アインとかくれんぼ
 
〜アインとかくれんぼ〜

*アイン銀髪設定*




スペクトラはある場所へ向かう途中、ふとある一点を偶然見たら
なにやら銀色の糸がチラリと見えた。


「?」


気になって近づいてみればそこにはアインが小さくなって座っていた。
先ほど銀の糸と思ったものは、アインの髪の毛だったのである・・・。

アインはスペクトラに対し背を向け座っている。
よく見れば肩を震わせているではないか・・・・
そのためだろうか?
スペクトラが近づいても一向に気づかないご様子・・・


「・・・アイン・・何しているの?」


ビクゥ



突然背後から声をかけられれば誰もがビックリすることだろう。
アインも同じで飛び上がって驚いた。
そして背後に立つ人物を見て・・・


「・・・なんだ・・・スペクトラか・・・良かった・・・」
「(・・・何が良かったのかしら?)アイン?」
「・・・アイツかと思った・・・」
「アイツ?・・・ああ・・キャリコね・・・」


キャリコはアインをよく追い掛け回している。
その様子にスペクトラも、他のバルシェムも頭を悩ませている。


「今日は何されそうになって逃げ回っているの?」
「・・・それは・・・あ!!」


コッコッ



アインが何かを答えようとしたちょうどその時、遠くで誰かが
こちらへ向かってくる足音が聞こえてきた。
その足音にアインは青ざめ・・・


「来た!!」
「え!?(何が?)」
「キャ・・キャリコが来た!!」
「はぁ!?」
「間違いない!!あの足音はキャリコだ!!」
「・・・・まさか・・・」
「いいや!絶対だ!!」 
「本当に?(足音だけで解るなんて・・・アイン、貴方苦労しているのね・・・)」
「スペクトラ!!オレはここにまた隠れる!!
 もしキャリコが何か聞いてきたら、
 もう外へ出たとでも言ってくれ!!頼む!!」
「・・・それは・・かまわないけど・・・アイン・・?」
「?」
「そこだと隠れきれていないわよ?」
「え!?・・・ど、どどどどうしよう??」
「・・・・・」
「そうだ!オレが完全に見えないようにちょっとそこに立っていてくれ!!」
「かえって怪しくないかしら?」
「問題ない!!」







足跡がだんだん大きくなり、その人物は角を曲がってきた。
現れたその人物は・・・



「(・・・本当にキャリコだわ・・・すごいわねアイン・・・)」


キャリコはスペクトラを見つけると近寄ってきて、開口一番に


「アインを知らないか?」
「(・・・開口一番が・・・『アイン』ね)さぁ・・」




「何故そんな場所に立っている?」
「特に意味なんてないわ・・・ただここに立ってみたかっただけ・・・」
「・・・変わっているな・・・」


キャリコはそう言うと・・・ある一点をジーと見つめた。
その視線にばれたかしら?とスペクトラは思った。
まだ、キャリコとアインの距離はあるが・・・自分も遠くからアインの
髪の毛が見えて不思議に思ったのだ・・・
いくら自分が立っているとはいえ、
キャリコも銀の糸を見つけたかもしれない・・。


「・・・どうかした?」


その問いにニヤリと冷笑した
キャリコの笑顔にスペクトラは悪寒が走る・・・
そして思った・・・アインは見つかった・・・
さようなら・・・アイン・・・と。



「スペクトラ・・・」
「なに?」
「今の俺の気持ちを歌にするとこうだ・・・」
「歌?」


キャリコはある歌を歌いながらスペクトラにさらに近づいてくる・・・


「♪アインがね〜♪戦艦でしばしばかくれんぼ〜♪
 どんなに上手に隠れても〜♪」


そして、スペクトラを押しのけ、アインの髪の毛をつかむと・・・

「可愛い〜♪御髪(おぐし)が見えてるぞ〜♪」



歌い終えた・・・・。アインはつかまりキャリコの腕の中に収納される。



「(・・・上手いわね・・・キャリコ・・・その歌、本当に合っているわ)」
「・・・見つけたぞ・・・アイン」

「ぎゃぁあぁあぁぁぁぁ!!」

「熱烈な歓迎の声だな・・アイン」
「は、放せ〜!!!」
「さぁ・・もういい加減に観念しろ!!」
「キャリコ・・・」
「何だ、スペクトラ?」
「アインは何をそんなに嫌がっているの?」
「ス、スペクトラ!!助けて!!コイツ、おかしいんだ!!」
「聞き捨てならないな・・・俺のどこがおかしい?」
「全部だ!!コイツ、オレに外に出る時は必ず日焼け止めを塗れと言うんだぞ!?」
「!?日焼け止め??」
「それだけじゃない!!まだあるんだ!」
「まだ・・・?(一体何?)」
「その日焼け止めも『オレが塗ってやる』とか言うんだぞ!!おかしいだろ!?」
「お前は俺のものだからな・・当たり前だろう?」
「何が当たり前なんだ!?」
「自分のものに自分で日焼け止めを塗って何が悪い?」
「オレはお前のモノじゃないぞ!!」



2人のやり取りに・・・スペクトラは思った。


「(そもそも私達は外に出る時、仮面と甲冑で素肌をさらさないのだから
 日焼け止めなど必要ないでしょうに・・・)」

・・・と。



「アインのぬけるような白い肌が焼けでもしたら大変だ・・・
 それに日焼けなどして肌がザラつくと抱く時嫌だしな」
「セクハラ発言は止めろ〜!!何が抱く時、だ!!
 スペクトラ!!お願いだ!助けて!!!」


「・・・・アイン」
「何だ?早く助けてくれ・・」

「・・・・」
「スペクトラ?」


「ご愁傷様・・・頑張って・・」
「あああああ!!スペクトラ!オレを見捨てるのか!?」
「違うわ・・・貴方のことは好きよアイン・・・
 可哀相だとも思う・・・そんな変態に好かれてね・・
 でも私は巻き込まれたくないの・・・まぁ頑張りなさい」


そういい残すと、スペクトラはさっさとその場を後にした・・・
なんだか胸が痛んだが・・・
キャリコが暴走した時は関わらないのが一番・・・
アインにはかわいそうだが・・・・
スペクトラがその場から離れてしばらくすると
アインの悲痛な叫びが聞こえた・・・
その声に目頭が熱くなりホロリ、と涙がこぼれた。



再録です。