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*パラレル*




目を覚まして驚いた。
普段は必要な会話以外交わさないのに・・一体どうして?



・・・・オレは心地よい温もりにもうしばらく身を任せ、
再びゆっくり目を閉じた。








〜不器用な想い〜








戦争が終わり、オレ達『子供』は戦争から開放された。
『子供』達は皆それぞれ学生生活に戻っていく。
だがオレには行く場所もなければあてもない。
親もなければ兄弟もいない・・・まさに『独り』だ。
これから先どうしようか、と
一人、軍の施設の中庭のベンチに座っていたらあの人が声をかけてきた。


『一緒に来るか?』


・・・と。
正直驚いた。
オレと彼は切っても切れない関係だが
正直あまり口を利いたことなどなかったんだ。
必要最低限の会話・・・それしかしたことがない。


『俺と一緒に暮らすといい。
 お前はまだ若いし、学校へも通うべきだろう』

相手を威圧するような口調。
だがその時のオレはそれを断ることは出来なかった。
・・・いや、断る理由がなかったのだろう。



・・・・行き場のないオレはイングラム・プリスケンという同居人を得たのだった。








彼と暮らし始めてもこれといって変ったことはなかった。
部屋は自分だけのものを与えられたし、
学校で必要なものは全て彼が揃えてくれた。
衣食住のある生活。
不自由のない生活・・・・。




だが、





なにか、





足りない。







こんなに充実した生活なのに何が足りないんだ??
広い部屋・・・、時計の音だけが響く部屋。
変らない日常・・・だが何か足りない。













・・・・ああ・・・そうか。



広いリビングで本を膝の上にオレはあることに気がついた。


賑やかな食堂。
心配性な仲間。
・・・いびきが五月蝿い相部屋のアラド・・・。



『音』が『ぬくもり』がこの家にはないんだ。
オレは読んでいた本を閉じ無意識に呟いていた。




「・・・寂しい・・・、静かで寂しい・・・寒い」














目を覚まして驚いた。
普段は必要な会話以外交わさないのに・・一体どうして?
彼が風呂からあがり、
リビングに入ってきたのと入れ替わるように、
オレは自分の部屋へ戻った。
そしてそのまま、
『孤独』な気持ちのまま目を閉じたらそのまま寝てしまったようだ。
だから驚いた。
彼が一緒のベッドに寝ていて。
彼がオレを包みこむように寝ていて驚いた。


なぜ?
どうして?


様々な思いが交差するが背中から伝わってくる彼の体温が心地いい。
わけが分からないことだらけだが、
もう少しだけこうしていたい。
・・・・オレは心地よい温もりにもうしばらく身を任せ、
再びゆっくり目を閉じた。
だが次の瞬間・・・・。

「・・・!うわっ!!」

身体に回っていて腕の力が強まったのだった。
そして背後から寝起きの低い声が聞こえてくる。

「・・・起きたのか・・?」
「!!?」


驚いて振り向けば、
まだ眠気眼のイングラムさんが欠伸をしながら起き上がろうとしていた。
布団がハラッと肌蹴、オレは更に驚いてしまう!


「!!!」


なんと彼は裸(といっても上半身だけだが)だったのだ。

「・・・あ・・・イ・・イン・・・ど・・・???」

驚きのあまり言葉が出てこない。
彼は訝しげに俺を見つめその大きな手をオレの頭に置いた。
そして・・・・、


「わっ!!わわわ!!」


ぐしゃぐしゃ撫で回したかと思えば、
ニッと微笑み、朝の挨拶を口にした。

「おはよう、よく寝ていたな」
「・・・・・っ」

だがオレは挨拶を返せない。
・・・驚きのあまり声が出ないからだ。

「クォヴレー、どうした?」

少しだけ心配そうな彼、イングラムさん。
オレは数回深呼吸をした後、やっと声を発せられた。

「・・・イングラムさん、一体・・・??」

だがその時、オレの唇に彼の長い指が押し当てられた。
????一体今度は何なんだ???

「・・・イングラム」
「・・・はぁ?」
「一緒にすんでいるのに『さん』はよそよそしいだろう?
 イングラム、でかまわない。」
「ですが・・・」
「それから敬語も必要ない。他人行儀みたいで寂しいだろう?」
「寂しい・・・?」

『寂しい』のエコーにイングラムさんは小さく頷いた。

「クォヴレーも昨晩言っていただろう?『寂しい』と」
「・・・・・!」


ひょっとしなくともあの時の独り言、聞かれていたのか??
彼はオレの戸惑いを表情で理解できたのか、
もう一度頷くと話を続けた。

「俺も常々感じていた。
 折角お前と一緒に住むことが可能になったのに、
 いつもばらばらの生活では寂しい、とな」

彼が哀しげに窓に目をやった。
・・・・一体何を思っているのか・・・分からない。
だが彼もオレと同じように『寂しい』と思っていたことは嬉しかった。

「俺は口下手だからな・・・上手い言葉が浮かばない。
 だから手っ取り早くベッドを一緒にしてみたんだ」


フフ、っと微笑む彼はまたどこか哀しげだった。
その笑顔の裏には何が潜んでいるのだろう?
わからない・・・分からないから違う疑問をぶつけてみた。


「・・男同士なのに・・同じベッドで嫌ではないのですか??」
「・・・クォヴレーは嫌か?」

すると質問を質問で返されてしまった。
彼はオレを真っ直ぐ見つめ、いつものように威圧的だった。
だから反射的に首を横に振ってしまう。

「そうか・・・」

オレの答えに満足だったのか、彼は悠然と微笑んだ。
・・・そういえば彼の笑顔をこんなに見れるのは稀な気がする。
そのあまりにも綺麗な微笑みに見惚れていたら、
空気が動く感じがした。
いつのまにか彼の青い目が目の前にあり、
熱い息が唇に触れている。

「・・・・・?イング・・っ」


それはまさしく一瞬だった。
顎を捉えられ、後頭を抑えられ、唇に温かく柔らかいものが触れた。
何が起きたのかは分からない・・・・。

だがオレの静かで寂しい日常が変ろうとしているのはわかった。



有り難うございました。 なんか序章っぽくなってますが、 イングラムサイドを書いて、この話は終わり?な感じかな。 余り続けても面白くなさそうな内容なので・・・(汗) 続きは気長にお待ちください。