〜壊れた日〜
○月*日
アインと出会ってから1週間経った。
喋り方は相変わらずたどたどしいが、
研究員の言ったとおりアインは頭のいい子らしい。
運動能力もある。流石に子供なので他のバルシェムに比べたら
腕力、体力共にやや劣ってしまうが・・・・問題にする程度ではないだろう・・・
しかし・・・
「ギ、メル?ど・・し、た?」
「ああ・・なんでもない」
・・・この喋り方は問題だ!
何とかしなくては・・・・
まだ生まれて1週間しか経っていないとはいえ・・・
どうしたものか??
俺はスペクトラに相談することにした。
「・・・スペ・・・?だ、れだ?」
「・・・スペクトラ・・・4番目のバルシェムだ。まだ、会ったことはなかったな?」
「な、い。・・・・4番・・・ダ、レ・・ットだな?」
「スペクトラ、今良いか?」
「キャリコ?ええ、いいわよ。ちょうど一段落ついたから」
「お前に紹介したい者がいる・・・・アインだ」
「アイン?ああ、例の幼年体のバルシェムね・・」
「そうだ。アイン、こっちへ来い!」
「・・りょ・・・か、い」
「!?」
「・・・ダレ、ト?・・・アイン、だ。・・・よろ、し、く」
「・・・キャリコ?」
「・・・アインは、知能、運動能力ともに問題はないが、口が上手く回らない・・・」
「何故!?」
「いじりすぎて、これ以上遺伝子操作すると廃人になる恐れがあったそうだ・・・」
「・・・それで言葉が不自由なまま調整層から出されたわけね・・・可哀相に・・・」
・・・以外だった・・・・スペクトラの口から『可哀相』という言葉が出るとは・・・
やはり、アインのあの可愛らしい容姿は鬼をも虜にするのだろうか?
いや、別にスペクトラが鬼というわけではないが・・・・
まぁ・・・アインはスパイになるのだしな。
スパイは外見でも相手をだませるにこしたことはないだろう・・・
・・・・待て!?俺は今・・・可愛らしい容姿とか言ったか!?
のぉぉぉぉぉぉぉ!!この前といい今といい俺は・・・俺は・・・!!
「キャリコ?どうかした?」
「・・・なんでもない(汗)・・・それでスペクトラ・・・どうしたら良いと思う?」
「何が?」
「アインの言葉遣いだ・・・何とかしなくてはならないだろう?」
「そうね・・・手っ取り早く早口言葉でも言わせて見たら?」
「早口言葉、か・・・・よしアイン!」
「?・・・な、んだ?」
「『生麦、生米、生卵・隣の客はよく柿食う客だ・青巻紙、赤巻紙、気巻紙・
すもも も もも も もものうち!!』・・・・・・・言ってみろ!!」
「?・・・わか、・・た。『生麦、生米、生卵・隣の客はよく柿食う客だ・青巻紙、赤巻紙、気巻紙・
すもも も もも も もものうち!!』どう、だ??」
「「!?」」
なぜ・・・そんなにすんなり言えるのだ?
俺は、スペクトラと顔を見合わせてしまった・・・・
早口言葉はいえるのに・・・何故普段は普通に喋れない??
「・・・すごいわ!アイン。そんなに上手に早口言葉が言えるのなら直ぐに上達するわね」
「ほん・・・とう、か?」
「もちろんよ!早くちゃんと喋れるようになるといいわね」
「ああ!!、はや、・・く、ちゃんと、はな、せるよう・・なりたい・・」
・・・アインは・・・満面の笑みでスペクトラと・・・会話していた。
その顔を見た瞬間・・・・俺は・・・・俺、は?
ドクン
何かが、俺の中で・・・弾けた・・・
スペクトラの部屋を後にし、俺達は俺達の部屋に帰ってきた。
アインの部屋はまだないので、まだ俺と一緒の部屋だ。
部屋に着くまでの間、俺は一言も喋らなかった・・・
アインはそれを不審に思ったのだろう。
部屋に着くと、
「ギ、メル?ど、した?」
身長差のせいで上目遣いの・・・アイン・・・・
その愛らしい姿に・・・・俺は・・・・
「ギメ・・・!?んむぅ〜!!」
俺は無意識のうちに、アインに口付けていた。
当然のごとくアインにもその知識は埋め込まれているので
その行為が何か理解できたようだ・・・
そして、俺の腹をおもいっきり蹴ってきた。
「何をする!?ギメル!!」
「フ、フフ・・・」
「・・・ギメル??」
「お前があまりも可愛らしいので・・・つい、な」
「・・・何がつい、だ!!お前は変態か!?ホモか!?」
「・・・変態でもホモでもなかったが・・・お前に対してはそうなのかもしれない」
「!?」
「フフフフフ・・・今までは退屈でしょうがなかったが・・・これからは楽しくなりそうだ。
・・・そう思わないか?アイン・・・?」
・・・・さっきの口付けの衝撃でアインはまともに喋れるようになった(さすが俺!!)
それから、どうやら俺はアインに対してなにやら特別な思いが芽生えたようだ・・・
さて、これからどう料理してくれよう?
同じ部屋だし、どうとでも出来るしな、
と思っていたらアインの部屋が出来てしまった!!
アインはほっとした顔をしていた。
・・・・が、アインよ!安心するのは早いぞ!
お前は俺の部下!!部屋が一緒でなくてもどうとでも出来る!!
さぁ・・・楽しい日比の始まりだ!!
「アイーーーン!!」
「うぎゃゃゃゃああああ!!こっちくんな!!変態ギメル〜(泣)」
ついにキャリコが壊れました。
この日記(?)はまだまだ続きます。
次はアインがいよいよスパイに出る日です!!
さぁ・・・どうやってギメルはアインがスパイに出ることを許したのでしょうね??
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