謎が謎を呼びまた謎となる
 




〜〜

その日、クォヴレーが部屋へ戻るとめずらしく(?)
アラドが机に向かっていた。

「・・・珍しいこともあるものだな・・・」

ボソッと言ったつもりだったが部屋の中は静まり返っているので
やたら大きく聞こえたらしかった。
アラドはビックリして声の主、クォヴレーに振り返る。

「ビ、ビックリしたな〜・・・いきなり背後にいるなよ」
「・・・すまない・・・あまりに珍しい光景だったもので」
「オレが机に向かっているのが?」
「ああ、アラドは食うか寝るか、というのが多いからな・・・」
「うっ・・・否定は出来ない・・・その通りだし・・・」
「何してたんだ?」
「コレ、見てたんだよ」
「・・・コレ??・・・・・コレはオレのパーソナルデータ!?」
「そ、」
「・・・こんなもの自由に見れるものなのか?」
「まぁ・・ある程度の人は・・・それに見れないと大変だろ?」
「大変??」
「だってさ〜、これからドンドン人だって増えていくだろうし・・・
 ブライト艦長やアムロ大尉みたいな有名人は自己紹介しなくても
 わかるだろうけど普通の一般兵とか自己紹介しないとわかんないじゃん?」
「・・・そうだな・・・たまに誰だコイツ?みたいな事もある・・・」
「だろ?でもいちいち毎回毎回『新人の誰それでござい〜』なんて
 自己紹介して回ってたら日が暮れちまうだろ?
 だから最終手段としてたいていの人のデータは見れるようになってんだよ」
「・・・個人情報保護法なんてあってないようなものだな・・・
 この部隊には」
「戦争中だしね〜非常事態つー感じなんじゃん?」


そんなものか、とクォヴレーは眉間にしわを寄せた。
なかには知られたくない人間もいるだろうに・・・・
戦争とはそんな事も『非常事態』の一言で済まされてしまう
ものなのだろうか?
まぁ、自分は誰にデータを見られても別段困らないが・・・

「(・・・オレのデータは作られたものだしな・・・)」

ツキンッと心臓が痛む・・・
作られたデータ・・・=造られた命・・・
偽りの・・・生命・・・ということを改めて知らしめてくれる・・・


「オレ、クォヴレーのデータ見てて思ったんだけどさ〜」
「え?」


物思いにふけっていたクォヴレーはアラドの突然の言葉に驚いた。
一体自分のデータに何を思ったのだろうか?


「このクォヴレーの写真見て皆なんとも思わなかったのかな?」
「??写真??」
「だって今のクォヴレーとこの写真のクォヴレー・・・
 どう見ても違うじゃん?」
「・・・そんな凶悪な顔で写っているのか?」
「へ!?ああ・・・もしかしてお前、自分のデータ見たことないの?」
「・・・いや・・・サラッとだがみた事はある」
「その時写真は?」
「見なかった・・・直ぐ戦闘が始まってしまったのでな・・・」
「そっか・・・んじゃ、見てみ!」


アラドはそう言うと、クォヴレーの机から椅子を引っ張り
自分の席の横に置いた。
そこに腰掛けると、改めて自分のデータの写真を見てみた。


「・・・・?別に・・・おかしくはないと思うが・・・?どこが違うんだ?」
「気づかない?」
「?」
「髪」
「かみ?」
「色!」
「い、ろ・・・?あ!」
「青いだろ?今は銀髪なのに」
「・・・本当だ・・・」
「不思議だよな〜・・・ブライト艦長やアムロさんとかってさ、
 お前と会う前にお前のデータ見てたんだろ?」
「そうだろうな・・・オレを一目見て『クォヴレー少尉』と言ったからな」
「変に思わなかったのかな?」
「・・・髪の色だからな染めたくらいにしか思わなかったのではないか?」
「目の色も違うじゃん」
「目の色なんてよく見なければ写真ではわからない・・・
 それにいちいち目の色まで確認などしないだろう、普通」
「まぁ、目の色はソレでいいとして、髪はやっぱ疑問に思うぜ〜
 かりに染めたんだと思ったんだとしても・・・」
「・・・しても?」
「どこかで『データと髪の色が違うが染めたのか?』
 の一言くらいあってもいいんじゃね?」
「・・・オレは記憶喪失だからな・・・聞いたところで『分りません』
 としか答えようがない・・・彼らもそれが分っていて
 あえて質問しなかったのでは?」
「うーん・・・まぁそれで解決ってことにするか!・・・
 スッキリしないけど・・・」
「ではスッキリする答えを教えようか?アラド」
「へ!?そんなのあんの?」
「ああ・・・答えは簡単だ。
 『他人は自分が思っているほど自分を見ていない』と言うことだ」
「・・・・???分りやすくお願いします・・・」
「つまり、オレのデータを見て顔はなんとなく覚えていたが、
 髪の色まで正確には覚えていなかったんだろ。」
「・・・あとから突っこめばいいじゃん、
 身体検査でデータにもう一回目を通したはずだろ?」
「・・・その時も身体の特徴などを重点的に見ているから
 顔なんてサラッとしか確認しなかったんだろ?」
「そんなもんか?(なんか納得いかないな〜)」
「そういうものだ」




アラドはなんか納得いかないと言う顔をしながらも
その件はしぶしぶ納得したようである・・・・


「その件はソレでいいとしてもう一つ!」
「・・・まだあるのか?」
「キャリコは何で突っこまなかったんだ?」
「え!?」
「仮にも上司だったんだろ?」
「・・・ああ」
「だったらお前の姿を見たら最初の疑問が髪の色だったと思うんだけど?」
「・・・・・」
「だから最初の一言は『アイン、その髪の色はどうした?』
 とかが適切なんじゃね?」
「・・・・」
「クォヴレー??」
「答えは簡単だ、アラド」
「何?」
「あの時、回線はオープンだったが、映像はオープンじゃなかった・・・」
「ふーん・・・お前いつもアイツと話すとき回線だけなの?」
「・・・映像を開く時もある・・・」
「じゃ、最初の時はさっきので説明がつくとして、
 映像がオープンの時なんで突っこまれなかったんだ??」
「・・・・それは・・・」
「それは?」
「・・・オレがイングラム・プリスケンに取り込まれたから、そのせいだと
 奴は1人で納得して突っこまなかったんだろ・・・多分・・」
「でもオレさ、」
「何だ?」
「少佐の写真見せてもらったけど、青髪だったぜ?」
「・・・・」
「なのになんでお前は銀髪になんの?」
「・・・アラド・・・」
「何?」
「世の中には知らなくてもいいこともたくさんあるらしい・・・」
「・・・だから?」
「オレの髪の色の謎は知らなくていいことの一つなんだろう・・・」
「つまり?」
「つまり・・・そのぉ・・・なんだ!」
「・・・・クォヴレー??」
「オレはもう寝る!!」
「ええぇぇぇ!?ちょっとクォヴレー??」





・・・謎が謎を呼び・・・また謎となる・・・
この疑問が解ける日は・・・来るのだろうか・・・?


END



有り難うございました。 UPするほどの内容ではなかったのでこちらにUP。 この謎、OGがいつか出てこの人たちが再び登場した時 解決していただきたい。 でも、エクセレンとか突っこみそう・・・ 「なぁんかデータとちょっと違くないん?」 とか言って(笑) 有り難うございました。