〜トリック・オア・トリート!B〜
食堂ではレーツェルが沢山のカボチャ料理を作っていた。
今は海老の下ごしらえの最中で、
レーツェルとゼンガー、それからある人物が黙々と海老の皮を剥いていた。
「フフフ・・そうか・・それで君にしては珍しく不機嫌なのか」
「・・・リュウセイ少尉も修行がたりんな」
「そう言うな、友よ・・彼にとって彼は大きな存在だったんだ」
黙々と海老の下ごしらえをしているとヴィレッタが尋ねてきた。
「レーツェル!なにかお菓子余っているかしら?」
「ヴィレッタ大尉・・飴なら残っているが・・・」
「ああ!助かったわ・・・手持ちのお菓子が底をついてしまったのよ」
「はははっ・・皆こういうときとばかりにお菓子をねだりに来るんだな」
「そうね・・・ん?・・あなた・・まさか・・」
助かった!という顔で席につくと、ヴィレッタは横にいる人物に目を向ける。
横にいる人物は自分と同じ服を着ていた。
ヴィレッタはズボンだが、その人物はミニスカートにブーツ・・・。
脚線美がよく映える・・・と一瞬感心してしまった。
そして髪の毛は青く少し癖毛気味・・・
懐かしい雰囲気を漂わせているが、彼にしては幾分か小さい・・
おまけにスカート姿なので、彼であるはずがない・・・
と、いうことは行き着く答えは一つだった。
「クォヴレー?・・クォヴレーよね??」
頬を赤らめながらゆっくりとヴィレッタの方へ振り向くと小さく頷く。
「・・・アヤが貴方の衣装を用意するんだと張り切っていたけど・・・」
まさかこんな格好とは・・・
ヴィレッタは改めて横にいる少年の姿を見る。
「・・・イングラムの格好をさせたかったのよね??なのに何故スカートなの???」
「・・・最初はズボンだったんだ・・・でもアヤ大尉が・・・」
『どうせだからスカートにしましょうか?顔は少佐なのにスカートはいていたら、
リュウはどんな反応するかしら?楽しみだわ〜♪』
「・・・それで?リュウセイには見せにいったの?」
「・・あぁ」
「リュウセイはどんな反応した??」
彼女にしては珍しくワクワクしながらクォヴレーに話の先を即した。
ムッ!と不機嫌な顔をしながら・・・
「大尉・・彼はクォヴレーを見るなり泡を吹いて倒れたそうだ」
「え!?」
「リュウセイ少尉は修行がたりん」
黙々と海老の皮を向きながらゼンガーは再びそう言った。
「・・・オレがリュウセイの部屋を訪ねていくと・・」
『・・・リュウセイ!』
『ん?クォヴレーか??』
『ああ・・トリック・オア・トリート!』
『はははっ・・よし、今扉開けるよ・・・お待た・・!?』
『??リュウセイ??』
『うわぁぁぁ!?きょ、教官!?』
『リュウセイ?リュウセイ!?』
「・・・そのまま泡を吹いて倒れた・・飴を床一面に散らばせて・・
腹がたったのでそのまま放置してきた!」
「・・フ・・プククク・・あははははっ!!やるわね!クォヴレー!!」
「笑い事ではない!リュウセイはまだオレの中の彼の存在を求めているんだ!」
目に涙を溜めながらヴィレッタは笑い続ける。
むぅ・・と唇を尖らせながら、
「笑うな!!」
「・・・フフフ・・クォヴレー・・
リュウセイはお前の中のイングラムはもう求めていないわよ」
「嘘だ!!」
「嘘じゃないわ・・ただ、驚いたんでしょうね・・・イングラムの格好をした人物が・・・」
そこまでいうとヴィレッタは再び腹を抱えて笑い出した。
「あははははっ・・イングラムが・・イングラムが・・スカート・・スカ・・ククク」
眉を寄せヴィレッタを睨んでいると、
最も会いたくない人物が入ってきたので身を竦めるクォヴレー。
「ウ・フ・フ♪・・・守備はどう?ミ二グラムちゃん!」
