悪寒がとまらない!?
 


パラレル設定☆








コンコン、というノックとともに彼は入って来た。
白いトレイに紅茶ポット、カップ。
それにクッキーが乗ったお皿。
クォヴレーが振り返るとニッコリ笑ってサブ疣がたつような台詞を
彼は今日の言ったのだった。

「・・・少し休憩しないか?クォヴレー君」

その瞬間ゾワゾワゾワッ!!と全身が粟立ち空笑いを浮かべる。
そして心の中で必死に何かに縋った。

「(誰か!!何とかしてくれーー!!)」



・・・・・と。







〜優しさは残酷? 前編〜







痛む腰を自身で揉みながらクォヴレーはある人物に相談を持ちかけていた。


「止めておいたら?悪いことは言わないから」
「いや・・・今日という今日は実行する!!
 イングラムの奴!夕べも何度も何度も挑んできたんだぞ!?
 おかげでオレの腰はこのザマだ!」

バンッと机を叩き立ち上がるが、
腰がピキーンと痛み直ぐに椅子に座り込んでしまう。

「そ、そう・・・・」

そんな様子を半ば同情するように見、
浅いため息のスペクトラ・マクレディ。
親戚の一人である彼女は軍人で
主に化学兵器などを扱う部署に所属していたことがあった。
その為、薬品に関しては人より知識が豊富であるのだ。

「でもね、アイン。
 私も知識を少し齧っただけだからちゃんと出来る可能性は低いわよ?」
「・・・かまわない。失敗していたとしても飲むのはオレじゃないし」
「(・・・今、サラリと恐ろしいことを言ったわね、この子)」
「とにかく!!もう少し紳士的になって欲しいんだ!!」

クォヴレーは縋るような目で『薬』を作ってくれるよう頼む。
真剣な様子に降参したのか、
両手をあげ小さく頷くとため息をつきながら念を押した。

「わかったわ、降参よ」
「じゃあ!!」
「ええ、・・・そのかわり何がおきても私は・・・」
「わかっている!!スペクトラには決して迷惑はかけない」




こうしてクォヴレーはスペクトラに『紳士的になる薬』、
つまり『性欲を抑える薬』を作ってもらうことにしたのであった。
なぜ、このような薬があるのか?
それは戦場に出た男達が火照る身体を抑えるために開発されたのだ。
戦闘で高ぶった身体を押さえ込む薬。
イングラムはソレはもうお盛んでクォヴレーは毎晩悩んでいた。
毎日一晩中何度も挑まれては体中が悲鳴をあげていた。
その状況を何とかしたくて『薬』を彼に飲ませたのだが・・・・、









ニッコリ微笑んだイングラムが優雅なしぐさでポットから紅茶をカップに注いでいる。
次いで砂糖を二杯入れミルクをたらし掻き混ぜソレをクォヴレーに手渡した。

「あ、ありがとう・・・」
「どういたしまして・・・勉強は捗っているのか?」
「あ、あぁ・・・まぁ・・・・」
「分からないところはないか?」
「あ、あぁ・・・ない・・・と、思う」
「分からないところがあったら遠慮なく聞くんだぞ?
 こう見えても理数系は大得意だ」
「・・・・わかった」

イングラムが焼きたてのクッキーを差し出してくる。
遠慮がちに受け取り一口かじると綻んでしまう単純な頬。
満足そうにクォヴレーを見下ろしながら感想を聞いてきた。

「・・・美味しいか?」
「・・・美味・・・しい・・・サクサク・・で」
「それはよかった。朝から頑張った甲斐があるというものだ」
「朝から・・・・?あ!」

その時、手が滑って机から紅茶ポットを落としてしまう。
その拍子に熱湯がかかり眉をしかめる、布巾に手を伸ばした、が、
一歩早く手首をイングラムにつかまれ熱湯をかぶった指はそのまま彼の口の中へ。

