〜夏企画〜
豊かな胸と、いい匂いのするその女性に抱きしめられながら
クォヴレーは久々に安心して眠りにつくことが出来た。
頭を撫でられているのか・・・
他人に触れられるのはあまり好きではないが
今は何故か酷く安心する。
クォヴレーが眠りについてどのくらいの時間が経ったのだろうか?
その声はアークエンジェルの戦艦中に響き渡った。
「うわぁぁぁぁぁ」
強姦にでも出くわしたようなその叫び声に
クォヴレーはガバッとベッドから身を起した。
「!!アラドの声だ!」
「・・・ええ、そうね」
ヴィレッタもベッドから起き上がりお互いの顔を見やる。
「・・・悪夢でも見たのかしらね?」
「・・・アラドのことだ・・
食べ物が消える夢でも見たんじゃないか?」
「・・・食べ物を没収される夢かもよ?」
苦笑いしながら冗談を言い合う2人・・・。
だが、クォヴレーの顔はだんだん蒼白になっていく。
「もしかして・・・でたのかな?」
「出た??何が??」
「・・・だから・・・その・・」
頬を少しだけ赤らめ言いにくそうにクォヴレーはその先を続けた。
「・・・お化け」
「お化け??」
「今日はこの部屋にも出たけどいつもはあの部屋に出るからな。
アラドはひょっとして見たのかもしれない・・お化け」
「(・・お化けの正体はキャリコだと思うのだけれど・・ん?
・・・ひょっとしてあの子クォヴレーと間違われて・・?まさかね)」
「こうしてはいられない・・行こう!」
「え?」
軽やかにベッドから降りるとクォヴレーは入り口まで走る。
「ヴィレッタも!早く!!」
「え?・・あ、ああ・・わかったわ!」
「ぺっ・・ぺっ・・ぺぇーーー!!」
「なんで貴様がソコにいるのだ?」
「ぺっぺっ!それはこっちのセリフだ!!
なんでオレがお前に・・ち・・ちゅ〜されなきゃなんねーンだよ!!」
自分の口を腫れ上がるほどゴシゴシ擦りながらアラドは
長身の男を睨んだ。
「・・・貴様に接吻をしたわけではない・・・俺は、
アインに接吻した・・つもりだったのだ」
「オレは『アイン』
・・もといクォヴレーじゃねーよ!!」
腕を組みながら男はアラドを一瞥し静かに答えた。
「そんな事は百も承知だ!
だいたい貴様と俺のアインとは似ても似つかん!!」
「んじゃ、なんでちゅ〜してきたんだよ!?」
「こら!人が折角俺のアインの俺のを
強調したのだからつっこめ!!」
「・・・はぁ?なにいってんの?あんた。クォヴレーはあんたのじゃねーよ!
てか、返せ!!オレのファーストキス!!」
「俺のではなければ誰のだというのだ?・・・ファーストキス??
ふん!そんなこと俺の知ったことではない!・・気の毒にな!」
「そいつはどーも!!・・・クォヴレーが誰のものかって??
少なくともあんたじゃねーことは確かだな!!」
ファーストキスを奪われた恨みか・・・
アラドは意地悪くその男の質問に答えた。
が、それがまずかった。
次の瞬間には肩をつかまれベッドに押し倒された。
・・・『皆』はもうすぐそこまで来ているというのに・・。
「へ?」
「・・・俺でなければ・・誰のだというのだ・・?紫小僧!!」
「・・・え?」
「答えろ!!」
「アラド!どうした!?」
「あ!」
「!?」
「!!??」
ドアを開けた瞬間にクォヴレーは固まった。
なぜならば目に飛び込んできたその光景が、
今まさにこれから愛し合うところでござい!な光景だったからだ。
恋や愛に疎いクォヴレーもなんとなくだがその行為のことは知っている。
「クォヴレー?どうしたの??」
後からヴィレッタの声が聞こえる。
その男とアラドはベッドの上で固まったまま動かない。
「クォヴレー??・・・て・・あら???」
「うぎゃゃゃ!!ご、誤解だァァァ!!」
「ヴィレッタ!?・・そ、そうだ!!誤解だ!!」
ヴィレッタは2人に冷たい視線と微笑を向けると、
「私はまだ何も言っていない・・・」
その男、キャリコはアラドの上から下りると
ベッドの横で偉そうに腕を組みながらゴホンと咳払いをした。
「・・・で、なんのようだ?ヴィレッタ?」
「・・・それはコチラのセリフよ・・・お前何のようなの?」
「・・・アインの様子を伺いにきただけだ」
「・・・オレの様子を見にきただけなのに、
アラドに圧し掛かっていたのか?」
ヴィレッタの後からチョコンと顔だけ出して
キャリコを威嚇する。
その目は侮蔑に満ちていた。
「ご、誤解だアイン!俺はお前一筋なのだから」
冷や汗をかきながら弁解する。
すると騒ぎを聞きつけたのか、リュウセイも部屋にやってきた。
「アラド〜?今の悲鳴・・・!!お前は!」
「ロボットマニア!?」
「リュウセイ少尉!」
「その呼び方止めろって!・・・なんであんたがここにいるんだ?」
「・・・アインに逢いにきた・・・」
「・・・クォヴレーに逢いにきただけ?
ならなんでアラドが悲鳴あげるんだよ?」
「・・・間違ったからだ!」
「・・・何と間違ったのよ?」
「アインとだ!紫小僧がアインのベッドで寝ていたのだ!
