〜意外や意外@〜
*パラレル*
「・・・・美味い」
「だろ〜!」
二人の少年は今がまさに成長期。
学校が終わればお腹が空くのは当たり前。
けれど苦学生(?)である彼らには毎日寄り道をするお金があるはずもない。
もちろんお腹が空きすぎて我慢できないのはアラドだけであって、
普段から小食であるクォヴレーは別段おやつを食べずとも不自由はしない。
だがアラドにはそれは難しいのだ。
けれど一人で食べても味気ないので、
いつも親友であるクォヴレーを誘ってはおやつを食べていた。
けれど月末も近くなると金欠になり、食べ歩きが難しいのだ。
アラドに付き合って寄り道をしているクォヴレーもまた金欠だ。
そこでアラドはこの問題を解決すべく、あることを実行したのだ。
・・・そして今に至る。
机の上には簡単な料理がテーブルの上のそこかしこに置かれている。
出汁巻き卵、ほうれん草のおひたし、おにぎり、味噌汁、焼き魚。
・・・・一見、朝ご飯のようだが実はこれ、お菓子の代わりのおやつである。
アラドの自宅に招かれたクォヴレーは、まずそれらの料理に驚き、
そして料理を一口食べて更に驚いた。
「・・・本当に美味い」
「サンキュ〜♪」
アラドは口の周りにご飯粒をつけながら次々とお皿を空にしていく。
だがクォヴレーはあまりの驚きにいつも以上に箸が進まないようだ。
「・・・アラドにこんな才能があるとは驚いた」
「だろー??オレもそう思うんだよね!」
ヘヘン、と笑いながら出汁巻き卵を大きく口をあけてひと飲み。
クォヴレーは苦笑しながら自分も出しまき卵に箸をつけた。
「・・・これも出汁がよく出ている。巻き方も上手いし・・・、
・・・・アラド、お前・・・」
「んー?」
「・・・ひょっとしてゼオラより上手いんじゃないのか?」
「・・・・・・」
クォヴレーのズバリな指摘に、アラドは手を止めてしまった。
そして気まずそうにクォヴレーを見ると、はぁ・・・と大きなため息を吐く。
「・・・お前もそう思う?」
頭をボリボリ掻きながら尋ねてくるアラドに、小さく頷くクォヴレー。
二人は互いに冷や汗のようなものをかいていた。
「・・・なぁ、クォヴレー」
「・・・・・」
箸をお皿の上に置き、急に真面目な顔になってアラドは何かを言おうとした、
が、クォヴレーは手でそれを制すると、無言でコクン、と頷いた。
「わかっている。ゼオラには何も言わない」
「・・・・・・・」
「ゼオラが傷つくだろうし、それ以上にアラド、お前が怪我をしそうだ」
「・・・・・へ?」
何でアラドが怪我をするのか?
拗ねてしばらく口を聞いてくれない、というのはありそうだが・・・。
アラドは目をパチパチさせて、冷や汗を更に流した。
「どゆこと??」
何故だか分かっていないらしいアラドにクォヴレーはもう一度小さく頷くと、
「・・・悔しがったゼオラに踵落しを喰らうかもだろ?
『私より上手いなんて許せないわ!』・・・とか何とか言いながら・・・」
「!!?」
というのだった。
言い終えた瞬間、シーン・・と二人の間になんとも言いがたい重い沈黙。
二人は青ざめながら無言で頷きあい、誓うのだった。
決してゼオラには言うまい・・・・と。
・・・・そして二人は始終無言のまま、アラドの作った料理を片付けたのだった。
まだまだ続きます
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