「(うわ!!)」
「・・・・しまった・・・これは切った時だな・・・まぁ、いいか・・・んっ」
「(ひぁ!!)」

人差し指がチュッと吸われ、なんともいえぬ痺れがそこから生まれた。
このまま抱かれてしまいたい・・・と思いクォヴレーはイングラムの首に手を伸ばすが・・

「・・・どうやらたいした怪我ではないようだな、クォヴレー君」

イングラムの台詞・・・正確には『クォヴレー君』に
すっかりと気分は殺がれてしまった。
彼に薬入りの酒を飲ませてから1週間・・・・、
クォヴレーの望みどおり彼は信じられないくらい紳士的にはなった・・・。
しかしこの1週間身体をつなげることは愚か口付けすらも交わしてはいないのだ。
クォヴレーを心配し、甲斐甲斐しく世話をしてくれるもののどこか他人行儀。
あまつさえ『君』などと呼ばれ、なんだかいたたまれない気持ちと体のクォヴレー。
あれほど夜の激しさを拒んでいた筈なのに、
あの激しさを1週間も味わっていない体はすでに限界にきていた。

「(イングラムの馬鹿!!なんでこう差が激しいんだ!!)」










イングラムが紳士に変身してから2週間が過ぎた。
休みだというので一緒にショッピングに出掛けたのだが、
クォヴレーは穴があったら入ってしまいたいくらい恥ずかしかった。
もうすでに2時間は試着を繰り返しているからだ。
店員や他の客にとって迷惑極まりない客だろう。

試着室の鏡の前でニコニコ笑うイングラム。
はぁ・・・と心の中でため息をつきこの時間が終わるのをひたすら待つクォヴレー。

「あぁ・・・これも可愛らしいな・・・だがこれもいい・・あぁ、あれも・・」

いつもなら試着はさせず気に入った服をカード払いで買うイングラム。
ところが今日は全てを試着させ満足そうに頷いているではないか。

「(・・・紳士って試着好きなのか???)イングラム」
「ん?疲れたのか?だがもう少し我慢しろ、あと10着は着てもらいたい」
「じゅ・・・!?・・・も、もういい!」
「クォヴレー君・・・・」

するとイングラムがシュンと肩を落とし悲しそうな顔になる。
クォヴレーは悪いことなどしていないのに
罪悪感にみまわれなくなくあと10着試着したのであった。






買い物の後、ホテルで食事を済ませそのままそこに泊まった。
それもいつものことだ。
だがしばらくエッチをしていなかったので今夜こそは・・・と
クォヴレーは思っていたのに、イングラムさっさと一人眠ってしまう。
唖然としたままイングラムを見つめるが彼は既に夢の中の住人・・・・。
クォヴレーはなんだか虚しくなってきてしまっていた。


「・・・・イング・・・・」

眠る彼のベッドの横に立ち、その端整な顔の頬に手を寄せる。
男らしい顔の頬をライン沿いになぞり、指先で唇に触れた。

「・・・・キス、したい・・・イング」

知らず知らず目は熱くなり涙でイングラムが歪んでいく。
後悔が胸を押し付け息が苦しい。

「オレ・・・なんてことしたんだろう・・・」

己の浅はかさをいまさらながらに後悔する。
クォヴレーが望んでいたのはこんなイングラムではないのだ。
床に膝をつきイングラムの寝顔を覗き込む。
顔を耳に近づけ小さく囁いた。

「起きてくれ・・・イングラム・・・・抱いて・・・」
「・・・・・・・」
「キスしてくれ・・・イングラム・・・頬を唇で・・・・」
「・・・・・・・」

しかしイングラムから返事は返ってこない。
クォヴレーは彼の首に顔を埋めるように抱きつき、すん・・と鼻を鳴らした。

「・・・いつものイングラムに戻って欲しい・・・。
 薬・・・の効果・・・いつになったら切れてくれるんだろう・・・。
 イングラム・・・切ない・・・傍にいるのに・・・虚しい・・・・」

ギュウ・・・と首筋に縋りつく。
そしてそれとほぼ同時に大きな手がクォヴレーの頭を撫で、
たくましい腕が腰に巻きついてきたのだった。



有り難うございました。 ちょっぴり違う設定のインヴレ。 後編は「裏」の予定・・・いえ、「裏」決定です!! しばしお待ちを・・・・♪