〜意外や意外A〜
*パラレル*
「・・・・と、言うわけなんだ、意外だと思わないか?」
イングラムは帰宅するなり昼間起こったという出来事を聞いてフッと笑うのだった。
「オレは料理を作ったことがないから分からないが、
きっとアラドほど上手には作れないと思う。
・・・アラドはいい加減で落ちこぼれな部分もあるが、やれば出来る奴だ。
料理がそのいい例だと思わないか?」
お茶を入れながら同意を求めるように上目使いでイングラムを見つめたが、
イングラムはただ咽で笑うだけで何も言わない。
どうして何も言わないのだろう?と、
不思議に思ったクォヴレーが再び口を開きかけたとき、
意地の悪い笑顔を浮かべたイングラムがなにやら話し始めるのだった。
「クォヴレー・・・お前」
「・・・?」
「・・・例えばお前が泳げないとするだろ?」
「・・・オレは泳げるが・・?」
いきなりなんだ?と不機嫌に答えれば、
苦笑を浮かべたイングラムがなだめるようにクォヴレーの頬を撫でながら、
だから例えばだ、ともう一度言ってから話を続けた。
「泳げないお前が何故か海のど真ん中に放りだされたとする。」
「・・・・・」
イングラムが目で同意を求めてくるので、クォヴレーは難しい顔をしながら小さく頷いた。
「当然お前は泳げないのだから溺れるだろう?」
「・・・泳げないのなら浮き輪でもない限りそうだろうな」
「・・・だが溺れているお前の傍に人食い鮫が近づいてきたとする・・・」
「鮫??」
「そうだ。凶暴な鮫で猛何日も餌にありつけず、
やっとみつけたお前に向ってきた・・・・、
このときお前はどうなると思う?」
「・・・どうなる・・・・?」
イングラムの問いかけにクォヴレーは難しい顔をしながら必死に考え始める。
泳げないのにどうやって助かるのだろうか・・・?
全く検討もつかない。
うんうん・・と唸っていると、イングラムがフッと笑って答えを話し始めた。
「・・・答えはお前は泳いで逃げる、だ」
「!!泳げないのに泳いでか??」
思いもよらない答えに目が大きく開かれた。
「人間、必要に迫られればどうにかなってしまうものだ。
鮫に襲われれば泳げない人間でもどうにか助かろうとして必死に逃げるだろう?
すると泳げないのに泳いで逃げているというわけだ」
「・・・・なるほど・・・(だがそんな簡単にいくのか??)」
うーん・・・と首をかしげていると、
イングラムが何かを思い出したかのように、ククククと笑い始めるのだった。
「・・・イングラム?」
「・・・、アラドの料理上手もそんな理由からだろうな・・・くくく」
「・・・え?」
「・・・お金がない・・・だが腹は減る・・・だが買うと高くつく」
「・・・・・」
「・・・アラドはない頭で考える・・・、
『ああ、作ったほうが安上がりだし、沢山食べられる』と」
「(今、サラリと酷いことを言った気がするような・・?)」
「すると必要に迫られたアラドは自然と料理が上手くなる、という訳だ。
どうせなら不味いものより美味いものを食べたいだろうし・・、
だから別に不思議でも意外でもないと俺は思うがな・・・」
「!・・・なるほど」
全ての説明が終わるとクォヴレーは大きく頷くのだった。
「小食であれば作るより買った方が安いが、
沢山食べる人間は作ったほうが断然安い。
アラドが料理上手なのは食い意地の賜物、といったところか。
まぁ、落ち零れも何か一つでも得意なものがあるのは良い事だな」
「(またサラリと酷いことを言ったような気が・・・)」
どうだ?とクォヴレーの返事を聞こうと話しかけてきたので、
難しい顔をしながらもその最もな回答に同意しようとしたその時、
イングラムは更に例を持ち上げてきて、クォヴレーは真っ赤になってしまう。
「ああ・・・、そいえばお前も最近背筋力、腹筋力がついたよな。
それも必要に迫られて・・・といったところだろう?」
「・・・・・どういう意味だ?」
なんだか嫌な予感がして一歩後去るクォヴレーに、
口の端を斜めにあげながら段々と距離を詰めてくるイングラム。
そしてとうとう壁に追い込まれて、そっと耳打ちをされる。
「・・・俺の激しさについてくる為、必然とついたんだろう・・?」
「!!??」
「最初は1回で根をあげていたお前が最近は・・・・」
「うわぁぁぁぁぁ!!」
意地悪く微笑んでいた唇が最後まで言葉を言うことはなかった。
なぜなら真っ赤な顔で叫んだクォヴレーの唇で唇が塞がれたからだ。
「・・・ん・・・ん・・・・ふ・・」
細い腰に腕を回しだきしめる、キスを深くする。
・・・・そして唇が離れたとき、イングラムは甘く囁いた。
「・・・キスも上手になった」
「ばか・・・・・」
まだまだまだ続きます
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