時刻は夜の22時。
同棲している恋人はまだ15歳。
試験勉強の時以外は規則正しく美しくがモットーなのか、
平日は夜22時には眠りについてしまう。
金曜と土曜は恋人の時間のため夜から次の日の朝(昼)までベッドから
(ごくまれに違う場所の時もある)離さないが・・・。
そんなわけで、イングラムは今寝室の隣の部屋で1人酒を楽しんでいた。
〜リキュール・マジック〜
上司が旅行に行ったらしい。
「お土産」にワインを渡された。
お酒ならば何でも来いの俺は今夜はそのワインと、
チーズを肴に1人酒を、本を片手に楽しんでいた。
フフフ・・・そういえばこの前、寝付けなくて1人酒を飲んでいたら、
僅かにあいたドアの部屋明りでクォヴレーをおこしてしまったんだったな・・・。
今夜はそんなことがないようしっかりと閉めてきたし平気だろうが。
数十分経った頃・・・
本の世界に入り始めた頃・・・
部屋の扉が開いた・・・?
「・・・ふぁぁぁ」
目を擦りながらクォヴレーが寝室から出てきた。
パジャマがでかいのか、布がずり落ちている。
普通のMサイズだというのに大きいのか?
今度からSサイズを買ってこよう・・・
「クォヴレー、どうした?」
「・・・なんだか寝付けなくて」
「あぁ・・俺もたまにそういうことがあるな・・・
そういう時は何をしても、寝ても冷めても寝付けない」
「・・・そんな感じだ」
眉根をよせ、クォヴレーは頷く。
俺は座っているソファーの横をポンポン、と叩くと、
色白な頬を少しだけ桜色に染めクォヴレーは隣に座った。
「今夜もワインか?」
「あぁ・・」
「美味いか?」
「まぁ、な」
「肴はチーズなんだな」
「食べるか?」
ブルーチーズを一欠けらとり、閉じた唇に押し当てる。
クォヴレーが薄く口を開いたのを確認すると指を口の中に押し込んだ。
「少ししょっぱい」
「青カビチーズの特徴だ・・不味いか?」
フルフル・・と首を振る。
そして遠慮がちに唇を動かした。
「もう一つ食べたい」
小食なクォヴレーにしては珍しい「おかわり」の催促だった。
俺は笑顔でクォヴレーに聞いてみた。
「ワインはいらないのか?」
怪訝そうな表情で可愛らしい唇を動かし声を発する。
「オレは未成年だぞ?」
「知っている」
「・・・少佐ともあろう者が未成年に酒を勧めるのか?」
「少しくらいいいだろう?あまり頭が固いと人生損をするぞ?
それに・・・」
「それに?」
「眠れない時は酒を飲むと眠れるようになる」
大きな目を更に大きく見開いて俺との距離を縮めるクォヴレー。
「そうなのか!?」
「ああ」
「・・・へぇ」
「本当は少し『運動』をすれば適度に疲れて眠れるんだろうが・・・」
「『運動』?」
何のことかわからないのか、首を傾げるクォヴレーに、
わざと意地悪い微笑をすると、俺は耳元で『運動』について呟いた。
「・・・エッチをすればよく眠れる」
『エッチ』と言う言葉に過剰に反応し、耳まで真っ赤にする可愛いクォヴレー。
「バカ!!エログラム!!」
「フフフ・・ほら、飲んでみろ」
ポカポカ胸を殴ってくるのを甘んじて受けながら、
飲みかけのワイングラスを目の前に差し出した。
「まったく・・・いただきます」
ぷぅ・・と頬を膨らませながらもワイングラスを傾け、
ペロッと少しだけ舐めた。
どうやら味見をしたらしい・・・
フフフ・・クォヴレーの行動はどれもこれも微笑ましいな・・・。
「・・・あ!結構美味しい・・ウィスキーは不味かったけど」
「そのワインはワインといってもアルコール分がほとんどない、
ジュースのようなものだからな」
「ふーん・・・?」
よほど気に入ったのかゴクゴクと飲み干すクォヴレー。
「・・もうちょっとくれ」
「・・・平気なのか?」
「ああ!もう少し頂戴?」
ワイングラスに半分だけ注いでやると、また一気にそれを飲み干した。
ピッチが早くないか?