「アヤ大尉!」
「・・くくく・・あら?アヤ・・」
「隊長!・・どう?クォヴレーの格好は?」
「ははははっ・・最高よ!あのイングラムが・・スカート!!」
「フフフ・・・で、リュウはどう反応したの??」
ゆっくりと近づいてくる彼女が怖くて、慌てて席から立ち上がりゼンガーの後に隠れる。
「・・クォヴレー・・どうして逃げるの?」
黒く微笑んだアヤが近づいてくる。
ゼンガーは黙々と海老の皮をいている・・そしてぼそっと・・
「何事も修行・・・」
「・・・え?・・!?うわぁぁぁ!!」
「捕まえたー♪ミ二グラムーー♪」
「は、放・・うっぷ!!」
豊かな胸に顔を埋めさせられ、腕をバタバタさせる。
「ミ二グラム♪ミ二グラム♪」
「く、苦・・(あぁぁぁ!やはりこの人は苦手だ!!)」
「ウフフフ・・アヤ、その辺で放してあげて?」
「・・了解!・・ちょっと残念だけど・・」
「・・ぜーはー・・ぜー・・た、助かった・・」
「フフフ・・お疲れさま・・これは私からだ」
「・・・え?」
目の前にパイ包みが置かれた。
「・・・これは?」
「君は朝から仮装の支度をしていて朝ごはんを食べていないだろう?
夕食は重たい料理が出るし、すこし食べておいたほうがいい・・」
「・・あ、・・ありがとう・・ございます」
パイ包みをスプーンで穴をあけたら、カボチャのいい匂いが鼻を掠めた。
「・・カボチャのシチュー?」
お菓子じゃないのか・・と少しだけ落胆しながらクォヴレーはそれを口に運び始めた。
「・・美味しい」
「・・・それはよかった・・
私はまだ君にトリック・オア・トリートと言われていないからね。
お菓子はあげられないんだ・・・」
あ!・・という顔をしながら、
「・・・ト・・トリック・オア・トリート・・・?」
ボソッと呟いた。
すると四方からお菓子が姿を現す。
「・・・え?」
レーツェルからはカボチャのマフィンが・・・
ゼンガーからは無表情に煎餅が・・・
ヴィレッタからは、なくなったと言っていたのにクッキーが・・・
そしてアヤからチョコが差し出された。
驚きながらお菓子を持っていたバスケットに閉まっていると、そっと頭を撫でられた。
「・・ハッピーハロウィンね・・クォヴレー」
「ヴィレッタ・・・」
「フフフ・・さぁ!クォヴレー、
シチューを食べ終わったらその格好で皆を驚かせに行きましょ?」
「アヤ大尉・・」
「だ・め!・・アヤって呼んで頂戴」
「ア・・・アヤ・・?」
「ん〜!!やっぱり可愛い〜♪ミ二グラム!!
少佐とは全然違うわ!素直だし!ん〜・・ちゅ♪」
「んぐぅ??」
「た、大変です〜!!リュウセイ少尉が・・!?うわぁぁぁ」
「アラド?何大声出してんのよ?え?きゃぁぁぁぁ」
「クォヴレー!お前・・ななんな、なにチューなんかしてんだ??」
「ぷはっ・・ち、違う!」
「何が違うのよ?クォヴレー!!」
「ゼ、ゼオラ・・これは大尉が勝手に・・・」
「アヤ、でしょ・・?そんな悪い子は・・・」
「わっ・・ちょっと・・んんぅ??」
「あははははっ」
「ヴィレッタさん!笑い事じゃないっスよ!」
「フフフフ・・大丈夫よ・・アヤのあれは弟を可愛がっているのと同じようなものよ」
・・・その頃のリュウセイ
「うーん・・うーん・・」
「ライ、何か言っているぞ?」
「そうだな・・」
「スカート・・」
「「スカート??」」
「・・教・・教官・・スカート・・うーん」
リュウセイはその後3日3晩寝込んだそうな・・・。
有り難うございました。
ハロウィン本番駄文第一弾です。
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