〜サイズ〜


格納庫はシーンとしていた。
任務を終え無事戻ってきたオレは報告を終えると期待の整備に取り掛かった。
そんなにたいした相手ではなかったが、
飛び道具ばかりを使ってきて大事なヴァルクにかすり傷が沢山ついてしまったからだ。
あんなへなちょこ球を全て避けられないとはまだまだ未熟な証拠なのだろうな。






・・・・どれくらい経っただろうか?
咽が渇いたので飲み物を取りに行こうとヴァルクから降り、
格納庫の出口へと歩き出した。
誰もいない格納庫にオレ一人の足音が響いている。
そして何気なくフッと横を向いたときある機体が目に止まった。
いや、正確にはその機体の足元に取り残されたかのように置かれている一つの・・・。


「・・・キャリコの仮面だ。置き忘れてしまったのだろうか?」


出口に向かうのを止め、キャリコの機体の足元へと歩いていく。
そして取り残されたその仮面を手に取ると、
ズッシリと重量感のあるその重みに少しだけ驚いた。

「・・・オレと違い口元が出ているというのにオレの被っているのより重い・・?」

こんなに思い仮面を毎日被っているのか?
首でも鍛えているのだろうか???
・・・・戦闘しにくそうだ。

「・・・・・・・・」

暗い格納庫は物音一つしない。
静寂が支配し、オレの鼓動の音だけが自分自身に大きく響いている。
何故こんなに鼓動がはやっているのか・・・?



どうやらオレは悪戯心に火がついてしまったようだ。





この仮面を被ってみたい、と。





「・・・・よし!」





決めるやいなや、行動が早いオレ。
自分の仮面をさっさと脱ぎ捨てると早速キャリコの仮面を装着してみる。



・・・・だが・・・・。




「????変だな???向きはあっているよな???」



仮面を被ってみるがどうもしっくりこない。
どうしてだろう??



理由が分からないままオレはヴァルク・バァルを鏡に自身を見てみた。

その時、初めてしっくりこない理由を理解できた。



ああ・・・そういうことだったのか・・・・。




「・・・オレより体格がいいから骨格からして違うんだな、きっと」




そう、キャリコの仮面はオレにはデカ過ぎでブカブカだったんだ。
身長も体重もオレよりあるキャリコは当然骨密度もオレとはぜんぜん違うのだろう。
骨の太さから違うとあっては、仮面のサイズもまったく違うに違いない。




・・・・なんだか悔しい。



・・・悔しいけど・・・・嫌ではない。






よくそのことでムクれてはキャリコは苦笑いを浮かべていたっけ。
けれど今は『小さい』ことを別に嫌だとは思わなくなってきている。





なぜなら、
キャリコより小さいということは、
あの大きな身体にスッポリ抱きしめてもらうことが出来るとわかったからだ。
キャリコに抱きしめてもらうと安心する。
・・・・オレがキャリコと同じ位の体格であったら
おそらく抱きしめてもらうことはなかったんだろうな。
と、いうことはあの『気持ちよさ』を知らずに過ごしていたということだ。
そんなの・・・・嫌だ・・・・・。
だからオレは『小さい』でもかまわないんだ・・・・。
むしろ『小さく』て良かった・・・・。







あらかた仮面を堪能した後、
キャリコの大きな仮面を元の位置に戻す。


そして今度こそ飲み物を取りに行こうと立ち上がったとき、
・・・大きな手がオレの目を塞いできた・・・・。


有り難うございました。 キャリコサイドへ続いたりするんですよ。