平気だろうか????
「・・・ぷはぁっ・・・ひっく」
・・・ヒック???だと?
頬を桜色に染め、クォヴレーがウルウルと俺を見つめてくる。
「もう少し・・・頂戴?・・・ひっく」
・・・あの程度で酔ったというのか?
「イングゥ・・頂戴!・・ねぇ!くれ!」
ワイングラスを片手に俺の上に乗っかってきた。
首に腕をまわすと、少しだけ酒臭い吐息が顔にかかってくる。
「イングラム・・これ、美味い・・もう少しくれ」
俺はワイングラスを奪うとクォヴレーを脚の上から下ろした。
「あ!」
何するんだ!・・と膨れながら俺を睨んでくる。
「もうちょっと頂戴!イング・・お願いだ・・」
上目使いでウルウルと・・・
クォヴレー・・頼むから俺以外の誰かの前でそんな姿を晒すなよ?
・・・襲われるぞ・・?
ギュム・・と鼻を摘むと、
「酔っ払い君・・・ワインはもうダメだ、酔っ払いは早く寝なさい」
「やだ!・・もっと飲む!・・イングゥ・・欲しい」
欲しい?・・欲しい、だと!
クォヴレー・・俺以外の前でそんな言葉は・・・
「だめだ!・・アレだけの量で酔ってしまうような奴には
これ以上あげられない。
ほら、ベッドまで運んでやるからもう寝なさい」
「やだ!やだ、やだやだぁ!!」
手足をバタバタさせ駄々をこねるクォヴレー。
そして終いには・・・・
「う・・うぅ・・・イングラムはオレが嫌いなんだぁぁ・・」
「クォヴレー?」
「けち!ケチグラム・・・うっ・・うく・・」
・・・何故そうなる?
ただワインをやらなかっただけじゃないか・・・。
それにしても、なんて酒癖の悪い・・・
泣き上戸か?
「いじわる・・・イングはオレが・・嫌いなんだ・・だから意地悪するんだ」
「・・・クォヴレー」
ポロポロ涙を流しながら話すその内容に俺の心も何故だかツキンと痛んだ。
こんなに愛しているのに・・・
こんなに大切に想っているのに・・・
クォヴレーにはその想いの一欠けらも伝わっていなかったのだろうか?
涙を流すクォヴレーの前髪をかきあげると、額に唇を寄せてあげた。
「・・・お前が大切だから、これ以上あげないんだ」
「・・・・・」
「少しの量で酔ってしまうんだ・・
これ以上飲ませたらひっくり返るかもしれない。
そんな事になったら俺の心臓が止まってしまう・・」
「・・・イングラム」
華奢な体を抱き寄せ抱きしめると、
唇に触れるだけのキスを施した。
「・・・んっ」
真っ直ぐに涙で潤んだ瞳を見つめながら、
「・・・俺を殺したいのか?それともお前は俺が死んでもいいと思っているのか?」
「そんなこと!」
「愛しているんだ、クォヴレー・・だからこれ以上はダメだ」
「イングラム・・・本当か?」
「ん?」
「本当にオレを愛しているのか?」
「信じられないのか?」
酔っ払いに力説しても仕方ないんだろうが、
俺は両手でクォヴレーの頬を包んだ。
涙で濡れた瞳で俺を真っ直ぐに見つめてくる・・・。
俺の真剣な眼差しに嬉しそうに微笑むと、
「・・澄んだ目をしている・・嘘じゃないんだな・・信じる」
「いい子だ・・愛しているよ」
更に嬉しそうに笑うと、今度は照れたように呟き始める。
「・・・オレ、も」
「・・・『オレも』?」
「愛している・・・」
「フフフ、有り難う・・嬉しいぞ」
窒息しそうなくらい抱きしめてやると、
クォヴレーの早い鼓動が伝わってきて俺の鼓動も早くなる。
互いの鼓動が語っている・・・
『お前が好きだ』・・・と。
俺の胸に顔を埋めながら「あること」をおねだりしてきた。
「イングラム・・・キスしたい」
「キス?」
「・・・もっと感じたいんだ・・・
お前がオレを本当に愛してくれているということを」
「・・・・・・」
「・・・唇が腫れるくらい・・キスがしたい」
・・・これも・・・酒の仕業だろうか・・・?
