これで退治できたら苦労はしないんだ
 

〜豆まき〜 



「・・・ダレット何をしているんだ?」 
「地球の行事、『豆まき』よ」 
「・・・マメマキ?」 

アインがゴラー・ゴレムの談話室(別名出撃待機室)に訓練を終え 
戻ってくると、ダレットが枡いっぱいに豆をいれ持っていた。 
よく見ると、壁にはワラ人形(胸に【はざる】と書いてある)が立てかけられている。 

「(【はざる】?アレは指令のつもりか?)
 ・・・それで?いったいどのようなものなんだ?その『マメマキ』とは」 
「そうね。簡単に言えば、この豆をぶつけて鬼を退治というか追い出すことかしら・・・。 
 本来は、豆をまくことで去年の邪気を祓うことらしいけど」 
「・・・鬼退治・・・邪気払い・・・か。
 何かハザル指令関係で嫌な事でもあったのか、ダレット?」 

ギクッ 

ズバリ言い当てるアインに苦笑いでかえすダレット・・・。 
(注:ここでは仮面をしていないので表情がわかる) 
ジーと上目遣いで指摘されては目がそらせない。 

「(確かにキャリコの気持ちも分からなくはないけど・・・
 私は子供はちょっと・・・ショタコンではないし・・・) 
 別に、何もないわよ。ただ他の名前が思い浮かばなかっただけ」 
「そうか・・・」 

アインはそれ以上つっこむことはしなかった。 
誰にでも言いたくないことはあるものだと心得ているからだ。 

「(それは我々『バルシェム』という人形にも言えることだろう)
 まぁ、見つからないようにするんだな」 
「そうね。見つかったら即処分でしょうからね。」 
「・・・肉片処理だけで終わる虚ろな存在、か」 
「・・・アイン」 

哀しげに呟く彼にかける言葉が見つからない・・・。 

「だったら、ダレットは『はざる』より、『ヴェート』がいいじゃないか?」 
「アイン・・・!!」 

ダレットはぎゅーっとアインを抱きしめる。 

「(ああ、やっぱり可愛いわ。同じバルシェムとしてだけど・・・。
 ごめんなさい、アイン。 
 私はそんなお前をバルシェムの平和のために売らなければならないの・・・) 
 アインもやらない?」 
「マメマキをか?オレは遠慮する、追い払いたい奴がいないわけではないが・・・。 
 見つかったらあとが怖い・・・」 
「だぁ〜いじょ〜ぶよ!!アレはしばらくこないから」 
「何故わかる?」 
「え!?」 
「何か・・・企んでいるのか?」 
「べ、別に何も企んでないわよ!!ただアイツは閣下と話しているから 
 当分来ないというのは本当よ(1時間くらい前の話だけど)」 

するとダレットは紙に『ぎめる』と書き、ワラ人形に貼った。 

アインの体に悪寒が走る・・・。 

ダレットが近づいてくる。 

アインの額から冷や汗が流れる・・・。 

ダレットはアインの手をつかみ豆を持たせた。 

アインの背中から冷や汗が流れる・・・。 


「(とてつもなく、いやな予感がする)やめろ!ダレット!!」 
「平気よ。さぁ!アイン日ごろの鬱憤をはらしなさぁ〜い!!」 

そして豆はアインの手から離れ、『ぎめる』人形へもの凄い勢いで当たった。 

キィィィィ・・・ 

その時部屋の扉が静かに開いた。 
扉の向こうにはギメルが冷笑しながら立っている。 

「ほぉ・・・いい度胸だな?アイン・・・」 

低い声で威圧的に言われると、ビクッとアインは身を竦ませる。 

「(ああ・・・今日と明日のオレの運命は終わったな)」 

心の中で呟きながら真っ青な顔でアインはギメルを見つめた。 


どうなるんでしょうね(笑) 続きは裏です。