企画

〜そして犯人が・・・〜

戦闘が終わり、ラー・カイラムのブリッジに報告に来たゼオラは
目の前に飛び込んできたその光景に驚かずにいられなかった。

「(・・戦闘中見かけなくなったと思ったら)クォヴレー、落とされたんですか?艦長」
「・・あ、あぁ・・」

ラー・カイラムの艦長、ブライト・ノアは額から汗をかきながらゼオラにヘルプ視線を送ってきている。
なぜなら・・・

「ゼオラ!お化けが出たんだ!」
「・・・お化け??」

と、その時ブリッジに、ヴィレッタ・リュウセイ・アラドが到着した。
皆、一様に目の前に飛び込んできたその光景に言葉を失ってしまう。

「・・クォ、クォヴレー・・お前、何やってんだよ??」
「見かけなくなったと思ったら・・落とされたの??」
「珍しいな・・追撃され王のオレだって今日の敵は平気だったのに・・」

「・・ゴホンっ4人とも、感心していないでどうにかしてくれ」
「艦長!自分を見捨てる気ですか!?」
「あ、あ〜・・いや、そうではなくだな・・・」

ブライトが困っている理由・・・
それは自分の腕に絡み付いている少年である。
いくら引き離そうとしても、
力いっぱい腕を組まれているので引き剥がすことが出来ない。
クォヴレーは戦闘中、敵の弾をヒョイヒョイ避けるので
これまで落とされたことがなかった、
が、なんと今日は落とされて早々にブリッジに帰ってきた。
珍しいのでどうしたのかと理由を尋ねてみると・・・

「お化けだ!!お化けが出たんだ!!」
「・・・お前、まだそんな事言ってんのかよ?」
「本当だ!本当にお化けが出たんだ、リュウセイ!!」
「・・・今回はどんなお化けが出たというの?」
「・・・正確には出たとはちがうんだ、ヴィレッタ!」
「どゆこと??」
「そのお化けはどうやらオレに取り付いているらしい、アラド!!」
「!?クォヴレーに取り付いているの??」
「そうだ、ゼオラ!だから超常現象はオレ1人の時によく起こったんだ!」

ブライトの腕をギュ〜と握り締めながらクォヴレーは必死に訴えかけてくる。
しかし皆しらけた顔で自分を見てくるのでクォヴレーは、

「本当だ!!オレは嘘なんかついていないぞ!!」
「・・ま、いいわ。信じることにしましょう・・で?」
「で?とは??なんだ?ヴィレッタ」
「具体的にどうしてお化けが貴方に取り付いていると思ったの?
 どんな現象が起きたのかしら?」

ヴィレッタの質問にクォヴレーは青い顔をしながら答えた。

「か、髪の毛が・・髪の毛が青く変色していったんだ!!」

クォヴレーの返答にブリッジ全体が静まり返った。
そしてその場にいた全員が、

「「「「「ふーん」」」」」

「!?『ふーん』とはなんだ!?髪の毛が変色していったんだぞ!?」
「てか、お前さぁ・・それはいつものことじゃん?」
「!?な、に??」
「だーかーらー!髪の毛が変色するのはいつものことじゃん!」
「何だと!?人を化け物みたいに言うな!!アラド!!」
「・・・本当のことだぜ?」
「嘘だ!!オレは髪の毛の色がひとりでに変化するような化け物じゃない!!」

ギャンギャンとほえるクォヴレーにブライトは頭を抱えた。

「(・・知らぬは本人のみぞ、か?)・・・クォヴレー」
「・・なんです?艦長」
「なぜ、今日は髪の毛が変化していることに気がついたのかね?」
「艦長!!」
「!・・なんだ??」
「今日『は』ではないです!それではいつも自分の髪の毛が変色しているみたいではないですか!?」
「(実際変化しているんだが・・黙っていたほうが無難そうだな)・・ゴホンっ!どうして気づいたんだ?」
「・・・なんだか変な気配を感じたので、アイン・ソフ・オウルを使う際、ふとモニターに映る自分を見たのです。」
「モニターに映った程度じゃわからなかったでしょ?」
「いや、それが・・・オレの髪はゼオラと一緒で銀だろ?」
「私より銀よね!」
「・・・そうか?だからゼオラならわかると思うが銀というのはモニターでもよく色がわかるんだ」
「そうね、私も顔のパーツはわからないけど、髪はよくわかるわ・・あ!そっか」

