企画

〜夏企画〜

さぁ、寝ようというときに呼び出しがかかりヴィレッタはむくれるクォヴレーを
部屋に置き去りにして会議室へと向った。


2時間ほど経っただろうか・・
会議が終わり部屋に帰ると、はじめに飛び込んできた光景に声を出して笑いたかった。
なぜならクォヴレーがベッドの上で布団を頭から被り
身体を丸めてブルブル震えているではないか!?
足元を見れば何故か植木鉢が割れていた。

「・・・クォヴレー?どうしたの?」
「(ぴくっ)」

ガバッと布団から這い出しヴィレッタに飛びつく。

「ヴィ、ヴィレッター!!」
「??クォヴレー??」

胸元の服を掴み顔を胸に押し当てながら、

「ヴィレッタ!ヴィレッタ!!」
「・・落ち着きなさい・・・何があったの?」
「出たんだ!!」
「・・・何が??」
「お化け!!」
「・・・お、化け??」


クォヴレーの話によるとこうである。

ヴィレッタが部屋を出ていった後、
歯を磨こうと洗面所にいった・・・のはいいがフと鏡を見たら
知らない『男』が映っていて、ニヤリと笑ったそうだ。

それで怖くなり洗面所から引き返してくると、
今度は部屋に飾ってあった観葉植物が急に宙に浮き割れたとのこと・・・。

「こわいーー!もうヤダ!!なんでオレが1人でいる時だけ出てくるんだ!!」
「・・・クォヴレー・・一人にして悪かったわ。もう大丈夫よ。
 さぁ一緒に歯を磨いて今日はもう寝ましょう」
「・・・・・」



クォヴレーはヴィレッタのふくよかな胸に顔を埋め眠りについく。
最初はガタガタ震えて眠れないようだったが、ヴィレッタが背中を撫でていてやると
落ち着いてきたのかやがて穏やかな寝息をたてた。
クォヴレーが眠りについてから10分くらい経っただろうか?
部屋のドアが突然開いた。

「隊長!・・・って、うわぁぁぁぁ」
「・・・うるさいわよ?なに?」
「・・隊長が聖母のように微笑んでる・・・こえー」
「・・・なんですって??」

しまった!と慌てて頭を横に振るがヴィレッタの厳しい視線は変わらなかった。

「・・・で?リュウセイ・・何か用?」
「お!そうだ、さっき部屋に来たときコレ落さなかった?」
「・・・コレ??これって・・!?」

リュウセイが持ってきたモノ・・・
それはクォヴレーの写真だった。
しかも滅多にお目にかかれない極上の笑みの写真。

「私がこんなもの持ち歩くわけないだろ?」

凄みを利かせながら言われたので妙なプレッシャーを感じ
リュウセイは一瞬後ずさってしまう。
しかしすぐに気を取り直し、

「あの時部屋に来てたやつ皆に聞いたけど違うって言うんだよ。
 で、残ったのは隊長だけだし、てっきり・・・」
「私じゃないわ」
「・・・じゃ、誰のなんだ???」
「知らないわよ。・・・ユーレイの持ち物なんじゃない?」
「!なるほど、ユーレイか・・・って、えぇぇぇぇ!?」
「しっ!クォヴレーが寝てるのよ!?」

ヴィレッタの叱りに慌てて両手を口にあて声を抑える。

「・・・わりぃ・・ん?はははっクォヴレーもやっぱ男の子なんだな!」
「・・何故?」
「だってよ、隊長の胸に顔埋めてるじゃん?」
「・・・ああ、そうね・・でもクォヴレーの場合はそんなこと考えてなさそうだけど?」
「・・うーん・・そう言われればそうかも・・」
「赤ん坊というものは、無意識のうちに母親の胸に顔を埋めるものなのよ」
「・・・へ?」
「バルシェムという楔を引きちぎったクォヴレーは今、真っ白な赤ん坊とほぼ同じ存在」
「・・・・・」

リュウセイは少しだけ苦しげな顔をしながら話をきく。
眠るクォヴレーの頭を撫でながらヴィレッタは話を続けた。

「赤ん坊は母親の胸に顔を埋めることで安心できるのでしょうね」
「・・・そっか・・ってことは、隊長はクォヴレーのママか!?」
「・・・せめてお姉さんにしてくれないかしら?」
「年恰好からいけば歳の離れた姉弟だよな・・・ん?」
「どうかした?」
「あそこにあった観葉植物は?」
「・・あぁ、あれは・・」

リュウセイに経緯を話した。
話していくうちに2人の顔色が変わっていく・・・

「なぁ、隊長・・」
「私も多分同じことを考えた・・」
「んじゃ、この写真も・・・」
「・・・ほぼ、90%くらいアイツのでしょうね・・・でもそうすると疑問が1つ出てくるわ」
「疑問??」
「ポルターガイストの原因がアイツの念導力だとしても・・・」
「・・・しても??」
「クォヴレーは鏡に映った男を『知らない男』といったのよ?」
「あ!」
「キャリコだとしたら顔は知っているはずだわ」
「・・・少佐ってことは??」
「・・・精神世界で何度か会話しているようだし知らないってことはないでしょう・・
 もし知らなかったとしてもキャリコと似たような顔だし、
 その時はキャリコだ!と思うはずだわ・・
 第一イングラムがクォヴレーを脅かす理由がないわ」
「そうだよなぁ・・・」

2人はウンウン・・・考える、が答えは出てこない。

「とりあえず、お前も今日はもう寝なさい」
「そうだな・・・明日になれば何かしら進展するかもだし・・
 んじゃ、俺ももう寝る・・・この写真どうしよう??」
「お前が持っていてくれる?」
「了解」


リュウセイが出て行くとヴィレッタは改めてクォヴレーを抱きしめて眠りにつく。
人肌の温もりに安心するのか、クォヴレーは穏やかな顔で眠りについている。




・・・その夜、アラドは妙な気配に目を覚ました
そして・・・


「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」




さて、アラドの身に何が起きたのか!?