当然俺はアインと思っていたからそのまま・・・その・・」
「ちゅ〜してきたんだよ!」
一瞬部屋の空気が凍りついた。
クォヴレー、ヴィレッタ、リュウセイは冷たい視線をキャリコに向ける。
「だから!アインと間違っただけだ!」
「本当に・・?お前まさかとは思うけど
本当は少年趣味なんじゃないでしょうね?」
「断じて違う!俺はアイン命だ!!」
誤解を解こうとキャリコは力いっぱい自分の思いのたけを叫んだ。
クォヴレーはピク・・・と眉を動かす。
「(ということは・・接吻をされていたのはオレのはずだったのか??
すまない、アラド・・・)」
「・・・お!そうだ!」
何かを思い出したのか、
ポケットをゴソゴソとするリュウセイ。
「これだ!・・・キャリコ!」
「なんだ?ロボットマニア?」
「・・・これ、お前の?」
「・・・これ?・・・これは!!」
ヨロヨロ・・とキャリコはそれにむかって歩いていく。
「これは、『アインの写真!?しかも極上の笑み!』
譲ってくれ!ロボットマニア!!」
「・・・譲ってくれ??ってことはあんたのじゃないのか?」
「俺のではない!だから譲ってくれといっているんだろ?」
キャリコがその写真を取ろうとしたとき、
2人の視界からその写真は消えた。
「「!!??」」
「これはオレのだ!!」
「「お前の!!?」」
珍しく・・というか初めて息を合わせながら、
リュウセイとキャリコは写真を奪った人物、
クォヴレーに視線を送った。
「クォヴレー・・お前なんで自分の写真なんて持ってんだよ?」
「・・・・・・」
「アイン、お前実はナルシストか?
まぁ、それだけ可愛い顔をしているから別にかまわんが・・・」
「「何故?笑顔の写真??」」
2人はまた息をあわせて質問する。
するとこれまで黙っていたアラドとヴィレッタが、
「笑顔の練習でもしてたの?お前」
「・・・そうなの?クォヴレー」
「違う!!これはある人物が隠し持っていたのを発見したから没収したんだ!」
「「「「ある人物って?」」」」
今度は4人が声をそろえて質問してくる。
「そ、それは・・・」
モジモジしながらクォヴレーは顔を赤らめる。
キャリコはその隙をついて写真を奪った。
「あ!」
「フッ・・油断は大敵だぞ?アイン・・・
これは俺が貰っていく!」
「返せ!それはオレのだ!!」
「アインのモノは俺のモノ・・・そいて俺のモノはアインのモノ・・
というわけでコレは俺のだ」
「どういう理屈だ!?返せ!!肖像権の侵害だ!」
「アイン・・・」
「何だ!?」
「コレを渡せば今日は大人しく帰ってやる・・・
それとも、キスしてやろうか?」
「・・・それやるから帰れ」
「フフフ・・・了解した・・ではさらばだ!」
キャリコが去ると部屋には静寂が訪れた。
「隊長、あの写真キャリコのじゃなかったな」
「ええ、そうね」
「まったく酷い目にあったぜ」
「そういえばアラド」
「ん?なにクォヴレー?」
「お前なんでオレのベッドで寝ていたんだ?」
「・・・へ?あぁ・・・実は自分のベッドでお菓子食べていたら、
ジュースこぼしちゃってさ!んで、仕方ないからお前のベッドで
寝てたらあいつがきて・・・はぁ・・・」
3人は呆れながらアラドをみた。
「自業自得ね」
ヴィレッタが何気なくその言葉を言った時、
ガシャンッ!!
「「「「!!??」」」」
机の上にのっていたクォヴレーの末端が落ちた音であった。
落ちそうな場所には置いてなかったのに・・・
クォヴレーの顔は真っ青になった。
「な、なんで・・落ちるんだ?」
「・・・・さぁ?」
「さぁ、じゃない!アラド!!」
「え?・・いや・・・だってさ・・・」
「やっぱりお化けだ!!」
「クォヴレー、落ち着きなさい!」
「もう嫌だ!!こんな部屋・・・いや、こんな戦艦!
ZOサイズで切り刻んでやる!!」
「「「!!??クォヴレー!!」」」
「いや、いっそアイン・ソフ・オウルで・・・」
「クォヴレー、落ち着くのよ!」
「放せ、ヴィレッタ!オレは格納庫に・・・!!うっ」
次の瞬間、クォヴレーは力なくヴィレッタの体に身を預けるように崩れ落ちた。
「こ、こえぇぇぇ」
「隊長・・・すげぇ・・・」
そう、ヴィレッタはクォヴレーのみぞをなぐり気絶させた。
普段の冷静な彼ならば簡単な作業ではなかっただろうが
幸い今日は冷静ではなかったから簡単に気絶させられた。
「感心してないでベッドを整えて頂戴!寝かせるから」
「「へーい」」
リュウセイとアラドはシーツのシワを直す。
「そういやさ、隊長」
「なに?」
クォヴレーをベッドに寝かせながらヴィレッタはリュウセイに視線を送った。
「写真の持ち主わかったから結局振り出しだな?」
「え?ええ・・そうね」
「振出って・・例の心霊現象のことっスか?」
「ああ・・・ポルターガイストって大抵生きてる人間がおしてるんだぜ?」
「へー?そうなんスか」
「・・・考えていても仕方ないわよ・・
とりあえず私たちも今日はこの部屋で寝ましょう」
「そうだな?いい?アラド」
「オレはかまわないっス」
「そ?じゃ私はこの騒ぎの原因を報告したらまた戻ってくるわ」
そういうとヴィレッタは部屋を出て行った。
ベッドの上のクォヴレーはお腹が痛むのか、
少しだけうなされながら眠りについていた。
有り難うございました。
まだまだ続きます!
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