ボゲヴィレとズレヴレ
 




*またまたゴキネタです*









〜ボゲヴィレとズレヴレ〜





「ヴィレッタ!」
「あら、クォヴレー・・どうかした?」

談話室で本を片手に優雅にお茶をしているヴィレッタ、
そこへ弟とも呼べる存在クォヴレーが虫かごを持ってやってきた。
普段クールで感情をあまり表に出すことが少ないクォヴレー・・・
そんな彼が今、息を切らせ頬を赤らめながら自分の所へとやってきたのである。

「今、ゴミ置き場で虫を見つけたんだ」
「虫?」
「クワガタ!」
「クワガタ?」
「捕まえたから是非ヴィレッタに見て欲しい」
「そう・・フフフフ」
「?なんだ?」

何もおかしなことは言っていないのに急に笑った姉のような存在を
首を少しだけ傾げながら真っ直ぐに見つめた。

「いいえ・・クワガタを捕まえただけなのに
 息を切らせながら走ってくるだなんて・・・
 いつもの貴方からは想像できないからちょっと・・フフフフ」
「・・・いつもの・・オレ?いつものオレはどんなイメージなんだ??」
「・・・そうね、クールで滅多に感情を表に出さない・・・
 大人っぽい子供かしらね・・・?」
「オレは子供ではない!・・・大人とも言いがたいが・・・」
「怒らないで?私は別にバカにしているわけではないわ」
「・・・わかっている」
「むしろ安心したのよ」
「え?」

少しだけむくれている頬に手を伸ばし、ヴレッタは微笑むと

「貴方もやっぱり男の子なんだなぁ・・って思ったもの。
 男の子は昆虫が好きだものね」
「・・・そうなのか?」
「ええ・・・さぁ、みせてくれるんでしょ?」
「ああ」
「じゃ、みせてくれるかしら?」
「了解だ・・どうぞ」

腕に抱えていた虫かごをヴィレッタの前へと差し出す。
そこにはなにやら黒い物体が蠢(うごめ)いていた。

「角がないからメスだと思う」
「・・・これって・・クワガタ・・?」
「?そうだろう??黒いし・・羽あるし・・・」
「ふーん・・(ゴキブリに見えなくもないけど・・・
 メスは角がないと言っているし・・・
 クォヴレーがゴキブリとクワガタ間違えるはずないものね・・
 ・・・これがクワガタのメスか・・・ふーん・・・)」
「ヴィレッタ??」
「すごいわね!クォヴレー・・10匹も捕まえるだなんて」
「ああ、もっといっぱい飛んでいたが10匹で諦めた・・きりがないから」
「そう・・・」
「メスばかりでオスがいなかったんだ」
「へぇ・・・」
「餌をあげようと思うんだが・・黒蜜あるかな?」
「・・・食堂へ行けばあるかもしれないわね・・・行ってみましょうか?」
「・・・そうだな」








2人はニコニコ笑いながら食堂へと足を運んでいく。

「手で捕まえたの?」
「ああ、虫取り網は持っていなかったからな・・なかなか素早くて大変だった」
「(??すばやい??クワガタって素早かったかしら??)そう」
「カサカサ動くしな」
「(カサカサ??クワガタってカサカサ動いたかしら??
 でもクォヴレーがそう言うんだからそうなのよね)大変だったわね」
「ああ・・・ついたぞ」
「ええ、黒蜜あるかしら???あら?」

調理場へ行くとそこにはレーツェルがいた。
部屋中に甘いいい匂いが漂っているのでどうやらお菓子を作っているようである。

「ヴィレッタ大尉、クォヴレ−・・一体二人揃って何の用なんだい?」
「ちょっと黒蜜を探しにきたのよ・・あるかしら?」
「黒蜜??」
「クワガタにあげるんです」
「!ほぉ・・クワガタ・・私にも見せてくれるかな?」
「ええ・・これです」
「・・・!!!これは・・・」