「明日、喋るのが億劫になるくらい・・沢山キスしたい」
・・・そうとしか思えない・・・・
あのクォヴレーが・・・
抱きしめるだけで赤くなるクォヴレーがなんて積極的な・・・
「・・・イン・・・ぁっ・・・んんぅ」
力強く抱きしめながら、ソファーに押し倒すと、
激しく小さな唇を貪った。
「・・・んっ・・・んぅ・・ふぁ・・」
「・・・っ・・クォヴ・・レー・・ん」
「・・ふぁ・・イン・・息できな・・んぅ・・・・んっ」
「・・・俺の・・愛、を、感じたいん・・・だろう・・?」
「ふっ・・・んっんっ・・そ・・だけ・・ど・・・んっ」
逃げる舌をしつこく追い、自分の口の中へ誘拐してくる。
激しく絡めあわせ、時折吸ってやるとクォヴレーの身体は小刻みに痙攣していく・・・。
「・・・なら・・大人しく舌を・・唇を・・全てを・・俺に預けるんだ」
「・・・イン・・・ふぅ・・・んぅ」
あのまま寝入ってしまったのか、
ソファーの上でクォヴレーを抱きしめた姿で俺は目を覚ました。
クォヴレーも目を覚ましたのか、俺と目が合うと真っ赤になって顔をそらした。
「・・おは・・よう・・イングラム」
「おはよう」
ふむ・・・あの様子だと酔っていたとはいえ記憶には残っているらしいな。
あわせようとしない視線を合わせるため、顎を掴み俺側へ向かせる。
そして強引に「おはようのキス」を交わした。
「ん〜!!」
唇を離し、クスクス笑いながら見下ろす。
クォヴレーは両手で顔を覆ってしまった。
そして指の間から俺を見ているようだ。
「・・・昨日・・あんなにしたのに・・」
「ほぉ?・・覚えていたのか?」
「当たり前だろ!?ちょっとしか酔っ払っていなかったんだ!
お前とキスしている時はほとんど正気だった!」
・・・真っ赤になりながら「いいわけ」をする姿はたまらなく可愛らしい。
クォヴレーを抱きしめながら俺は独り言のように呟いた。
「アルコールの魔法は・・意外に凄いな」
「アルコールの魔法?」
「・・・普段意地っ張りなお前が素直になっていた」
「むっ!意地っ張りで悪かったな!」
「拗ねるな・・・俺はお前のそういうところも愛しているんだ」
「愛!?」
湯でダコのように真っ赤になった。
本当、見ていて飽きない愛しい存在。
「お前だって夕べ・・何度も言ってくれたじゃないか・・
『イングラム、愛している』と・・・
今朝は言ってくれないのか?」
「・・そ、そそそそ・・そうだが・・だが・・う〜!!」
もごっているクォヴレーの首筋に吸い付きながら俺は身体を撫で回し始めた。
「あ!・・イング!?」
「・・・言って欲しい・・・言ってくれないと・・・」
「んっ・・ちょっ・・やっ」
「・・言ってくれないとわからないから、このまま抱くことにする・・
そして身体に語ってもらおうか・・・?」
「子供か!?・・あっ・・・ふぁ・・!が、学校・・が・・」
「休んでしまえ・・理由はそうだな・・『愛欠乏症症候群』でいいのではないか?」
「なんだ、それは!?・・・
あっ・・ばか〜!!エログラム!!あっ・・あぁぁ!!お前だって・・仕事・・」
「・・・休みだ」
「!!?そんな・・やっ・・・」
可愛いクォヴレー・・・
愛しいクォヴレー・・・
俺の・・クォヴレー・・・
このままずっと・・傍に・・・
有り難うございました。
気障なセリフが多くなってしまいましたが・・・
ラブラブで甘甘なインヴレ?です、一応。
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