意外!?
 

〜意外や意外C〜


「意外だな〜」

休み時間、机の腕の頬杖をつきながらアラドは、
マジマジとクォヴレーをやぶからぼうに言うのだった。

「何が意外なんだ?」

クォヴレーは読んでいた小説から目線をあげることなく淡々と聞き返す。
この二人、休み時間は常に一緒に過ごしてはいるが、
それぞれ別のことをやっていたりなどでまとまり間はない、が、
それはそれでこの二人らしく、誰もそのことに突っ込みを入れてきたりはしないようだ。

「お前とイングラムさん」
「・・・・オレとイングラム?」

『イングラム』という単語にクォヴレーは目線をアラドに移した。

唯一の親友であるアラドには自分とイングラムのことはカミングアウト済みで、
そのことを知ったアラドは軽蔑することなくコレまでどおりの付き合いをしてくれている。
そんな理解のある親友が今頃なにが『意外』なのか?
クォヴレーはそのことに興味を持ち、読んでいた本を閉じたのだった。

「クォヴレーとイングラムさんって雰囲気は似てるけど、
 ・・・なんか合いそうもないじゃん?」
「・・・どういう意味だ?」
「陰と陽っての??だからなんとなく続かないような気がしてた」
「(難しい言葉を知っているな・・アラドのクセに)そうか?」
「うん!実際にイングラムさんって付き合いにくくないの?」
「・・・・別に・・・まぁ、多少は・・・(束縛癖があるみたいだし)。
 だがそんなものはどのカップルにでもあるものなんじゃないのか?」
「ふぅん・・・そうかな?」

ズズイっと身体を乗り出してまで確認してくるので、
クォヴレーは首を傾げてしまう。

「(一体どうしたんだ?)」
「それって陰と陽みたいな関係の方が長く付き合えるってこと??」
「・・・・は?」

真面目な顔をしてさらに言葉を続けるアラドに戸惑ってしまう。
一体、本当にどうしたというのだろう??

「・・・気が合うだけ、楽しいだけじゃダメなんかな〜??」
「ア、アラド??」

いつになく真剣なアラド。
そんなアラドに戸惑ってしまうクォヴレー。
とりあえずこの質問は明日までお預けにしてもらい、
その日は学校を後にしたのだった。











「イングラムー?」
「んー?」

ソファーの上で背中合わせで座っている二人。
イングラムは片手に資料を持ち、ペンでイロイロマークを付けている。
そんな彼の背中に体重を押し付けるようにグイッと背中に力を入れ、
背を反り返しながらイングラムに学校でアラドとした会話を話し始めた。

「一体、アラドは何が聞きたかったんだと思う?」
「・・・・・」

イングラムは資料とペンをテーブルへ置くと、
信じられないものを見るかのようにクォヴレーを見下ろす。

「(本気でわかっていないのか?)」
「イングラム?」


ふぅ・・・とため息をつきつつ、イングラムは冷たい眼差しを送った。

「・・・お前は鈍感だからな・・・」

もちろん、当然ながら『鈍感』という言葉にクォヴレーは猛抗議をする。

「失礼だぞ!鈍感に向って鈍感というなんて!!」

そしてトンチンカンなことを言いながらイングラムの髪を引っ張り、
取り消せ!と、可愛らしく膨れ始めるのだった。

「(・・・自覚はあるのか?・・・いや、それより)・・クォヴレー」
「なん・・?・・・・っ・・・・」

ガブッとクォヴレーに噛み付くようなキスをするイングラム。
後頭部を大きな手で支え、顎には手をかけているのでクォヴレーは動けない。
思う様口の中を熱く大きな舌が這い回り、唇も甘く噛まれた。

「・・・は・・・、うぅ・・・ん」

唇が離れると粘り気のある透明な糸が二人の間に出来ていた。

「・・・お前は鈍感なのに、可愛い顔で男を誘うのだけは一人前だ」
「・・・な!・・・ぁ・・・んんんっ」

反論しようと開きかけた口は、再びキスで塞がれていた。
大きな手が胸を這い、ゆっくりと洋服が剥かれていく。
抵抗しなければ食べられてしまう!と心では思うものの、
甘いキスに身体は痺れ、いうことを聞かなくなっている。

「ぁ・・・・だめ・・・だ・・・・、っ・・・・」













ソファーの上では気絶するように眠っているクォヴレーと、
そんなクォヴレーを真綿でくるむように抱きしめるイングラムが、
生まれたままの姿に一枚の薄い毛布で包まりながら横たわっていた。
このソファーベッドも今かけている毛布も、
こういう時のためにイングラムが用意したものだ、
と、いうことはクォヴレーは知らない。

「・・・少し熱くなりすぎたか?」

癖のある銀色の髪が汗で皮膚にくっついているので、
それを優しく横に流しながらポツリと呟いた。

「だが俺といる時に他の男の話はするな、
 と、言ってあるのにアラドの話ばかりするお前も悪いんだぞ?」
「・・・・ん・・・?」
「この俺がこんなにも焼餅を焼くとは・・・これも意外というものだろうか?
 だが・・・アラドが己の気持ちに気がつきつつあるというのも意外な展開だ」

そう、クォヴレーは分かっていなかったようだがイングラムに直ぐに分かった。
アラドは『誰か』に恋をしていて、
それで恋の先輩であるクォヴレーに色々質問をしてきていたのだ。

「(鈍感ゆえに気づかぬ・・・か。
 お前はそんな鈍感なところも魅力の一つ・・・。
 願わくば、しばらくはこのままでいて欲しいものだ)」


さらに続きます