アインとかくれんぼ
 


〜アインとかくれんぼ2〜





・・・・バタバタバタ



バタンッ





「・・・・・」
「・・・・・」
「・・はぁ・・はぁ・・・」




本日の訓練&事務処理も終わり、
スペクトラ(ダレット)とザインは
休憩室でティータイムを楽しんでいた。



そこへ息を切らしたアインが行儀悪く入ってきた。



「・・・アイン廊下は走るな、といわれているだろう?」
「・・はぁ・・はぁ・・い、今はそれどころじゃないんだ!ザイン。
 早く隠れないと!!」
「・・・ギメル(キャリコ)にまた追われでもしているのか?」
「・・・毎度毎度キャリコも飽きないわね・・・
 また日焼け止めでも塗られそうになったの?」
「・・日焼け止め??」
「ああ、ザインは知らなかったわね・・・実はこの間・・・
 かくかくしかじか・・・ということがあったのよ・・・」

「・・・(絶句)・・相変わらずだな・・・ギメルは」


「今日は違う!!」

「・・・じゃあ、今日は何で逃げてきたの?」
「アイツ!!いきなりオレの部屋に入ってきたかと思ったら・・・」
「思ったら?」
「いきなりベッドに押し倒してきたんだ!!」

「・・・へぇ〜・・」
「ほぉ〜・・・」

「それから人の服をいきなり脱がしにかかってきたんだ!!
 『身体測定だ』とかぬかして!!」
「・・身体測定、ねぇ・・・」
「ふっ・・上手いな、ギメル」

「2人とも感心してる場合か!!アイツ絶対にどこかおかしい!!
 毎回毎回毎回×100・・・!・・・???」



するとアインはテーブルに乗っているものが目に付いたらしく
言葉が途切れた。
テーブルにはケーキと、紅茶がのっている。
最初にも述べたとおりスペクトラとザインが
優雅にティータイムしている時にアインがいきなり入ってきたのである。
当然机の上にはティータイムの時間らしくおやつもあったのだ・・・。

「????」
「アイン?」
「どうした?いきなり黙ってしまって・・・」


「ソレ・・・何だ??」
「ソレ、ってこのケーキのこと?」
「けぇき?」
「ケーキを知らないのか?我々の食事にもごくまれに出てくるだろう?
 たまには糖分も必要だ、と言うことで・・」
「・・・食事?食事はそれぞれ自炊だろう?」


「「!?」」


「アイン・・・」
「何だ?」
「今、なんて言った?」
「?食事は各自で自炊だろう・・・?と言った」


何故同じことを2回も聞くのか?
何故スペクトラと、ザインはそんなに驚いているのか?
理由がまったく思いつかないアインは二人を交互に見て首をかしげた。

「オレはなにかおかしなことを言ったか?」

「(・・・そういえばアイン、食事の時間食堂にいるのを見たことなかったわ)」
「(・・・自炊?アインは自炊なのか??)」

「オレは料理がまだ出来ないからキャリコに作ってもらっているがな」


「「!?」」


「(キャリコに!?)」
「(ギメルは料理が出来たのか?!)」

「?でもキャリコは『甘いもの』は身体によくないといって作らないぞ?
 違うのか??本当は身体にいいのか??」


アインの言葉に2人は目頭が熱くなった。
まだこんなに小さいのに、
甘いものを食べる喜びを知らないだなんて・・・憐れだ。


「そうか・・・かわいそうにな、アイン。
 甘いものを知らないなんて・・よし!今日はこのケーキを食べろ!」
「紅茶もあるわよ?さぁ、遠慮しないで」
「いいのか?」
「もちろんよ」


二人の言葉にアインは目をキラキラさせ席についた。
そして生まれて(造られてから)初めて甘いもの『ケーキ』を口にした。


「!!!これが『甘い』か。美味しいなこの『けぇき』は(嬉)」
「良かったわね(涙)」
「まだあるぞ。遠慮なく食え!(涙)」


ケーキに夢中になっているアインと、
そんなアインをわが子のように見つめていた2人・・・
その緊張感のない油断がいけなかった・・・



悪魔はもう直ぐそこに・・・迫ってきていたのだから・・・・




アインが1つケーキ食べ終え、もう一つ食べようと、
フォークをさし口に入れようとした瞬間
フォークは何者かに奪われてしまった!


「「「!?」」」



「・・・こんなもの・・・誰が食べていいと言った?」



その低い声の主を見れば・・・キャリコだった・・・
いつの間に部屋に入ってきたのだろうか?
つい、ケーキに夢中で・・・気づかなかった・・・


アインはキャリコを確認すると、
その顔は青ざめ急いで席を立ち逃げようとした、が
キャリコにあっさり捕獲されてしまう。


「・・・アイン?誰の許しを得て・・・ケーキを食べた?」
「・・・・そ、れは・・・」

「いいじゃないキャリコ。ケーキの一つや二つ・・・」
「そうそう、どうせ俺達の分だったんだし・・
 心配しなくてもお前にもやるよ(笑)」


「・・・アインに甘いものなど必要ない!以後、金輪際与えるな!!」
「「何で?」」


キャリコの理不尽な発言にスペクトラとザインは声を合わせ質問した。
腕の中のアインの顔色はより一層青くなっている。


「・・・甘いものなど食べさせたら太るだろう??」
「「・・・はぁ!?」」

「・・・アインはこの細さがちょうど良い!」
「「何に?」」

「俺の抱き心地に、だ!!」
「「・・・(絶句)」」

「太らせないため、甘いものは与えず、飲料はミネラルウォーター!
 五穀米に味噌と少しの野菜、肉でいい!!」
「・・・宮○賢○じゃあるまいし・・・」
「時には糖分も必要だろう・・・」
「必要ない!!俺のアインだ!口出しは無用!!」
「!誰がお前のだ!!」
「・・・お前が、だ。アイン」


ジタバタとキャリコから逃れようとアインはもがく。
もがくが、逃げられない。
その様子を同情の目で見守るスペクトラとザイン・・・


「さて、かくれんぼは終わりだ。身体測定の続きをしようか?、アイン」
「かくれんぼをしていたわけじゃないし身体測測定なんて必要ない!!」
「必要は、ある。ケーキなんぞ食べおって・・・
 太らなかったか確かめなければ・・・」
「ぎぁぁぁぁぁぁ!!さ・わ・る・な〜!!」
「触らなければ解らないだろう?」
「ああああ!!脱がすな〜!!スペクトラ!ザイン!!助けて!!」



アインの悲痛な叫びに負い目を感じながらも
2人はアインを助けようという気はサラサラない。
キャリコに余計なことをして機嫌を損ねたら後々大変だ。


「・・・俺、まだ仕事あったんだった・・・」
「・・・私も・・・」


「ああああ!!見捨てる気か!?」
「フフフ・・・早く出て行け・・・二人とも・・」



触らぬ神に祟りなし・・・・
2人は目頭をおさえ、泣く泣くその場を後にした。


「裏切り者〜!!!薄情〜!!」



その言葉と共にアインの悲痛な叫びは響きわたる。
そしてその叫びに再び熱くなった目頭を
押さえずにはいられなかった2人・・・
心の中で


「すまない、アイン」


と言いながら・・・・・。



再録です。