〜サイズ〜
仮面を取りに格納庫へ戻ったら可愛らしい光景を見てしまった。
ヴァルクの前でなにやら首を傾げているアイン。
・・・あれはアインだ。
確かめに行かなくれても後姿だけで分かる。
何をしているんだろう?
どうやら俺が忘れていった仮面を被っているようだが・・・、
しかし何故・・・・・?
気づかれないように俺はアインへと近づいてみる。
すると小さすぎて今まで聞こえなかったアインの独り言が聞こえてきたのだった。
「・・・オレより体格がいいから骨格からして違うんだな、きっと」
!!
フフ・・・どうやら俺の仮面がアイン自身には大きすぎて、むくれていたのだな。
アインはいつもそうだからな。
『キャリコはずるい』と上目使いでいじましげに訴えてくる。
他のバルシェムより、俺より小さなことを気にしているアイン。
そのことを悩んでいるアイン。
抱きしめるとスッポリサイズの・・・・アイン。
・・・だが俺は今のお前のサイズがとても気に入っているんだぞ?
そんなことを言えばますますご機嫌が悪くなるだろうから言わないが。
俺は小さなアインが・・・・気にいっている。
もちろん今より大きくなってもアインはアインだがな。
俺たちより小さいことなど気にすることはないというのに。
おそらく小さく造られた事には意味があるのだから。
・・・・その意味を俺はまだ知らないが。
気づかれないように近づいていく。
アインは一人で何かを納得したのか
仮面を取り外し元場所に戻し始めた。
・・・俺の足が早くなる。
アイン
アイン
抱きしめたい。
仮面を置いたアインが立ち上がろうとする。
俺は間一髪間に合い、アインが振り向く前にあのつぶらな瞳を
自分の両手で塞ぐことに成功した。
「・・・・!誰だ!?」
上ずるアインの声。
俺は目を手で塞いだままアインの頭を反り返させる。
同時に俺も状態を屈め薄く開かれたアインの唇を・・・そっと・・・・。
「・・・・ん?・・・・んん・・・」
唇だけを啄ばんでやる。
アインは俺が誰だかわからないのか、身体から緊張が抜けないようだ。
・・・・俺がわからないなどと・・・悪い子だ・・これはお仕置きだな。
唇を舐め軽く歯を立てる。
そしてそのまま顎にキスをし、首筋に唇を寄せていく。
「・・・・んっ・・・、だ、誰・・なんだ??」
相変らず『俺』が分からない様子のアイン。
俺は香りだけでもお前がわかるというのに、なぜお前は分からない?
・・・・アイン、俺がわからない悪い子なアイン。
まだまだ愛し方が足らないようだな。
・・・・いいだろう。
俺の今日の任務は終わった。
お前の任務が終わっていることも分かっている。
ならば今夜はたっぷりと俺を学習させてやろうか。
首筋から唇を離し、目隠しをしていた手をそっと外し頬を押さえる。
アインは俺と視線が合うと怯えていた眼差しをキラキラしたものに変えだ。
「キャリコだったのか・・・」
「・・・当然だろう、アイン。俺以外の誰がお前にキスをすると言うんだ?」
「・・・・・望まないキスを迫られることもある」
アインの目から輝きが消えた。
ああ、そうだったな。
我々は望まないことを強いられることが多いものな。
だからあんなに怯えていたのか?
・・・俺はアインを見下ろしたまま何もいえなくなってしまっていた。
そんな俺に気がついたのか、アインは少しだけ困った表情で微笑みながら、
「残念だ」
と言った。
・・・何が『残念』なのだろうか?
「何が残念なんだ?」
「・・・もっと味わえばよかったと思って残念なんだ」
「味わう?」
「・・・キスの相手がキャリコと知っていたらもっと味わっていたのに」
「アイン」
「キャリコのキスは好きだ・・・唇が大きいからオレの唇を全部包んでくれる」
「・・・唇が大きい?・・・アイン、俺は口裂け男か?」
俺の言葉にアインは大きく目を見開いて満面の笑みを浮かべた。
そしてクルンと身体を回し俺の身体に腕をまわし抱きついてくる。
「・・・オレより大きいということだ。
身体の大きさが違うから当然なのだろうが・・・」
「・・・そうだな、だから仮面のサイズもまったく違う」
「!!」
アインが再び目を大きく開いて俺を見上げてきた。
まさか俺が見ていたとは思っていなかったのだろうな。
だから俺はわざと意地悪い笑顔を浮かべこ馬鹿にした口調を使ってみる。
「俺の仮面はそんなに大きかったか?」
「!!!!!」
見る見るうちに茹蛸になっていく可愛いアイン。
目は潤み、悔しそうに唇を噛みしめている。
アイン、そんなに可愛いことをしていると・・・
食べてしまうぞ?
頭から一気にバックンと飲み込んでしまうぞ?
小さなお前を飲み込むことなど容易いのだから。
「・・・すごく大きかった・・・悔しい」
「・・・骨格の差だ、お前も理解していたじゃないか」
「そうだが・・悔しいものは悔しい。
オレは何一つとしてお前より大きなサイズがないと思うと悔しいんだ」
「俺より大きなもの?」
俺はしばらく考える素振りをしてみせる。
アインはワクワクといった感じで俺の言葉を待っていた。
だが俺は・・・・。
「・・・そうだな・・・ないな」
「!!」
一つもない、と無常に宣言するとアインの眉がつり上がる。
おそらく何か一つくらいは、と思っていたのだろう。
納得がいかないのか今度はアインが考える時間に入った。
必死に考えるアイン。
何か一つでも見つけようと頑張るアイン。
アイン、残念だがそれは無駄だ。
お前は何一つとして俺に勝てるものはない。
それでいい。
それでかまわないのだ。
お前はいつまでも一人立ちすることなく俺の庇護かで飼われればいい。
アインは俺に勝てない。
勝ってはならない。
このバランスを崩す輩は許さない。
それが例えアインであったとしても。
アインのサイズは常に俺より小さいままでいい。
アインのサイズはいつまでも俺より小さいままだ。
何一つとして追い越させはしない。
互いを想いあう『愛』の深さの大きさでさえ、
俺はアインより大きいのだから・・・・。
アインは一生俺より小さなままだ。
有り難うございました。
「裏」へ続く予定???
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