ゼオラは納得がいったようにクォヴレーと視線を合わせニッコリ微笑んだ。
その笑顔に険しい顔をしていたクォヴレーの顔も多少緩む。

「どういうこと?」
「銀髪はモニターでもよくわかるのに、
 急にわからなくなったから髪の毛の変化に気づいたんですよ、大尉」
「ああ!成る程・・・ん?でもどうしてそれが青色とわかったの?クォヴレー」
「・・・髪の毛がザワザワして、これはお化けが出た!と思ったら戦闘に集中できなくなって撃沈された」
「・・・・で?」
「直ぐに脱出ポッドを回収してもらえたから、母艦の銃座に着こうと思ってすぐブリッジに来たんだ」
「へぇ・・えらいなクォヴレー!俺ならそのまま格納庫のロボット見物するけどな」
「・・・リュウセイ、お前は後でミッチリ教育が必要なようだな?」
「い!?じょ、冗談だよ!隊長!!」
「・・・話を続けていいか?」
「おう!続けてくれ!」

ヴィレッタの冷たい視線にアタフタしていたリュウセイは、
クォヴレーの助け舟?にホッとしながらその先を即した。

「ブリッジにきたらなんだか皆が変な顔をしてオレをみてくるから、
 隣の銃座にいた奴に聞いたんだ・・『オレの顔になにかついているのか?』と」
「・・・それで?」
「そしたら『ついていないけど・・髪の色が青いままだぞ』って言ったんだ」
「・・・それで気づいたわけね?」
「そうだ、ヴィレッタ!髪の色が変化するはずなんてないから、
 これは絶対お化けがオレに取り付いている証拠だ!そうだろう!?」
「・・・あながち、間違いではないわね・・」
「そうだよなぁ・・少佐、お化けみたいなもんだもんな?」
「・・・少佐?って誰だ?リュウセイ」
「へ?・・イングラム少佐だよ!イングラム・プリスケン!」
「!!イングラムだと!?」

その名に驚いてクォヴレーはブライトから腕を離した。
これ幸いとブライトは一目散にその場を後にする。
ヴィレッタに『後は任せる』という視線を残して・・・。

「(艦長・・ボーナスは3倍貰うわよ・・)」
「・・・確かにオレの中にはまだ彼がいる・・だが、それと髪の色の変色とどう関係があるんだ?」
「それはわからないけど・・負の力を最大限でに使うとき、彼が力を貸してくれているのでしょうね。
 一時的に彼が乗り移る形になるから、髪の色が変化するのでしょうけど・・・」
「・・・では、お化けの正体は彼なのか?」

自分よりの幾分か背の高いヴィレッタを悲しい表情で見上げながら質問した。

「彼は、やはりオレをこの身体から追い出そうとしているのか?だからオレを怖がらせて・・・」
「・・・イングラムはそんな事しないわよ」
「!なぜそう言い切れる!?」

キッと睨みながら大声を上げた。
滅多に大声を出さないクォヴレーが怒鳴ったものだから、
ブリッジ中が静まり返る。
気まずい空気に気がついたのか、シュンとしながら、

「すまない・・・だが・・」
「いいえ、私も無神経だったわ」

下を向くクォヴレーをそっと抱き寄せ頭を撫でるヴィレッタ。

「不安、よね・・?でも信じてあげて頂戴。あの人は・・・皆が思っているほど非道じゃないのよ?」
「・・・・隊長」
「彼は孤独な人・・・だったわ」
「孤独・・・?孤独は・・イヤだな」
「そうね、1人はイヤよね・・あの人は1人の辛さを知っているから、
 クォヴレーを心の奥に閉じ込めて一人にしたりはしないはずよ・・
 貴方の体は貴方のものだもの・・・イングラムにだって奪う権利はないのよ」
「・・・オレの体は・・オレのもの・・では体のない彼はこの先も1人なのか?」

可哀相だ、と口を開きかけたときヴィレッタは微笑んだ。

「彼は1人じゃないわ。貴方の傍にいるし、私の傍にもいる。リュウセイや・・ライの傍にもいるのよ」
「!!色々な人のところを行ったりきたりするのか!?」
「そうよ」
「それでは忙しくて淋しくなどないな?」
「そうでしょ?」
「・・・オレやゼオラの傍にはこないンすか?大尉?」
「もちろん!きてくれてるわよ!」
「私たち面識ないですけど?」
「私たちは仲間だから関係ないのよ」
「あ!な〜る!!」