レーツェルは何を言っていいのか迷ってしまった。
今、自分が見ているもの・・・それは紛れもなくゴキブリであったからだ。

「・・・クワガタ・・・?」
「そうよ、ゴミ置き場で捕まえたんですって」
「(!!大尉・・貴女もこれがクワガタだと思っているのか??)」
「何故かメスしかいなかったんですが・・・」
「(クォヴレー・・君もこれをクワガタと信じて疑わないのか??)」
「きっとオスは子供たちに人気だから捨てなかったのよ」
「!!成る程・・・ではこのメス達は捨てられたのか・・かわいそうに」
「(・・・ちがうだろう・・と私はつっこむべきなんだろうか・・
 それともバルマーではこれをクワガタというのだろうか・・・?)」
「それより黒蜜を探さないとね」
「ああ・・・なければ砂糖水で代用を・・・・」
「・・・ごほんっ・・2人とも」
「「????」」

2人が黒蜜を探していると急にレーツェルが改まった口調になった。

「・・水を差して悪いが・・それはクワガタではない・・」
「え?」
「!?」
「・・・それはゴキブリだと私は思うのだが・・・?」
「「ゴキブリ!?」」

レーツェルの指摘に調理場の空気が1℃下がった・・・
わきあいあいとしていたのに急に寒いギャグをいわれ隙間風が・・・
というような場面と同じような空気である。

「・・・やっぱりゴキブリだったのね・・」
「ゴキブリ・・・」
「(!大尉、ゴキブリと思いながら何故クワガタということにしたんだ??)」
「こいつら昆虫じゃなくて食べ物だったのか・・・」
「(!!食べ物???)」
「・・・ゴキブリって食べ物だったかしら?美味しいの?」
「ああ(食べたことはないが)美味い(と、本に書いてあった)」
「・・・へぇ・・・ねぇ?レーツェル」
「!あ・・なにかな???」
「調理の仕方知ってる?」
「!食べる・・気かね??」
「??だって食べ物なんでしょう??」
「ゴキブリは佃煮が美味い」
「へぇ・・私佃煮好きよ」
「(佃煮!?・・・あ、いや・・確かに食べる国もあるが・・どうしたものか)」

2人の会話についていけずレーツェルは背中にいやな汗をかき始める。
この2人は何か違う・・・
バルシェムというのは皆こうなんだろうか・・・?と心の中で思うレーツェル・・・。

「(大尉は・・意外と天然なんだろうか?クォヴレーはどこかずれているし・・・
 ゴキブリの佃煮・・・ゴラー・ゴレムは刺繍もやるらしいし・・ゴキブリも食べるのか??
 ゴラー・ゴレム・・・ますます不可思議な部隊だ・・・)」
「レーツェルさん」
「・・・なにかな?」
「調理できます??」

レーツェルはいやな汗が止まらなかった・・・
確かに料理は好きだし・・・世界各国の食べ物を食べたいとも思っている・・・
しかし・・・ゴキブリは・・・なんとなくいやだった・・・

「あ、・・残念だが2人とも・・・」
「「??」」
「それはどうやら食用ではないみたいだから・・むりだな・・・ははははは・・はは」
「そう・・・」
「残念だな・・・どうしよう?このゴキブリ」
「クワガタじゃないし・・食用でもないんなら元の場所に返してきたら?」
「・・・そうだな・・・折角捕まえたのに・・・」
「また今度、今度は本当のクワガタを捕まえればいいわよ」
「そうだな・・・ではお邪魔しました。レーツェルさん」
「あ・・・いや・・」
「ごめんなさいね」
「・・・ああ・・・クォヴレー」
「?」
「ゴキブリを放したら・・手は・・きちんと洗った方がいい」
「??わかりました」
「じゃ、いきましょうか?」
「ああ・・・」



2人は仲良く調理場を後にした。
その後、レーツェルがクォヴレーに昆虫大辞典の本を贈ったのは言うまでもない。



ありがとうございました。 久々のノーマル駄文・・・