない。
ここで働いている人間のほとんどがその学校の人間だ。
「答えは今すぐ・・・と言いたいところだが、明日まで待とう。
明日また聞きにくるから、考えておきなさい」
「・・・え?」
「とりあえず、アイスコーヒーを一つ」
「・・・・え?・・・あ、かしこまりました・・・アイス1プリーズ」
ほけぇ・・と、しているクォヴレーに男は微笑を向けると、
ネームプレートをジッと見つめて、
「・・・クォヴレー・ゴードン君か・・・、いい答えを期待している」
料金を払い、アイスコーヒーを受け取ると男はカウンターから去っていった。
クォヴレーはというと相変らずボケーとしながら、
渡された名刺に再び視線を落とした。
「(・・・イングラム・プリスケン・・・少佐・・?)」
軍の正門の前で、イングラムは妹に呼び止められる。
「イングラム!」
「ヴィレッタ・・・お前も外回り帰りか?」
「ええ・・・、ねぇ?イングラム」
「ん?」
「いいこと、あったんでしょ?」
「・・・わかるのか?」
「だって後姿が心なしか『♪』だったもの」
「!・・・なるほどな」
「で、なにがあったの???」
わくわく顔で聞いてくるヴィレッタに、ニヤッとした顔を向けるが
イングラムは嬉しそうにしていた教えない。
「明日になればわかる・・・、だから内緒だ」
「・・・え?」
クスクス笑ってイングラムは執務室へと向かっていく。
兄のおかしなな態度にヴィレッタは「???」であったが、
兄は内緒というと絶対に教えてくれない性格の持ち主であることを
ヴィレッタは知っている。
「(一体何があったのかしら???明日になったらわかるっているけど・・・)」
執務室のドアを開けると同時に黒く笑うイングラム。
そしてボソッ・・・と呟くのだった・・・。
「クォヴレー・ゴードン・・・、お前は必ず俺の元へくる・・・!」
有り難うございました。
ブログに掲載したもの。
手直しはしてません、あしからず・・・。
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