流石は大尉だ!見事なまとめ方だ!と
ブリッジのクルーが感心して聞いていると急にリュウセイが大声を上げた。

「あ!!」
「・・・なんですか?リュウセイ少尉!?」
「ビックリするッスよ!!」
「あ・・・ごめん・・クォヴレーさ、」
「?」
「鏡に男が映るとか言ってただろ?」
「ああ」
「それって少佐?」
「・・・さぁ?彼の顔知らないからなんとも・・・」
「「「「知らないの??」」」」

声を揃えて驚かれたのでクォヴレーが4人よりも驚いてしまった。

「・・いつも声が聞こえるだけだし・・姿は見たことない」
「そうなの・・・じゃ、鏡に映る男の特徴は?」
「特徴???なぜそんな事を聞くんだ?」

不思議そうに見つめてくるので、リュウセイは改めて超現象が起こる理由を説明する。

「ポルターガイストってさ、大抵生きている人間が起こしているんだぜ?」
「!そうなのか??」
「そ!・・で、俺も隊長もキャリコが犯人だと思ってたんだけどさ・・」
「この前の様子じゃ、違う感じだったっスね?」
「・・・では、やはりオレの中にいる彼が犯人か?」
「確かに少佐も念動力持ってるけど・・・クォヴレーを怖がらす理由がないだろ?」
「怪奇現象は念動力が必要なんですか?」

ゼオラの問いにヴィレッタがわって説明をする。

「人は誰しもそういう力を持っているものなのよ。でも念動力者の方がより多くその現象を起こせるわ」
「・・・へぇ?」
「でも、大抵の場合、好意を寄せている相手に対して無意識でおこしているのだけれどね・・」
「・・無意識でおこすならキャリコじゃないですね!」
「何故だ?ゼオラ」
「え?・・(キャリコは無意識じゃなくても、
 クォヴレーを襲ってくるもの・・とは言えないわ!)あははは」
「??」
「ゴホン!」

話がそれてきたので咳払いをし、リュウセイは続けた。

「でさ、鏡に映った男の特徴は?ひょっとしたらその男が怪奇現象のヒントかもしれないぜ?」

うーん・・・と考え込みながら、ポツリポツリ・・と男の特徴を話していく・・・。

「・・・・若い男ではない」
「それから?」
「・・・ひげが生えていた」
「ひげ??イングラムさんはひげ生えてたんスか?」
「・・生えてないわ・・ついでに彼はまだ若かったわ」
「!!そういえば!!」

なにか重要なことを思い出したのか、クォヴレーは全員の顔を一度見渡し、
大きく深呼吸をしたのちに、

「いつもその男、あるセリフを言っているんだ」
「セリフ??」
「どんなセリフ??」
「・・・確か・・・」

眉間にシワをよせ、一つ一つのセリフを思い出しながら呟く・・・

「われ〜・・ばん・・だったか?」

「「「「われ〜・・ばん!!??」」」」

意味がわからなく全員その場に立ち尽くした。
辛うじてアラドが口を開く、

「・・・な、何を『割れ』なわけ???」
「さぁ?オレにはわからない」
「・・われ〜ばん・・?われ・・?われ・・」

5人はその場で考える。
腕を組み、天井を見上げ考える・・考える・・・
と、その時・・・・

「あぁぁぁぁ!!」

突然の大声に、クォヴレー、ヴィレッタ、リュウセイ、ゼオラは飛び上がった。

「リュウセイ少尉!!」
「へ?」
「怪奇現象は、念動力が原因なんスよね??」
「あ、あぁ・・全部とは言わないけどな」
「で、好意を持っている相手に対して無意識のうちに起こしているんスよね??」
「あ、あぁ・・世間一般的には・・」

アラドはニマッと笑い、今度は、

「クォヴレー!!」
「なんだ??」
「お前、戦闘中BGMどうしてる??」
「??気が散るし・・切っているが?」
「やっぱりな!」
「ちょっと、どうしたのよ?アラド!」
「オレ、わかった!」
「何が??」

皆が首をかしげているのに、1人満足そうに笑いながら、
クォヴレーから、ヴィレッタへ視線を向けると

「大尉、お化けの正体がわかったス!!」


「えぇぇぇぇ??」


犯人わかりましたか?? 解決編はちょっとゲーム形式に致します。 解決編はただ喋っているだけですよ? あしからず・・・